大学で直接教えを受けたことはないが、ちょうどいまから40年前の大学卒業の1985年から書籍や講演を通じて、さまざまな知見を頂いてきた野中郁次郎教授。
1月25日にお亡くなりになったという訃報を知った。享年89歳。
一般には共著の『失敗の本質』(中公文庫)がもっとも有名で、もちろんわたしも読んで大いに影響を受けている。組織論を専攻する経営学者たちと戦史の研究者たちによる共同研究の成果である。
(『失敗の本質』新装改版にあたり、書き下ろしていただいた「文庫版あとがき(2024年) 中央公論新社の X投稿より)
だが、経営専門家にとってもっとも重要なコンセプトは、なんといっても「知識創造」(knowledge creation)であろう。
それまで経営学では主流だった「情報」ではなく、その上位概念である「知識」をベースに展開する経営論。現在ではドラッカーの「知識社会」(knowledge society)とならんで重要な概念となっている。
野中教授の主著となるのが、一橋大学で同僚だった竹内弘高教授との共著『知識創造企業』(東洋経済新報社、1996)。原題は The Knowledge-Creating Company: How Japanese Companies Create the Dynamics of Innovation, Oxford Univ. Press, 1995 この本はオリジナルの英語版で読んだ。いまからもう30年前の出版なのだなあ。
絶頂期の日本企業の事例研究をベースに生まれた「日本発の経営コンセプト」である。イノベーション研究の古典的名著である。
大学卒業後にはじめて読んだ野中教授の経営専門書が『経営進化論 ー 情報創造のマネジメント』(日本経済新聞社、1985)であった。講演会ではじめてナマの話を聴いたのも、それから2年後のことだった。
「経営学ってそんなに面白い学問だったのか、それなら大学で専攻すればよかった」と思ったことを思い出した。野中以前と以後で、経営学はすっかり変容したのである。
『経営進化論』の段階では、まだ「知識」は全面に打ち出されていなかったが、1987年の講演会のメモがノートして残っていたので見てみると、「暗黙知」の話はすでに示されていた。
日本を代表する世界的経営学者がついに逝った。あらてめてご冥福を祈ります。合掌
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