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2010年5月3日月曜日

書評『皇室外交とアジア』(佐藤孝一、平凡社新書、2007)ー 戦後アジアとの関係において果たした「皇室外交」の役割の大きさ




戦後アジアとの関係において果たした「皇室外交」の役割の大きさ

 この本は、「皇室外交」の主要な相手国である、王室をもつ国々が存在するヨーロッパ、アジア、中近東のうち、とくにアジアに焦点をあてて「皇室外交」を、訪問国におけるメディア分析をつうじて検証したものである。

 日本外交における「ソフトパワー」としての戦後天皇制、日本政府は「皇室外交」という名称は正式には使用せず、「外国交際」という表現を使っているとしても、本質において外交行為の一環であることは否定できない。

 そしてまた国と国との外交行為の一環である以上、天皇陛下をはじめ皇族を送り出す側の日本国と、訪問先の国々とのあいだで、思惑の違いやパーセプションには温度差があるのも当然である。これは訪問先の国によっても異なるし、また同じ訪問国のなかでもカウンターパートであるホストとその国民のあいだに温度差が存在する。

 アジアに限ってみても、大きく分けて東アジア(中国・韓国・香港・台湾)と東南アジア(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン)では大きく異なるし、またそれそれの地域のなかでも、「歴史問題」という第二次大戦中の日本とのかかわりの度合い、王室やスルタン制度といった「文化構造」の有無朝貢国であったかどうかという「文化的価値観」、そして戦後めざましく再興した先進工業国日本への「期待度」といったファクターによって、温度差が異なるのも当然だろう。また、戦争経験世代の華人とそれ以外の温度差はきわめて大きい。

 公式、非公式を問わず、王室をもつタイ王国との関係が深く親密となっているのは当然として、意外なことにインドネシアのスカルノ大統領とスハルト大統領が皇室との接点を強く求めていたという記述であった。

 たしかに、戦後アジアとの関係において、昭和天皇が帯びていた「軍国主義イメージ」を払拭し、アジアの大国として「平和国家イメージ」をつくりあげるうえで、今上天皇による皇太子時代からの「皇室外交」が果たした役割がきわめて大きいことが、本書において確認された。

 しかしながら、2007年の出版でありながら、使用しているデータが1955年から1996年までのものとけっして新しくないこと、最近の傾向についての言及がきわめて少ないのが不満として残る。

 また、アジアにおいても、ラオスやネパールなどのように、革命や政変によって王室が廃止された国々があるように、世界の王制そのものが縮小するなか、「皇室外交」の意味と役割がいかなるものになるかの考察がほしかった。

 アジアにおける中国のプレゼンスが日増しに強大化する現在、日本はいかなる「ソフトパワー」でもって、とくに東南アジアでのプレゼンスと信頼感を勝ち得ていくべきなのか、「皇室外交」もそのなかに含みながらも、より大きな視点と枠組みがが求められるのではないだろうか。

 関係者には、より突っ込んだ考察と戦略が求められることであろう。


<初出情報>

■bk1書評「戦後アジアとの関係において果たした「皇室外交」の役割の大きさ」投稿掲載(2010年4月19日)
■amzon書評「戦後アジアとの関係において果たした「皇室外交」の役割の大きさ」投稿掲載(2010年4月19日)






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書評 『クーデターとタイ政治-日本大使の1035日-』(小林秀明、ゆまに書房、2010)-クーデター前後の目まぐるしく動いたタイ現代政治の一側面を描いた日本大使のメモワール
・・小林元大使は市内の日本食レストランでは味わえない日本料理をいかがですかという誘い文句で多数の政治家を日本大使館公邸に招待することに成功した。「プーミポン国王即位60周年」と天皇皇后両陛下の訪タイをめぐる皇室外交の舞台裏がわかる貴重なメモワールである

本の紹介 『鶏と人-民族生物学の視点から-』(秋篠宮文仁編著、小学館、2000)-ニワトリはいつ、どこで家禽(かきん=家畜化された鳥類)になったのか?
・・タイ王室との関係を軸に東南アジアをふくめたアジアを中心にカバーしておられる秋篠宮

(2014年2月1日 この項目は新規導入)


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2010年4月26日月曜日

書評 『クーデターとタイ政治-日本大使の1035日-』(小林秀明、ゆまに書房、2010)-クーデター前後の目まぐるしく動いたタイ現代政治の一側面を描いた日本大使のメモワール




クーデター前後の目まぐるしく動いたタイ現代政治の一側面を描いた日本大使のメモワール

 2005年11月から2008年9月までの2年10ヶ月、正確には1035日にわたってタイ王国に特命全権大使として赴任していた著者によるメモワールである。

 大使赴任中のタイは、もはやあるまいと思われていたクーデターが発生、その後の軍政を経て、国民投票による新憲法の承認、民政移管と目まぐるしく動いている激動の現代政治の渦中にあった。

 しかし、本書にはクーデターそのものについての記述はあまりない。

 クーデターそのものよりも、総選挙の無効にともない暫定首相となったタクシン政権の末期から、クーデターによるタクシン追放、クーデターを主導した陸軍が擁立したスラユット首相の政府の承認をめぐる中国との先陣争い、日タイ経済連携協定(=日タイFTA)の署名問題をめぐる舞台裏、そして民政移管、といっためまぐるしく動いていたタイの政治状況と日本の関与について、日本外交の最前線の立場からの回想がつづられている。

 大使の重要な公務には、駐在国の政治家たちを公邸に招待し、昼食や夕食で接遇して歓談しながら、彼らの人となりをじっくり観察するというものがある。
 
 正式に招待し、実際に食事をともにしたのは、ワチラロンコーン皇太子夫妻やシリントーン王女をはじめとする王族から、めまぐるしく交代した4人の首相(タクシン、スラユット、サマック、ソムチャイ)、そして1991年の民主化闘争をリードし2008年11月のバンコク空港閉鎖事件に大きな影響を与えたチャムロン、現在に至るまで隠然たる存在感を示している枢密院議長プレームなど、名前は耳にすることはあっても、一般人が直接会って会話する機会などまずない人たちばかりである。

 直接タイの政治を動かしてきたこうした人々の素顔が、会話の内容の一部や声のトーンまで含めて紹介されているのだが、アルコールが入ってリラックスした席での、海千山千のタイ人政治家たちの肉声が実にナマナマしい。息づかいまで聞こえてくるようだ

 ときには歓談後グッタリしてしまうような経験も数多くしたと著者は率直に本書のなかで漏らしており、そういったことを記述する著者の態度には大いに好感がもてる。機密情報にかかわる記述はいっさいないとはいえ、記録としてはたいへん貴重である。

 私にはとくに、タイの王室にかんする記述が興味深く思われた。クーデター発生前に挙行された最重要イベントである「プーミポン国王即位60周年」と天皇皇后両陛下の訪タイをめぐる皇室外交の舞台裏、大使信任状奉呈式と離任のためホアヒンの離宮で謁見したプーミポン国王の素顔、公邸に正式招待して親しく歓談したワチラロンコーン皇太子の素顔は、非常に興味深く読むことができた。

 なぜなら、タイ国内では王室関連の話は公開情報が限定されているため、とかくタイ人の語る「都市伝説」まがいの尾ひれのついたウワサ話が多く流通し、それがまた在住日本人のあいだでさらに増幅されて、まことしやかに語られていることが少なからずあるからだ。当事者でない以上、真相がどこにあるかはまったくわからないのだが、本書を読むとウワサ話だけで判断することがいかに危険なことであるかを思い知らされるのである。

 ちょうど著者の赴任期間とほぼ重なる時期にバンコクに在住していた私には、たいへん興味深い内容の本であった。

 タイに関係する人だけでなく、タイには観光以上の関心を抱いている人にはおすすめの一冊である。


<初出情報>

■bk1書評「クーデター前後の目まぐるしく動いたタイ現代政治の一側面を描いた日本大使のメモワール」投稿掲載(2010年4月19日)
■amzon書評「クーデター前後の目まぐるしく動いたタイ現代政治の一側面を描いた日本大使のメモワール」投稿掲載(2010年4月19日)


<書評への付記>

 今年3月からタクシン派である「赤シャツ組」がバンコク市内の商業地域やビジネス街を占拠して「場外乱闘」をつづけているが、そのタクシン元首相がクーデターという超法規的手段によって追放されたのが、2006年9月に発生した、もはやあるまいと誰もが思っていたクーデターであった。

 1991年の「流血の5月」の引き金となったクーデター以来15年、タイ王国には民主主義が定着したものだと思い込んでいたのだが、それは大きく裏切られる結果となった。

 タイのクーデターはかつて年中行事のように発生しており、1991年当時の駐タイ日本大使で現在は政治評論家の岡崎久彦氏を中心にまとめられた『クーデターの政治学-政治の天才の国タイ-』(岡崎久彦/横田順子/藤井昭彦、中公新書、1993)で主張されているように、そのほとんどが無血クーデターであり、いわば超法規的な手段による、政治のシャッフル手法として多用されてきた。クーデターが成就すると同時に憲法が停止される。フジモリ政権下のペルーや、エリツィンのロシアでも使用された手法であるが、タイの場合は通常は無血クーデターである。

 国民もまたクーデターに違和感をもたず、非常事態には deus ex machina としての国王による仲介に依存するという「甘えの構造」がタイ国民のあいだに醸成してきたことは否定できない。

 岡崎氏はこれをさして「政治の天才」というのだが、国内的にはいいとしても、現在のようなグローバル経済のもとでは、レピュテーション・マネジメントの観点からいって、クーデターは望ましいものとはいえない。民政移管されるまでのあいだ、欧米のマスコミによってタイはミャンマーと同列に扱われれていた。

 2006年のクーデター後は本書にも書かれているが、軍政のもとスラユット退役陸軍大将による暫定政権が新憲法の国民投票を実行、民政移管までの期間を無事に乗り切った。しかし、軍政期間中は経済運営がうまくいかず、タクシン時代と比べるとビジネスにとって好意的な環境であったとはいいがたい。

 2008年11月には「黄シャツ組」によるバンコク国際空港占拠という非常事態を招く結果となった。小林大使はこの前に離任しているので、空港占拠事件については言及が少ないので補っておく。

 この時もクーデター待望論が国民のあいだからわき上がってきたが、陸軍司令官は軍を動かさず、憲法裁判所による違憲判決によってタクシン派のソムチャイ政権を退陣させるという、「司法によるクーデター」という新手の手法が開発された。

 陸軍司令官のアヌポン陸軍大将はまさに知将というべきで、タクシンとは士官学校で同期生でありながら、きわめて政治的バランス感覚のすぐれた軍人である。

 ただしクーデターが今後まったく起こらないとは断言できない。ラストリゾート(最後の手段)としては、これしかないということになるかもしれない。

 現在も「赤シャツ組」がバンコク市内の占拠をやめておらず、市内各地で爆弾テロも頻発している。しかし、2010年度の第一四半期(Q1)の製造業の業況も、商業銀行の業績も好調である。

 日本のマスコミは勉強不足なため、現地取材による情報がそのままダイレクトに日本で報道されるわけではない。どうしても絵になりやすい情報だけが日本国内で配信されえることになる。

 自分なりの視点で状況分析を行う必要があるのだが、そのためにも、日々の情報に流されることなく(・・もちろん、時々刻々と変化する情報を追うことも必要)、背景についてよく知っておくことが必要である。


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