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2010年8月23日月曜日

書評 『中古家電からニッポンが見える Vietnam…China…Afganistan…Nigeria…Bolivia…』(小林 茂、亜紀書房、2010)




中古家電からみえるのは発展途上国の現状だけでなく、日本の製造業の未来でもある

 日本製中古家電を海外に売る商売を長年続けてきた著者が、日本人の一般常識とはまったく異なる現地のホンネを紹介している本。著者は現在23カ国で海外展開しているという。

 なぜ発展途上国ではメイド・イン・ジャパンの家電製品が売れるのか。

 限られた予算のなかから、いいモノを求めて、真剣に選択しているのが、発展途上国の住人たちである。 
 けっして日本ブランドのイメージで買っているわけではないのだ。また同じ企業ブランドでも製品によって評価がかなり異なるらしい。きわめて厳しい目で製品を見ているのである。

 製品を選ぶ基準は、1.長持ち 2.修理しやすい 3.グレードが高い の3点だそうだ。この3点を満たしているのが現在にいたるまで日本製品である、ということが事の真相のようだ。

 発展途上国では、自国の現地通貨の信用が低いので、モノに替えて所有しながら使用もするという生活防衛の側面もある。インフレ対策のためにもつのはゴールド(金)だけではない。
 いざとなったら売って換金することも想定しているので、現地の中古市場での転売価格の低い安物では困るわけだ。品質が高くて資産価値があるものを、なけなしのカネを使って買っているわけだ。
 この指摘には目が開かれた思いをした。

 そして面白いのが、たとえ暑い地域に集中している発展途上国といえども、エアコンよりもまず娯楽機器。エアコンよりもまず先に、ラジカセやテレビ、ステレオなどの娯楽用の家電を欲しがるということだ。
 私も発展途上国はいろいろ歩き回ったが、たしかに著者が商売をつうじて得た結論から振り返ってみれば、まさにそのとおりだと納得させられる。
 著者もいうように、この日本でもエアコンが普及したのは最後の最後だったのだ。かつて日本で「三種の神器」と呼ばれた家電製品は、テレビを筆頭に洗濯機、冷蔵庫であった。

 人間の本性というものを考えさせらる。

 著者は、「海外の中古市場で支持を得るのは、高くても品質がいいモノです。日本製品は、そういう開発途上国の人間からすれば相対的に高いモノが多いのですが、それでも長く支持されてきました」といっている。
 新品で日本製品を欲しがる中国の富裕層も、中古で日本製品を欲しがる発展途上国の中間層も、いいモノを選ぶ「目利き」であることにおいては本質的に同じである。

 新興市場あいてに商売しなければ活路が見いだせない日本のメーカーにとって、大いに耳を傾けるコトバではないだろうか。

 低コスト製造を前提にした安売り販売では最終的に疲弊してしまうだけであり、現地市場で「高いけど品質がいいのでぜひ欲しい」と思わせる製品を製造し、販売することが、新品も中古と同様に重要であることを示唆していると受け取るべきだろう。

 中古家電からみえるのは、新興国や発展途上国の現状だけでなく、日本企業の未来でもある。

 一読の価値があるといえよう。



<初出情報>

■bk1書評「中古家電からみえるのは発展途上国の現状だけでなく、日本の製造業の未来でもある」投稿掲載(2010年8月20日)

*再録にあたって、字句の一部を修正と加筆を行った。




目 次

1章 中古家電が飛ぶように売れる
 1. 貧乏だから日本製を買う-途上国で選ばれる3つの条件
 2. 3つの条件で瞬く間に市場ができ上がる
2章 この商売の仕組み、お教えします
 1. 家電を集めるルート
 2. 家電を海外で売る方法)
3章 むかしベトナム、いまナイジェリア
 1. まず娯楽品から売れる
 2. 修理はエンドユーザーの近くでないと成立しない
4章 だれもが“いいモノ”を求めている
 1. 途上国のひとは頑張って、“上”のモノを買おうとする
 2. ニッポンは“いいモノ”づくりを目指せ


著者プロフィール

小林茂(こばやし・しげる)

1954年、生まれ。1972年、川越市立商業高校卒業後、26歳まで京王プラザホテルを初め、数多くの職業を経験する。1980年、金属屑商(小林商店)を創立、1991年に有限会社浜屋設立、1999年に株式会社に変更する。中古家電の輸出企業の草分け的な存在である。全国に13支店を設け、売上高100億円が目の前である。海外展開する国は23カ国以上(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)