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2012年2月3日金曜日

「GRIPS・JBIC Joint Forum"After Fire and Flood: Thailand's Prospects"」と題したタイの政治経済にかんする公開セミナーに参加してきた(2012年2月2日)


昨日(2012年2月2日)、政策研究大学院大学(GRIPS)で開催された「GRIPS・JBIC Joint Forum"After Fire and Flood: Thailand's Prospects"」と題した公開セミナーに参加してきた。JBIC は日本の国際協力銀行のことである。

セミナーのタイトルは "After Fire and Flood" と、F ではじまる英単語で頭韻を踏んでいるが、それぞれ、2010年のバンコク市街戦と、2011年の大洪水のことを指している。テーマは、現在のタイの政治経済についてである。講演者は、英国人のクリス・ベーカー博士とタイ人のパースック博士。タイ研究の世界では知らない人のいない著名人である。

ふたりの共著『タイ国-近現代の経済と政治-』(北原淳/野崎明/日タイセミナー 訳、刀水書房、2006) という大著が日本語にも翻訳されているほか、英文で数多くの著書が出版されている。

また、パースック博士の著書のうち、『マッサージ・ガール-タイの経済開発と社会変化-』(パスク・ポンパイチット、田中紀子訳、同文舘出版、1990)『タイの経済発展とインフォーマル・セクター (ASEAN等現地研究シリーズ)』(パスク・ポンパイチット/糸賀滋=編集、アジア経済研究所、1997)が日本語訳されている。

一方、英国人のクリス・ベーカー氏は、タイで何か問題が起きる度にTVのコメンテーターとして意見を述べているので、英語で情報収集をしている関係者は、顔を見たことはあるはずだろう。パースック博士は今回はじめて見たが、優しい声できれいな英語をしゃべる方であった。

公開セミナーの概要についてはJBICの公式サイトに掲載されているので、そのまま引用させていただこう。


国際協力銀行(JBIC)は、国立大学法人政策研究大学院大学の協力を得て、2012年2月2日(木曜日)に、「GRIPS・JBIC Joint Forum"After Fire and Flood: Thailand's Prospects"」と題した公開セミナーを開催いたします。
 タイは、日本人にとって最も親しみのある国のひとつです。また、多くの日本企業にとって有望な進出先であり、自動車、電機・電子、精密機械、食品加工などの分野で長年にわたり直接投資が行われています。
 一方、2011年後半には、タイを襲った洪水が甚大な被害をもたらしました。このため、自然災害などに対して堅固な国土の整備・開発の重要性への認識が高まっており、とりわけ都市や広域のインフラ整備とそのためのファイナンスが新たな課題となっています。
 こうした経済面での新たな課題に加え、2011年8月のインラック政権発足後も、タイ国内ではタクシン派と反タクシン派との対立を背景とする政治問題が存在しています。
このような背景から、タイの政治と経済の将来展望を得る試みの一環として、当該分野の研究業績により国際的にも極めて高い評価を得ている研究者をお招きし、公開セミナーを開催致します。本セミナーに、是非とも多くの方々にご参加頂きたく、謹んでご案内申し上げます。


1.日時: 2012年2月2日(木曜日) 15時00分~17時00分
2.場所: 政策研究大学院大学 1階 想海樓ホール
3.主催: 株式会社日本政策金融公庫 国際協力銀行(JBIC)
4.協力: 国立大学法人政策研究大学院大学(GRIPS)
5.参加費: 無料
6.使用言語: 英語(英日同時通訳あり)
7.プログラム(予定) 15:00-15:10
ご挨拶  西沢利郎 JBIC 外国審査部長
歓迎の辞  原 洋之介 GRIPS 特別教授
15:10-15:50  共同講演
パースック・ポンパイチット(チュラーロンコン大学教授)
クリス・ベイカー(京都大学東南アジア研究所 外国人研究員)
15:50-16:20  パネルディスカッション
(モデレーター 原 特別教授)
16:20-16:55  質疑応答
16:55-17:00  総括

クリス・ベーカー博士からは政治面、パースック博士からは経済面にかんするプレゼンテーションが行われたが、ビジネスマンの立場からは当然のことながら後者の経済面の話に関心がある。

だが、現在のタイが「middle income gap」、いわゆる「中進国のワナ」にはまって、プラトー(停滞)状態にある以上、政治面でのブレークスルーがないと、経済発展にも支障が生じていることは言うまでもない。政治と経済の両面からポリティカル・エコノミーとして見なければならないのはそのためだ。

フォーラムの内容をすべて紹介することはしないが、わたしにとって印象的だったのは、タイは1997年のIMFショック以降、インフラ投資が十分に行われてこなかったため、2011年の大洪水が、ある意味では「目覚ましコール」になったというパースック博士の指摘である。

実際問題、財政面の限界があるので、どこまで洪水対策に予算が割けるのかわからないし、抜本的な対策を行うためには財政を強化しなくてはならない。そのためには増税も視野に入ってくる。

勅令によって現在7%に据え置かれているV.A.T.(=付加価値税)を、本来の10%に戻すことは、おそらく行われるだろう。現在のタイの首相は、タクシン元首相の妹であるインラックであるが、基本的には経済政策はタクシノミックス(=タクシン経済)を継承しており、経済的不均衡解消策の一環として最低賃金引き上げ策を昨年2011年に導入した。これは同時に、国内需要を拡大策にもなっているので、この状態なら付加価値税を引き上げることは可能だろう。

付加価値税以外、とくに富裕層をターゲットにした資産税やキャピタルゲイン課税を実施するのは、政治的にはきわめて困難であろう。そもそも、相続税も存在しないのがタイである。国会議員の多くが富裕層であることから、富裕層をターゲットにした課税強化はきわめて困難だと考えるのが自然である。

このようなことがわたしの関心であるが、会場から「Xデイ後のタイ」について質問があった。不敬罪(lese majeste)が存在するタイ国内ではタブーな質問であるが、日本国内でかつ学術目的のセミナーであるから、大きな問題はないと思われる。

クリス・ベーカー博士は、「安定要因としての国王の役割は過度に評価されすぎている」として、大きな混乱が起こることはないだろうという回答をされていた。わたしもこの見解には賛成である。おそらく今後は、日本の天皇のように儀礼的な存在となっていくだろうというのがベーカー博士の見解であった。

わたしは、かつてこの二人が共著として書いたタクシンにかんする研究書を通読して、大いに得るものがあった。「Thaksin(Second Edition), Silkworm Books, 2010」 という本で、タイの英文出版社から刊行されている。

わたしが読んだのは2004年の初版だが、この本は十分な発行部数が期待できないと思われるので、日本語訳されることは残念ながらなさそうだ。だが、タクシンの登場を境にタイの政治経済が劇的に変化したことを考えれば、タクシンについてはメディア報道以上の突っ込んだ分析を背景知識として知っておくことは必須である。機会があればこの本もぜひお読みいただきたいと思う。

政策研究大学院大学は今回はじめてなかにはいったが、このようなセミナーは、ぜひ積極的に開催してほしいものである。


(*両博士の発言内容は、英語での発言をわたしの解釈において記したものであり、文責はわたしにあります。同時通訳者がどう日本語訳したかは知りません)









<関連サイト>

GRIPS・JBIC Joint Forum"After Fire and Flood: Thailand's Prospects"(JBIC公式サイト 日本語)

GRIPS・JBIC Joint Forum"After Fire and Flood: Thailand's Prospects"(GRIPS公式サイト 英語)


<講演者プロフィール>

パースック・ポンパイチット (1946~) (Wikipedia 日本語版 略歴)
Chris Baker (writer) (1948~) (Wikipedia 英語版 略歴)


<ブログ内関連記事>

書評 『タイ-中進国の模索-』(末廣 昭、岩波新書、2009)
・・タクシン政権誕生以後の現在のタイをしるうえでの必読書

書評 『消費するアジア-新興国市場の可能性と不安-』(大泉啓一郎、中公新書、2011)-「新興国」を消費市場としてみる際には、国全体ではなく「メガ都市」と「メガリージョン」単位で見よ!
・・経済的不均衡の問題について考えるための好著

『Sufficiency Economy: A New Philosophy in the Global World』(足を知る経済)は資本主義のオルタナティブか?-資本主義のオルタナティブ (2)・・プミポン国王が説いておられる「足るを知る経済」哲学

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!

「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク(2010年5月27日)

「バンコク騒乱」について-アジアビジネスにおける「クライシス・マネジメント」(危機管理)の重要性

「バンコク騒乱」から1周年(2011年5月19日)-書評 『イサーン-目撃したバンコク解放区-』(三留理男、毎日新聞社、2010) 

来日中のタクシン元首相の講演会(2011年8月23日)に参加してきた

バンコクへの渡航は自粛を!-タイの大洪水と今後の製造業立地の方向性について(2011年10月26日)

「緊急企画 日タイ洪水復興セミナー」(JETRO主催 東京)が開催されます(2011年12月9日 入場無料)






(2012年7月3日発売の拙著です)






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