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2012年12月8日土曜日

書評『「ビジネス書」と日本人』(川上恒雄、PHP研究所、2012)ー 高度成長期の日本で一大ジャンルに成長した「ビジネス書」とは何か?


「ビジネス書」というジャンルがある。いつからできたジャンルかわからないが、出版不況といわれる現在において、数少ない売れ筋の出版ジャンルであることは間違いない。

「ビジネス書」とはなにか? しかしあまり考えたことがない人が大半だろう。じつはわたしも自分が「ビジネス書」を出版するまでは、とくに考えたことはなかった。

「ビジネス書」というコトバじたいいつ頃から日本ではつかわれるようになったのだろうか? 実用書とイコールなのか? 実務書や実務専門書とは違うのか?

そんなメタレベルで「ビジネス書」とはなにか、戦後日本においていかなる意味をもってきたかについて考えてみたい人にはぜひすすめたいのが、本書 『「ビジネス書と日本人』(川上恒雄、PHP研究所、2012)である。

答えを先にいってしまえば、ビジネス書とは、高度成長期の日本で一大ジャンルに成長した書籍ジャンルのことだ。

明治維新以後、福澤諭吉の『学問のすすめ』という啓蒙書によって、実業や成功が世の中の流行となったのであるが、その頃はもちろん「ビジネス書」というカテゴリーは世の中には存在しなかった。

戦後の高度成長時代の大変化といえば、起業する人間よりもサラリーマンが大量に発生したことにあるといっていいだろう。敗戦後の混乱期が過ぎると、経済近代化の旗印のもと生産性向上が推進され、ホワイトカラーという事務職のサラリーマンが大量に必要とされるようになった。

そのサラリーマン向けの実用書と教養書を兼ねたものがビジネス書だったわけである。

本書『「ビジネス書」と日本人』(川上恒雄、PHP研究所、2012)で取り上げられているのは、以下のとりである。

『経営学入門』(坂本藤良、光文社カッパブックス、1958)
●『英語に強くなる本-教室では学べない秘法の公開-』(岩田一男、光文社カッパブックス、1961)
●『頭のよくなる本-大脳生理学的管理法』(林髞、光文社カッパブックス、1960)
●『学歴無用論』(文藝春秋、1966)
●『ユダヤの商法-世界経済を動かす-』(藤田田、ベストセラーズ、1972)
●『物の見方・考え方』(松下幸之助、実業之日本社、1963)
●『崩れゆく日本をどう救うか』(松下幸之助、PHP研究所、1974)
●『断絶の時代-来るべき知識社会の構想-』(ドラッカー、ダイヤモンド社、1969)
●『知的生産の技術』(梅棹忠夫、岩波新書、1969)。

松下幸之助の著書が2冊もあるのはPHP研究所に勤務して、そこから出版されているからかと突っ込みたくもなるが、それはさておき、『知的生産の技術』も考えてみればビジネス書なのだというのは考えてみればそのとおりだなと納得もいく。

つまり、『知的生産の技術』は岩波新書とはいえ、読者対象が知識社会に生きるホワイトカラーのサラリーマンで、内容は実用的で個人にとっての自己啓発書であるという点は、最初から「商品」として売れることを前提に設計し製作したカッパブックスやワニブックスと共通しているのであった。

本書で扱われたのは高度成長時代だけなので、「バブル時代」、「失われた20年」の時代のビジネス書について触れられていないのは残念だが、ビジネス書というジャンルが誕生し、一大勢力になった「高度成長時代」について振り返るのも面白いかもしれない。

今後もビジネス書の勢いがつづくのかどうかはわからないが、好奇心がつよく勉強熱心という日本人の性格に変化がないかぎり、このジャンルが消えてなくなることはないだろう。

ビジネス書を読むだけでなく、ビジネス書とはなんであるのかと、突き放して考えてみることも、たまには必要ではないだろうか。




目 次 

序論 日本人にとっての「ビジネス書」という存在

Ⅰ部
第1章 かつて「経営学ブーム」を巻き起こした本の裏側
-戦後初の「ビジネス書」ベストセラーとなった坂本藤良著 『経営学入門-現代企業はどんな技能を必要とするか-』(光文社カッパブックス、1958)をてがかりとして
第2章 「英語」と「日本のサラリーマン」のあいだ
岩田一男著 『英語に強くなる本-教室では学べない秘法の公開-』(光文社カッパブックス、1961)というタテ組の英語本がなぜ必要とされたのか
第3章 かくして「脳」と「心」のブームが始まった
-直木賞作家が生んだベストセラー・林髞著 『頭のよくなる本-大脳生理学的管理法』(光文社カッパブックス、1960)とサラリーマンが能力開発に躍起になった時代

Ⅱ部
第4章 根づかなかった「学歴無用」
-「世界のソニー」を創業した盛田昭夫著 『学歴無用論』(文藝春秋、1966)が日本社会に投げかけたことから
第5章 ハンバーガーで大儲けした「銀座のユダヤ人」
-"怪人"といわれた起業家・藤田田著 『ユダヤの商法-世界経済を動かす-』(ベストセラーズ、1972)がなぜベストセラーになったのか
第6章 「億万長者」から国民的経営者へ
-新しい「国民のバイブル」となった松下幸之助著 『物の見方・考え方』(実業之日本社、1963)とその時代背景
第7章 「松下幸之助」というベストセラー著者による国家への提言
松下幸之助著 『崩れゆく日本をどう救うか』(PHP研究所、1974)が生まれた当時の日本社会の実状

Ⅲ部
第8章 日本に広めたのは「マネジメント」だけではなかった
ドラッカー著 『断絶の時代-来るべき知識社会の構想-』(ダイヤモンド社、1969)によって「断絶」が日本の流行語になった時代があった
第9章 「勉強法」が商品化された時代
-京都大学のスター教授・梅棹忠夫著 『知的生産の技術』(梅棹忠夫、岩波新書、1969)にサラリーマンはなにを学んだか


著者プロフィール 

川上恒雄(かわかみ・つねお)
1966年、東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本経済新聞社で新聞記者および出版編集者として勤務。その後、渡英しエセックス大学で社会学、ランカスター大学で宗教学を専攻。宗教学博士(Ph.D)、社会学修士(M.A.)。南山宗教文化研究所研究員、京都大学経営管理大学院京セラ経営哲学寄附講座助教を経て、2008年よりPHP研究所主任研究員(経営理念研究本部松下理念研究部)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




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(2015年11月3日 情報追加)


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