(wikipedia掲載の画像からパク・クネ氏と父親のパク・チョンヒ氏)
報道によれば、「1987年の大統領直接選挙制復活以降、最も多い票を獲得した初の“過半大統領”になった。」ということだ。投票率の高さは、日本の総選挙とは比較にならないくらい高かった。
若い世代よりも、非業の死をとげた父親のパク・チョンヒ大統領を知る世代の支持が大きかったようだ。そして経済回復が有権者の一番の願いであろう。韓国は日本とは比較にならない格差社会であり、中間層の崩壊、移民としての流出が続いている。
いまでこそ韓国人の人名はハングル読みするが、かつては日本語読みでボク・セイキ大統領と言っていたものだ。朴正煕大統領が暗殺された翌日の新聞見出しの大きさが、わたしの記憶に残っている。それは1979年、高校時代のことであった。同じ年にはイラン革命とソ連軍のアフガン侵攻も始まった。
日本では新聞のぶち抜き大見出しは、スポーツ新聞を除けば皇室関係と朝鮮半島関係が中心だ。それだけ朝鮮半島情勢は日本の安全保障に直結しているのである。
朴正煕大統領暗殺以後の韓国史はまさに激動に飲み込まれた歴史であったことを思い出す。
光州事件、そして戒厳司令官のゼン・トカン(=チョン・ドファン)が大統領就任、ノ・テウ大統領と軍人大統領がつづき、1988年ソウル・オリンピックを成功させ、その後は民間人大統領の時代を経て現在に至るわけだ。
この間に故パク・チョンヒ大統領の評価も大幅に変わった。かつては独裁者としてネガティブなイメージがつきまとっていたが、「開発独裁」によって韓国の高度成長である「漢江(はんがん)の奇跡」を実現させた大統領としての評価が定着した。
その意味では、韓国史は激動の東アジア現代史そのものである。地政学的な条件からいって「半島国家」は今後も激動の歴史を免れないだろう。中国という巨大な「大陸国家」と日本という「海洋国家」にはさまれた「半島国家」の宿命。
アジアでは政治家の娘が政治家として国民の支持を勝ち取ったケースは多い。インドもパキスタンも、スリランカもバングラデシュもそうだ。タイの場合は娘ではなく妹だが、政治家一族から女性のトップ政治家がでてくるのは、大家族制という社会的環境が影響しているものと考えられる。
ここにあげた国はいずれも安定性を欠いているが韓国もまたその例外ではない。しかも、かつて韓国だけでなく台湾も戒厳令が実施されていた「怖い国」だったことを、どれだけの人が覚えているのだろうか。平和で安心に暮らせるということはじつにすばらしいことは韓国人じしんがつよく感じていることだろう。
日本でもキムチや焼き肉以外の韓国料理があたりまえのように食べることができるようになった。この変化もじつに大きい。ボク・セイキ時代にはビビンバ(=ピピンバプ)なんてほとんどの日本人は食べたことがなかった。韓国料理は、いまでは日本の家庭料理のメニューにもなっている。
パク・クネ氏が大統領になったからといって日韓関係が劇的に改善するとは思えないが、彼女の父親の時代を「同時代」に体験しているわたしにとっては、なかなか感慨深いものがある。
まずは初の女性大統領誕生を祝福したい。
PS 最初から期待していなかったとはいえ、パク・クネの「反日」ぶりにははたはた呆れてしまう。ベストセラー『悪韓論』の著者・室谷克美氏ならずとも、『呆韓論』をクチにしたくなるのは、日本人なら自然な感情であろう。 (2014年1月6日 記す)
PS2 韓国国会で大統領弾劾動議が大差で可決(2016年12月9日)
清廉潔白を売りにしてきたパク・クネ大統領だが、この人もまた韓国社会の宿痾(しゅくあ)であるネポティズムから逃れることはできなかった。
血縁関係のある身内ではないが、40年来の実業家「親友」女性へのネポティズム類似の優遇行為が韓国社会の激しい怒りを買って、ここ数週間、すでに冬の寒さのなか首都ソウルを中心に韓国全土で大統領辞任を求めるデモがうねりとなっていたのだ。
ついに2016年12月9日、野党が提出した弾劾動議が与党議員も含めて8割を占めるという大差で可決したのである。この結果、大統領は職務停止となり、憲法裁判所の判断がでるまで首相が職務代行を行うことになる。6ヶ月以内に判断が示されるということだが、どうなることだろうか?
それにしてもお粗末としかいいようがない。政治制度そのものの抜本的変革を行わなければ、次の大統領もまたネポティズムで糺弾されることとなるのは間違いない。
だが、政治制度の抜本的変革は平時では行いにくい。とすれば、革命かクーデターの可能性もゼロとはいえまい。
(2016年12月10日 記す)
PS3 ついに最高裁が大統領の罷免を決定
本日(2017年3月10日)、ついに韓国の最高裁がパク・クネ大統領の罷免を決定した。判事8人が全員が賛成したとんことだ。不名誉な大統領、先の見えない韓国。5月には大統領選が実施されるとの見方があるが、優勢なのは左派の候補。韓国にとっても、隣国の日本にとってもさらなる混乱は必至である。そのキッカケをつくった「韓国初の女性大統領」の責任は大きい。 (2017年3月10日 記す)
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