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2013年8月11日日曜日

書評『マンガ 最終戦争論-石原莞爾と宮沢賢治-』 (江川達也、PHPコミックス、2012)ー 元数学教師のマンガ家が描く二人の日蓮主義者の東北人を主人公にした日本近代史


『マンガ 最終戦争論』 (江川達也、PHPコミックス、2012)は、中学校の元数学教師だったマンガ家が描く日本近代史であり、「賢治と莞爾」という、ともに在家の「日蓮主義者」だった二人の「東北人」を主人公に描いた人物マンダラである。

登場人物はあまりにも多くとても書き切れないが、1853年のペリー提督の来航から、1945年の日本の敗北までの米国との93年間を一貫した歴史観で描き切った「教育マンガ」でもある。学校は絶対に教えようとしないが、少なくとも一つの重要な歴史の見方ではある。

パックス・トクガワーナ(Pax Tokugawana)と表現されることもある江戸時代240年間の平和は、米国のペリー提督による恫喝によって破られることとなった。

以後、西洋が支配する弱肉強食のジャングルのような国際社会でサバイバルするため日本が選択した道はほんとうに正しかったのかどうか、このマンガを読みながら真剣に考えてみる必要があるだろう。

西洋文明と東洋文明。同じ文明といっても、王道を説く東洋文明と、覇道に突き進む西洋文明は、ほんらいまったくその性格を異にするものであった。

究極の二者選択に迫られた近代化前夜の日本は、結局は覇道の西洋文明と一体化することによってサバイバルする道を選択した。西洋人ではない模倣者は、しょせん二番煎じの「二流」に過ぎないという悲哀を、いやというほど味あわされながら・・・

とはいえ、石原莞爾がその思いを託した満洲国もまた「王道楽土」とは程遠い存在であった。現在の世界にはもはや王道を説く東洋道徳なるものはどこにも存在しない。悪しき覇道に染まり切った近代文明の申し子である点は、中国共産党も大韓民国も同じ穴のむじなである。

詩人で童話作家の宮沢賢治(1896~1933)と軍人で思想家の石原莞爾(1889~1949)という、ともにみずからの意思で在家の「日蓮主義者」田中智学の弟子として国柱会(こくちゅうかい)の会員となった二人の「東北人」は、近代日本を考えるうえでひじょうに面白い存在だ。賢治は岩手の花巻、莞爾は山形の庄内出身である。

『世界最終戦争論』(1940年)は石原莞爾の世界観と戦争思想のエッセンスである。核戦争という最終兵器による戦争によって戦争は終わり平和な世界が実現すると予言したものだが、"東洋文明の代表選手" として「最終勝利者」となるハズだった日本は、"西洋文明の代表選手" である米国によって完膚なきまでにたたきつぶされ、以後は骨抜きとなったまま現在に至る

石原莞爾は敗戦後の日本の使命を「王道」実現の担い手となるべしと定めたが、敗戦から4年後にはその後の日本を見ることなく病没する。国民作家として不動の地位を確立している宮沢賢治と違って、現在においても毀誉褒貶(きよほうへん)あいなかばするのが石原莞爾である。

太くて一貫した歴史観を縦軸に、詳細なディテールまで描きこんだこのマンガは日本人ならぜひ一読すべしと推薦したい。

もちろん、このマンガの主張する歴史観がすべてではない。だが、近代日本を理解するための糸口の一つはここにあるといってよい。近代日本における日蓮主義の評価はきわめてむずかしいものがあるとはいえ。



目 次

序章 世界最終戦論
第1章 ペルリ
第2章 泥棒大先生
第3章 東京裁判酒田法廷
第4章 遺言
第5章 八紘一宇
第6章 南洲翁
第7章 野蛮人
第8章 氷川清話
第9章 満洲事変
第10章 雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ
終章 王道


著者プロフィール  

江川 達也(えがわ たつや)
1961年、愛知県名古屋市千種区出身。日本の漫画家、テレビタレント。 愛知教育大学教育学部卒業。代表作に『まじかる☆タルるートくん』、『東京大学物語』など(wikipedia情報から編集)。


<関連サイト>

稀代の天才戦略家・石原莞爾(Unparalleled Strategist Kanji Ishiwara)の映像 
・・晩年の石原莞爾の庄内弁の肉声が聴ける貴重なフィルム。


<ブログ内関連記事>

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『新大東亜戦争肯定論』(富岡幸一郎、飛鳥新社、2006)-「太平洋戦争」ではない!「大東亜戦争」である! すべては、名を正すことから出発しなくてはならない

書評 『アメリカに問う大東亜戦争の責任』(長谷川 煕、朝日新書、2007)-「勝者」すら「歴史の裁き」から逃れることはできない

書評 『原爆を投下するまで日本を降伏させるな-トルーマンとバーンズの陰謀-』(鳥居民、草思社、2005 文庫版 2011)

書評 『ノモンハン戦争-モンゴルと満洲国-』(田中克彦、岩波新書、2009)-もうひとつの「ノモンハン」-ソ連崩壊後明らかになってきたモンゴル現代史の真相
・・『虹色のトロツキ-』というマンガもぜひ読むことを薦めたい

庄内平野と出羽三山への旅 (2) 酒田と鶴岡という二つの地方都市の個性
・・吹浦(ふくら)に石原莞爾の墓所をたずねた記録。庄内藩は西郷隆盛との関係がきわめて太い。そういった近代日本の側面にも触れておいた

書評 『オーラの素顔 美輪明宏のいきかた』(豊田正義、講談社、2008)-「芸能界」と「霊能界」、そして法華経
・・日本における熱烈な日蓮信者の系譜のなかの石原完爾

「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」 と 「And the skies are not cloudy all day」

いまこそ読まれるべき 『「敗者」の精神史』(山口昌男、岩波書店、1995)-文化人類学者・山口昌男氏の死を悼む

「如水会講演会 元一橋大学学長 「上原専禄先生の死生観」(若松英輔氏)」を聴いてきた(2013年7月11日)
・・上原専禄もまた戦前から戦後にかけて、在家の日蓮主義団体の国柱会会員であった


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