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2014年8月20日水曜日

『奇跡を起こす 見えないものを見る力』(木村秋則、扶桑社SPA!文庫、2013)から見えてくる、「見えないもの」を重視することの重要性


無農薬の「自然栽培」で生み出される「奇跡のリンゴ」の生産農家である木村秋則氏は、もともと理系でマシン(機械)好きで数字にも強い。その一方で、「見えないもの」を知覚する能力に恵まれている。

『奇跡を起こす見えないものを見る力』(木村秋則、扶桑社SPA!文庫、2013 単行本初版 2011)は、そんな不思議な木村氏の本の一冊だ。タイトルに惹かれて、『すべては宇宙の采配』(木村秋則、東邦出版、2013 単行本初版 2011とともに購入し、先日あわせて読んでみた。

いまから7年前の2006年、「NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」で「えいんご農家 木村秋則」として取り上げられて以来、『奇跡のリンゴ』がマスコミの話題となり、もっぱら信じてあきらめない努力と最終的な「成功」というハッピーエンド(?)の物語として消費されてきた印象があるが、木村氏自身は想像以上のキャラクターでもあるようだ。

自然相手の農業、しかも無農薬の「自然栽培」。すでに6年前に読んでいた 『奇跡のリンゴ-「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録-(石川拓治、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班=監修、2008)にも書かれているが、まさに農業における逆転の発想であり、イノベーションといってよい。「常識」に対する挑戦である。

重要なことは、キッカケじたいは「自然農法」にあったことはたしかだが、「自然栽培」であるということだ。有機農法でもあるシュュタイナー農法ではなく、人間が全体を見ながら部分的には手を入れるのが「自然栽培」データをとって行う科学的栽培の技術である。

個人的な名人芸という特殊例ではなく、再現性のある技術であることは、多くの人たちが取り組むなかで実証されている。大きな壁を何度も乗り越えなければならない、きわめて困難な手法ではあるが。

これは「里山の思想」にもつうじる、「手入れの思想」(養老孟司)だといっていいだろう。基本的にリンゴを自然状態の「あるがまま」にまかせるが、能動的な働きかけも行うことによって、リンゴ本来の姿を「引き出す」という「対話」の手法である。

ここで「対話」というコトバを使ったが、これは文字通りの「対話」である。栽培者がリンゴに話しかける。つまり単なる技術ではなく、気持ちがこもっていなければならないという姿勢でもある。リンゴとはじっさいにコトバで会話できるわけではないが、語りかけ耳をすませるという姿勢は、その根底に愛があるというべきなのだ。


そもそも、農薬を大量に使用し、機械化も推進するという木村氏であったが、奥さんが農薬に弱いという絶対的な「制約条件」のもとで取り組んだのが無農薬と、化学肥料をいっさい使わない自然農法であった。取り組みはじめてからなんと8年かかったのだが、その間の苦労は想像を絶している。

道なき道を切り開くパイオニアである。最後までやり抜くという強い信念と、絶対的な確信をもって取り組むパイオニア。ギリギリまで自分とその家族を追い詰めながらも、やはり万策尽きて挫折してしまいそうになったことも何度もあったという。神仏に祈るのもやめてしまったのだという。

首をくくるためにロープをもって山に登って遭遇した野生のドングリの木。そこで気がついた土の秘密。まさに雑念がなくなったとき、自分を無にしたとき、「直観」はいきなりやってくるという好例だろう。とことん取り組んでいたからこそ、はじめて「向こう側」から「直観」がいきなりやってきて、答えが「こちら側」にもともとあったことがわかったのである。これは科学的発見と同じである。

「見えないもの」を見る力は、少年時代からあったらしい。少年時代に龍を見たのだという。あの想像上の動物の龍である。

時間がスローモーションで動いているのを目撃した体験だが、時間が一様に流れているのではないということを示したと解釈できる。木村秋則氏が書くものによれば、歌舞伎役者の市川海老蔵や、俳優の杉良太郎といった人たちも、龍をみたことがあるのだという。同じような資質や傾向をもった人たちなのだろう。

このほかUFOや宇宙人(!)を見たり、臨死体験と幽体離脱体験などもでてくるが、いずれも本人自身が体験したものであり、その体験は本人にとってはリアル以外のなにものでもない主観的な認識あるが、体験そのものを否定することはできないだろう。もちろん、当の本人もみずから望んでというよりは、いきなり遭遇したようだが、本人にもある意味では「引き寄せる力」があるのだろう。

重要なことはそいった個々の現象よりも、「見えないもの」の重要性を語っている点だ。「こちら側」の「見える世界」はごくごく一部であり、「向こう側」の「見えない世界」のほうが圧倒的に大きいと考えるべきなのだ。

しかも、リンゴ栽培のような植物においては、地上に伸びた幹や枝葉よりも、地下に拡がる根っこのほうがはるかに大きい。自然農法で育てているリンゴの木は、地下の根っこは地上の幹の2倍以上あるという。根っこが拡がっているからこそ安定しており、台風の被害も最小限にとどめることができたのだという。地下に拡がる世界もまた、「見えない世界」である。

さきに「手入れの思想」と書いたが、これは木村氏自身の表現ではない。だが、全体をみて細部に注意を払うという自然栽培は、全体と部分についての考察も促すものだ。



「生かされて活かす」という発想もすばらしい。「生かされている」という認識が大事なことはいうまでもないが、自然に「あるがまま」だけではだめなのだ。こちら側からの能動的な働きかけも重要なのである。

任せることは大事だが、任せたら任せっぱなしの自由放任ではだめ。心配りをして、声かけもするというケアの姿勢が大事なのである。そして感謝の気持ちもまた大切だ。

ここで想起するのは、山本五十六である。「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」 には続きがあった!-山本五十六 その2 で紹介した道歌(どうか)を紹介しておこう。


話し合い 耳を傾け 承認し
 任せてやらねば 人は育たず


やっている 姿を感謝で見守って
 信頼せねば 人は実らず


どのようにしたら、「人は育つ」のか? 「人は実る」のか? いずれも、「育てる」、「実らす」といった他動詞ではなく、あくまでも自分がかかわる相手の主体的な自発性に重点をおいた発想である。「引き出す」のである。

「人」を「リンゴの木」に置き換えてみれば、木村秋則氏の言っていることそのものではないか! 「育つ」や「実る」といった発想は、日本人にはストンと腹に落ちる栽培植物のアナロジーである。感謝の姿勢は、松下幸之助の経営哲学の根底にもあった。

木村秋則氏の「奇跡のリンゴ」の物語は、苦労したけど最終的にはうまくいきました、というハッピーエンドの成功物語として消費するのではなく、企業経営における人づくりにも、家庭の子育てや学校での人づくりにもつうじる、普遍的な哲学を示しているというべきだろう。

木村氏が基本的に理系的な発想をする人であり、「自然栽培」は再現性のある、移転可能な技術であることにも注意を払いたい。そして技術の根底に哲学があるということも。





『奇跡を起こす見えないものを見る力』(木村秋則、扶桑社SPA!文庫、2013 単行本初版 2011)

目 次

はじめに
第1章 龍との出会い、不思議とのつきあい
第2章 なぜ「奇跡のリンゴ」が実ったのか
第3章 リンゴと土から学んだこと
第4章 これからも、「奇跡」を起こし続けるために
おわりに
文庫版あとがき



『すべては宇宙の采配』(木村秋則、東邦出版、2013 単行本初版 2011

目 次

本書をより理解するために 特別寄稿 茂木健一郎(脳科学者)
まえがき
第1章 不思議の始まり
第2章 泥沼にて
第3章 許された日々
第4章 まだ足りない
参考写真





著者プロフィール
木村秋則(きむら・あきのり)
1949 年、青森県弘前市生まれ。木村興農社代表。 弘前実業高校を卒業後、 川崎市内のメーカーに就職するが、1 年半で退職。 1971 年に故郷に戻り結婚、リンゴ栽培を中心とした農業に従事。 農薬で妻が体をこわしたことをきっかけに、 1978 年頃から無農薬・無肥料のリンゴ栽培にチャレンジを始める。 10 年近くにわたって無収穫が続き、苦難の日々が続いたが、 ついに完全無農薬・無肥料のリンゴ栽培を成功させた。現在、リンゴ栽培のかたわら、 国内はもとより海外でも自然栽培法の農業指導を続けている。 また、自身の苦難の日々と成功への軌跡が描かれた映画『奇跡のリンゴ』が 2013年6月より全国東宝系映画館にて公開される。 オフィシャルサイト http://www.akinorikimura.net/






<関連サイト>

映画「奇跡のリンゴ」 菅野美穂 阿部サダヲ主演の原作-木村秋則 魂のリンゴ作り農家 前編(YouTube)
映画「奇跡のリンゴ」 菅野美穂 阿部サダヲ主演の原作-木村秋則 不可能を可能にした壮絶な8年間 後編 (YouTube)

映画「奇跡のリンゴ」 菅野美穂 阿部サダヲ主演の原作-木村秋則 不可能を可能にした壮絶な8年間 (YouTube)




『奇跡のリンゴ』は、2013年に映画化されている。主演:阿部サダヲ、菅野美穂。





<ブログ内関連記事>

An apple a day keeps the doctor away. (リンゴ一個で医者いらず)


土と植物

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる
・・「自然農法」や「有機農法」を説いたシュタイナー。木村秋則氏のいう「自然栽培」とは異なる

書評 『土の科学-いのちを育むパワーの秘密-』(久馬一剛、PHPサイエンス・ワールド新書、2010)-「土からものを考える視点」に貫かれた本

地層は土地の歴史を「見える化」する-現在はつねに直近の過去の上にある

「コンパニオン・プランツ」のすすめ-『Soil Mates』 という家庭園芸書の絵本を紹介
・・「コンパニオン・プランツ(companion plants)という考えにあります。直訳すると、「友だち植物」とでもなるのでしょうか、ともに近くで育つことで相性のいい植物の組み合わせということです。 あえて雑草を抜かずにそのままにしているのもまた、この考えに基づいています。 数年前に大きな話題となった、『奇跡のリンゴ-「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録-』(石川拓治、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班=監修、幻冬舎、2008)で取り上げられている青森県のリンゴ農家である木村秋則さんもその一人ですね」

書評 『複合汚染』(有吉佐和子、新潮文庫、1979、初版1975年)-有吉佐和子ってこんなに面白かったのか! という新鮮なオドロキを感じる知的刺激に充ち満ちた一冊
・・「有吉佐和子の『複合汚染』(1975年)を文庫版で読んだときのことだ。いわゆる「有機農業」の実践を取材した記録であるが、20ページ以上にわたって詳細に取り上げられています」

世の中には「雑学」なんて存在しない!-「雑学」の重要性について逆説的に考えてみる
・・「自然界には雑草なんて存在しない、人間が勝手に分類しているだけだ」。かつて昭和天皇がこのような趣旨のことをクチにされていたと、どこかで読んだことがある

書評 『思想としての動物と植物』(山下正男、八坂書房、1994 原著 1974・1976)-具体的な動植物イメージに即して「西欧文明」と「西欧文化」の違いに注目する「教養」読み物

"粘菌" 生活-南方熊楠について読む-


「見えないもの」を「見える化」する

書評 『ヨーロッパ思想を読み解く-何が近代科学を生んだか-』(古田博司、ちくま新書、2014)-「向こう側の哲学」という「新哲学」
・・「向こう側」は「あの世」ではない!「見えない世界」への感受性を高めることが重要だ

『はじめての宗教論 右巻・左巻』(佐藤優、NHK出版、2009・2011)を読む-「見えない世界」をキチンと認識することが絶対に必要
・・プロテスタント神学の立場から。内容にはかならずしも同調する必要はないが、思考のフレームワークを知るのはよい

『形を読む-生物の形態をめぐって-』(養老孟司、培風館、1986)は、「見える形」から「見えないもの」をあぶり出す解剖学者・養老孟司の思想の原点

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-これからの日本のものつくりには 「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」 が必要だ!
・・日本人にいちばん欠けているのが「見えないもの」を「見える化」する能力

書評 『梅棹忠夫の「人類の未来」-暗黒の彼方の光明-』(梅棹忠夫、小長谷有紀=編、勉誠出版、2012)-ETV特集を見た方も見逃した方もぜひ
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経営計画の策定と実行は、「自力」と「他力」という仏教の考えをあてはめるとスムーズにいく





(2012年7月3日発売の拙著です)





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