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2015年5月26日火曜日

書評 『潜入ルポ 中国の女-エイズ売春婦から大富豪まで-』(福島香織、文春文庫、2013 単行本初版 2011)-中国に生きる女たちから中国社会のリアルを知る


この本はじつに面白い! 中国関連の本で、これほど面白いものはそうなかなかないのではないか。日本人初の女性北京特派員となった著者が、ときにはモンゴル人と偽ったりしながら、体当たりで行った取材の記録である。

過酷な政治に翻弄されつづける大陸の中国人。そのなかでも「天の半分を支えてきた」女性たちに焦点をあてた本書は、「中国の女」をとおしてみた中国論でもある。具体的であるだけに印象も強い。

「女性は天の半分を支えている」(=「婦女能頂半辺天」)とは、中華人民共和国が建国されてからの毛沢東のコトバだが、毛沢東自身が男女平等主義者であったかどうかは、きわめて疑問は多い。この本の随所に指摘されているが、儒教国・中国に根強く存在する男尊女卑が払拭されているとは言い難い。

著者には一貫して、中国という過酷な世界に生きる女性たちへ共感がある。文庫版の解説の金美齢氏によれば、著者の姿勢は日本の知識人女性からは嫌われているそうだ。日本社会で日本人女性がおかれている状況より、中国で中国人女性がおかれている状況の方が、はるかに過酷であることが視野にないためだろう。

「第1章 エイズ村の女たち」「第2章 北京で彷徨う女たち」は、そんな過酷な中国大陸で、しかも底辺で生き抜いている女性たちのナマの声を伝えてくれる。「都市戸籍」と厳密に区分された「農村戸籍」によって、実質的なアパルトヘイト政策で身分差別されている農村生まれの人間が生き抜く姿を日本人が知る必要がある。

「第3章 女強人(女傑)の擡頭」で取り上げられているのは、スーパーリッチとなった起業家や、セレブとしてNGO活動で世界を股にかけている女傑や、社会問題や民族問題解決のために逮捕もおそれずに活動する女性たちである。

「第4章 文革世代と八〇后と小皇帝たち」では、過酷な「文化大革命」時代を生き抜いた女性たちと、その歴史を知らずに生きてきた1980年代生まれの八〇后(バーリンホウ)の女性たちを対比させながら、両者のあいだに対話が成立するかどうかを考察している。

このように社会の底辺からの視点と、社会の頂点からの視点、さらには少数民族の視点や、中国現代史という視点が交錯しながら、「中国の女」という一貫した視点で描かれた中国社会の断面を知ることは、同時代に生きている日本人にとって必要なことであると思うのだ。





目 次

はじめに-「婦女能頂半辺天」
第1章 エイズ村の女たち
 男の子を産まないと、女は一人前と認められないから命をかけて男の子を産む--栄華
 売れる体があるのはラッキー。どうせなら都会でいい男に売りたい--小●
 男が上に乗っかっているとき目をつぶるの。幼い息子の笑顔が見えるから--小燕
 超生で罰金をくらったけれど、あの娘を産んでよかった--程麗
第2章 北京で彷徨う女たち
 私たちに居場所なんてないのよ! ただ、慰める腕がほしいだけ--艶児
 殺すより売る方がよっぽどいいでしょ--小華・小海
 幸せにはなれない。ただ、生活になれていくだけ--王美●
 私は誇りを買い戻したのよ--小張
 結婚しないことへのプレッシャーの方がずっと重い、同性愛より--秋月・小帆・・
 都会の片隅で、一人ひっそり命を断つ打工妹(出稼ぎ娘)がどれほどいるか--劉雲・謝麗華
第3章 女強人(女傑)の擡頭
 私は「おしん」と性格がすごく似ているの--張菌
 私の活動の力の源泉は「愛」--候文卓
 「私は民族主義者」と漢語で語るチベット民族主義者--ツェリン・オーセル
 人間は誰もが、ちょっとは障害を持っているのよ--胡蓉
 「グッチ・ガール」から「寅女」となりて--●●
第4章 文革世代と八〇后と小皇帝たち
 今の知識人はニセモノよ。本当の知識人はもう亡くなってしまった--章台和
 私は今、水の上に這い上がってようやく世界を見た--田原
 一人っ子である身の上に、祖父母の歴史の物語が凝縮されているのよ--張悦然
おわりに-『大地』から始まった中国への旅
文庫版のためのあとがき-その後の「中国の女」たち
解説-「中国の女、台湾の女そして日本の女」-「場の力」が女を創る(金美齢)

著者プロフィール

福島香織(ふくしま・かおり)
フリージャーナリスト。1967年奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社に入社。大阪文化部などを経て上海・復旦大学に語学留学。2001年から産経新聞香港支局長に赴任、2002年に香港支局閉局にともない中国総局(北京)に異動。2008年まで常駐記者を務めた。2009年に退職し、中国関連分野でフリーの活動を開始(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<関連サイト>

福島香織『潜入ルポ 中国の女 エイズ売春婦から大富豪まで インタビュー① (ニコニコ動画、2011年2月20日)

高額化する上海小姐のゆすりたかり 蜜月時代こそ、ご用心 (福島香織、 日経ビジネスオンライン、2015年5月27日)



<ブログ内関連記事>

『中国美女の正体』(宮脇淳子・福島香織、フォレスト出版、2012)-中国に派遣する前にかならず日本人駐在人に読ませておきたい本
・・「もちろん、中国女性といっても、広大な中国のことです、十把一絡(じっぱひとからげ)げに語るのはムリというのは、この二人にはよくわかっていることですし、内容はその点についてくどいほど語られたものになっています。 なんせ13億人という人口、その半分が女性だとしてもすごい数です(・・じっさいは、非合法ですが男女産み分けが行われているので女性のほうが少ない)。全人口のたった1%でも 1,300万人(!)となるわけですから、違いがあるのは当然ですし、人口の大半が農村戸籍をもつ農民である以上、その生活レベルや文化レベルがいかなるものであるかは推して知るべしというべきでしょう」。

書評 『中国絶望工場の若者たち-「ポスト女工哀史」世代の夢と現実-』(福島香織、PHP研究所、2013)-「第二代農民工」の実態に迫るルポと考察

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

書評 『騒乱、混乱、波乱! ありえない中国』(小林史憲、集英社新書、2014)-映像と音声が命のテレビ局の記者によるスリリングな取材記録




(2012年7月3日発売の拙著です)











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