天皇皇后両陛下の英国公式訪問(2024年6月22日~29日)で、英国滞在の最終日の28日にお二人にとっての母校であるオックスフォード大学を訪問されたことがニュースになっている。
この機会を利用して、『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(彬子女王、PHP文庫、2024)を読むことにした。彬子女王(あきこじょうおう)は、「ヒゲの殿下」の愛称で国民的人気のあった三笠宮寛仁(ともひと)親王のご長女である。
皇族であり、しかも研究者でもある。こういうあり方は生物学者でもあった昭和天皇以来、当たり前のものとなっているが、女性皇族として博士号(Dr. Phil)を取得されたのは、彬子女王がはじめてなのだという。5年間の研鑽ののち2010年に学位を取得された。
オックスフォード大学のマートン・コレッジ(・・天皇陛下が皇太子時代に留学したのもここである)における留学体験記は、2012年に雑誌連載、2014年に単行本として出版されたらしいが、文庫化されるまでまったく知らなかった。熱心な読者によるX(旧Twitter)の投稿がキッカケになって、文庫本として復刊されたそうだ。
たいへんよくできたエッセイであり、オックスフォード大学で博士号を取得するということがどういうことか、その体験のない者にとっては、じつに興味深い内容であった。しかもなかなか読ませるもののある、良質な体験記である。
■19世紀後半の英国における日本美術熱
博士論文のテーマは、19世紀後半の英国における日本美術収集にかんするものであり、オックスフォード大学と大英博物館の所蔵品を調べるため、英国現地にいなければ不可能な研究である。
美術史全般や日本美術史に関心がある人なら、なおさら興味深く読めることだろう。
浮世絵が牽引した「ジャポニスム」(Japonisme)といえばフランスというのが常識かもしれない。
だが、「ジャパニズム」(Japanism)という形で19世紀後半の英国で日本美術熱が高まり、「アングロ・ジャパニーズ・スタイル」(Anglo-Japanese Style)が生まれたことも、日本人の常識にしておきたいものだ。
その意味でも、たいへん貴重な研究であり、その成果は広く日本国民が共有したいものである。
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