必要があって『コンサル一年目が学ぶこと』(大石哲之、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2014)という本に目を通してみた。
2025年1月で第36刷のロングセラーである。いわゆる「定番」のビジネス書といっていいのだろう。
1975年生まれの著者は、外資系コンサルに入社して数年を過ごしたのち、さまざまな仕事を体験している。コンサル時代がビジネスキャリアの基礎となっているわけだ。そんな著者がコンサル卒業から15年後に書いた「ビジネスパーソンとして重要なことは、すべてコンサル会社で学んだ」、そんなテイストの内容である。
もちろん、当然のことながら、わたしは現在進行形の「コンサル一年生」ではない。「40年前のコンサル一年生」である。大学を卒業して、いきなり銀行系のコンサル会社に入っているので、「走り」というべき存在だ。
とはいえ、けっして先見の明があって入社したわけではない。 すでに内定をもらっていた某電機メーカーに魅力を感じなかったからの転換であった。
電機メーカに入社していたら、人事か経理に配属すると言われていた。あとから考えれば、人事も経理のどちらもビジネスパーソンとしての基礎ではあり、その面で専門特化したほうがビジネスキャリアとしては堅実であっただろうが・・・
大学4年生で就職活動を行っていた1984年当時は「商社冬の時代」と言われており、成績のよい学生の多くは銀行に就職している。その当時、「なんでそんなとこに行くのか?」とあきれた表情で同級生たちから言われたことを鮮明に覚えている。
実際問題、まだ設立から2年目のあたらしい組織で、カオス状態の組織であった。大半が中途入社の人たちで、きわめつきに個性のつよい、海千山千といった人たちの集団であった。
だが、そんな状態であったからこそ、幸か不幸か現在のわたしをつくりあげることになったのは確かなことだ。「結局、自分しか頼りになるものはない」という、覚悟ともいうべき認識を痛感するにいたったからだ。
さて、『コンサル一年目が学ぶこと』の「目次」は、以下のようになっている。 参考のために紹介しておこう。
第1章 コンサル流話す技術結論から話す/Talk Strait 端的に話す/数字というロジックで語る/感情より論理を優先させる/相手に理解してもらえるように話す/相手のフォーマットに合わせる/相手の期待値を把握する/上司の期待値を超える第2章 コンサル流思考術「考え方を考える」という考え方/ロジックツリーを使いこなす/雲雨傘 提案の基本/仮説思考/常に自分の意見をもって情報にあたる/本質を追及する思考第3章 コンサル流デスクワーク術文書作成の基本、議事録書きをマスターする/最強パワポ資料作成術/エクセル、パワーポイントは、作成スピードが勝負/最終成果物から逆算して、作業プランをつくる/コンサル流検索式読書術/仕事の速さを2倍速3倍速にする重点思考/プロジェクト管理ツール、課題管理表第4章 プロフェッショナル・ビジネスマインドバリューを出す/喋らないなら会議に出るな/「時間はお金」と認識する/スピードと質を両立する/コミットメント力を学ぶ/師匠を見つける/フォロワーシップを発揮する/プロフェッショナルのチームワーク
ざっとこんな感じである。著者自身は、これですべてをMECE(漏れなく、ダブリなく)したわけではないという趣旨のことを書いている。 主観的に重要だと考えているものを取り上げたのだという。
個々の項目をみればわかるように、コンサル会社にいなくても学べるものは、もちろん多い。MBAコースでなくても学べるものも、もちろん多い。一流企業に入社できたなら、「一年目」からこういう鍛え方をされるはずだ。
ただし、第3章にかんしては、生成AIを筆頭にしたテクノロジーが日進月歩しているので、アップデートが必要だろう。
だが、そんな機会にめぐまれなかった人、つかえるスキルやマインドセットを早いうちに自分のモノとして身につけることで成長したい、はやく結果を出したいという人には役にたつことは間違いない。コンサル会社での1年が、フツーの会社の何年間に相当するかは一概には言えないが・・
わたし自身は、「英語道」を提唱していた松本道弘の愛読者だったので、「結論から話す」とか「ロジックで語る」ということは、高校時代から実践してきた。 もちろん、実際にどこまでできていたかどうかは別の話ではあるが、Why - Because で語る姿勢はクセにしてきた。
とはいえ、「コンサル一年生」としてコンサル会社にいきなり入社して思ったのは、ビジネスというのは思っているよりロジカルなものなのだな、という感想だった。ロジカルに思考し、ロジカルに組み立てるが、もちろん知だけでなく、情がはたらく余地は大きいことは言わずもがなではある。
1985年当時は「昭和時代」のまっただ中で、「バブル前夜」であった。 徹夜は当たり前の世界で、コンサル会社は「ブラック企業」の最たるものであろう。徹夜して報告書の作成とコピーを終えたら朝になっており、顔洗ってヒゲそって、始発の新幹線に飛び乗るなんて当たり前の日常であった。さすがに5年後にはカラダを壊す結果となったが‥…
だが、こんなプレッシャーのつよい状況下だからこそ、鍛えられるというのもまた事実である。 なんといっても「頼れるのは自分だけ」だからだ。
もちろん、プロジェクトチームで動くのでチームワークは必要だ。チームワークには功罪両面もある。デッドラインというプレッシャーに耐えられず、プロジェクト終了前に逃げたプロジェクトリーダーもいた。そんなプロジェクトに属していたために後始末をさせられて、えらい迷惑を被ったこともある。 なんせチームワークだからねえ。
最近は「ワーク・ライフ・バランス」がしきりに語られて、それはそれでいいことなのだが、20歳台という鍛えられるべき時期に鍛えられないという問題も生じている。成長体験を高速で得られない、そんなユルい企業風土に耐えられずに転職する若者も少なくないと聞く。
「人生100年時代」とはいうが、やはりビジネスキャリアの基礎は、20歳台にあるというべきだろう。気力と体力が充実している時期に、徹底的に鍛えることは絶対に必要だ。その時期に身につけたスキルとマインドセットは、まさに「一生役立つ」といっていい。
もちろん、これから10年後、20年後(・・生きていれば)についてまではわからないが、40年前の「コンサル一年生」だったわたしは、コンサル会社入社から40年後のいま、そんな実感をもっている。
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