「自己啓発」が好きな人もいれば、「自己啓発」なんて大嫌いだという人もいる。これはあくまでも個々人の好みの問題であるので、良いも悪いもない。
ビジネス界でいう「自己啓発」とは、研修や教育ではカバーできない分野を、「自助努力」で習得することを促す制度のことを指している。資格取得に対して補助金がつくことも多い。
これに対して、一般社会では「自己啓発」というと「●●セミナー」の類いを連想する人もいて、ネガティブな印象をもっている人も少なくないようだ。「ポジティブ・シンキング」なんて、「洗脳」のメソッドを利用したアレじゃないか、と。
そんな一般人がもっている「自己啓発」のアンチテーゼを打ち出している本もあって、そういう本を読むのも面白い。
そのひとつが『他人(ひと)が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え』(裏モノJAPAN編集部編、鉄人文庫、2023) という本だ。
昨日のことだが、ふと立ち寄ったリアル書店の店頭に平積みになっていたので、手に取ってパラパラとやってみたら、ヤケに面白い。即購入して電車のなかで読んでいたら、これがまためっぽう面白い。
カバーに記されているコピーは、まさに内容そのものだ。
大衆酒場の社会学酸いも甘いも噛み分けたオッサン130人に聞いた若かりし自分に教えてやりたい人生の真実
タイトルの「他人(ひと)が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え」は、「40才 名古屋・契約社員」による発言。吉野家じゃなくて松屋だが、まさに中島みゆきの名曲「狼になりたい」そのものではないか! 沁みるねえ。
「目次」を紹介しておこう。
第1章 悟りを開け第2章 職場は敵ばかり!第3章 スクール・デイズ第4章 男はつらいよ第5章 リスク管理は肝要だ第6章 煩悩退散!第7章 慧眼のプレイボーイ第8章 あゝ無情第9章 放蕩三昧
酔っ払い男性の一人語りの説教めいた聞き取りから、刺さるフレーズをひとつピックアップして、聞き手の取材者がその場の状況などをコメントするという見開き2ページで構成された内容だ。
読んでいると、思わず「そうだよな~」とうなずく話も多い。とはいえ、さすがに電車のなかで読むのは「ちょっと、どうかな~」という内容も(苦笑)
「自分の過去の発言に縛られるのはムダ。「考えなんて変わるもんだ」でOK」とか、「運が良かっただけを口癖にすれば尊敬を集められる」、「知識を身につけるのはしょうもないことで大げさに騒がないため」なんて、自己啓発の元祖エマソンそのものではないか!
年齢層も職業もまちまちだが、失敗体験と豊富な観察から身染みでてくる知恵ある発言の数々は、なかなか含蓄深い人生訓というべきものもある(もちろん、そうでないものも当然ながらある)。
大衆酒場の酔っ払いは、みな酒場で呑んでいるときだけに発揮される賢人たちというべきか。
そして、「自己啓発」のアンチテーゼは、じつは「自己啓発」そのものだという、パラドックスとしか言いようのない事実に読者が気づくことになる。
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