映画『「桐島です」』(2025年、日本)を amazon prime で視聴した。550円払ってレンタル。 105分。
桐島とは桐島聡のことだ。過激派の爆弾犯として「指名手配書」に顔写真が載っていた超有名人である。 黒めがねをかけた、爽やかでやさしそうな顔をした若者の顔写真。その顔写真が桐島聡であった。1954年生まれの桐島は、1974年の爆弾テロ犯の一人であった。
「指名手配書」に載っている顔写真(マグショット)は、「おい小池」のキャッチフレーズで有名な放火殺人事件犯人のように、見るからに凶悪犯という人相が多い。だが、この人だけは違っていた。いつまでたっても、おなじ顔写真だった。だから余計、印象に残っているのだ。
それだけに、約半世紀にわたる偽名による潜伏生活を送っていたが突然世の中に現れ、入院先の病院で本名の「桐島です」と名乗ったというニュースは、すくなくとも自分にとっては、かなりインパクトのあるニュースだった。しかも、そのわずか4日後に世を去ったとは・・。2024年1月29日のことである。 末期がんを患っていたが健康保険証がないので治療ができなかったのだという。
最後に「桐島です」と名乗っていなかったら、これほどインパクトのあるニュースにはなっていなかっただろう。事実が発覚して逮捕されるよりも、はるかにインパクトが強いのはそのためだ。
新左翼の過激派は、1962年生まれの自分より約一世代上の人たちだし、かれらが1974年に実行した連続爆弾テロは、事件当時小学生だった自分も、同情の余地はまったくないと思っていた。
だがそうでありながら、なぜか不思議なことに桐島聡は気になる存在だった。半世紀近くにわたって、折に触れその顔写真を目にしてきたからだろう。
(潜伏から49年目も20歳の顔写真。Wikipedia英語版の画像から)
この映画が製作され、昨年2025年に公開されたことは知っていたが、見に行ったわけではない。だがつい最近、この映画の脚本を書いた梶原阿貴氏の『爆弾犯の娘』(ブックマン社、2026)を読んで、こ映画は見ておく必要があると強く思った。この本と映画はセットで捉えるべきだからだ。
この映画は、あくまでも一つの解釈である。なぜなら、桐島は末期がんの病床で、最後の最後に「桐島です」と名乗って偽名を捨てるまでの49年間、自分がやってことに対しの考えをまったく残していないからだ。すくなくとも現時点では尋問調書を含め、公開された情報はない。10年後あるいは数十年後に製作される映画では、また異なる解釈がされることになるだろう。
この映画は、さまざまな関係者の証言をもとにした推測であり、あくまでも「事実に基づく物語」なのである。
最後の最後まで半世紀にわたって「違う名前の人生」を生き、そして最期を自覚したとき、偽名ではなく自分の本当の名前で死ぬことを選択した桐島聡。告白した4日後に世を去った桐島は、逮捕されることなく人生を終えることになった。
偽名で生き抜いた49年間、発覚を恐れた毎日ではあったが、定職についており、しかもけっして孤立した人生ではなかったことが、この映画には描かれている。
そうだったのだろう。「訳ありの人生」であり、「やさしさ」ゆえに周囲から大事にされ、しかし「やさしさ」ゆえに自らの幸せをつかみ取ることはできなかった男。
第三者からみたら、道を誤ったとしかいいようがない。人生を棒に振った以外のなにものでもない。
爆弾テロの実行犯yとはいえ、死傷者を出していないのであり、さっさと自首していれば刑期を終え、潜伏生活をつづける必要もなかったことだろう。だが、そんな道を選ばなかった。理由はわからない。だが、それが彼の選択だった。それだけは確かなことだ。
「桐島君さあ、時代遅れなんだと思うよ」と言って、別れを告げた恋人が映画には登場する。このセリフは脚本家によるものだが、1972年の「あさま山荘事件」を境いにして、急速に世の中の空気が変わったのは確かなことだ。翌年の1973年には「第1次オイルショック」も発生して高度成長時代は終わっている。
変わり身が早いのが日本人の特性とされることが多いが、この人はそれはしなかった。できなかった。 この人にとって、人生とはなんだったのだろうか。いや、そんな人生を送らなかった人にとっても、その問いはついて最後の最後までついて回るのではないか。
桐島聡という男に完全に感情移入することはない。この映画の解釈にかならずしも賛同するわけでもない。だがどうしても、自分とはまったく関係のない存在とは思えないのだ。
この映画を見終わったいま、あらためて桐島聡の人生とはなんだたのか、人生の最後に「桐島です」と告白したのなんだったのか、その意味について考えている。
(画像をクリック!)
<ブログ内関連記事>
・・「全共闘世代」と連合赤軍による「あさま山荘事件」に到るプロセス
・・『総括せよ!さらば革命的世代-40年前、キャンパスで何があったか』(産経新聞社取材班、2009)について言及している
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end
.png)
.png)












