『レジェンド・オブ・リタ』(2000年、ドイツ)という映画を見た。amazon prime video にて視聴。日本で公開されたことのない映画を、日本語字幕つきで視聴できるのは良いことだ。シュレンドルフ監督による、97分が短く感じられる現代史の人間ドラマである。
冷戦時代の1970年代の西ドイツ(=ドイツ連邦共和国)で暴れ回った「ドイツ赤軍」(RAF)分派の極左テロリストたちの運命を描いた映画。主人公リタ・フォークトはじめ、実在の人物をもとにしたフィクション作品だ。いわゆる「1968年世代」。
資金集めのために銀行強盗を繰り返す凶悪犯たち。当然のことながら指名手配となっていた主人公リタは、パリで実行未遂に終わった銀行強盗で逃走中、警察官を射殺してしまい、殺人犯となったまま逃走を続けることになる。
収監されている仲間の脱獄を助けて東ベルリンに逃げ込むテロリストたち。利用価値ありとみなした東ドイツ(=ドイツ民主共和国 DDR)の「シュタージ」(秘密警察)は、かれらを保護することにする。
ただし、受け入れの条件は東ドイツ国内では偽名を使用し、メンバーが固まらずにバラバラになること。メンバーどうしのコンタクトは一切認めないというものであった。 当然といえば、当然だろう。
社会主義体制の東ドイツから資本主義体制の西ドイツに逃げたドイツ人は多いが、逆に西ドイツから東ドイツに逃げたドイツ人たちもいたわけだ。
東ドイツでは、労働者階級になりきって生きることになったリタ。そもそも本来の志向だから文句があろうはずはない。しかしながら、東ドイツ国内で前歴がバレ、偽名をさらにあらたな偽名に改変することも強いられる。東ドイツであろうと、殺人犯が一般市民から好感をもたれるはずがない。
さまざまな制約条件があるものの、私生活を楽しむことすらできた東ドイツでの人生は、彼女にとってはけっして悪いものではなかった。 そんな幸福な日々が続くはずだったのだが・・
ところが、1989年には運命が暗転する。「ベルリンの壁」が崩壊したのだ。東ドイツに逃亡して生き延びたハズだったのが、「ドイツ再統一」という事態は、リタにとっては喜ぶべきものではなかった。「天網恢々疎にして漏らさず」というべきか、その最期は見てのお楽しみとしておこう。
原題は、Die Stille nach dem Schuss (文字通りの意味は「銃弾のあとの沈黙)。パリでの銀行強盗の際、主人公のリタが銃弾を放って警察官を殺害してしまった以降の沈黙、という意味だ。ドイツ以外では、The Legend of Rita(リタの伝説)として流通。まあ、英語版のタイトルのほうがわかりやすいことは確かだな。
「ドイツ赤軍」をテーマにした映画には『バーダー・マインホフ-理想の果てに』(ドイツ、2008年)という映画があって、これは日本でも公開されている。2000年に製作された『レジェンド・オブ・リタ』のほうが先行していたわけだ。
PS 日本語字幕の漢字を見ると、おそらく中国人か韓国人がつくったのだろう。まあ、いちおう通じる日本語にはなっているので、良しとしておこうか。
<関連サイト>
The Legend of Rita(Wikipedia英語版)が、背景となる歴史的事実などにかんして参考になる
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