『定年で終わる人、終わらない人 ― 豊かに生きるための5つの智慧』(安永雄彦、講談社+α新書、2026)という本を著者からいただいた。出版されたばかりの新刊である。
著者の安永さんは、ビジネスマン出身で浄土真宗の僧侶という異色のキャリアの持ち主である。タイトルの副題にある「智慧」という漢字表記に注目しておこう。「知恵」ではない、「智慧」である。「仏教の智慧」である。
組織を離れて独立し、すでに16年目になるわたし自身は、いまだかつて「定年」は体験したことはない。今後もないだろう(と思う)。だが、頂いた本をさっそく読み始めて思ったのは、うんうんと頷くことの多い内容だということだった。自分の人生と重ね合わせて読んでしまうからだ。
「定年」は、人生の区切りのひとつである。誕生や成人、そして死などと同様に、現代人にとっての「通過儀礼」のひとつと捉えるべきかもしれない。とはいえ、現在の標準的な定年年齢である60歳(あるいは65歳)とイコールと捉える必要はないだろう。
わたし自身、40歳台の終わり近くで独立を決意したのは、人材コンサルタント時代の安永さんが背中を押してくれたからだが、独立後に強く意識したのは「凡夫」の自覚である。
「凡夫」(ぼんぷ)は、英語でいえば everyman ということになろうか(・・男女を問わずこの表現をつかっているが、ordinary person としたほうが適切かな?)。
「凡夫の自覚」は、「第一の智慧」として挙げられている。人生をいったんリセットして再出発するために絶対に必要な智慧である。大乗仏教、それも浄土系ならではの智慧といっていい。借り物の衣装で装ったのではない、等身大の裸の自分をみつめて生きることが大事なのだ。
本書ではこのほか、第二の智慧として「影と煩悩の受容」、第三の智慧として「報恩感謝 後悔しない生き方」、第四の智慧として「失敗からの学び」、第五の智慧として「「あと5年」の生き方」が説かれている。
いずれも、著者の豊富なビジネス経験と仏教の智慧が融合したものである。とくに「あと5年の生き方」は、わたしもかなり前から意識して実践してきた「逆算方式」にもとづく方法論だ。
わたし自身、独立後はかならずしも経済的に満足しているわけではないが、なによりも精神的な自由を享受できていることを幸福と感じ、そんな生き方ができることに感謝の気持ちを抱いている。
「第7章」のタイトルになっている「会社軸を超えて生きるという幸福」を味わうため、ぜひこの本を読んで自分自身を見つめ直し、人生をリセットして再出発するための手引きとしてほしいと思う。
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目 次はじめに第1章 定年世代が心豊かに生き抜くための5つの智慧第2章 「凡夫」の自覚―第一の智慧第3章 影と煩悩の受容―第二の智慧第4章 報恩感謝 後悔しない生き方―第三の智慧第5章 失敗からの学び―第四の智慧第6章 「あと5年」の生き方―第五の智慧第7章 ”会社軸” を超えて生きるという幸福おわりに
著者プロフィール安永雄彦(やすなが・ゆうひこ)株式会社オフィス安永代表取締役、武蔵野大学客員教授、グロービス経営大学院大学特別教授。1954年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院博士研究課程修了。三和銀行(現三菱UFJ銀行)、外資系エグゼクティブ・サーチ会社ラッセル・レイノルズを経て、経営幹部人材サーチコンサルティング会社島本パートナーズ社長・会長に就任。50歳のときに得度し、浄土真宗本願寺派築地本願寺代表役員宗務長を経て、浄土真宗本願寺派総本山京都・西本願寺代表役員執行長を務める。2024年より現職。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
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