昨日のことだが、「禅」をめぐる2つの企画展にいってきた。ともに臨済宗関連のものである。
つぎに、「開創700年記念特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑」。会場は、東京国立博物館の平成館。10月15日から始まったばかりの企画展。
■「白隠」 は、ポップカルチャーとしての禅の元祖
白隠は、江戸時代中期に活動した臨済宗の「中興の祖」である。形骸化していた臨済禅に活を入れた重要人物だ。
禅画で有名な白隠は、一般民衆に禅を広める活動を行った。そのため即興で大量に禅画を描きまくったわけだが、ギョロリと目を剥いた達磨図など、現代人にアピールするものも多い。
美術史家の辻惟雄氏が「奇想の系譜」の出発点のひとつと据えているが、パンフレットに登場する「すたすた坊主」など、思わず笑ってしまうマンガのようなものもある。
(白隠展の入口とポスター 筆者撮影。以下同様)
会場の「早稲田大学會津八一記念博物館」は、早稲田キャンパス内にある。
早稲田の自分の母校ではないので、キャンパス内に入ったのはじつに久しぶり。大量の学生たちであふれかえっていたので圧倒される。
会場では、はじめて見る白隠関連の書画も多く、「入場無料」であるにもかかわらず、なかなか充実した企画展であった。
■「大徳寺」 は、ハイカルチャーとしての禅の代表
大徳寺は、京都の紫野にある臨済宗大徳寺派の大本山である。「開山700年」の特別記念展ということで、大徳寺を訪れたことのない自分にとっては、ありがたい企画展だ。
ただ、禅というと地味な印象があるためだろう、また仏教とはいっても庶民的な色彩の薄い禅関連の企画展であるためか、ことしの夏におなじ東京国立博物館 平成館で開催された「弘法大師生誕1250年記念特別展 空海と真言の名宝」と比べると、それほど混雑しているわけではなかった。
大徳寺については、梅原猛の『京都発見⑧ 禅と室町文化』(写真=井上隆雄、新潮社、2004)で美しいカラー写真とともに紹介されている。「禅」というと鎌倉という連想が一般にあるだろうが、室町時代の京都もまた禅の中心地である。
とはいえ、大徳寺そのものにあまり関心があるわけでなく、大徳寺に所蔵されている書画、とくに狩野派の絵画に関心があるので、そちらを重点的に見る。
前期の展示である「花鳥図襖」(狩野永徳)は国宝、「四季花鳥図」(狩野元信)は重文であり、なかなか見応えのある障壁画である。
(狩野永徳による大徳寺聚光院方丈障壁画のうち「花鳥図」 Wikipediaより)
永徳と元信は、ともに狩野派の基礎を築いた天才画家たちの作品だ。
(大徳寺法堂の天井に狩野探幽が描いた「雲龍図」の複製)
なんといっても今回の展示のハイライトは、会場の最後に登場する「千利休立像」であろう。茶人の千利休は、大徳寺とは縁が深い。
(田中浄慶作 頭部は1840年、胴体は1869年)
利休の在世中につくられ、大徳寺に据えられた木像は、秀吉の怒りにふれて引きずりおろされ磔になったが、明治2年(1869年)に二代目の木像が完成している。
今回はじめて「寺外での特別公開」となったそうだ。この木像は写真撮影可である。
マグネット収集家として、今回は「竹石白鶴図屏風」(狩野正信)を購入。水墨画の名品で重要文化財。
(マグネットは「竹石白鶴図屏風」(狩野正信)の中央部分)
■禅にみる日本文化のハイカルチャーとポップカルチャー
最初に見たのが「白隠展」であったこともあるだろうが、「大徳寺展」との違いを感じるものがあった。
おなじ臨済宗関連の企画展であるが、室町時代から江戸時代にかけて、天皇や武将など時の権力者たちによって保護されてきた大徳寺と、宗教的な熱を喪失して形骸化していた臨済宗に活をいれて再興した白隠とでは、かなりテイストに違いがあることを感じた次第。
初期の「狩野派」の天才画家たちが襖絵などを描いたのが大徳寺である。
徳川時代になって以後後も時の権力者によって保護されてきた「狩野派」は、徳川幕府の崩壊まで約400年にわたって支配的な地位を占めた結果、革新的なチカラを失い衰退したことは知られていることだろう。
これに対し、つねに一般民衆のなかにあって活動した白隠との違いは大きい。
民衆のエネルギーという点にかんしては、やはり白隠のほうに軍配があがるといっていい。大徳寺と白隠の関係は、ハイカルチャーとポップカルチャーの違いと言い換えていいかもしれない。
その意味では、「禅」を軸にした日本文化のハイカルチャーとポップカルチャーの違いを感じ取ることができる貴重な機会となったわけである。
もちろん、どちらか一方に優位性があると言いたいわけではない。違いに注目することが、日本文化をただしく理解するカギになると言いたいのである。「禅」を敷居の高い存在であるとして、ハイカルチャーという側面でだけ捉えることもまた間違いである。
ハイカルチャーとポップカルチャーの関係は、上から下方への拡張と、下から上方への拡張による相互浸透の関係もあることを認識しておくことも必要だ。
さらにいえば、日本人が思っている「禅」と 海外で広く受け入れられた「Zen」 の共通点と相違点についても、敏感になる必要があろう。今回の2つの企画展とは直接関係ない話ではあるが・・・
(画像をクリック!)
(画像をクリック!)
<ブログ内関連記事>
・・ハイカルチャーとポップカルチャーが同一人物に同居する状況
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end
.png)
















