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2013年4月16日火曜日

なぜいま2013年4月というこの時期に 『オズの魔法使い』 が話題になるのか?



なぜかいま 『オズの魔法使い』(The Wizard of Oz) が言及されることが多い。

先日お亡くなりになったサッチャー元首相は、在職中に発揮したリーダーシップによって「英国病」を完治し、衰退する英国に活を入れた日本ではもっぱら称賛する人が多いが、当事者である英国人のあいだには、その強引なやり方のために中流階級が弱体化したと批判している人も存在します。

サッチャーの批判勢力が「祭り」(?)を引き起こしているとTVで報道されていました。批判勢力の呼びかけで、『オズの魔法使い』の「鐘を鳴らせ 魔女が死んだ」という歌が、猛烈な勢いでダウンロードされ、英国のヒットチャートでナンバーワンになっているいうのです。

オリジナルのタイトルは、 "Ding Dong The Witch is Dead" YouTubeで映像をみるといいでしょう。主人公のドロシーが魔法の国で、アクシデントで「悪い魔女」が死んでしまったから住民が喜んでいるシーン。まさに「祭り」状態。

(DVD映像から筆者がキャプチャしたもの)

このニュースが入ってくる前には、TVの情報番組でコメンテーターをつとめる毎日新聞論説委員の福本容子氏が、『オズの魔法使い』のほんとうのテーマはデフレ経済からの脱却を願う人たちを登場人物にしたものだ、と語っていました。

「子ども向けおとぎ話と信じていた「オズの魔法使い」は何と! デフレ脱却が隠れテーマだった(説がある)というのだ。深い論争が何十年も続いていた。恥ずかしいけど、知らなかった」、と自らが執筆したコラム記事に書いておられます。

元ネタは、金融アナリスト・久保田博幸氏のブログ記事だそうです。検索してみると、「黒田日銀総裁はオズの魔法使いか」という記事がありました。詳しくはその記事を読んでみるといいでしょう。

『オズ はじまりの戦い』というディズニー映画がことしの春に公開されているようだがわたしは見ていません。オルタナティブな物語という形をとったリメイクものであって、上記のブログ記事の内容とは関係ないようです。

「デフレ脱却が隠れテーマ」というのは、やや牽強付会(けんきょうふかい)なこじつけのような気もしますが、1900年に発表された原作がテクニカラーで映画化されたのが1939年ですし、当時のアメリカは1929年の大恐慌からの経済回復期にあったことは確かです。

とはいっても、ニューディール政策による計画経済もさることながら、欧州とアジア太平洋における戦争に参戦したことによる大増産体制を実現するための財政出動によって景気回復がもたらされたのではありますが。

黒田総裁がオズの魔法使いかどうかは、わたしにはまったくわかりません(笑)。すくなくとも、「あなたの魔法だけがこの国を救える」、なんてことをクチにしたり、心のなかで思うのは危険ではないかと思うのですが・・・




『オズの魔法使い』(1939年)をDVDでみる-そのテーマは自己啓発書と同じ?

というわけで、『オズの魔法使い』(The Wizard of Oz)を DVD で見てみることにしました。まずはオリジナルを見てからでないと話がはじまらないですからね。

じつは見たのは今回がはじめてです。もちろん主演のドロシー役を演じたジュディー・ガーランドが歌っていた「虹の向こうに」(Over the Rainbow)は好きな歌なのでくちずさむことも多いですし、中学時代の英語の教科書に『オズの魔法使い』の一部が使用されていたような記憶があります。


映画のあらすじは、こんな感じです。

中西部のカンザス州の農民一家で暮らす少女ドロシー(・・どうやら両親はすでにおらず叔父叔母夫妻に育てられているようだ)は、ある日、竜巻に巻き込まれて魔法の国にいってしまう。「オズの魔法使い」に願いをたのめば家に帰れると聞いたドロシーはエメラルド宮殿を目指して、道中で出合った「知性という脳がないかかし」、「感情というハートがほしいブリキ男」、「勇気がない気弱なライオン」とともに旅をする。数々の試練を乗り越えて、ドロシーは帰宅できたことで「つよく願えばかならず夢が叶う」ことを実感し、連れの三人もみな自分が欲しいと思っていた特性(=知性・感情・勇気)はじつはすでにもっていたのだると気づく。そして「自信」(self-confidence)を取り戻すのであった。こんな内容の話をもとにしたミュージカル映画。そうそうドロシーの飼い犬トトも忘れてはいけませんね。

1939年は昭和14年、この時点ですでにテクニカラー、昔風の表現なら「総天然色」の映画が製作されていたというのはおどろきですね。日本がアメリカに戦争で負けたのは当然でしょう。

「願えばかなう」なんて、なんだか自己啓発書のテーマみたいでありますね(笑) 日本なら、サルとイヌとキジを連れて鬼退治にいってくる桃太郎となるですが、おなじロードムービーとしての成長物語であっても日米ではだいぶ趣味嗜好が違います。

アメリカ人は子どもの頃から『オズの魔王使い』で刷り込まれて育つから、ポジティブシンキング(=積極思考)志向がつよいのかな? 現在の日本人もある意味ではアメリカ色に染め上がっているようですね。



「願えばかなう」というのは一面の真理はありますが、とはいって自分がなにも努力しなければ、棚から牡丹餅というわけにはいかないでしょう。当たり前ですよね。英語で wish とは願いを意味するコトバですが、wishful thinking と熟語になるとネガティブなニュアンスを帯びてきます。日本でいえば「希望的観測」。そうあってほしいが、そうなるかどうかは自分ではコントロールできないこと。

『オズの魔法使い』の「鐘を鳴らせ 魔女が死んだ」という歌は、魔女が死んで魔法が解けるまで、反対の声をあげることもできずにいたフリークスのような小人の国の住民たちが歓喜の表現として歌い踊るものですが、おなじく魔女が死んで「解放」された魔女の館の住人たちがなにを象徴しているか考えてみるのも面白いですね。

従順だったのか、それとも怖くて異議申し立てをしないでいただけなのでしょうか。処世術として、なんらかの「空気」が存在していたようですが、なにやら洗脳とマインドコントロール状態であったような印象も受けます。

「お家がいちばんだわ」(There's no place like home.)というドロシーのセリフは、ほんとうに有名なものですね(下の写真)。「幸せは身近なところにある」というメーテルリンクの『青い鳥』を思い起こさせますが、原作が発表された1900年の時点では、まだチルチルとミチルの『青い鳥』(1908年)は出版されてません。



(1939年の映画公開からまもなく75年!-公式サイトより)

   

もしかすると、アメリカには根強い「内向き志向」礼讃かもしれません。アメリカが日本との戦争を決意した1941年12月以降なら映画は製作されなかったかもしれませんね。

『オズの魔法使い』は、子どものときに見ていたらもっと素直な感想をもったでしょうが、大人になってから見ると、なんだか不思議な内容の話に思えてしまうのでありました。

         **********************************************************

なぜいま 『オズの魔法使い』 が話題になるのか、という問いから1939年のオリジナルを見たわけですが、経済の話とは離れて、違う話になってしまいました。

デフレ脱却をテーマにした経済思想であるかはさておき、ある種のアメリカ思想を表現した作品であることは間違いないようですね。



<関連サイト>

英音楽チャート1位に「悪い魔女は死んだ」、サッチャー氏死去で(2013年04月11日 AFP)

『The Wizard of Oz』ワーナーブラザーズ公式サイト(映画はMGMが製作)

『The Wizard of Oz』フェイスブックページ(英語)

Ding Dong The Witch Is Dead (「魔女は死んだ」 『オズの魔法使い』挿入歌)

Judy Garland - Over The Rainbow (Subtitiles)(「虹の彼方に」 by ジュディー・ガーランド  『オズの魔法使い』挿入歌)





PS 「ここはカンザスじゃないみたいよ」(ドロシーのセリフ)

『続 日本人の英語』(マーク・ピーターセン、岩波新書、1990)の「Ⅱ ここはカンザスじゃないみたいよ」というドロシーのセリフについての解説がある。

英語では、Toto, I have a feeling we're not in Kansas anymore. だが、ここでいう we には飼い犬のトトも入っている。


竜巻で巻きかあげられてマンチキン国に飛ばされてから、モノクロから突然テクニカラーに変わるのだが、LSDにふけっていた1960年代のアメリカ人青年たちは、このシーンに「意識の変容」を見出していたのだという。そういう見方もあるのか、なるほどと思わされる。

アメリカでは年末になると必ず放送されるほど、誰もが知っている映画なのである。

(2013年10月9日 追記)



<ブログ内関連記事>

映画 『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙-』(The Iron Lady Never Compromise)を見てきた

『2010年中流階級消失』(田中勝博、講談社、1998) - 「2010年予測本」を2010年に検証する(その1)
・・金融ビッグバンを英国で体験した著者による予測本

書評 『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美、文春文庫、2009)-アメリカの本質を知りたいという人には、私はこの一冊をイチオシとして推薦したい

書評 『終わりなき危機-君はグローバリゼーションの真実を見たか-』(水野和夫、日本経済新聞出版社、2011)-西欧主導の近代資本主義500年の歴史は終わり、「長い21世紀」を生き抜かねばならない

書評 『新・国富論-グローバル経済の教科書-』(浜 矩子、文春新書、2012)-「第二次グローバリゼーション時代」の論客アダム・スミスで「第三次グローバル時代」の経済を解読

書評 『マネー資本主義-暴走から崩壊への真相-』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)-金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版



 
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2013年3月23日土曜日

ボリウッド映画『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(インド、2007)を見てきた




ボリウッド映画 『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム Om Shanti Om』(インド、2007)を見てきた。東京・渋谷のシネマライズにて。

ここのところボリウッド映画の日本での上映機会が増えてきたのはありがたい。レディー・ガガじゃなくても、「ハリウッドよりもボリウッド」のほうが面白い。なぜなら、ボリウッド映画はあまりに濃厚なインド・テイストに圧倒されるから。万人向けを狙って薄味になっているハリウッド映画を面白く感じないのは当然といえば当然なのだ。

日本での上映がありがたいのは、タミル語映画であれヒンディー語映画であれ、日本語訳字幕がつくから。日本公開ではなくてもDVDになっているものはあるが、英語字幕も読むのが面倒くさいことがある。



さて、『オーム・シャンティ・オーム』だが、2007年製作のヒンディー語映画。ボリウッド映画だから、うるさいまでに過剰、過剰、過剰なまでの濃厚なてんこ盛り。音量もでかいし、役者はしゃべりまくるし、歌に踊りのシーンがでてくるわ、そこまで描かなくてもいいだろというまであまり関係ないシーンまで登場する。

「シャンティ」とは、平和とか平安「オーム・シャンティ」で、安らぎをという意味だが、タイトルと映画とは一致しないと思って見たほうがいい。

むしろ日本語版の『恋する輪廻』のほうがふさわしい。輪廻転生の物語である。映画のなかでは輪廻転生は "cycle of life" と英語で表現されている。そして愛と復讐の物語。「何度生まれ変わっても、また君に恋をする」という日本語版の宣伝コピーが効いている。

(インド版ポスター)

内容は、映画解説の文章をそのまま引用させていただくとしよう。

ボリウッドを代表する俳優シャー・ルク・カーンが主演を務め、インドで大ヒットを記録したミュージカル・エンタテインメント。1970年代。脇役俳優のオームは人気女優シャンティに恋をするが、シャンティはプロデューサーの男と密かに結婚・妊娠していた。しかし、シャンティは、彼女を疎ましく思う夫の罠にはまり殺されてしまい、シャンティを救おうとしたオームもまた命を落としてしまう。30年後、シャンティの息子はオームと名づけられ、スター俳優として活躍するが……。

主演のシャー・ルク・カーンはムスリム(イスラーム教徒)のインド人。だが、映画のなかでは輪廻転生の結果、腕に神聖なオームの文字のスティグマが浮かび上がるというヒンドゥー教徒を演じている。こういうことを知っていて映画を見ることも面白いかもしれない。知らなくてもべつにかまわないのだが。

ヒンディー語映画なので、サンスクリット語を多少でも知っていれば、ところどころ単語が聞き取れる。また英単語や英語のフレーズがかなりでてくるので、その部分は日本語字幕を見ていれば聞き取れるだろう。英語字幕版では英語のセリフには字幕がつかないのが普通だ。

上映時間が 169分とやや長いが、編集して圧縮しないのがボリウッド流。筋にはあまり関係ない歌や踊りが入るが、いわゆるミュージカル映画というのともまた違う。伝統的なインド舞踊風あり、バングラビートあり、ディスコ調ありと音楽にかんしてもてんこ盛りだ。

最後のほうでは、『オペラ座の怪人(ファントム・オブ・オペラ)』のような曲が使われていたが、まあ最初から最後までうるさいこと。静かに鑑賞する映画ではないのがボリウッド映画ですね。


(インド版 サントラCDジャケット)


<関連サイト>

『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム Om Shanti Om』 オフィシャルサイト ・・映画内容や劇場情報については公式サイトを参照

『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム Om Shanti Om』 フェイスブックページ

Om Shanti Om - Theatrical Trailer (インド版トレーラー)

Dhoom Taana Full HD Video Song Om Shanti Om (ダンスシーン)

Om Shanti Om Full Movie (映画全編 ただし字幕なし)




<ブログ内関連記事>

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2013年2月9日土曜日

ミュージカル映画 『レ・ミゼラブル』を観てきた(2013年2月9日)-ミュージカル映画は映画館で観るに限る!


いま話題のミュージカル映画 『レ・ミゼラブル』をTOHOシネマズで観てきた。

こんなに泣ける映画だとは思いもしなかった。映画のなかでなんども涙がこみあげ、あふれでる涙を止めることができなかった。

もちろん、観る人の年齢、男女によってまったく異なる受け取れ方をされるのだろう。ある程度の年齢を重ねた男性にとっては、どうしても主人公ジャン・バルジャンに感情移入してしまうのではないだろうか。

ラウトシーン近く、天に召されるシーンでは思わず涙がこみあげてきた。逆境のなかさまざまな苦難を体験しながらも、みずからに課した義務を遂行し、やるべきことをやりぬいた悔いのない人生

映画館でこんな思いをするのは、そう多くはない。


アメリカにいたときにミュージカル版の『レ・ミゼラブル』を観る機会があったのだが逸してしまった。いまから20年前の留学中のことだ。まだ日本では公演されていなかったと思う。

ミュージカルが日本で公演されるようになるまでは、『あゝ無情』という日本語タイトルのほうが有名だったかもしれない。わたしも、一切れのパンを盗んだため投獄された主人公について話ということころまでは小学校時代に知っていたが、原作はいまにいたるまで読んでいない。

だから、あらすじを知らないままいきなり映画を見たのだが、断片的に知っていたエピソードはかなり端折られていた。岩波文庫で4冊もあるヴィクトル・ユゴーのあの長い原作本を、わずか2時間40分に圧縮しているのだから当然といえば当然だろう。ひじょうにテンポの早いスピーディーな展開で、まったく飽きることなく最後まで観てしまう。

(ジャン・バルジャンの養女となった孤児コゼット)

ミュージカル映画だから当然のことながらセリフはすべて歌で、しかも英語である。かなり聞きやすい簡単な英語である。スラングの多い映画の英語セリフと違って、単純な表現で明瞭な発声なので英語の勉強のためにはいいかもしれない。

じつは、この映画は観るか観ないか決めかねていたが、観ることにきめたのは、韓国では空前の大ヒットになっているという記事を読んだからだ。映画「レ・ミゼラブル」に熱狂する韓国人 韓国の今を映し出す映画として社会現象に(趙 章恩、日経ビジンスオンライン 2013年1月30日)。

キリスト教徒が全人口の 1/3 を超える韓国ならではというわけでもないようだ。基本的に19世紀フランスが舞台なのでキリスト教(・・とくにカトリック)の色彩のつよい内容だが、もちろんキリスト教徒ではなくても感動する内容である。

秘密を抱えたまま黙って世を去っていく主人公の姿には、日本人の琴線に触れるものがあるといっていいかもしれない。

しかも、人生の節々で倫理的な難問を突きつけられる主人公は、なんだか対話型授業で有名になった『ハーバード白熱授業』のサンデル教授の授業内容のようでもある。

真人間に改心してからのジャン・バルジャンがとった選択肢は、いずれも彼にとっては不利になるものであったが、自分にウソをつかない悔いのない人生とは何かとは考えることにつなることも、この映画に感動する理由の一つなのだろうと思ってみる。

エルビスも歌っているアメリカのスタンダードナンバーの『マイ・ウェイ』のような内容であると言ってもいいかもしれない。

『オペラ座の怪人』の映画版もそうであったが、ミュージカル映画やオペラ映画は映画館で観るに限る。ステレオの大音量でなければ十分に楽しめないからだ。

観る価値のあるミュージカル映画である。まだ観ていない人はぜひ観ることをお薦めしたい。







<関連サイト>

『レ・ミゼラブル』 (公式サイト)
http://www.lesmiserables-movie.jp/

TOHOシネマズ 映画紹介
http://hlo.tohotheater.jp/net/movie/TNPI3060J01.do?sakuhin_cd=009489

Les Miserables 2012 Movie Soundtrack ! (YouTube  全編収録 字幕なし 1時間58分)

(2014年8月7日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!
・・「3Dコンピュータアニメーション・ミュージカル・ファンタジー映画」!


(2014年8月7日 情報追加)




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