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2021年3月11日木曜日

書評『首都直下地震と南海トラフ』(鎌田浩毅、MdN新書、2021)ー 地球科学は歴史学とおなじ構造。過去をよく知ることが明日につながる

 

2011年の「3・11」から10年になった。津波と原発事故を引き起こした「東日本大震災」から10年である。 

自然界というものはよくできたもので、先月2月13日には「余震」(?)という形で警告を発してくれた。福島県沖の深海で発生したマグニチュード7.3の地震である。

けっして自分が健忘症というわけではないのだが、震源地から離れた関東地方でも比較的大きな揺れ(震度5弱)となったので、さすがに「覚醒」せざるを得なくなった。積み上げていた本の山が崩れて散乱したからだ。 

そんななか、久しぶりに地球科学の鎌田さんの新刊本を読んだ。『首都直下地震と南海トラフ』(鎌田浩毅、MdN新書、2021)である。タイトルに引かれたことは言うまでもない。  

「千年に一度」というほどの大規模な地震であった「3・11」以降、日本列島は「大地変動の時代」に突入したのである。海では「余震」、陸では「直下型地震」が誘発されるようになったのである。 

最初の3章までがタイトルとおりの地震にかんする話、そして第4章で富士山噴火を含めた火山噴火の話である。地震と噴火は地下で連動しているのだ。

地球の表面を覆うプレートがぶつかりあう日本列島に住んでいる限り、地震と火山は切っても切れない関係にある。「揺れる大地」に生きてきた宿命である。 

第5章から終章までは、タイトルとは直接関係ないが、地球科学(=地学)を中心にした科学全般の話。科学の効用と限界について、幅広い教養に支えられた啓蒙的な話と、日本列島に生きる人にとっての生き方についての話。 

たとえば、「地球温暖化」についても、地球科学の観点からすれば、現在は「寒冷化」に向かっていることは「常識」だとする。地質学者のかなり大勢は、そう考えているようだ。著者のいう「長尺の目」で、長いスパンでものを考えることも必要なのである。 

わが意を得たりと思ったのは、鎌田氏が「地球惑星システム」の形成には、生命の誕生や進化とおなじ「歴史科学」の構造があると指摘していること。地震や噴火も、過去の事例を研究することが何よりも重要なのもその一環だ。 

「地球史」もまた「進化」で語られてきたのである。誕生から現在まで46億年に及ぶ「地球史」という視点が重要なのだ。 

なるほど、自分もまた高校時代に「地学」が好きだったのはそのためだな、と大いに納得する。大学入試に際しては、理科は物理と地学で受験したくらいだ。 

そんな個人的な話はさておき、一般向けに書かれたことの本は、鎌田氏の「科学の伝道師」としてのコミュニケーション能力がフルに発揮されていていて読みやすい。女優の室井滋との対談も息があっている。 

学校教育で「地学」が軽視されているような印象をもっているが、「揺れる大地」の住民にとって「地学は常識」だとしたいものだ。


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目 次
序章 東日本大震災から10年、いつ来てもおかしくない大災害 
第1章 地震の活動期に入った日本列島 
第2章 首都直下地震という新しいリスク 
第3章 M9レベルになる「西日本大震災」と南海トラフ 
第4章 富士山噴火の可能性も高まった 
第5章 なぜ世界で自然災害が増えているのか 
第6章 「長尺の目」で世界を見る 
第7章 科学にできること、自分にしかできないこと 
第8章 地球や自然とどうつきあうか 
終章 私たちはどう生きるべきか 


著者プロフィール
鎌田浩毅(かまた・ひろき) 
1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)を経て、1997年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション。京大の講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める人気で教養科目1位の評価。火山研究のほか、科学をわかりやすく伝える「科学の伝道師」。1996年に日本地質学会論文賞受賞。『火山噴火』(岩波新書)、『富士山噴火と南海トラフ』『地学ノススメ』(いずれもブルーバックス)、『地球の歴史』(中公新書)、『京大人気講義 生き抜くための地震学』(ちくま新書)など著書多数。


<ブログ内関連記事>







・・「読んでいてひじょうにうれしく思ったのは、知的自伝を語りながら、レヴィストロースの少年時代からの、地質学と考古学への深い関心が歴史学的思考の基礎にあることを知ったことだ。」


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2012年5月26日土曜日

地層は土地の歴史を「見える化」する-現在はつねに直近の過去の上にある


むきだしになった地層。うちの近所で河川改修工事をやっている工事現場で目にしました。

おお、見事なまでに色分けされてますね! これほど明確に色分けされている地層もめずらしい。

そうとうの粘土質のようですが、おそらく河川の氾濫による堆積物が層状に積み上げられたものでしょう。

今週は、金環日食ということで、太陽が最大のトピックとなりましたが、それ以外の身の回りの「地学」にも目を向けたいものです。

地層は土地の歴史を「見える化」するものです。

人間がつくったのではない、自然に堆積した地層。土地の歴史が刻み混まれてます。

人に歴史あり、土地に歴史あり。

過去があって現在がある、現在があって未来がある。いきなりの飛躍はない、ということ。

過去の地層の上に現在の地層があり、形成中の地層の上にさらにあらたな地層が未来に向けて堆積していく。褶曲(しゅうきょく)によって上下が入れ替わったよに見えることもありますが、地層には不連続はありません。飛躍はないのです。

逆にいえば、現在の地層の根底には、かならず過去の地層があるわけです。たとえ表面には見えなくても、過去の地層がなくなることはないのです。

歴史もまた同じ。歴史に断絶する瞬間はありますが、不連続はありません。

地層は土地の歴史を「見える化」したものです。

身の周りには観察すべき対象がゴロゴロしています。「身の回りから観察」るすのが、「アタマの引き出し」を増やすいちばんの方法。

まずは身の回りの自然観察からはじめましょう!!





<関連サイト>

地形判読のためのページ(国土地理院)

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<ブログ内関連記事>

「理科のリテラシー」はサバイバルツール-まずは高校の「地学」からはじめよう!

書評 『アースダイバー』(中沢新一、講談社、2005)-東京という土地の歴史を縄文時代からの堆積として重層的に読み解く試み

書評 『土の科学-いのちを育むパワーの秘密-』(久馬一剛、PHPサイエンス・ワールド新書、2010)

レヴィ=ストロースの 『悲しき熱帯』(川田順造訳、中央公論社、1977)-原著が書かれてから60年、購入してから30年以上の時を経てはじめて読んでみた
・・「レヴィストロースの少年時代からの地質学と考古学への深い関心が歴史学的思考の基礎にある」

(2014年8月12日 情報追加)




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2012年4月9日月曜日

「理科のリテラシー」はサバイバルツール。まずは高校の「地学」からはじめよう!


「理系離れが進行している」という危機意識に充ち満ちた発言が聞かれるようになってから、どれくらいの年月がたっているだろうか?

「3-11」後にく驚いたのは、日本国民の「理科のリテラシー」が想像以上に低くなっていたことだ。

リテラシー(literacy)とは、もともと識字率の識字のことを意味していたコトバだが、現在では意味が拡張されて、理解してつかいこなす能力のことを意味するようになっている。

「理科のリテラシー」とは、理科の基本知識を理解したうえで身につけてつかいこなす能力のことを意味していえうろ御理解いただきたい。

わたし自身、いままでいろんな機会で、日本人とくらべるとアメリカ人の理科や数学のリテラシーが低いと発言してきたが、どうやら撤回しなければならないようだ。

なんといっても驚いたのは、核分裂について学校で教えなくなっていたという話だ。この話を聞いて愕然とした。大学入試の受験科目にないからという理由で理科を選択しない学生が増えているという話は以前から聞いていたが、そのあまりの功利的な姿勢が、知らないうちに、みずからの命を危険にさらしていることにどれだけ気がついているのだろうか? 「3-11」後には、核分裂にかんする教育が復活すると報道はされている。

「ゆとり教育」の悪影響が、日本人の生命を危険にさらしている。

いや、ゆとり教育で目指されていた総合的学習こそ、理科のリテラシーを高めるはずのものだったのではないか?

しかしそうはいっても、化学のメンデレーエフの周期表はちゃんと勉強しないと、物理法則の基本を勉強しないと、生物の基礎知識がないと、ゆとりでもなんでもない。

受験で選択していないからわからない? 理科はキライだから思い出したくもない? 

いやいや、それでは困ります。

では、まずは、「地学」からはじめよう! たしかに物理や化学は、いまから勉強し直すのは敷居が高いかもしれない。だからまずは地学から。

地学とは地球科学の略、地球とは自分たちが生きている星のことだ。「地球にやさしい」というキャッチフレーズはクチにしても、地球がそのそもどんなものか知っていなければ意味はない。

そしてなによりも、地震国で火山国の日本に住んでいる以上、自分が立っている大地がどのような構造をもっているのか一通りの知識をもっていることは、命にもかかわる重要な知識である。

それには、高校地学の教科書を復習するのがいちばんだ。

いろいろ教科書や参考書をさがしてみたが、その結果、『新しい高校地学の教科書(現代人のための高校理科) 』(杵島正洋/松本直記/左巻健男、講談社ブルーバックス、2006)がもっともいいという結論に達した。

編著者は、いずれも高校で教鞭をとっている現役の教師ばかり(執筆時)だから、高校生の理解の程度も熟知している。だから、安心して本書を読んでいけば、ひととおりの地学の知識を得ることができる仕組みになっている。

「さくいん」も用意されているが、辞典としてつかうよりも、最初から理解しながら読むのが王道というべきだろう。もちろん、もっとも知りたいと思う章から読み始めるのもいいことだ。

目次を掲載しておこう。これで地学がカバーする範囲を具体的に把握することができるはずだ。

はじめに
第1章 地球の形と構造
第2章 地球をつくる岩石と鉱物
第3章 地震・火山・プレートテクトニクス
第4章 変わりゆく地表の姿
第5章 地球と生命の進化
第6章 大気と水が織りなす気象
第7章 海洋がもたらす豊かな環境
第8章 太陽系を構成する天体
第9章 恒星と銀河、宇宙の広がり
やってみよう
コラム

地学がカバーする範囲はきわめて広い。物理や化学が基礎化学の性格がつよい学科であるとすれば、地学は総合科学の色彩のきわめて濃い学科である。範囲は地球を越えて宇宙にまで及ぶ。

上記に掲載した目次でみれば、第1章から第4章までは狭い意味の地球科学に該当する。これ4には第7章も加えていいだろう。第5章は、化石などを研究対象とする古生物学ともオーバーラップする領域だ。第6章は気象学、第8章と第9章は宇宙物理学、それ以外の各章とも化学とオーバーラップしている。さらにいえば、地層には歴史も含まれるし、国語・数学・英語という基礎科目を補強するものでもある。

わたしの母校では、地学は高校一年で履修する「地学Ⅰ」しか開講されていなかった。30年以上前ですら、地学を専門に教えることのできる教師の絶対量が不足していたのだ。高校時代は『地球の歴史 第2版』(井尻正二/湊 正雄、岩波新書、1974)を愛読していたわたしは、高校三年時には、ほんとうは「地学Ⅱ」を選択したかったのだが選択不能だった。そのかわり「物理Ⅱ」を選択することにした。

そういったむかし勉強したから地学はもういいという人も、この本を読むべき価値があるのは、「第3章 地震・火山・プレートテクトニクス」があるからだ。「プレートテクトニクス理論」が定着したのはそう古い話ではないが、この理論について知っていることは、地震国日本に住む人にとっては常識とならねばならないのだ。

「現代人のための高校理科」のシリーズからは、地学のほか、物理、化学、生物が出版され、それぞれ着実に版を重ねている。

ブルーバックスなど手にとって読んだことがないという人も、ぜひ自分がもっとも好きだった科目から手にとってみるといいと思う。試験勉強ではないのだから、気楽に楽しみながら読み進めたい本である。ぜひ、理科全般にわたって再学習をすすめてほしい。

「理科のリテラシー」は、あなたとあなたの大事な人たちを救う知識である。まずは足もとにある大地の学習から!


(画像をクリック!)

 

著者プロフィール


杵島正洋(きしま・まさひろ)東京大学理学部地学科、同大大学院修士課程で韓国の地質を研究し、現在は慶應義塾高等学校教諭・慶應義塾女子高等学校講師。専門は地質学・理科教育(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
松本直記(まつもと・なおき)現在、慶應義塾高等学校教諭・慶應義塾湘南藤沢中等部講師・NHK高校講座地学(気象分野)講師。気象予報士。主に地学を題材として新たな科学教育の展開を模索している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
左巻健男(さまき・たけお)東京大学教育学部附属中・高等学校教諭、京都工芸繊維大学教授等を経て同志社女子大学現代社会学部現代こども学科教授。専門は理科教育、環境教育。新理科教育ML代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

地形判読のためのページ(国土地理院)

(2016年6月21日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

■理科全般

Study nature, not books !・・19世紀米国の海洋学者、地質学者、古生物学者であったルイ・アガシーの名言

「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦が書いた随筆 「天災と国防」(1934年)を読んでみる

「地震とナマズ」-ナマズあれこれ

「リスボン大地震」(1755年11月1日)後のポルトガルのゆるやかな 「衰退」 から何を教訓として学ぶべきか?

スリーマイル島「原発事故」から 32年のきょう(2011年3月28日)、『原子炉時限爆弾-大地震におびえる日本列島-』(広瀬隆、ダイヤモンド社、2010) を読む

ファラデー『ロウソクの科学』の 「クリスマス講演」から150年、子どもが科学精神をもつことの重要性について考えてみる


■地学関連

『崩れ』(幸田文、講談社文庫、1994 単行本初版 1991)-われわれは崩れやすい火山列島に住んでいる住民なのだ!

地層は土地の歴史を「見える化」する-現在はつねに直近の過去の上にある


■2012年度新学期特集

① 総論
福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!

②古文(国語)
書評 『平安朝の生活と文学』(池田亀鑑、ちくま学芸文庫、2012)-「王朝文化」を知るために

③数学とコンピューター
書評 『コンピュータが仕事を奪う』(新井紀子、日本経済新聞出版社、2010)-現代社会になぜ数学が不可欠かを説明してくれる本

④地学と理科

本編

⑤社会科学

(予定)

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