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2010年4月7日水曜日

鎮魂!戦艦大和。 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む

    
                                 
 65年前の本日、すなわち昭和20年(1945年)4月7日、前日から沖縄特攻作戦に出撃した戦艦大和は、米軍による航空攻撃を受け撃沈、海の藻屑と消えた。

 攻撃開始は4月7日 12:32、そして同日 14:23 に沈没。3,333人の乗員は、艦長以下ほぼすべてが戦死。 

 本日は鎮魂を祈念して、戦艦大和にかんする大著2冊を紹介することとしたい。

 特攻隊出撃もそうであるが、戦艦大和の最期もまた、桜の咲く季節にふさわしい。

 戦艦大和は、日本人が世界の頂点にたった記憶として今後も末永くその悲劇的な最後とともに回想されることとなるだろう。


 この機会に、本を紹介しておきたい。残念ながら現在は品切れで入手が難しいが、読むに値する内容の本である。私はこの本を、呉の戦艦大和ミュージアムのミュージアム・ショップで入手して読みふけった。 

 技術関連分野で数々のノンフィクション大作を発表してきた前野孝則氏による著作である。

 『戦艦大和の遺産 上下』(前野孝則、講談社+α文庫、2005、単行本初版 2000) と 『戦艦大和誕生 上下』(前間孝則、講談社+α文庫、1999、単行本初版 )である。

 『戦艦大和の遺産 上下』は、単行本初版の際のタイトルは、『世界制覇 上-戦艦大和の技術遺産-』と『 世界制覇 下-巨大タンカーを創った男-』である。単行本のタイトルは内容そのものなのだが、文庫版で改題することによって、1930年代の戦艦大和建造が、戦後日本の製造業にどういう意味をもっていたのかを考える材料を与えてくれることになる。

 『戦艦大和誕生 上下』は、単行本初版の際のタイトルは、『戦艦大和誕生 上-西島技術大佐の大仕事-』と『戦艦大和誕生 下-「生産大国日本」の幕開け-』である。

 この戦艦大和二部作を読むことによって、戦後日本の製造業の歴史を振り返り、21世紀の日本の製造業は何を目指すべきか考える材料としたいものである。


 以下、『戦艦大和の遺産 上下』を中心に紹介を行う。



「ドクター合理化」とよばれた傑出した技術系経営者・真藤恒と、敗戦後いち早く世界の頂点に立ち、そしていち早く衰退していった日本造船業の盛衰史

 戦前1930年代後半(1937-1940)に、当時世界最大の戦艦大和を作り上げた日本の技術が、いかに戦後の「造船大国日本」につながっていったかを描いた、文庫本で上下あわせて900ページを超える大作ノンフィクションである。ディテールのすみずみに至るまで、細かく検証を行った、読ませる日本技術史、日本産業史となっている。

 主人公は、石川島播磨重工(IHI)社長として、造船では二流企業であった同社を、業界トップ企業に押し上げた原動力となった真藤恒(1910-2003)である。民営化後のNTT(旧電電公社)会長時代にリクルート事件に連座して晩節を汚すこととなったが、技術者出身の製造業経営者として「ドクター合理化」とよばれ、グローバルなダイナミックな視点をもって大胆にリスクをとった傑出した経営者であったことは、著者である前野孝則氏の力作によって名誉回復されたと考えていいだろう。

 本書の読みどころはたくさんあるが、まず戦後造船史の知られざる重要テーマである、敗戦後の米国占領下において戦犯工場とされた戦艦大和建造の呉工廠があげられる。米国系資本NBC造船のもとで、再生を実現した技術系経営者・真藤恒の手腕の全容を明らかにしたこと、画期的な手法で数々の船舶を建造したこと、カスタムメイドの貨物船建造にモジュール化による「標準化」の手法を持ち込んだことである。

 とくに、標準化にかんしては、一隻ごとにオーナーと製品仕様を決めていく「すりあわせ型」ではなく、あらかじめメーカー側が決め製品規格を決めてカタログに掲載して販売するという、きわめて合理的な米国スタイルであったことだ。標準化によって設計図が共通化されることになり、部品の共通化できるので大幅なコストダウンが可能となる。これらはみな、1930年代に当時は世界最大であった戦艦大和を、自力で建造した日本人の生産技術の遺産なのである。



 1930年代の戦艦大和建造プロジェクトがいかなるものであったかについては、本書の姉妹編である『戦艦大和誕生 上下』(前間孝則、講談社+α文庫、1999)を読む必要がある。

 『戦艦大和誕生 上』は副題を「西島技術大佐の未公開記録」、『戦艦大和誕生 下』は、副題を「「生産大国日本」の源流」としている。本書は、生産技術面で戦後日本の基礎をつくったとさえいいうる西島海軍技術大佐の手記をもとにしている。

 バブル期には当時の大蔵省主計官によって、伊勢湾干拓、青函トンネルとならんで「昭和の三代馬鹿査定」とののしられた戦艦大和建造プロジェクトであるが、1930年代後半において、自前で巨大戦艦という巨大建造物を自力で作り上げた技術力をもっていたことは、後世の日本人からみても誇り以外の何者でもない。

 しかし詳しく細部を見ていくと、標準化やマニュアル化、品質管理全般、量産性といった近代的な生産管理がまったくなっておらず、部品製造や溶接技術など取り上げても、1930年代当時のドイツや米国からは大きく遅れていたことが本書によって知ることができる。いまから考えると驚き以外の何者でもないのだが。

 なんといっても要素技術の積み重ねが総合技術なのだと考えると、戦前の日本は技術的にみれば発展途上段階であったことは明らかである。

 本書は、敗戦後いち早く世界の頂点に立ち、そしていち早く衰退していった日本造船業の盛衰を描いた産業史ともなっている。

 読んでいて印象に残ったのは、戦艦大和を作り得た「生産技術」は、戦後さらに進化発展をしたものの、生産技術に重点を置きすぎてビジネスモデルとしてのダイナミックさを欠いた造船業においては、技術の枠を集めた高度な機能をもった高速船として結実しなかったことだ。これはひとり造船業だけでなく電子分野でも、自動車産業でも同じような状況が観察される。日本の技術の性格を明らかに示しているといってよい。
 
 世界最大の造船国のポジションは韓国に譲って久しく、もはや造船業が日本の基幹産業といえる状況ではない。しかし、日本の技術、とくに生産技術がいかなる形で発展進化をとげてきたか詳細に跡づけた本書は、大いに学ぶべき事例に充ち満ちた本であった。

 ボリュームだけでなく、内容も豊富な本書は、必ずや充実した読書感をもつことになるはずだ。おすすめである。
 

<初出情報>

■bk1書評「ドクター合理化」とよばれた傑出した技術系経営者・真藤恒と、敗戦後いち早く世界の頂点に立ち、そしていち早く衰退していった日本造船業の盛衰史」投稿掲載(2010年4月6日)
■amzon書評「傑出した技術系経営者であった真藤恒と、世界最大となった日本造船業の盛衰」投稿掲載(2010年4月6日)

 2年前に書いた文章をもとに、上記投稿を作製、ブログには投稿から削除した文章も含めて再構成した。

 なお、残念ながら両書ともに品切れ状態である。古本で入手するか、図書館で借りるしかない。




PS なんとウレシイことに、草思社から文庫版で『戦艦大和誕生 上下』が復刊された! ボリュームはあるが、じつに面白い本なので、ぜひ一読していただきたいと思う。(2017年6月5日 記す)





<付記>

 『戦艦大和誕生 上下』(前間孝則、講談社+α文庫、1999)は、タイのバンコクに持ち込んで読んだのだが、日本とタイの技術レベルの圧倒的な差についていろいろ考えさせられた。そういう読み方も可能である。

 日本の1930年代は、まだまだ生産技術面での課題は大きかったが、先進国であるドイツや米国には及ばずとも、かなりの水準にあったのである。

 ぜひ MOT(Management of Technology:技術経営)の副読本とすべきである。

 呉の「戦艦大和ミュージアム」(呉市海事歴史科学館)には、実物の1/10スケールの戦艦大和の模型がある。写真を紹介しておこう。日本人なら一度は訪れたいミュージアムである。


 スペースシャトルで飛行し、現在は宇宙にいる日本人宇宙飛行士・山崎直子さんは、宇宙飛行士になりたいという夢をもったきっかけが、アニメの『宇宙戦艦ヤマト』がきっかけとなったと語っていたが、この話に突入すると収拾がつかなくなるので、今回はふれるのはやめにしてワープすることにしておこう。





<関連サイト>

事務屋、技術屋ではなく社会人たれ 真藤恒の技術経営を学ぶ[その1] (2011年4月1日 追加)



<ブログ内関連記事>

海軍関連

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み
・・『海自レシピ お艦の味-元気が出る!安くて美味しい力めし-』(海上自衛隊協力、小学館、2010)について紹介。とくに潜水艦乗組員にとっては三度の飯が何よりも楽しみである。しかも時間感覚を狂わせないために三度の飯を定時にたべさせるのである、と。わたしも一週間以上つづくシベリア鉄道に乗ってみたことがり、その感覚は理解できる。

祝! 海上自衛隊創設60周年-2012年10月14日の第27回海上自衛隊観艦式ポスターに書かれている「五省」(ごせい)とは?

「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」 には続きがあった!-山本五十六 その2

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加(2013年7月18日)-軍港クルーズと徒歩でアメリカを感じる横須賀をプチ旅行


ものつくり関連

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-これからの日本のものつくりには 「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」 が必要だ!

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」。問題は製造業だけではない!

書評 『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②-』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

(2014年8月18日 項目新設)


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