「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

◆「アタマの引き出し」つくりは "掛け算" だ : 「引き出し」 = Σ 「仕事」 × 「遊び」
◆酒は飲んでも飲まれるな! 本は読んでも読まれるな!◆ 
◆一に体験、二に読書、その体験を書いてみる、しゃべってみる!◆
◆「好きこそものの上手なれ!」◆

<旅先や出張先で本を読む。人を読む、モノを読む、自然を読む>
トについてのブログ
●「内向きバンザイ!」-「この国」日本こそ、もっとよく知ろう!●

■■ 「むかし富士山八号目の山小屋で働いていた」全5回 ■■
 総目次はここをクリック!
■■ 「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回 ■■ 
 総目次はここをクリック!
■■ 「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に ■■
 総目次はここをクリック!


「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!

「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!
ビジネス寄りでマネジメント関連の記事はこちら。その他の活動報告も。最新投稿は画像をクリック!



ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、コピー&ペーストでお願いします。

© 2009~2026 禁無断転載!



ラベル ものづくり の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ものづくり の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2024年1月26日金曜日

書評『日本製鉄の転生 ― 巨艦はいかに甦ったか』(上阪欣司、日経BP、2024)― 大企業も経営者次第で変わることができる!

 

 出版されたばかりの『日本製鉄の転生 ー 巨艦はいかに甦ったか』(上阪欣司、日経BP、2024)を読んだ。最近には珍しく腹の底から元気がでる本だ。  

先日、米国のUSスティールを買収するというニュースが日本の経済界を賑わせたばかりだが、じつにタイミングのいい出版である。まさに日鉄がどう変身したのか、その内実を知りたいと思っていたからだ。 

記者として日経新聞の産業部で鉄鋼など製造業を追ってきた著者自身も、2022年から6年ぶりに取材を再開したらしいが、日本製鉄の変身ぶりに驚いている。それが読者にもダイレクトに伝わってくる。 

日本を代表する大企業が崖っぷちから2年で「V字回復」したストーリーは、日本航空や日立製作所などに続くものといえよう。要は経営者次第で巨大企業も変わることができるのだ、と。 

JALの場合は外部から招かれた稲盛和夫氏がリードしたが、日立や日鉄の場合は生え抜きの社長による変革の成功事例である。 

しかも、日鉄を崖っぷちから再生させた橋下英二氏は技術畑ではなく、営業畑の出身である点も特筆すべきだろう。学部は違うが大学の先輩にあたる人だが、本書によれば学園祭の実行委員長だったらしい。学生時代から誰もが一目おくリーダーだったようだ。 

動きが鈍くて恐竜扱いされる大企業といえども、経営者次第で変わることができるのである。しかも、日本人が強みを発揮できるのは製造業であろう。ものづくりであろう。

日鉄の成功に続く大企業が、1社でも多くでてきてほしいものだ。 ひさびさに腹の底から元気がでる本であった。 


(画像をクリック!)


目 次 
はじめに 
プロローグ 
 【コラム】よく分かる日本製鉄 
第1章 自己否定から始まった改革 ー 5つの高炉削減、32ライン休止の衝撃 
第2章 「値上げなくして供給なし」ー 大口顧客と決死の価格交渉 
第3章 異例のスピードで決断 ー インドで過去最大M&A 
第4章 動き出すグローバル3.0 ー「鉄は国家なり」の請負人に 
 【コラム】インド発、踊る製鉄所見聞録 
第5章 国内に巨額投資の覚悟 ー 高級鋼で勝ち抜く「方程式」 
 【コラム】石油会社が認める高級鋼「油井管」の謎 
第6章 脱炭素の「悪玉」論を払拭せよ ー 鉄づくりを抜本改革 
第7章 「高炉を止めるな!」ー 八幡の防人が挑む改革後の難題 
第8章 原材料戦線異状あり ー 資源会社に巨額出資 
第9章 橋下英二という男 ー 野性と理性の間に
 【コラム】日本製鉄社長 橋下英二氏 
おわりに 



PS ついに日鉄による米鉄の100%買収が決着(2025年6月14日)

発表からなんと1年半。ようやく、ここに決着した。トランプ大統領の英断を讃えたい。

・・「日本製鉄は14日、米鉄鋼大手USスチールの買収を巡り、米政府との間で安全保障上の懸念を 払拭 する国家安全保障協定を結び、トランプ大統領が両社の「パートナーシップ」を承認したと発表した。日鉄は、USスチールの普通株100%を141億ドル(約2兆円)で取得して買収が成立し、「完全子会社化が実現する」と説明している。一方、USスチールは米政府に対し、少数の保有で企業の重要な決定への拒否権を持つことができる「黄金株」を発行する。 
トランプ米大統領は米国時間の13日、買収計画について、米政府と安全保障協定を結ぶことなどを条件に、「取引による国家安全保障の脅威は十分に軽減できると判断する」と明記した大統領令に署名した。」(・・・後略・・・)

これでようやく長い旅が終わった。めでたし、めでたし。今後は、いかに日鉄が設備投資に見合った利益を確保していくかにある。今後の検討を祈るとともに、日米同盟が盤石化する経済的基盤が確立する要素の一つとなることに安心する。

(2025年6月14日 記す)


<関連記事>



橋本会長 「私もまもなく卒業だが、次世代に残したいのはビジョンと選択肢だ。選択肢とは社員一人ひとりに成長の機会を与えること。困難だったUSスチールの買収、これで終わりではなく、これからも勝負で、それに挑戦するということだ。成長ありきの会社にしていく、社員のポテンシャルを最大限に引き出していくためにも、今回の買収に挑戦していくべきだと思った。もちろん失敗もあるかもしれないが、挑戦しないで理不尽な結果に甘んじて諦めるよりは、1%でも可能性があるなら、それにかけようと思いやってきた」

(項目新設 2025年7月17日)


<ブログ内関連記事>




(2025年1月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end

2022年12月11日日曜日

書評『イーロン・マスクの世紀』(兼松雄一郎、日本経済新聞出版社、2018)― ビジョナリー起業家が米国においてもつ意味とインパクトを考察



テスラでは電気自動車のスポーツカー、スペースX では火星移住など、とてつもない大胆なフロンティア開発の夢をぶちあげて、米国の製造業を牽引している起業家イーロン・マスク。

「デジタル時代のものづくり」の星ともいうべき存在は、すでにスティーブン・ジョブズを越えているといっていいだろう。

ことし2022年に入ってからも、ウクライナへのスターリンク供与でウクライナ戦争に貢献したと思っていたら、今度は twitter を買収して、またまた物議をかもしている。相変わらずのお騒がせぶりである。 

だが、イーロン・マスクのなにがすごいのか、礼賛記事からだけでは見えてこない。 なにかいい本はないかと探していたら、目についたのが『イーロン・マスクの世紀』(兼松雄一郎、日本経済新聞出版社、2018)という本だった。  

日本経済新聞社のシリコンバレー支局特派員を、2013年から2018年まで5年間つとめた記者によるもの。地の利を活かした取材と考察のたまものというべき一冊だ。 

イーロン・マスクの評伝ではない。礼賛でも否定でもない。イーロン・マスクというたぐいまれなビジョナリー起業家が、米国においてもつ意味とインパクトを、その人脈とエコシステム全般をカバーすることで押さえることで、浮かび上がらせあげようと試みたものだ。じつに面白い本だった。 

イーロン・マスクがメインにしているのは、自動車や宇宙産業だが、さらに拡げて交通やエネルギーなどインフラ、都市開発全体、さらには政治にまで影響力を及ぼしている。 多岐にわたった取り組みの本質はなにか? 

著者による考察には、大いに納得いくものがあった。それは、以下のようなものだ。


マスクがやっているのは、すでに存在しているがビジネスとしては開花していない技術を集め、巨額の量産投資により、価格破壊までの期間を大幅に短縮することだ。(・・中略・・)一部の投資家は、そこに単に高リスク事業を超えた実験価値を見いだす。それこそがマスクの錬金術を読み解くカギだ。(P.213)
 

なるほど、主に公共部門が担ってきた「規制業界」に民間企業として風穴をあけるのが、イーロン・マスクの真骨頂なわけだ。その意味では、航空業界に新規参入した英国のヴァージングループの総帥リチャード・ブランソンとも共通性があるわけだな。 

日本には、なぜ GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル) が生まれないのかという危機感をあおる人が多いが、あまり意味のない話だろう。ビジネス風土があまりにも違うからだ。 

だが、「デジタル時代のものづくり」という点にかんしてはイーロン・マスクに学ぶべきものはじつに多い。 

イーロン・マスクがやってきたことは、いっけん突拍子もないように見えながら、さすが物理学専攻の人だけあって、物理法則に反したことをしているわけではない。 

夢はとてつもなくでかいが、取り組みはかなり現実的だ。超長期の時間軸で思考し、実現までの時間を短縮する。やや無茶ぶりが目立つのではあるが、後者にかんしては日本企業もやってきたことではないか。 

「デジタル時代のものづくり」という観点から、イーロン・マスクについては、今後どう進化していくのかを含めて、まだまだ研究する必要がありそうだ。 

地球上のフロンティア消滅したとしても、宇宙には広大なフロンティアが拡がっているではないか!


(画像をクリック!)


目 次
まえがき 
マスクの人脈図 
イーロン・マスク年表 
CHAPTER 1 さらばアップル-米国製造業の革命 
CHAPTER 2 ロボットと愛-トヨタをあざ笑う 
CHAPTER 3 解けるエジソンの呪い-電力の未来 
CHAPTER 4 「ザッカーバーグは分かってない」-AI終末論 
CHAPTER 5  トランプとの伴走-近似形の二人 
CHAPTER 6  マルキシズム2.0-シリコンバレーの不安 
CHAPTER 7  アキレスと2匹の亀-異端投資の生態系
CHAPTER 8  米都市の生と死-蝸牛とブガッティ
CHAPTER 9 アイアンマンのダークサイド-殺人マーケティング
CHAPTER 10 起業家の建国神話-物語が育むアメリカ
CHAPTER 11 方舟と民主主義-紅いディストピア
CHAPTER 12 トム少佐の退屈-マスクがまだ語っていないこと
あとがき 
主な登場組織・企業の解説
参考文献


著者プロフィール
兼松雄一郎(かねまつ・ゆういちろう)
日本経済新聞記者。1979年兵庫県生まれ。東京大学文学部卒。2005年、日本経済新聞社入社。財務省、素材、エネルギー、建設・不動産、電機・ゲーム、医薬、自動車、通信などの業界を担当。2013年10月から2018年3月までシリコンバレー支局特派員。東京本社編集局企業報道部記者。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<ブログ内関連記事>





(2025年1月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどう
ぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!







end

2013年7月26日金曜日

書評『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)ー アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明



スマートフォンという概念をつくりだした iPhone の売り上げが鈍ってきているようだ。サムスンなどとの競合も厳しくなってきており、アップルの業績が2四半期連続で悪化していることが昨日(2013年7月25日)ニュースで報道されていた。

ジョブズが死んですでに2年近くたち、アップルの神通力にも陰りが見えてきたのかもしれない。いやスマホというガジェットが普及した結果、市場はすでに飽和状態にあるというのが正確かもしれない。

アップルの業績が上がろうが下がろうが関係ない、ということはないのである。それはアップル製品の熱狂的なファンにとってだけでなく、日本の製造メーカーの多くにとってもそうなのだ。とくに部品製造にかかわる日本の製造業にとってはきわめて大きな問題である。

アップルの各種製品の生産量が減少すると、それはもろに日本のメーカーにはダイレクトにはねかえってくる。アップル製品に日本の部品がじつに多く使用されているだけでなく、生殺与奪まで握られているケースが多いからだ。つまり日本企業はアップルの下請けになっているのが実態なのだ。

いまや時価総額で50兆円を超える巨大メーカーに成長したアップルは、自社だけが高い利益率を確保することができるよう設計された、自社を頂点とする生態学(エコ・システム)を形成してきた。

その生態系のなかには日本企業、台湾企業、中国企業などがガッチリと組みこまれており、徹底した在庫管理と販売計画、生産計画の24時間リアルタイム化によってアップルは組立メーカーと部品メーカーを管理している。ジョブズがモデルとしてきたソニーですら、現在のアップルにとってはカメラ用の半導体というキーデバイスの調達先にしか過ぎないのである。

アップルは製造機能をもたないファブレスメーカーであり、受託製造に特化した台湾のフォックスコンなどEMSに大きく依存している。しかも、iPhone や iPad といった少数の品目に絞りこみ、その単品ごとの販売量と生産量がきわめて巨大な「少品種大量生産」モデルとなっている。現在ものづくりの世界では標準となっている「多品種少量生産」モデルの真逆である。

2008年時点ですでに iPhone の累計販売数は1,000万台を突破しており、部品メーカーからみれば膨大な量が販売できるので魅力的だが、一方ではアップルとの「独占供給契約」にしばられて、生産量を自社でコントロールできないというデメリットがある。

まさにアップルという「毒リンゴ」を食べてしまった日本企業の苦悩は深い。それは製造メーカーだけではなく、販売会社や通信会社にとっても同様だ。美しいバラだけでなく、うまそうなリンゴには毒があったわけだ。

本書は、アップル社がつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を日本からみたレポートである。徹底した秘密主義のベールに隠されているアップルの生態系(エコ・システム)を末端からみた内容だといっていい。そう、日本企業はアップルにとっては「末端」なのである。

とくに第1章と第2章をよめば、アップルをアップル帝国たらしめているのはスティーブ・ジョブズという天才肌のビジョナリー経営者がつくりだした神話だけではなく、完璧主義であったジョブズが指示してつくりあげた盤石のビジネスモデルにあることがわかるのである。

アップルの完璧主義は、よくいえばあたかもかつての高度成長期の日本企業のようでもある。完璧や徹底といった基本姿勢は、文字どおりアップルで働く人間にとってはそこで生き抜くためには不可欠のマインドセットとなっているのである。

しかし一方では、悪くいえばアップルは、なんだかいま日本で問題になっている「ブラック企業」そのものようだ。きわめて過酷な労働環境といっていいだろう。しかも、そのなかで働いている人にとってだけでなく、その生態系(=エコ・システム)にかかわっているすべての人にとってもまたブラックな存在となっているのではないかという気もする。

だが、冒頭に書いたように「アップル帝国」もゆらぎが生じ始めている。「死せるジョブズ」の神通力にも影が見え始めている。

普通の会社になりつつあるアップルが今後いかなる状態になっていくか、それはアップルにとってだけではなく、日本企業にとっても関係のない話ではないのである。

ビジンスパーソン以外にもぜひ一読をすすめたいビジネス・ノンフィクションである。





目 次

プロローグ アップル帝国と日本の交叉点
第1章 アップルの「ものづくり」支配
第2章 家電量販店がひざまずくアップル
第3章 iPodは日本の音楽を殺したのか?
第4章 iPhone「依存症」携帯キャリアの桎梏(しっこく)
第5章 アップルが生んだ家電の共食い
第6章 アップル神話は永遠なのか
エピローグ アップルは日本を映し出す鏡


著者プロフィール

後藤直義(ごとう・なおよし)
週刊ダイヤモンド記者。1981年、東京都生まれ。青山学院大学文学部卒業後、毎日新聞社入社。2010年より週刊ダイヤモンド編集部に。家電メーカーなど電機業界を担当。

森川 潤(もりかわ・じゅん)
週刊ダイヤモンド記者。1981年、米ニューヨーク州生まれ。京都大学文学部卒業後、産経新聞社入社。横浜総局、京都総局を経て、2009年より東京本社経済本部。2011年より週刊ダイヤモンド編集部に。エネルギー業界を担当し、東電問題や、シェールガスなどの記事を執筆する
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



著者の元アップル社員の松井氏がいう「私設帝国」ともいうべき超巨大グローバル企業企業が、ビジネスだけでなく、消費のあり方や労働のあり方を根底から変えていく様子がアップル社での体験を踏まえてよく描かれている(2014年6月20日 記す)。


<関連サイト>

アップルのニッポン植民地経営の深層(1) “リンゴ色”に染まる巨大工場の苦悩(ダイヤモンドオンライン 2013年7月18日)
アップルのニッポン植民地経営の深層(2)キャリアを悩ます“iPhoneブルー”アップル・通信会社支配の裏側(ダイヤモンドオンライン 2013年7月25日)
アップルのニッポン植民地経営の深層(3) クックCEOが抱える時限爆弾 アップルのテレビ開発の深層 


製造を外注しても技術力を失わないアップルの凄み -  欧米モデルを誤解し安易に模倣する日本企業のリスク (ダイヤモンドオンライン 2014年5月7日)


拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』、iBookstore から「電子書籍化」されました!(2013年10月23日)


<ブログ内関連記事>

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」。問題は製造業だけではない!

書評 『中古家電からニッポンが見える Vietnam…China…Afganistan…Nigeria…Bolivia…』(小林 茂、亜紀書房、2010)
   
書評 『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②-』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

スティーブ・ジョブズの「読書リスト」-ジョブズの「引き出し」の中身をのぞいてみよう!
グラフィック・ノベル 『スティーブ・ジョブズの座禅』 (The Zen of Steve Jobs) が電子書籍として発売予定

三宅一生に特注したスティーブ・ジョブズのタートルネックはイタリアでは 「甘い生活」(dolce vita)?!

An apple a day keeps the doctor away. (リンゴ一個で医者いらず)

(2014年8月18日 情報追加)


(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end

2012年12月22日土曜日

書評『日本式モノづくりの敗戦 ー なぜ米中企業に勝てなくなったのか』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)ー 産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために


耳触りの悪い発言は聞きたくないという人は、この本は読むのをやめたほうがいい。しかし、なぜ日本が不調なのかその理由を理解したうえで、これからの方向を考えたい人には読むことを勧めたい本だ。


■従来型のものづくりがなぜダメになったのか?

本書では、日本企業と日本経済にかんする、さまざまな「常識」がひとつひとつ解体されていく。

副題にある「なぜ米中企業に勝てなくなったのか」に注目していただきたいのは、経済体制の異なる米国と中国ではあるが、これから10年後、20年後を考えると、米中は世界経済の二強になるだけでなく、産業特性からみても、じつは親和性が高いということに着目する必要があるからだ。

つまり、日本企業がこれまでしがみついてきた「すりあわせ」、「顧客囲い込み」、あるいは「垂直統合」といった成功モデルが、あきらかに敗退しつつあるのに、敗者になったことも認めようとせず、敗因を直視しようとしないことが問題なのである。ガラパゴス化とはまさにそのことを指している。

海外にいかなければ気がつくことさえない携帯電話やスマートフォンの SIMロックの存在など、ガラパゴスの最たるものだ。もちろん、わたしは海外でも使用するために SIMロックは解除してもらい、現地の通信会社が提供する低価格の通信を利用している。

アップルの iPhone というスマートフォンや iPad というタブレットなどの「革新的製品」に人気が集まり、その結果、世界的な高収益をあげているのは当然なのである。国境を越えた世界製品として消費者に受け入れられているわけだ。

そのアップルとその主要な製造委託先である台湾のフォックスコン(ホンハイ)が採用しているオープンシステムのほうが優勢性がある。これが「米中企業」の端的な事例である。

製造機能をもたないアップルはいわゆるファブレスメーカー、受託製造に特化しているフォックスコンはEMSと呼ばれるビジネスモデルである。アップルに限らず、すでに欧米の製造業は、製造機能を新興国の製造業に依託して協調し、日本の製造業を追いつめる方向に向かっているのである。

野口氏は、『クラウド「超」仕事法-スマートフォンを制する者が、未来を制する-』(野口悠紀雄、講談社、2011)のような「知的生産の方法」でも一家言を有している人だから、さすがに情報機器については細かいことまでかなり詳しい。

自動車産業においては「すりあわせ型」のものづくりと、垂直統合型の産業構造が適しているという側面はあるが、電気自動車においては「モジュール型」のオープンシステムで動いているのも実態である。

競争条件が変わったことに対して、あまりにも鈍すぎるのが本部の判断。つよい「現場」と裏腹の関係にあるのがよわい「本部」だが、日本にも内部昇格者だけでなくプロの経営者が必要だという野口氏の意見には賛成だ。日本に限らず、内部の人間は抜本的改革は実行しにくい。


■産業転換を迫られている日本はどうすべきかなのか?

日本の製造業の現状をさして、「農業化」という表現がされている。

雇用調整補助金などで過剰雇用を支え、競争力を失いながらも生き延びている姿は、国際競争力のない農業と変わらない。なるほどと納得させられるものがある。

産業転換期にはセーフティネットも必要だが、企業倒産によって他産業に人材が流出していくのは、わたしもその一人だが、かならずしもネガティブな話ではないと思う。

その意味では、先日の総選挙で政権交代がふたたび行われていたが、あたらしい政権が採用する予定の経済政策は、産業構造転換を促進する方向のものではないと言わざるを得ない。

重要なことは海外資産の蓄積が所得収支の増大をもたらしているという点だ。すでに所得収支のほうが貿易収支を上回っているのが日本の現状である。これについては、書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012) も参照。だから、個別企業の合理的選択である製造業の海外移転そのものは問題ではないのである。

ただし、新興国市場にかんしては、現地の安い生産コストを利用した製造業と、実質的には低所得者層がマジョリティである現地市場での販売は区分して考えたほうがいいことは言うまでもない。低価格戦略を採用して現地市場でシェアを取るかどうかは、個別企業によって戦略は異なるだろう。

問題は日本国内である。製造業の雇用削減で失われた雇用を、いかに成長分野で吸収していくかという課題だが、これについては、ないものねだりはやめるべきだろう。日本からは、グーグルもアップルも生まれてくるとは考えにくい。すくなくとも経済政策のなかからはうmれてこない。

また金融についても、米国のような直接投資タイプの金融業が育つとは考えにくい。日本が「金融立国」となるのは見果てぬ夢で終わることだろう。

といっても、ではどうすべきかという議論は、なかなか立てにくい。なぜなら現実の動きのほうが激しいからだ。

ビジネスパーソンとしては、あくまでも個別企業の観点にたって、当事者としての意思決定の精度を高めることに注力すべきである。


■新興国の知識人材の活用は不可欠だ

本書の中国経済にかんする分析も面白い。大学教授という視点から、知識経済の担い手にかんする分析は読ませるものがある。

中国の大卒者を知識労働者として活用せよという提言は賛成だ。これは中国ビジネスとは切り離して考える必要がある。つまり中国ビジネスの担当者として中国人の知識人材を採用するのではなく、基幹となる人材として活用するのである。

本書では視野にないようだが、日本語の習得の早いミャンマー人も同様だろう。その動きはIT業界ではすでに活発化している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本書の特徴は、コトバによる誤解や錯覚に陥らないように注意を促している点だ。たとえば、中国のGDPは日本を抜いたが、一人当たりGDPでは現時点では日本の・・・・・にしかすぎないこと、新興国における中間層は所得レベルでいえば日本の低所得者層に該当することなど、だ。

「週刊東洋経済」の連載を単行本としてまとめたものなので、執筆時点と出版時点でのタイムラグがあるのはやむを得ない。現時点とはややそぐわない面もなくはないが、本書で展開されているロジックはしっかりとつかんでほしいと思う。

日本が生き延びるためには、産業転換は避けて通れない課題であるからだ。量産型のものづくりが海外に移転したあと、どうやって食っていくかが問われているのである。





目 次

はじめに
第1部 新しい潮流
-第1章 アップルは製造業のビジネスモデルを変えた-スマイルカーブとファブレス企業
-第2章 日の丸エレクトロニクス敗退の原因-円高でなく垂直統合が問題
-第3章 巨大EMSというバケモノ-重要なのは低賃金でなく、社会の生産体制
-第4章 若い企業と新世代が中国を変える-質の高い企業と人材が中国に誕生
第2部 旧体制の強固な岩盤
-第5章 垂直統合・系列・蛸壷社会-縦割り蛸壷が並存する日本社会
-第6章 系列解体後に中小・零細企業はどうなる?-グローバル水平分業の一員となれるか
-第7章 旧体制が支配する中国の金融-権力と既得権益の巣
-第8章 金持ちなのに弱い日本の金融力-直接金融と投資銀行業務での日米格差
第3部 未来への戦略
-第9章 新興国とどう向きあうか-価格競争は間違い。ブランドを使え
-第10章 改革の推進主体は、政府でなく経営者-市場が改革方向を示す
-第11章 人材開国で日本を活性化-高度専門人材を受け入れよう
図表一覧
人名索引
事項索引


著者プロフィール

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。1963年東京大学工学部卒業。1964年大蔵省入省。1972年エール大学 PhD.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主要著書『情報の経済理論』(東洋経済新報社、1974年、日経・経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、1980年、サントリー学芸賞)、『土地の経済学』(日本経済新聞社、1989年、東京海上各務財団優秀図書賞、日本不動産学会賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、1992年、吉野作造賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」。問題は製造業だけではない!

書評 『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②-』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ

鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

書評 『チャイニーズ・ドリーム-大衆資本主義が世界を変える-』(丸川知雄、ちくま新書、2013)-無数の「大衆資本家」たちの存在が中国の「国家資本主義」体制の地盤を堀崩す
・・依然として国営企業のウェイトの高い中国経済だが、下からの起業家の動きにも注目する必要がある

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

ドイツが官民一体で強力に推進する「インダストリー4.0」という「第4次産業革命」は、ビジネスパーソンだけでなく消費者としてのあり方にも変化をもたらす

(2014年8月18日、2016年7月24日 情報追加)


(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end

2012年10月24日水曜日

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ



日本国内の製造業の収縮と工場の海外移転は、今後さらに進むということを前提にしなくてはならない。おそらく、多くの人がこのような考えをもっていることと思う。

こういう前提にたつと、では国内雇用をどうするのかという議論が間違いなく起こってくるものだ。

工場の海外移転には断固反対し、国内雇用を死守せよという議論はさておき、たとえば経済学者の野口悠紀雄教授のように、日本経済の基本的な構造を変え、産業構造の基本を変え、新しい産業を育成することによってしか対応できないという論点もまた、じつは実効性に乏しいのではないかという感想を抱いている人も少なくないのではないだろうか。

改革というものは、内部にいるものがいくらがんばっても挫折することが多い。内側からの動きと外からの動きがうまく呼応してかみあったときに実現するものだ。

その意味では、本書の著者・松島大輔氏のような論点はひじょうに重要であることがわかる。帯にかかれた「国内で生き残るために新興アジアへ!」というコピーは、ややアジテーション的な響きがあるものの、あながち間違いではないことが、本書を通読すれば理解されることと思う。

日本の製造業が、東南アジア、とくにタイにおける産業集積を基盤に、さらにインドまで進出することによって、日本のつよみである「すりあわせ型ものづくり」を中心とした、新興アジア圏とでもいうべき広域な製造業地帯が実現していく。

日本企業は新興アジア圏に積極的にコミットすることによって、地域全体の繁栄に貢献し、そこで得た利益を日本国内に還元することによって日本そのものの経済的底上げも実現するという資金環流モデルである。

いわば「迂回ルート」による国富論といってもいいかもしれない。じっさい、日本はすでに貿易収支よりも在外資産からの資本収支のほうが上回っているストック経済の国である。そしてその在外資産の中心をなすのが、事業への投資である海外直接投資(FDI)の累積である。

東南アジアでビジネス活動に従事している立場からみれば、あまりにも楽観的なマクロの話という印象がなくもないが、すくなくとも野口悠紀雄教授が主張してきたような、日本国内でITや金融で高度サービス業を育成するという議論よりもはるかに現実的である、といっていいのではないかと思う。

本書における IT や金融の位置づけは、あくまでも製造業を側面支援するというものである。これは、敗戦後日本において経済を世界レベルにしたモデルであり、この成功をモデルを日本国内ではなく、まだまだ成長余力の大きい「新興アジア」全域で実行しようというわけだ。

「モジュール型」が中心の中国とは異なり、「すりあわせ型」が得意な日本企業のつよみを活かそうという戦略構想であり、その点からいっても実現性が高い。もっとも、「すりあわせ型」といっても、純粋な「すりあわせ型」はありえないので、「ハイブリッド型」というべきだろう。

製造業にとってはもちろん、サービス業にも「新興アジア」にチャンスがあるというのはその通りであり、わたしも異論はない。ただし、マクロ的にみれば「空洞化はウソ」であるが、ミクロの対応は千差万別だ。一般論と個別論は明確に区別する必要がある。

経済済産業省に本籍をもち、現在はタイ王国政府政策顧問として出向中というい著者の立ち位置はアタマのなかに入れておく必要がある。所属する機関の見解ではないという留保つきだとしても、その点は、割り引いて読むことが必要だろう。あくまでも「水先案内人」というアドバイザーであって、当事者として現地経営の現場で汗をかいている人ではないからだ。

しかも、「王道楽土」などという無邪気な表現には「あやうさ」を感じるのは、わたしだけではないかもしれない。かつて満洲開拓移民をあおったスローガンであることを想起するからだ。そこらへんは、ちょっと脇が甘いような印象を受ける。

とはいえ、新興アジアにはビジネスチャンスがまだまだある「ブルーオーシャン」であることは間違いない。この本は、チャンスについてのみ語った本なのである。

チャンスがあれば当然のことながらリスクがある。チャンスとリスクは裏腹の関係だ。リスクがあるからこそリターンがあるのだ。

だから、個別企業の立場からは、当然のことながらリスクは徹底的に洗い出したうえで、リスクを「想定内」にしたうえで成功への道をつかんでほしいと思う。

チャンスを活かしきれるかどうかは、あくまでも個別企業と一人一人のビジネスパーソンのマインドとアクションにかかっているからだ。






目 次

はじめに

第1章 「空洞化」を怯えてはいけない
 1 未来が空洞化するとき-「空洞化」はほんとうに起こっているのか?
 2 海外で稼いだお金は日本国内に還流しない?
 3 日本企業の海外進出が技術水準を低下させる?
 4 日本企業の海外進出で国内雇用は減る?
 5 「空洞化」論が招く未来の空洞化

第2章 「新興アジア」における「現地化」のススメ
 1 「新興アジア」で進行していること-日本経済との対比で
 2 「新興アジア」のほんとうの意味
 3 「新興アジア」各国の日本企業誘致合戦
 4 ルール作りゲーム-「賭金」としての日本企業
 5 日本企業の「新興アジア」における「現地化」の意義-モノ(企業)の「現地化」
 6 ひきこもる日本企業
 7 和僑のススメ-ヒトの「現地化」
 8 日本型「投資立国」-カネの「現地化」

第3章 「新興アジア」を活用した日本改造
 1 日本というシステムの課題
 2 「新興アジア」戦線で露呈する日本の課題
 3 「作れるもの」から「欲しいもの」へ
 4 「日本入ってる」で「新興アジア」をめざせ
 5 「新興アジア」が日本を変える
 6 日本に錦を飾る出世魚中小企業-下請構造からの卒業
 7 日本のアジア化とアジアの日本化

おわりに


著者プロフィール

松島大輔(まつしま・だいすけ)
1973年金沢市生まれ。東京大学経済学部卒業、ハーバード大学大学院修了(修士)。通商産業省入省後、2006年から4年近くインドに駐在し、インド経済の勃興と日本企業のインド進出を支援。DMIC構想やインドのチェンナイ、グジャラートの他、タイ、ミャンマーなどで数々のプロジェクトの立ち上げと推進を通じ、アジアにおける日本企業のビジネスを実地に見聞してきた。現在、タイ王国政府政策顧問として日本政府より国家経済社会開発委員会に出向(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連記事>

『東南アジアを学ぼう「メコン圏」入門-』(柿崎一郎、ちくまプリマー新書、2011)で、メコン川流域5カ国のいまを陸路と水路を使って「虫の眼」でたどってみよう!
・・日本が推進する「東西回廊」と中国の南下ルートである「南北回廊」

書評 『戦いに終わりなし-最新アジアビジネス熱風録-』(江上 剛、文春文庫、2010)

東南アジア入門としての 『知らなくてもアジア-クイズで読む雑学・種本-』(アジアネットワーク、エヌエヌエー、2008)-「アジア」 とは 「東南アジア」 のことだ!

書評 『消費するアジア-新興国市場の可能性と不安-』(大泉啓一郎、中公新書、2011)-「新興国」を消費市場としてみる際には、国全体ではなく「メガ都市」と「メガリージョン」単位で見よ!

『ドキュメント アジアの道-物流最前線のヒト・モノ群像-』(エヌ・エヌ・エー ASEAN編集部編、エヌ・エヌ・エー、2008)で知る、アジアの物流現場の熱い息吹

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目!

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)

本の紹介 『シブすぎ技術に男泣き!-ものづくり日本の技術者を追ったコミックエッセイ-』(見ル野栄司、中経出版、2010)

書評 『中古家電からニッポンが見える Vietnam…China…Afganistan…Nigeria…Bolivia…』(小林 茂、亜紀書房、2010)

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ




(2012年7月3日発売の拙著です)





Clip to Evernote 


ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。



end