すでに、ミャンマー再遊記(5)- NISSAN DIESEL(日産ディーゼル)にも書いているのだが、日産ディーゼルのトラックについては、今回も各地であらたな事例を採集できたので、写真を中心に紹介したいと思う。
私は、2009年の6月にミャンマーを12年ぶりに訪れた際の驚きの一つとして、以下のような文章を書いた。
日産ディーゼル車の場合、ちょっと何かが違うことに気ががついただろうか(写真参照)。
なんとミャンマー風のデザインになっているのだ。風呂屋の背景画みたいな風情で、ミャンマー最大の観光資源であるインレー湖の足こぎ舟がペンキで車体に描かれている。これは驚きの発見である。一般道を走っているトラックはだいたいこれであった。
日産ディーゼルがそうさせたのか、ミャンマー人の意思でそうしているのかまったくわからないが、ミャンマーの主体性を静かに主張しながら、かつ日本製品大好きも表現しているこのトラックには、なんだか妙に感動さえ覚えるのである。ローカリゼーションの鑑(かがみ)として表彰してあげたいくらいだ。
前回に採集した事例は数少なく、写真撮影ができたのは、製粉工場で静止しているトラックだけであった。
今回は、インレー湖とヘーホー空港を結ぶ陸路を中心に、ヤンゴン郊外などでも日産ディーゼルのトラックを撮影することができた。
冒頭に掲載したトラックは、インレー湖入り口の町ニャウンシュエで昼飯食べた後、時間つぶすため町内をぶらぶら歩いているときに発見した。
まず、車体の横にある ニッ サン ディー ゼル というカタカナに注目していただきたい。これはおそらくミャンマー人が自ら作ったのではないかと思われる。ミャンマー語ではない、カタカナの日本語である。しかも、この日本語にはまったく間違いがない! まさに感動ものである!
デザイン性も十分に考慮に入れたフォントを使用している。サン の ンの文字が小文字になっているのもデザイン性重視の姿勢の表れだろう。
また、円内のデザイン画にも注目されたい。インレー湖名物の片足漕ぎ漁民の絵がペンキで描かれている。ここに部分拡大写真を掲げておこう。
同様に、インレー湖の風景を車体に描いたトラックの事例は他にも採集しているので紹介しておこう。しかしながら、同じ図柄は一つとしてない。同じテーマで描いているが、一台一台違う風景画がペンキで描かれている。
では、車体後部の画像を3つ掲載しておこう。いずれもテーマは同じくインレー湖だが、描かれているペンキ絵そのものはぞれぞれ異なっている。
このことから考えると、ミャンマー国内でのトラック野郎たちの好みの傾向が似ていることがわかるが、かならずしもデザインに統一方針があるわけではなく、トラック一台一台ごとの個性がさりげなく主張されていることがわかる。
前回2009年6月に採集した事例も再び掲載しておこう。同じくテーマはインレー湖であるが、採集場所はマンダレー方面である。
思うに、インレー湖はミャンマーの人たちにとっては「心のふるさと」なのだろう。
日本の銭湯に描かれるペンキ絵はきまって富士山であるが、ミャンマーの場合、日産ディーゼルの車体をカンバスに描かれる風景画は、私がこれまで目撃してきた限り、圧倒的に片足漕ぎ漁民が登場するインレー湖の風景である。
いってみれば定型表現であるが、それだけ無意識のうちに安心できる風景なのではなかろうか。私も、ごくたまにだが、外国から帰国する際に天気に恵まれてしかも左舷の窓側の席に座っているとき、窓越しに富士山をみると興奮するのを覚えるものだ。富士山は心のふるさと、無意識のレベルにあるシンボルであるからだろう。
インレー湖近くのトラックだからインレー湖の風景が描かれているのだろう、という反応は当然でてこよう。しかし、一件だけだが世界遺産バガンと思われる夕景を描いた、日産ディーゼルの事例も採集しているので紹介しておこう。
まあこういう状況だ。ミャンマーの主体性を静かに主張しながら、かつ日本製品大好きも表現しているこのトラックには、なんだか妙に感動さえ覚えるのである。ローカリゼーションの鑑(かがみ)として表彰してあげたいくらいだ。前回書いた文言をそのままここに記しておきたい。
さて、この場を借りて、日産ディーゼル社長に提言をしておきたいと思う。もし機会があって、この文章に目を通すことがあれば、ミャンマーのトラック野郎たちの気持ちを汲み取ってやってほしいからだ。
拝啓 日産ディーゼル社長さま
私がブログに書いた、ミャンマーのトラック野郎たちがいかに日産ディーゼルを愛しているか、読んでいただき、たいへんありがとうございます。
ミャンマーでは現在は日本の中古車が圧倒的に多い状況ですが、ことトラックにかんしては日産ディーゼルがダントツの人気です。しかもトラック一台一台を大事にして、車体にペンキ絵を描いているでなく、自分だけの「日産ディーゼルのロゴ」を、デザイン性豊かに描いてカスタマイズしてしまう、このあふれんばかりの愛を感じ取ってやってほしいのです。
ミャンマーのトラック野郎たちの、日産ディーゼルへの愛は、ミャンマー以外では、どの国でも見られないものがあるのではないでしょうか。
日産ディーゼルのロゴすら、自分たちの好きなようにデザインを変えてしまうことに対して、けっして商標権や意匠権をたてにとって、クレームをつけたりはしてほしくないのです。
ミャンマー風にローカライズして、しかもトラックの一台一台をカスタマイズしていること。ここにミャンマー人の個性と独創性を見るのは私だけでしょうか。
むしろ、ミャンマーのトラック野郎たちが選ぶ「オレの日産ディーゼル」コンテスト(仮称) なんかを、ミャンマーで開催してはいかがでしょうか。右側通行であるのにかかわらず、カンボジアとは異なり、韓国製のバスもトラックもほとんど見ることのない、親日国ミャンマー。
現在はまだまだ経済的に発展途上にあり新車ニーズはほとんどないと思いますが、いつの日かミャンマーが経済発展した暁には、必ずやこのブランド・ロイヤルティのきわめて高い、ミャンマーのトラック野郎たちの手に日産ディーゼルが新車で渡る日が来ることでしょう。
日産ディーゼルは、ミャンマーでは「信頼のブランド」です。
日本の中古車が、日本車への愛を生み出し、輸入制限政策を強いる政府に対して公然とデモ活動で反旗を翻しているのは、極東地域のロシア人たちです。ロシアも右側通行であるのにかかわらず、日本製の自動車への愛が、限りなく強いものがあります。
ミャンマートラック野郎たちの日産ディーゼル愛はこれに劣らずとも勝るものがあるといていいのではないでしょうか。
ぜひ、ご自身の眼で、ミャンマーの現実を確かめていただければと思います。まだもし行かれてないのであれば。
失礼を顧みず、一筆書かせていただきました。
敬具
次回は、いよいよヤンゴンに戻ってメイン・イベントの中継です!
(・・まだ、つづきます)
<ブログ内関連記事>
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「三度目のミャンマー、三度目の正直」 総目次 および ミャンマー関連の参考文献案内(2010年3月)
(2015年10月4日 項目新設)
(2012年7月3日発売の拙著です)
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