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2010年5月17日月曜日

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.5 を読む-特集テーマは「大学問題」と「地球工学」-



 
月刊誌「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 に引き続き、2010年No.5 のレビューを引き受けることとなり、R+より献本をいただいた。

 月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版)そのものについては、私がブログに執筆した 月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む を参照していただけると幸いである。「フォーリン・アフェアーズ・リポート」の読み方についても書いておいた。

 前置きはさておき、2010年No.5 の内容紹介を行うこととしたい。


 2010年No.5 の目次は以下のとおりである。

●特集1 経済と社会を支える大学の条件とは

アジアの大学は世界のトップを目指す(リチャード・レビン)
<Classic Selection 2007> グローバル化する大学(ウィリアム・R・ブロディ)
---------------------------
欧州経済ブロックの形成を-貿易国家の衰退と貿易ブロックの台頭-(リチャード・ローズクランス)
新しいヨーロッパのポテンシャル-リスボン条約で欧州の何が変わるのか-(アンソニー・L・ガードナー、S・アイゼンシュタット)
----------------------------
朝鮮半島の緊張は続く(チョイ・カング)
BRICsはフォーラムとしての連帯を維持できるか(CFRブリーフィング)
ソビエト崩壊から20年、冷戦を再検証する(ローレンス・フリードマン)

●特集2 火山の爆発が地球を冷やす-それを工学的に実施すれば・・・

CFRミーティング 地球工学の国際ルールを(M・グランジャー・モーガン、ジョン・ステインブルーナー)
<Classic Selection 2009> 温暖化対策の切り札としての地球工学オプション-地球工学オプションの恩恵とリスクの検証を-(デビッド・ビクター、M・グランジャー・モーガン、ジャイ・アプト、ジョン・ステインブルーナー、キャサリン・リック)
-----------------------------

世界は人権侵害であふれている-オバマの約束は果たされるのか-(ケネス・ロス)
パレスチナ国家の樹立を急げ-最終地位合意よりも暫定合意を優先せよ-(エフード・ヤーリ)


 今月号もなかなか読み応えのある論文が精選されて日本語訳で提供されている。
 
 「特集1 経済と社会を支える大学の条件とは」 と 「特集2 火山の爆発が地球を冷やす-それを工学的に実施すれば・・・」 を中心に見ていこう。

 「大学問題」と「地球工学」というテーマが、いったい外交や政治経済学のフィールドとどうかかわっているのか。これらのテーマ設定の意味についても、「フォーリン・フェアーズ」に掲載された論文であることを考慮にいれたうえで読んでみたい。

 ともに、「クリティカル・シンキング」を身につけるための格好の材料となっている。



特集1 経済と社会を支える大学の条件とは
 
 この特集で取り上げられた2本の論文は、米国の大学にとっての肥沃な市場である、アジアの教育市場における新しい質の大学教育へのニーズと、サプライサイドである米国の大学の国際戦略の双方について、複眼的に見ることができる構成になっている。

 ともに、米国の大学生き残り策を考えるためのヒントを提供することが、論文執筆の主目的である。

 ① 「アジアの大学は世界のトップを目指す」(リチャード・レビン イエール大学学長)は、戦後アジアの大学教育についてのレビューを行いながら、日本や韓国で成功した従来型の大学教育には限界があることを指摘し、ポストモダン時代に求められる教育ニーズには、新しい教育方法の導入が不可欠であることを指摘している。とくに新興国である中国とインドに絞り込んだ論述から、大学教育を軸にした人材開発競争の行方についての見取り図を得ることができる論文である。

 この論文の執筆者は、特定の研究領域の垣根を越えた幅広い見識と「クリティカル・シンキング」を涵養する米国型の教養(リベラル・アーツ)教育システムの優位性を強調しているが、これについては異論はあまりないだろう。この点にかんする的確な状況認識をもつ中国で米国スタイルの大学教育が定着すれば、大きな競争力の源泉になることは間違いない。この点においても、中国は日本にとって大きな脅威となる可能性がある。

 ただし少人数教育にかんしては、日本は戦前のドイツモデルによるゼミナール制や研究室制度があり、すでに定着していることを、執筆者は看過しているようだ。また、戦後は米国モデルに転換しながらも、日本では「教養課程」として導入された、米国型のリベラル・アーツ教育が、結局のところなぜ定着しなかったについてのコメントがほしかったところである。

 こう考えると、中国において、果たして米国スタイルの新しい大学教育が定着するかどうかは、現時点では未知数であることがわかる。執筆者もいうように「優れた大学に不可欠な要素とは、やはり(言論と研究の)自由」(P.15)であるから、中国においてこうした自由が確保されるかどうかについては、かなり疑問があるといわざるをえない。 

 では翻って、「自分のアタマで考え、主体的に行動できる人間」を育成するために、日本の大学関係者は何をすべきであるか、この課題については自ら思考することが必要である。本論文はそのためのヒントとなるであろう。


 ② <Classic Selection 2007> グローバル化する大学(ウィリアム・R・ブロディ ジョンズ・ホプキンス大学学長)も、米国の大学生き残り策探求の一環として執筆された論文である。

 「IT-IT現象」(International Travel と Information Technology)、「学会におけるマイケル・ジョーダン現象」「学問の世界はフラット化した」などと、なかなか印象的なフレーズを散りばめたこの論文は、世界的大企業がリードする米国産業と同様、国際的な競争力をもつ米国の有名大学が「メガバーシティ」として世界に君臨することは可能か、という問いを設定している。

 「メガバーシティ」(Mega-versity)とは論文執筆者によれば、「世界から選りすぐりの教授陣と学生を集め、インターネットでつなぐ巨大教育機関のこと」であるが、フラット化する学問世界において、こうしたモデルが必ずしも出現するかどうかは不明、というのが執筆者の見解のようである。

 たしかに大学教育ニーズの高まるアジアでは日本も含め、米国の有名大学のフランチャイズ校が次々と開校しているが、ある特定のプレイヤー(=有名校)が世界の大学教育の世界で席巻するという状況は起きていないし、これはなかなか困難でもあるようだ。2007年に執筆されたこの論文が、2010年の時点においても意味をもつ理由である。

 日本の大学は、シンガポールやインドなどとは異なり、日本語という言語の壁のおかげで、現在のところ米国の大学のフランチャイズは成功しているとはいえない状況にある。しかしその一方で、有望な若者が日本の有名大学への進学を選択せず、米国の有名大学へそのまま進学するコースを選択する者が増加しつつある。

 こうした現象を考えると、果たして日本の大学は、日本語の壁を越えて世界的なポジションを確立することができるのか。この課題にたいする解答は自ら思考しなくてはなるまい。
 米国の大学関係者がいかなる考えをもっているか知るうえで、この論文は有用であるといえる。



特集2 火山の爆発が地球を冷やす-それを工学的に実施すれば・・・
 
① CFRミーティング 地球工学の国際ルールを(M・グランジャー・モーガン、ジョン・ステインブルーナー)
② <Classic Selection 2009> 温暖化対策の切り札としての地球工学オプション-地球工学オプションの恩恵とリスクの検証を-(デビッド・ビクター他)については、正直いって私の専門分野ではないので、論評しにくい。

 いまここで告白するが、そもそも「地球工学」(Geoengineering)というコトバそのものは、目にするのは実は今回が初めてなのである。さっそく Google 検索で wikipedia の記述をみると、英語版では Geoengineering (or Climate Engineering)という記述があり、ああなるほど、極端な話、「気候変動」を工学的に操作する学問なのか、とわかった。

 「地球工学」が果たして温暖化対策の切り札になりうるのか?

 地球環境問題解決の「ラストリゾート」としての工学的手法は、研究蓄積がほとんどなされておらず、「地球工学」にかんする実験そのものが外交政策論争のテーマになりうるのである。なぜなら、大気は一国の範囲を超えて地球規模の問題となるからだ。

 こうした論文を読むに際しては、論文執筆者たちのプロファイリングから始めるのが適切だろう。いかなる背景のもと、いかなる方向の議論を誘導している人たちなのかを知ったうえで論文に目を通すと、読む上うえで手がかりを得ることができる。

 2つの論文に重複する執筆者を含め、総勢6名が関与している。「フォーリン・アフェアーズ・リポート」記載の履歴を引用しておこう。

●グランジャー・モーガン:カーネギーメロン大学 工学・公共政策学部長、同大学付属地球環境政策決定センター所長
●ジョン・ステインブルーナー:メリーランド大学教授(公共政策)、同大学付属国際安全保障問題研究所長
●ルース・グリーンスパン・ベル:世界資源研究所 米国気候変動政策ディレクター代理
●デビッド・ビクター:スタンフォード大学法学部教授、米外交評議会の科学技術担当非常勤シニアフェロー、スタンフォード大学 エネルギーおよび持続可能な開発プログラム・ディレクター
●ジャイ・アプト:カーネギーメロン大学 工学・公共政策学部教授
●キャサリン・リック:カーネギーメロン大学博士課程在籍

 米国の際だった特徴であるが、こうした工学分野のテーマと社会科学分野の学際的融合チームというものが出来上がっていることが、このごく簡単なプロファイリングから知ることができる。

 これは「特集1」の論文② でも述べられている、「新しい研究領域に挑むため、地理的、財政的、または官僚主義的な障壁を乗り越えて、迅速に学際的な研究グループを立ち上げることが、いまや大学の課題になってきている」(P.21)という記述の、まさに格好の実例ともなっていることがわかる。

 工学者と社会科学者がチームとして対話が可能なのは、米国スタイルのリベラル・アーツ教育(=教養教育)のたまものというべきであろうか。


 「特集2」の 2本の論文によれば、「地球工学」が扱うテーマは大きくわけて2つに分類されるようだ。すなわち、「太陽放射管理」と「二酸化炭素除法」である。前者は、地球温暖化を少しでも緩和するために太陽光を遮断する技術、後者は二酸化炭素の排出を減らすことが困難である以上、大気中に堆積する二酸化炭素を除去する技術である。

 「地球工学」のアプローチはあくまでも気候変動問題解決の「ラストリゾート」としての位置づけである。現時点では本格的な研究蓄積は驚くほど少ないようであり、この点がまさに執筆者たちに共通する懸念であるようだ。

 それは、それぞれの国ごとに「勝手に地球工学的対策を強行するかもしれない。この点が不安になった。この段階で、私は外交政策の専門家たちも、この問題について検討を始めるべきだと考えた」(P.70)。
 
 自然科学や工学分野のテーマを、外交政策論争の舞台に取り上げること、これが可能となるのも米国ならではであり、また「フォーリン・アフェアーズ」ならではといえるだろう。私はこの2本の論文に目を通すことで、はじめて問題が存在すること自体を知ることとなった。

 果たして日本の政治家は、こういった論文を読みこなしているのだろうか? せっかく日本語になっているのだから、スタッフが政治家に要約して理解させるべくレクチャーをしておくべきだろう。

 米国政治のトップエリートと日本のいわゆる "エリート" の知的体力の圧倒的な違いは、もしかすると、こういう論文の取り扱い一つにあらわれるのかもしれない。

 その意味では、私はエリート失格であるが・・・



 こういう機会でもないと「地球工学」について考えることはなかったと思う。

 日本語版として提供していただいた「フォーリン・アフェアーズ・リポート」関係者には、この場を借りて感謝の意を表したい。

 おかげさまで私自身、たいへん勉強になりました。






PS 読みやすくするために改行を増やし、写真を大判に変更した。内容にはいっさい手は入れていない。あらたに「ブログ内関連記事」の項目を新設した。(2016年7月24日 記す)



<ブログ内参考記事>

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.5 を読む-特集テーマは「大学問題」と「地球工学」-

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 を読む-特集テーマは「The World Ahead」 と 「インド、パキスタン、アフガンを考える」

「フォーリン・アフェアーズ・アンソロジー vol.32 フォーリン・アフェアーズで日本を考える-制度改革か、それとも日本システムからの退出か 1986-2010」(2010年9月)を読んで、この25年間の日米関係について考えてみる


■大学問題

書評 『大学とは何か』(吉見俊哉、岩波新書、2011)-特権的地位を失い「二度目の死」を迎えた「知の媒介者としての大学」は「再生」可能か?

ヨーロッパの大学改革-標準化を武器に頭脳争奪戦に

書評 『エリートの条件-世界の学校・教育最新事情-』(河添恵子、学研新書、2009)
 日本以外の世界のトップエリートはいかなる教育を受けているのかについての本。

書評 『国際メディア情報戦』(高木 徹、講談社現代新書、2014)-「現代の総力戦」は「情報発信力」で自らの倫理的優位性を世界に納得させることにある

(2016年7月24日 項目新設)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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