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2015年5月25日月曜日

書評『それでも戦争できない中国 ― 中国共産党が恐れているもの』(鳥居民、草思社、2013)― 中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」。戦争をすれば・・・



『昭和20年』というライフワークを完成させることなく2013年に亡くなった民間史家・鳥居民氏の遺作である。日本・米国そして中国。この日米中の三カ国の絡み合いを独自の視点で探求してきた人の中国関連の著作である。

2013年に出版された本書『それでも戦争できない中国  ―  中国共産党が恐れているもの』は、2007年時点の情報で書かれた遺作なので、その後の推移については触れられていない。

だが、基本的な分析と中華人民共和国=中国共産党の構造は変わらないだけでなく、中国を蝕む汚職と腐敗はさらに進行し、「中共最後の切り札である習近平」をもってしても、完全な解決とはほど遠い状態に近づいている。

だからこそ、崖っぷちに立つ中国に残された唯一のカードが、東シナ海の尖閣や南シナ海における「軍事的挑発」活動なのである。

著者の独自の視点とは、建国以来の中華人民共和国の歴史を振り返り、朝鮮戦争も台湾への攻撃も、「亡党亡国」を恐れた毛沢東による熾烈な権力闘争を隠蔽するための戦いだったと見る点にある。尖閣問題もまたその行動原理があるのだ、と。

だから中国共産党の挑発に乗ってはいけないのである。ケンカも戦争も、先に手を出したほうが国際的な非難を浴びることになる。ルーズヴェルトの挑発に乗せられて、大東亜戦争に突入した日本は、「隠忍自重」を貫かなくてはならないのである。これが歴史に学ぶ賢者の道である。

すさまじい勢いで貧富の格差が拡大し、一人っ子政策をやめても少子高齢化が止まらない中国。これを端的に表現したのが「未富先老」という四文字熟語である。「いまだ富まずして、先に老いゆく」中国。

中国は戦争などできる状態ではないのである。戦争になったら、間違いなく中国共産党は滅びる。中国共産党=中華人民共和国である以上、「亡党亡国」となるのは必定なのである。

習近平による「虎も蠅も叩く」というスローガンのもとに行われている腐敗撲滅運動だが、はたして濡れ手に粟のスーパーリッチ層を全面的に敵に回すことが可能だろうか? それこそ虎の尾を踏むことになるのではないか?

本書には、海外とくに米国への資本逃避についての言及はないが、すでに世界の二大超大国となた中国と米国の経済関係が切り離せないほどに密接となっており、しかも軍事力にかんしてみれば、米国の圧倒的な実力を熟知している中国としては、戦争に踏み切るオプションはないと考えるのが当然というべきだろう。

中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」なのである。安定と現状維持が一切すべてを圧倒するのである。

中国共産党の基本姿勢である「穏定圧倒一切」、中国の現実である「未富先老」。この2つのキーワードをアタマのなかに刻み込んでおけば、中国共産党=中華人民共和国の行動パターンをある程度まで「想定内」のものにできるだろう。

いずれにせよ、挑発に乗ってはいけない。これが「戦後70年」目の日本と日本国民が肝に銘じなくてはならない歴史の知恵である。


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目 次

はじめに
1 「亡党亡国」の恐怖-ソ連はどうして崩壊したのか。中国共産党はそれから何を学んだのか
2 「穏定」こそすべて-中国共産党指導部は戦争を仕掛けるのか。だれがそんなことを考えているのだろう
3 毛沢東の猜疑心-どうして中国は朝鮮戦争に介入したのか。毛沢東の猜疑心が原因だった
4 金門砲撃戦の虚構-「相手が福州、杭州などを攻撃してくれば、まことに面白い」と毛沢東は言った。その真意は
5 総統選とミサイル演習-李登輝を落選させようとしたのではない。かれに戒厳令を布かせ、台湾が民主化するのを阻止しようとしたのだ
6 つぎの統一戦線工作-尖閣諸島を利用して、台湾を「反日・親中」にする。中国が馬英九にやらせること
7 「未富先老」の宿命-「穏定圧倒一切」を変える利益はどこにもない。人口統計学が予測していること
8 百人のスーパーリッチ-第十七回党大会の真の勝者はだれだったのか。圧力団体の登場で、明日の中国は

鋭い論法、深い内容に支えられた文章(中嶋嶺雄)
鳥居民●著作一覧
『産経新聞』「正論」欄の中国時評一覧

著者プロフィール
鳥居民(とりい・たみ)
1928年東京生まれ、横浜で育つ。2013年1月逝去。膨大な資料を渉猟し、徹底した調査、考察をもとに日本および中国近現代史を鋭く洞察した独自の史観を展開。2005年『産経新聞』正論メンバーに加わり、同紙「正論」欄で中国時評等に健筆をふるう。著書に『毛沢東□五つの戦争』『「反日」で生きのびる中国』『横浜山手』『横浜富貴楼□お倉』『日米開戦の謎』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』他。ライフワークとなったシリーズ『昭和二十年』は第1部は13巻まで上梓したが未完に終わる。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものを編集)。



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現代中国

書評 『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)-首尾一貫した論旨を理路整然と明快に説く

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・「中国崩壊」をシミュレーションする

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ

書評 『習近平-共産中国最弱の帝王-』(矢板明夫、文藝春秋社、2012)-「共産中国最弱の帝王」とは何を意味しているのか?

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論 ・・中西輝政氏もこの本を詳しく取り上げている




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2015年1月19日月曜日

書評『中国外交の大失敗 ― 来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ』(中西輝政、PHP新書、2015)― 日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ


昨年(2014年)11月にようやく実現した日中首脳会談。GDPレベルでは世界の2位と3位である近隣の経済大国どうしの中国と日本。あたらしいリーダーが選出されてから首脳会談がこれまで一度も実現していなかった「異常事態」であったので、まずは一件落着である。

あたかも熟柿が落ちるのを待っていたかのような日本側の粘り腰の勝利である。ここまでは、ニュース報道を聞いただけでも理解はできたことだ。

それにしても奇異に感じられたのは、安倍首相と握手はしているが仏頂面の習近平の画像であろう。習近平の「仏頂面」はいったいっどう「読む」べきなのか、しばらく日本でも話題となってさまざまなコメントが識者から提出されていたが、本書『中国外交の大失敗  ―  来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ』の著者である中西輝政氏は、「あの瞬間、全世界は日本の勝ちを悟った」と断言している。「日中首脳会談で中国外交は敗北した」のである、と。

APEC首脳会議のホスト国である中国。その首脳である習近平主席のメンツがかかったこの会議で、日本はいっさいの妥協なしに首脳会議実現という勝利を収めたのである。これが本書のタイトルであり、「第4章 そして日中首脳会談で中国は敗北した」にその詳細が記されている。

だが、このタイムリーに出版された『中国外交の大失敗』は、日本の外向的勝利は第一ラウンドに過ぎないという警告も同時に行っている。むしろ副題の「来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ」のほうが日本の読者に向けての重要なメッセージであることに気がつかねばならない。

「勝って兜の緒を締めよ」というフレーズが日本語にはある。もちろんわたしも含めて、とかく日本人というものは、勝ってほっとすると、その状態を当たり前のものとみなしてしまいがちだ。安心が慢心になってしまうのである。慢心は、つぎのラウンドでの大敗を招くことは言うまでもない。しかも、外交というものは、スポーツと違って最終ラウンドはないのである。

著者は、習近平という政治指導者を「太った小泉純一郎」だと形容している。その心は「変人」ということだが、まさに言い得て妙だろう。歴代の指導者とはかなり特異なパーソナリティーの持ち主なのである。

だが、重要なことは、すでに建国から70年を経過した中国は成熟段階に達しており、習近平のあとにつづく指導者も、毛澤東以来の「中国の夢」(チャイナ?ドリーム)の実現を追求するのだ、という著者の指摘である。問題は、特異なパーソナリティの持ち主の習近平だけではない。中国共産党そのものにあるのだ。

近代以降の中国にとっての重要な課題は日本対策であることは言うまでもない。「第7章 「対日工作」の歴史が教える次の主戦場」に書かれているが、戦前から現在にいたるまで、中国は日本に対して「対日工作」をおこなってきた。「対日工作」はスパイ小説の話ではない。「いま、ここで」進行中の工作であり、誰もが無意識のうちに協力者となっている可能性もあるのだ。

ビジネスパーソンにとって耳が痛いのは、「経済界に圧力をかければ日本は簡単に動かせる」という中国側の認識であろう。経済界の意向を無視しては、日本では政治は動かせないことを中国は熟知しているのだ。

インテリジェンスの分野においては、中国は米英アングロサクソンをも上回るというのが著者の見立てだが、対日工作にかんしても、じつに徹底的に日本人を研究したうえに構築された戦略に基づいているのである。

中国文明とは異なる日本が、東アジア世界のなかで生き残るには、日米同盟を堅持すべしというのが著者の立場だが、これはイデオロギーによるものというよりもリアリズムに基づく認識というべきだろう。わたしも基本的に賛成だ。

ただし、その同盟国アメリカに対してすらシビアなまなざしで見つめるべきであると注意喚起する姿勢にこそ中西氏の真骨頂があるというべきだろう。とかく日本人は、米国か中国かという二者択一の単線的な思考になりがちだが、インテリジェンスの立場にはそれはない。つねに日本の国益が第一に来るのである。

「冷戦後、日本人の判断を誤らせたアメリカ発の世界像」として、著者は以下の4つをあげている。

① 「歴史の終わり」論 
② 「文明の衝突」論 
③ 「グローバル市民社会」論 
④ 「地域統合による平和と繁栄」論

提唱された当時はおおいに話題を集めた「世界像」だが、いずれもその後の四半世紀の「現実」を前にして敗退している。冷戦後のアメリカの世論誘導が裏目にでたことを十分に認識しなくてはならないのだ。

「日本人自身が判断を誤らせた日本発の世界像」にも切り込んでいる。「東アジア共同体」構想、「国連中心主義外交」の幻想、愚行であった「常任理事会入り運動」。このような迷妄からは、いまや完全に脱却しなければならない。

「日出づる処の皇子、書を日没する処の天子に致す」という国書を随の陽帝にあてて送った聖徳太子の外交こそ、21世紀のわれわれも模範とすべきだという著者の主張にも賛成だ。国家と国家の「対等」の関係こそ、外交の基軸に置くべしという基本姿勢である。そこには嫌中(けんちゅう)も媚中(びちゅう)も生じる余地はない。外交は好き嫌いを前提にしてはならないのだ。リアリズムに徹しなくてはならないのである。

著者の立ち位置は英国流の「保守」(=コンサバティブ)であり、日本語の「保守」とはニュアンスが異なる。むしろユートピアな理想を追わないリアリズムの立場というべきだろう。それは過度な悲観主義にもとづく「自虐」姿勢でも、自信過剰が招きがちな「夜郎自大」でもない

「九条改正を含めた憲法改正が日中に真の安定をもたらす」という著者の主張に違和感を感じる人もいるだろうが、必要なのは「日中友好」という美名ではなく、実利を前提にしリアリズムに立脚した「共存共栄」の道である。

すでに「第二ラウンド」は始まっているのである。外交に終わりはない。


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目 次

はじめに
第1章 相克の始まりはレーダー照射事件
第2章 尖閣問題「棚上げ論」という愚昧
第3章 超大国が立てつづけに味わった挫折
第4章 そして日中首脳会談で中国は敗北した
 あの瞬間、全世界は日本の勝ちを悟った
 驚嘆の年を禁じ得なかった事前合意文書
 不発に終わった中国のネガティブキャンペーン
 対日問題の利用で生き残りを図った習政権
 第二ラウンドでは「対日工作」が活発化する
 日中外交のあるべき姿を聖徳太子に学べ
第5章 中国共産党は経済危機に耐えられるか
第6章 中韓の「反日戦線」に惑わされるな
第7章 「対日工作」の歴史が教える次の主戦場
 「日中国交正常化」という屈辱的な言葉遣い
 「日本の属国化=日本革命」を狙った毛沢東
 続々と設立された「日中友好」の受け皿組織
 対日「友好工作」をつとめた超一流の工作員たち
 「60年安保闘争」を誘発した北京の戦略とは
 「経済界に圧力をかければ日本は簡単に動かせる」
 戦後日本外交の媚中ぶりが極まった瞬間
 そして中国は「友好」路線を捨て去った
第8章 憲法改正が日中に真の安定をもたらす
 冷戦後、日本人の判断を誤らせた4つの世界像
  ①「歴史の終わり」論
  ②「文明の衝突」論
  ③「グローバル市民社会」論
  ④「地域統合による平和と繁栄」論
 日本外交を傷つけた「東アジア共同体」構想
 「国連中心主義外交」の幻想から目覚めよ
 日米安保を無効化する中国の "必殺兵器"
 恥ずべき愚行だった「常任理事会入り運動」
 九条改正にはもはや一国の猶予もならない
おわりに



著者プロフィール

中西輝政(なかにし・てるまさ)
1947年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院教授。2012年に退官し、京都大学名誉教授。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。1997年『大英帝国衰亡史』(PHP研究所)で毎日出版文化賞、山本七平賞を受賞。2002年正論大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

「対中国外交-来るべき「第2ラウンド」に備えよ」(中西輝政(京都大学名誉教授)、PHP Biz Online 衆知 2015年1月5日)

日中首脳会談(外務省、平成26年11月10日)

戦後70年の今年、中国が仕掛けてくる“罠” (北野幸伯・国際関係アナリスト、2015年2月4日)

(2015年3月6日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

書評 『大英帝国衰亡史』(中西輝政、PHP文庫、2004 初版単行本 1997)-「下り坂の衰退過程」にある日本をどうマネジメントしていくか「考えるヒント」を与えてくれる本


現代中国

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書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目!

書評 『習近平-共産中国最弱の帝王-』(矢板明夫、文藝春秋社、2012)-「共産中国最弱の帝王」とは何を意味しているのか?


日本文明は中国文明とは異なる文明世界

梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である!
・・日本文明が中国文明ともインド文明とも違う独自の存在であること

書評 『「東洋的専制主義」論の今日性-還ってきたウィットフォーゲル-』(湯浅赳男、新評論、2007)-奇しくも同じ1957年に梅棹忠夫とほぼ同じ結論に達したウィットフォーゲルの理論が重要だ

書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)-「日本文明」は「中華文明」とは根本的に異なる文明である

聖徳太子の「十七条憲法」-憲法記念日に日本最古の憲法についてふれてみよう!


ユートピア幻想の戦後史
  
書評 『革新幻想の戦後史』(竹内洋、中央公論新社、2011)-教育社会学者が「自分史」として語る「革新幻想」時代の「戦後日本」論

「ユートピア」は挫折する運命にある-「未来」に魅力なく、「過去」も美化できない時代を生きるということ
・・「戦前」の右翼、「戦後」の左翼は、ともにユートピア思想の系譜につらなるものである


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2013年11月24日日曜日

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」


TV番組のコメンテーターとしてのおなじみの、元外交官の論客による渾身の中国論。新書本ながら内容の充実した一冊である。

中国を論じるということは、当然のことながら日本の行く末について論じることである。

日中の軍事衝突の可能性ばかりがマスコミでは取り上げられているが、いま実際に進行中なのは、見えないところでエスカレートしつつある「サイバー戦」というかたちの米中衝突である。

米中がリアルの戦争で全面衝突する事態は、米中ともに衝突は回避したいという思惑がある以上、現実的な可能性としては大きくないだろうが、偶発的な衝突が日本を巻き込んだ形で本格的な戦争に発展する可能性がゼロだとは言い切れない

もしそうなったとき、中国はいかなる「結末」を迎えることになるのか、著者はアタマの体操と称して、シナリオ思考を試みている。これくらいの蛮勇は必要だろう。現役の外務官僚が公表することはできないからだ。

「中国統一・独裁温存」から「中国漢族・少数民族完全分裂」という7つの精緻なシナリオが面白い。それにもまして、シナリオ思考の前提にいたる著者の思考が深みがあって興味深い。現実主義者の中国論、東アジア論としてじつに読み応えのある一冊だ。

以下、わたしが面白いと感じたポイントについて私見をまじえながら紹介したいと思う。


「脆弱性」と「トラウマ」というキーワードで中国と中国人をみる

日本人からみてもっとも理解しがたいのは、なぜ中国が中国本土以外にも膨張姿勢を続けているかということだ。しかも海洋で軍拡を続ける姿勢は、「海洋国家」日本にとっては脅威そのものである。尖閣諸島だけではなく沖縄まで対象に入っていると懸念されるからだ。

著者は、中国が膨張姿勢をとりつづける理由を「中華思想」などの文化論における固定観念には依存しない。これが本書の特長だ。

まず基本的な著者の歴史観は、ダイナミックな動態的な変動のプロセスで中国をみるものである。中国が弱体化すれば周辺諸民族は息を吹き返し、中国が強大化すれば領土拡張し少数民族が圧迫される。

つまり中国とはユーラシア大陸のに展開する「大陸国家」なのであり、日本がそのひとつである「海洋国家」とは根本的に異なる存在なのだ。大陸国家は海洋国家とは異なるロジックで衰亡するのである。

そう考えると、著者も言うように、中国はどうも海洋国家としては常識の「海洋自由の原則」などが感覚的に理解できていない節がある。中国が勝手に海に線引きする「第一列島線」や「第二列島線」の発想そのものが、また中国が公海上空に勝手に設定した「防衛識別圏」が、日本からみれば侵略的に映るのはそのためだ。

(中国が勝手に線引きしている「第一列島線」と「第二列島線」 wikipedia より)

著者は、中国が膨張姿勢をとりつづける理由を、いわゆる「西洋の衝撃」(Western Impact)を植民地化という形でプライドを傷つけられたトラウマに見ているいわば漢民族全体の精神分析であるが、おなじく「西洋の衝撃」をうけながらも、からくも植民地化を回避し、いちはやく近代化=西欧化をなしとげ、むしろ「西欧列強」の一員として中国大陸に軍事的進出を行った過去をもつ日本人にはなかなか理解しにくい

そもそも「面子」(メンツ)を気にするということ自体、限りなくジコチューに見える中国人が、じつはプライドが高いがゆえに傷つきやすく脆弱な性格をもっていることを示しているという著者の指摘は、まさに慧眼(けいがん)というべきだ。中国人は、けっして打たれづよい存在ではないようだ。

著者が指摘する「脆弱性」というキーワードを認識のベースに置くと、さまざまなことが見えてくる。

「改革開放」以後、経済発展路線に大きく舵を切った中国であるが、発展している地域は太平洋岸の沿海部に集中している。

江戸後期の日本の警世家・林子平ではないが、沿海部は海からの攻撃に対しては脆弱だ。冷戦時代に毛澤東が内陸部の重慶にあえて工業地帯を建設したのは、米国からの核攻撃を受けても生き延びるための戦略であったことを想起する。

攻撃の可能性があるのは、なんといっても米国海軍からだと中国はみているようだ。じっさいに米中戦争の危険が高まっているということではなく、潜在的にその可能性があると認識していることが重要なのだ。いわゆる「仮想敵国」である。しかも米国海軍の基地は日本列島に存在している。中国にとっては、いまそこにある脅威と捉えていても不思議ではない。

中国にとっては米国の存在は、日本にとっての米国とは大きく異なるようだ。米国は中国を植民地化したわけではないが、中国にとって立ちはだかる最後に残る「西欧列強」が米国という存在なのだ。

かつての植民地をすべて回復した現在(・・台湾は脇に置いておく)、もはや中国が受けたトラウマは癒えたのではないかと思うのは、米国の同盟国として過去50年以上を過ごしてきた日本人の発想に過ぎないようだ。


中近東関連のキャリアも長い外交官としての「複眼的な」知見が得難い

中国の専門家による中国論は、それこそ汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)というべきほど大量に発信されているが、いずれも帯に短したすきに長しというか、あまりにもポジショントーク的性格がつよすぎるのが難点である。

著者が凡百の論者たちと異なるのは、職業上のバックグラウンド、すなわち外交官としてのキャリアがもたらしたものも少なからずあることが推察される。

中近東関連の勤務が長いことは、今回はじめて著者プロフィールをみてわかった。宮家氏の「複眼的思考」の背景には、中国のみならず中近東があったわけだ。もしかすると、外務省が組織的に育成したのかもしれない。

さらにいえば米国も熟知しているわけであり、中国を日本からの視点、米国からの視点、そして中近東からの視点と、まさに複眼的かつ複合的に見ることができるポジションにいるわけである。

従来の「東アジア」「中東」といった縦割りの外交・安保政策立案プロセス自体も変える必要がある。いまや中東と東アジアは一つの「戦域」となりつつある。米軍が二正面作戦を戦えない以上、日本の東アジア政策と中東政策は一体となるべきなのだ。(P.243~244)

このさりげない文言は本書の主要テーマではないが、中国だけでなく中東も熟知する外交官経験をもっている著者の手前味噌と捉えるべきではない。

シーレーン防衛がもつ日本の経済安全保障にとってもつ死活的な意味を考えれば、中近東から米国まで至る、いわゆる「インド・太平洋」(Indo-Pacific)全体を安全保障の視野にいれたきわめて重要な発言だ。

また、経済専門家のワナを回避できるのは、複眼的思考と幅広い教養のたまものだ。「専門バカ」の危険を語って余りない。

中国のような開発途上国においては政治と経済は不可分の政治経済学状態であり、自由主義市場経済を前提に予測を行うエコノミストたちが政治音痴であるとして一刀両断し、専門家のワナにはまっている中国研究者たちの盲点を突く姿勢には大いに共感を覚える。


現実に影響を与えるものでなければ責任ある言論ではない

著者はみずからを「保守派」としているが、「保守派」というよりも「現実派」というべきだろう。

ビジネスパーソンに限らず外務官僚であっても、実務に従事する者はみな現実派たらざるをえない。その枠組みのなかで、いかにみずからの立ち位置を確保してリーダーシップを発揮するかが求められているわけである。

著者は中国は経済的に息詰まる局面を迎えるという予想のもと、さまざまなシナリオを想定して中国の行く末を考察するとともに、その状況に対して日本がいかに対処して、日本国憲法にうたわれている「国際社会において名誉ある地位を占める」という理念を実現するかと考える。

原理原則は、日本は海洋国家であって、大陸国家の中国とは根本的に異なる地政学的条件におかれていること。これは国際政治学者の高坂正堯(こうさか・まさたか)氏が『海洋国家日本の構想』(1965年)で明快に主張して以来、現実的にものを考える日本人の基本線になっている思考基盤である。

本書の帯には、現役の内閣総理大臣として安倍晋三氏による推薦文が掲載されている。「米国・中東も知る宮家氏の複眼的な分析力を信頼している」、とある。

一読して思うのは、安倍首相が宮家氏の見解をただしく理解しているのであれば、読者としてはそれ以上言うことはないということだ。最高指導者として政策として実行するかどうかは、その時の情勢と政治的な力学にかかっているからだ。

著者は最後の第8章の冒頭でこう言っている。

日本は東アジアのパワー・シフトを強(したた)かに生き残り、志を同じくする諸国とともに、その後の新たなる国際秩序づくりに参画することで、第二次大戦を真の意味での「歴史「としなければならないのである。(P.224)

これは、著者だけでなく、多くの日本国民が望んでいることだろう。日本国憲法にうたわれている「国際社会において名誉ある地位を占める」という理念の具現化である。

はたして日本は主体的な存在として歴史を切り開いていくことができるのか。著者の問いかけはしっかりと受け止めたいものである。





目 次

はじめに
序章 「戦闘」はすでに始まっている
第1章 沖縄の領有権は未解決だ-なぜいま中国は海軍力を増強しようとするのか
第2章 漢族の民族的トラウマ-「西洋文明の衝撃」への答えはいまだに出ていない
第3章 エコノミストたちの読み違い-経済が停滞するほど暴発の可能性は高まる
第4章 歴史が教える米中関係の「光と影」-ときには「相手の面子」を守ってやることも有効だ
第5章 米中サイバー戦の真実-日米の軍事基地がサイバー攻撃を受ける日
第6章 来るべき「第二次東アジア戦争」-はたして中国は民主化するか、それとも分裂するのか
第7章 日本は「中国の敗北」にどう向き合うか-大陸と一定の距離を置く「島国同盟」のススメ
第8章 第二次大戦を「歴史」にするために-日本はこの変化を「名誉回復のチャンス」と捉えよ
おわりに

著者プロフィール

宮家邦彦(みやけ・くにひこ)
1953年神奈川県生まれ。外交政策研究所代表。78年東京大学法学部を卒業後、外務省に入省。1976~1977年米ミネソタ大学、台湾師範大学、1979年カイロ・アメリカン大学、1981年米ジョージタウン大学で語学研修。1982年7月在イラク大使館二等書記官、1986年5月外務大臣秘書官、1991年10月在米国大使館一等書記官、1998年1月中近東第一課長、同年8月日米安全保障条約課長、2000年9月在中国大使館公使、2004年1月在イラク大使館公使イラクCPA(連合国暫定当局)に出向、2004年7月中東アフリカ局参事官などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。(*太字ゴチックは引用者=わたしによるもの)


<付論> 

Japan's Abe Seeks Friends in Asia—but Not China という 2013年11月21日付で Bloomberg BusinessWeek の記事に添付された地図。安部首相の2013年のアジア外遊を図示したものだ。



見事なまでに東南アジアと中国の周辺を集中的に訪問し、援助を約束していることがわかる。いわゆる「布石を打つ」」というやつだ。

いまそこにあるのは、中国との「影響力競争」。ハードパワーとソフトパワーの組み合わせである「スマートパワー」(ジョゼフ・ナイ教授)の実践とみることができるかもしれない。

「海洋国家」日本が生き残るためになにが必要か、この図から読み取りたいものだ。この図に中近東から日本までの海上の通商路である「シーレーン」を書きくわえれば、より戦略的な見取り図を得ることができる。さらにいえば、太平洋も右サイドに加えれば、日本がその中心に位置していることがわかる。だからこそ、この地域の戦略的意味がふたたび浮上してくるのである。

もちろん、いずれも「主権国家」だから、かならずしも日本が思うように動いてくれる保証はない遠心力と求心力をどうバランスさせるか、これは外交の話だと済ませることなく、企業経営においてもインプリケーションを読み取ることも必要ではないだろうか。


PS 中国が勝手に設定した「防空識別圏」と日本の「防空識別圏」


上記の図は「中国、新防空識別圏で対策を修正-米軍機の飛行で」というタイトルの WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)記事(2013年11月28日)に掲載されていたもの。

日本の「防空識別圏」はアメリカ占領軍が設定したものを独立回復後に引き継いだもの。つまりアメリカが設計した国際秩序であり、中国による思慮なき暴挙はアメリカに対する全面的な挑戦になるのである。 (2013年11月28日 記す)


PS2 「米国の安全保障環境認識と米軍配置状況」

報道によれば、沖縄の基地問題解決にメドがついたようだ。沖縄県知事がようやく「辺野古埋め立て」を承認するという(2013年12月25日)。自民党政権が長期化する見通しのもと、基地負担軽減策を評価したからだという。

おそらくそれだけでなく、「いまそこにある危機」を前にして、沖縄県知事としてもこれ以上反対をつづけることは国益に反するという世論の突き上げを感じているためだろう。沖縄県民も中国の脅威を体感するようになってきている。



上記の「米国の安全保障環境認識と米軍配置状況」という図は、『「普天間」交渉秘録』(守屋武昌、新潮文庫、2012)に付録としてつけられているものだ。

この図に編みかけで示されている「不安定の弧」のなかに、沖縄はまさにすっぱりと含まれているのだ。

今回の沖縄県知事の決断によって、国防体制が強化される見通しがついてきたのはじつに喜ばしい。しかし、沖縄県民がふたたび戦争の犠牲になることがないよう、日本は国家全体の意志として「いまそこにある危機」に対峙しなければらならないのだ。

もちろん戦争がいつ起こってもおかしくないという覚悟を国民一人一人がもつこともまたきわめて重要である。 (2013年12月26日 記す)




<関連サイト>

Kuni Miyake's Tenor of Tokyo (宮家邦彦氏のJBPress 英語版コラム)
・・「Former diplomat Kuni Miyake, an expert on China and Middle Eastern affairs, writes a weekly column on JBpress about politics and perceptions from key capitals including Tokyo, Beijing, Seoul and Washington in an effort to debunk myths and give readers a behind-the-scenes look into global politics.」

中国「太子党」でボロ儲けした米金融機関の手口(フォーサイト 会田弘継 2013年11月22日)
・・「いま「大戦略」を考えるときに、注目される言葉は「インド・太平洋(Indo-Pacific)だ。インド洋と西太平洋をまたぐと言う意味のこの言葉は、10年前にはほとんど使われていなかった。今やアメリカのアジア戦略を語るときには必須の言葉になってきている」。 米中をふんくんだ「大戦略」を考えるうえの好記事。

骨抜きにされた中国の防空識別圏(石 平、WEDGE  2013年12月17日)
・・日米による「防空識別圏」無力化と、中国側の面子(メンツ)をたててやった米国の振る舞いについて元中国人ならではの視点で書かれている好記事

周到に準備された防空識別圏-日本は2016年まで孤立状態が続く (イアン・ブレマー、インタビュアー=石黒千賀子、日経ビジネスオンライン 2013年12月20日)
・・イアン・ブレマー氏は、「コラム:2014年の10大政治リスク」2014’s top 10 political risks)で、第1位を「米国の同盟危機」(America’s troubled alliances)としている。「安全保障面では、米国の最友好国であるイスラエル、英国、日本にとって選択肢はほとんどない・・」(For security partnerships, America’s closest allies — Israel, Britain, Japan and others — have few options.)と書いている。「海洋国家」日本の立ち位置がいかなるものか、よく考えてみる必要がある

ビッグデータ分析で、中国政府による検閲の中身が明らかに ゲイリー・キング米ハーバード大学教授に聞く (日経ビジネスオンライン 2014年2月4日)
・・中国政府によって削除される前に入手した膨大なネット書きこみ情報を「ビッグデータ」の手法で解析することにより、検閲手法と方針が明らかになった!
「分かったことは、中国政府が監視しているのは、とにかく「団体行動」であるということです。人を扇動したり、抗議行動に駆り立てたり、政府以外の人間が他人をコントロールしようとする発言は即刻検閲されます。・・(中略)・・中国政府は恐らく、特定の話題に関するソーシャルメディアを監視していて、特定の話題が盛り上がる様子を眺め、突然投稿者たちが1つの方向で議論を始めて明らかに「炎上」した時に動くようです。団体行動を実行に移しそうな炎上の仕方が見られると、すべての炎上した投稿を削除してしまうのでしょう。それが、政府寄りだろうが、反政府寄りだろうが、関係ない。団体行動の芽が見えたらとにかく取り締まる」

The American Public's Indifference to Foreign Affairs | Stratfor Geopolitical Weekly TUESDAY, FEBRUARY 18, 2014 (George Friedman)
・・アメリカは「衰退」しているのではない。第二次大戦時や冷戦時代とは異なり、アメリカを取り巻くコンテクストが変化したため、国民が外交にも内政にも「無関心」になったのだ、という趣旨。Stratfor主筆ジョージ・フリードマン論考。コンテクストは経営用語なら外部環境と言い換えていいだろう

中西輝政が語る 25年後の米中と日本がとるべき長期戦略 (WEDGE編集部、2014年04月22日)
・・「世界の覇権国としての米国の地位は、25年後も現在とさして変わらないだろう。一方、中国に起こり得る3つのシナリオとは…」

クリミアと尖閣は表裏一体 日米同盟の緊密化が世界秩序を維持する(中西輝政・京都大学教授、WEDGE、2014年5月22日)

中国は壊滅的打撃受け、今までの発展が水の泡に 米中開戦のシミュレーション、ランド研究所が公表 (渡部悦和・元陸将、JBPress、2016年8月23日)

(2016年8月23日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ

書評 『それでも戦争できない中国-中国共産党が恐れているもの-』(鳥居民、草思社、2013)-中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」。戦争をすれば・・・
・・「戦争になったら、間違いなく中国共産党は滅びる。中国共産党=中華人民共和国である以上、「亡党亡国」となるのは必定なのである。」


「大陸国家」中国の海洋進出

書評 『海洋へ膨張する中国-強硬化する共産党と人民解放軍-』(飯田将史、角川SSC新書、2013)-事実を淡々と述べる本書で正確な認識をもつことが必要だ

書評 『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)-軍事戦略の観点から尖閣問題を考える

書評 『「普天間」交渉秘録』(守屋武昌、新潮文庫、2012 単行本初版 2010)-政治家たちのエゴに翻弄され、もてあそばれる国家的イシューの真相を当事者が語る
・・「不安定の弧」の中心でトラブルメーカーとなっているのが中国の海洋進出

書評 『続・100年予測』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、ハヤカワ文庫、2014 単行本初版 2011)-2011年時点の「10年予測」を折り返し点の2016年に読む
・・この本には面白い指摘がある。「中国は東西に4000キロの広がりをもち、14の国と国境を接している、海に面しているのは一方向だけで、北、西、南方を、事実上侵入不可能な障壁によって隔離された、太平洋の縁にはりつく細長い島と考えるとイメージしやすい」(P.251)


中国経済の見通し

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論
・・中国経済がかかえる問題を、短期・中期・長期で整理し、課題解決の可能性とその困難さについて中国での企業経営に精通したエコノミストが書いた本。中国にとって致命的なのは、人口減少がまもなく始まるという事実である

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態
・・中国は権威主義政治体制維持のために市場を離湯尾する「国家資本主義」

書評 『中国バブル崩壊』(日本経済新聞社編、日経プレミアシリーズ、2015)-現在進行形の事象を整理するために有用な本


中国人の視点から中国を考える

ジャッキ-・チェン製作・監督の映画 『1911』 を見てきた-中国近現代史における 「辛亥革命」 のもつ意味を考えてみよう

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!-中国人の「個人主義」について考えてみる

書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?
・・幼少時代を中国国民党支配下から中国共産党支配下の中国で過ごした著者は中国人の視点がいかなるものであるかを教えてくれる


書評 『拝金社会主義中国』(遠藤 誉、ちくま新書、2010)-ひたすらゼニに向かって驀進する欲望全開時代の中国人

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?
・・「拝金社会」のもと心が折れそうになっている中国人が心のよりどころとするものはなにか?


海洋国家日本と地政学上のポジション

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)
・・海は日本の生命線!

書評 『日本は世界4位の海洋大国』(山田吉彦、講談社+α新書、2010)
・・点と線ではなく、面、さらには体積をもった三次元で考えよ


・・米中関係の太さについての重要な指摘が行われている本である。あまり読まれていないのが残念だ。「2章 日米の宿命の関係 1. 同盟国から仮想敵国へ 2. 幻想のアジア 3. 米中同盟=日本の破滅 4. アメリカの日本観 5. 再び日米戦争論」は必読

書評 『大英帝国衰亡史』(中西輝政、PHP文庫、2004 初版単行本 1997)-「下り坂の衰退過程」にある日本をどうマネジメントしていくか「考えるヒント」を与えてくれる本
・・「英国に対する挑戦者としてヨーロッパ大陸から急速に勃興し英国を脅かす存在となったドイツが、何かしら日本に対して挑戦者として急速に勃興してきた中国を想起させるものがある」

書評 『モンゴル帝国と長いその後(興亡の世界史09)』(杉山正明、講談社、2008)-海洋文明国家・日本の独自性が「間接的に」あきらかに


(2014年1月31日「春節」開始の日に情報追加)
(2015年1月23日、2016年7月20日 情報追加)




(2020年5月28日発売の拙著です)


 
(2019年4月27日発売の拙著です)



(2017年5月18日発売の拙著です)


   
(2012年7月3日発売の拙著です)

 





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2013年9月15日日曜日

西川恵の「饗宴外交」三部作を読む-国際政治と飲食の密接な関係。「ワインと料理で世界はまわる」!


「ワインと料理で世界がまわる」というのは、ジャーナリスト西川恵氏の「饗宴外交」三部作の最新作である 『饗宴外交』(西川恵、世界文化社、2012)の副題だが、「饗宴外交」の本質を見事に要約しているといっていいだろう。

そもそも「饗宴外交」というものを日本人読者に示してくれたのが西川恵氏である。月刊情報誌の『フォーサイト』(新潮社)の連載もずいぶん長く続いている。単行本のカバーに Wine & Dine Diplomacy とあるが、この韻を踏んだ「ワインと料理」こそ、人間社会ではものを言う。

もちろん、一本のワインや一皿の料理で国際政治が動くという意味ではない。

共に飲食することで、それまでかならずしも親しくなかった人間どうしが知り合いになり、飲食を重ねるごとに関係が緊密になっていく。その飲食の場にどのようなワインや料理が登場するか、それが意味をもつのだ。

社交(=ソーシャリゼーション)の場に飲食がかならずといっていいほどつきものであるのはそのためだ。政治にもビジネスにかかわっていなくても自明のことだと思うが、西川氏の目の付けどころが非凡なのは、晩餐会や昼食会などの饗宴におけるメニューとその内容に注目したことにある。

饗宴とは食事でもてなすこと。共に飲食することをラテン語で convivium(コンヴィヴィウム) というが、もともとの意味は「共に生きる」ということだ。それほど飲食を共にすることは生きることそのものである。



第一作の 『エリゼ宮の食卓-その饗宴と美食外交-』(西川恵、新潮文庫、2001 初版単行本 1996)は、1986年から1993年まで7年間フランス特派員を務めていた西川氏の着眼点がいかにすぐれたものであったか、その成果を一冊にまとめたものだ。

外交先進国であるフランスの大統領官邸、すなわちエリゼ宮における饗宴のメニューを詳細に読み解くことによって、ホスト国のフランスとゲスト国との国際政治を同時に読み解く試みである。

ミッテラン大統領時代(在任: 1981~1995)を中心に、そのときどきの大統領の饗宴に対する考え方と、料理の内容とワインとシャンパンの銘柄とヴィンテージによって、饗宴にあずかった各国首脳の「格付け」を知ることができるというきわめて新鮮な内容であった。

つまり外交における飲食にはシンボリックな意味が負わされているのである。歴史と前例を踏まえ、かつその饗宴の政治的意味づけを明確にして。

饗宴のゲストは、メニューに込められた政治的な意図や計算、思惑をシグナルとして明示的に、あるいは言外の暗示的なメッセージを読みとらねばならないわけだ。

同書によれば、フランスの大統領のなかでもドゴールは早食いで饗宴はあまり重視していなかったらしい。ドゴールとは違ってポンピドゥーは食事も含めた文化に造詣が深く、フランス文化の売り込みにもつながる饗宴にはチカラを入れたらしい。この姿勢はその後の大統領にも受け継がれ散るという。

2013年秋に日本公開されたフランス映画 『大統領の料理人』(2012、フランス)はミッテラン大統領のプライベート・シェフとなった女性の実話をもとにした映画だが、この映画をみるうえで、同時代を扱った 『エリゼ宮の食卓』はまたとない参考書となるはずだ。



第二作は 『ワインと外交』(西川恵、新潮新書、2007)。これは1998年以降の『フォーサイト』の連載を書籍化したものだが、饗宴でもてなす側のホスト国がメニュー作成にいかに心血を注いでいるか、前作と同様に具体的な事例で詳細に語られる。

わたしにはとくにタイのプミポン国王即位60周年式典の一切が興味深い。即位60年式典そのものに言及した記事は多いが、メニューの中身にまで言及したものは西川氏のものがほぼ唯一だからだ。フランス料理ではなくイタリア料理がベースになったのは、シーフードに恵まれたタイという背景もあるのかもしれない。

第一作の 『エリゼ宮の食卓』がフランスを中心にしたものであったとすれば、第二作の 『ワインと外交』と第三作の『饗宴外交』は欧州共同体だけでなく、東アジアやイランまで話題が広がっている。飲食における異文化と国際政治の関係について考える素材としても興味深い。

外交の世界におけるフランス語のプレゼンスは衰退しているが、饗宴の基本はフランス料理とフランスワインである。

国によってさまざまなバリエーションがあっても基本は変わらず、しかもフランス産ではなくても飲み物はワインに国際標準化する傾向にある、と。とはいえ、近年は日本料理や日本酒の人気も高いのは日本人としてはうれしいことだし、日本がこんご国際世界のなかで生き残っていくためにも心強い武器となりうることも示している。

自分自身についていえば、さすがに国際外交の舞台で饗応されるようなワインと料理をクチにすることはめったにないが、「読む口福」とはまさにこのようなことをいうのだろう。登場する料理やワインの名はすべて知らなくても、また覚えきれなくとも、そういう世界があるのだと思えば国際政治と飲食の関係に興味もわくはずだ。

グルメ本として読むもよし、国際政治の舞台裏を知る読み物として捉えるのもよし。いずれにせよ「おいしい本」であることは間違いない。

詳細な内容こそメニューを読む楽しみ。楽しみはみなさんのために取っておきましょう。

では、みなさんボナペティ(Bon appetit)!







<関連サイト>

おもてなしの心に国境はない『饗宴外交』著者:西川恵氏インタビュー (ウェッジ、2012年7月6日)


<ブログ内関連記事>

書評 『「独裁者」との交渉術』(明石 康、木村元彦=インタビュー・解説、集英社新書、2010)
・・「交渉術」としての「食事術」という文章を書いておいた。
「機会があって、私はカンボジア王国の日本大使館公邸を訪れてパーティに参加したことがあるが、その際振る舞われたワインの質とバラエティの豊富さには驚かされたものだ。・・(中略)・・隣国のスロヴェニア(旧ユーゴ)には何度かいったことがあり、これまた機会があってお招きにあずかり、チトー大統領の元料理長がつくって目の前で給仕してくれる素晴らしい料理を、スロヴェニア・ワインと一緒にいただいた経験をもっている」

書評 『クーデターとタイ政治-日本大使の1035日-』(小林秀明、ゆまに書房、2010)-クーデター前後の目まぐるしく動いたタイ現代政治の一側面を描いた日本大使のメモワール
・・「大使の重要な公務には、駐在国の政治家たちを公邸に招待し、昼食や夕食で接遇して歓談しながら、彼らの人となりをじっくり観察するというものがある・・(中略)・・アルコールが入ってリラックスした席での、海千山千のタイ人政治家たちの肉声が実にナマナマしい。息づかいまで聞こえてくるようだ」。 
小林元大使は市内の日本食レストランでは味わえない日本料理をいかがですかという誘い文句で多数の政治家を日本大使館公邸に招待することに成功した。「プーミポン国王即位60周年」と天皇皇后両陛下の訪タイをめぐる皇室外交の舞台裏がわかる貴重なメモワールである。『饗宴外交』(西川恵、世界文化社、2012)にも取り上げられている。

書評 『皇室外交とアジア』(佐藤孝一、平凡社新書、2007)-戦後アジアとの関係において果たした「皇室外交」の役割の大きさ
・・宮内庁は皇室外交という表現を嫌うらしいが、皇室の存在は日本外交においては最終兵器というべきだろう

海軍と肉じゃがの深い関係-海軍と料理にかんする「海軍グルメ本」を3冊紹介
・・『エリゼ宮の食卓』によれば、フランスのエリゼ宮の料理長は海軍所属の料理人からリクルートされるらしい。軍人であるために規律が身についており、守秘義務を絶対に守るからだという。大統領がなにを食べ、あるいは食べなかったということは健康情報そのものでありトップシークレットだからだ。

映画 『大統領の料理人』(フランス、2012)をみてきた-ミッテラン大統領のプライベート・シェフになったのは女性料理人
・・実話にもとづく、とっておきにおいしいフランス映画

映画 『ジュリー&ジュリア』(2009、アメリカ)は、料理をつくり料理本を出版することで人生を変えていった二人のアメリカ女性たちの物語
・・フランス料理で身を立てたアメリカ女性の実話

(2014年4月26日 情報追加)


なお、食事を食べてつくることについては、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(佐藤けんいち、こう書房、2012)「第5章 引き出しの増やし方 応用事例編 「料理」を例に「引き出し」を増やしてみるとしたら」にくわしく書いておいたので、参照していただけると幸いです。




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2010年12月22日水曜日

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 を読む-特集テーマは「The World Ahead」 と 「インド、パキスタン、アフガンを考える」




 月刊誌「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版)の「2010年 No.12」のレビューを引き受けることとなった。

 「2010年NO.3」、「2010年No.5」、「フォーリン・アフェアーズ・アンソロジー vol.32 フォーリン・アフェアーズで日本を考える」に引き続き 4回目である。

 今回も R+より献本をいただいている。

 月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版)そのものについては、私がブログに執筆した 月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む を参照していただけると幸いである。「フォーリン・アフェアーズ・リポート」の読み方についても書いておいた。

 前置きはさておき、「2010年No.12」の内容の紹介を行うこととしたい。

 まさに時宜をえた内容、しかも今回の執筆陣は実に豪華なメンバー揃いだ。2010年No.12 の目次は以下のとおりである。

///////////////////////////////////////////////////////////////
特集1 The World Ahead

●「アメリカ・パワーの将来-今後を左右するのは中国ではなく、スマートパワーだ-」(ジョセフ・ナイ、ハーバード大学ケネディスクール教授)
●「インターネットは自由も統制も促進する-政治的諸刃の剣としてのインターネット-」(イアン・ブレマー、ユーラシアグループ代表)
●「インターネットと相互接続権力の台頭」(エリック・シュミット Google CEO、ジャレド・コーエン Google Ideas Director)
●「新興国という無責任な利害共有者-時代は「協調なき、多極化」へ-」(スチュワート・パトリック、米外交問題評議会シニアフェロー)
●「アフリカの農業革命が世界の食糧危機を救う」(ロジャー・サロー、シカゴ国際問題評議会シニアフェロー)

●「<CFRインタビュー> アジアは多極化し、中国の覇権は実現しない」(キショール・マブバニ、シンガポール国立行政大学院院長)
●「ロシアの政治・経済を支配するシロヴィキの実態-連邦保安省というロシアの新エリート層-」(アンドレイ・ソルダトフ/アイリーナ・ボローガン、Agenture.Ru 共同設立者)

特集2 インド、パキスタン、アフガンを考える

●「<CFRミーティング> P.ムシャラフが語る政界復帰とタリバーン対策」(パルベーズ・ムシャラフ前パキスタン大統領)
●「<CFRミーティング> アフガン撤退戦略の見直しを」(リチャード・アーミテージ)
●「<CFRインタビュー> コレラ流行はパンデミック化している」(ローリー・ギャレット、米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニアフェロー)

////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 各論文の要旨については、「フォーリン・アフェアーズ・リポート」の公式サイトを参照されたい。月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 にアップされているので参照されたい。


あらたに「スマート・パワー」概念を打ち出したジョゼフ・ナイ教授の論文は、「米国は衰退している」という誤ったメッセージの危険性について警鐘を鳴らしている

 ハーバード大学公共政策大学院(=ハーバード・ケネディ・スクール)教授のジョゼフ・ナイは、オバマ政権のもとでの初代駐日大使就任のウワサが出ていたことにもわかるように、あらためて紹介するまでもなく、民主党(米国)の外交と安全保障政策への影響力もきわめて大きい、日本でも知名度の高い「知日派」の米国知識人である。

 ジョゼフ・ナイの論文「アメリカ・パワーの将来-今後を左右するのは中国ではなく、スマートパワーだ」については、巻頭論文だけに読み応えがある。少なくともこの論文だけでもじっくりと読んでおきたい。

 この論文を読むことで、「米国衰退論」は、米国市民以外だけでなく、米国市民もそのように考えていることがわかると同時に、「米国衰退論」はあくまで心理的なものであり、「拡散しつつあるパワー」のあいだで、米国が「相対的に」衰えたように見えるに過ぎないのである。けっして「絶対的な」パワーが衰退したわけではないことを、さまざまな統計データを子細に検証することで論証している。

 米国の国内外に発っせられてきた「米国が衰退している」という誤ったメッセージがいかに多くの問題を引き起こしてきたか、われわれも一歩立ち止まって、冷静に考えてみるべきだろう。
 これは、日中関係を考える際にも、きわめて重要な視点である。誤ったメッセージを受け取った中国が「尖閣問題」においていかなる行動にでたか、そしてこの中国の行動に対していかなる対応を取るべきか。
 相対的な米国のパワーが衰退しているからこそ、米国単独のパワーではなく、同盟(アライアンス)の意味が大きくなる。これは「衰退しつつある日本」からみても同様である。日米同盟もこの文脈のなかで考えるべきであろう。
 
 国際政治の文脈で、いち早く、軍事や産業などの「ハード・パワー」ではない、文化などの「ソフト・パワー」が重要だと主張したナイ教授は、最近は「スマート・パワー」(smart power)概念を打ち出している。

 「スマート・パワー」とは、情報化時代におけるハードパワーとソフトパワーリソースを組み合わせたパワーのことである。弁証法的に言えば、「正反合」の「合」にあたるものといえようか。もちろん、ハードパワーとソフトパワーは対立概念ではあるが、相互補完的な意味合いを持つので、この二つのパワーが合体したとき、まさに文字通り「賢いパワー」として、きわめて強力なものとなるであろう。

 ただし、ナイ教授が言うように、パワーは善し悪しや大小で論ずべきものではなく、自らがもてるパワーリソース(=パワーを支える資源)をいかに優れた戦略に結びつけることができるかという方法論で決まってくる。だからこそ、賢いパワーなのである。情報化時代における同盟とネットワークのありかたについても示唆の多い論文である。

 この点において、国際政治戦略が、著しく企業戦略に近づいてきたと感じるのは私だけだろうか。企業経営に引きつけて読み過ぎだと言われればそれまでなのだが。

 この論文の一部は、来春2011年に出版予定の、Joseph S. Nye Jr., The Future of Power, public Affairs, 2011 からの抜粋とのことである。
 出版に先立って「スマート・パワー」(smart power)をめぐる議論は活発になされているようだ。

 ジョゼフ・ナイと並んで日本国内でも知名度の高い「知日派」リチャード・アーミテージは、今月号にはアフガンがらみでの発言で登場しているが、ナイとアーミテージとの鼎談が、『日米同盟 vs.中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ/ジョセフ・ナイ/春原 剛、文春新書、2010)と題して、ほぼ同時期に出版されているので、あわせて目を通しておきたい。
 民主党(米国)のナイ、共和党(米国)のアーミテージは、日米同盟にかんしては超党派で盟友の立場にある。




新しい世界秩序形成プロセスにおける、中国とインドというアジアの二大新興国の「復活」について

 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」は基本的に米国中心の世界観の表明である。米国=世界ではないのは当然だが、依然として世界においてきわめて大きな影響力を行使しつづけているのが米国であり、米国自身もジョゼフ・ナイの言うとおり、ハードパワーの行使からソフト・パワーへ、そしてスマート・パワーへと進化発展を遂げている最中である。

 一方、冷戦崩壊後、いまだに新しい秩序形成をめぐってのプロセスのなかにあるわけだが、「冷戦時代」と異なり、攪乱要因となっているものの一つは、新興国の急速な台頭である。

 「新興国という無責任な利害共有者-時代は「協調なき、多極化」へ-」(スチュワート・パトリック)は、「多国間協調なき多極化」状況のなかで、日本はいかなるポジションにおいてプレイすべきかを考えるための示唆の多い論文である。

 米国自身のポジションの変化を正確に見極めておくことが、「同盟国日本」にとっても、日本が国際政治におけるプレイヤーである以上、避けて通れないことであると同時に、日本はもはや新秩序形成の主たるプレイヤーではないのか、というため息も感じざるをえない。

 一方、「<CFRインタビュー> アジアは多極化し、中国の覇権は実現しない(キショール・マブバニ)では、シンガポールの元国連大使が、米国からではない、アジアからみた地政学の観点から、アジアへのパワーシフトについて語っており、日本人からみても「複眼的な視点」をもつうえで興味深いものである。

 アジアの新興国、もちろん現在の世界秩序のなかでは新興国であっても、実際は長い歴史と文明を誇る伝統国なのであるが、その「復活しつつある」二大パワーである中国とインドについて、とくに後者のインド亜大陸をめぐる国際情勢についての理解が深まる論文がいくつか採録されている。

 インド自体がアジアの大国であるが、地政学的な条件からみれば、インド亜大陸は中央アジアとは陸で国境を接しており、アフガニスタンの変動がパキスタンをつうじて、ダイレクトに波及してくる地域である。

 パキスタンのムシャラフ前大統領とリチャード・アーミテージによるアフガン戦略にかんする2つの<CFRミーティング>が収録されているが、臨場感あふれる討論会は、ともに興味深く読むことができた。

 現在外国亡命中のムシャラフ氏が Facebook(フェイスブック)に開いたアカウントには、35万人以上がフォローしているという発言は興味深い。現時点(12月22日現在)では、さらにフォロワーが増大して37万人も目前である。

 なお、ムシャラフ氏の「フェイスブック」アカウントは以下のとおりなので、興味のある人はフォローしてみたらいいだろう。 http://www.facebook.com/pervezmusharraf



テクノロジーとしてのインターネットの本質は、政治的には「諸刃の剣」であり、政府にも非政府組織や個人にもパワーを与える存在。拡散するパワーのなかにおける国家のパワーとは・・・

 巻頭論文で、政治学者のジョゼフ・ナイは、情報化時代における「スマート・パワー」について論じているが、米国自身がトランスフォーメーションの最中にあることは、今月号の「特集1 The World Ahead」に掲載されたインターネット関連の二つの論文を読むと、よりいっそう理解が深まることになる。

 インターネット「相互接続権力」は、米国のパワーの相対的な低下を招いた要因としては、新興国の勃興に勝るとも劣らない重要な意味をもつようになっている。

 インターネットは、ある意味では米国発の「ソフトパワー」であるが、テクノロジーとしてのインターネットの本質は、政治的には「諸刃の剣」であることに注目する必要がある。テクノロジーそのものは価値中立的なツール(道具)であるからだ。
 インターネットは、敵にも味方にも等しく武器になりうる存在である。日本語でいう「バカとハサミは使いよう」という表現を想起する。

 「インターネットは自由も統制も促進する-政治的諸刃の剣としてのインターネット-」(イアン・ブレマー)は、インターネット・テクノロジーは「さまざまな野心や欲望を満たす手段でしかなく、そうした欲望の多くは、民主主義とは何の関係もない」と、インターネット楽観論にクギをさす。米国人だけではなく、日本人も心しておくべき重要な指摘である。

 世界には民主主義を国是とする国家だけでなく、権威主義的で抑圧的な政策をとりながらインターネットを活用して世論をコントロールしている国家もある。

 そしてまたインターネット・テクノロジーを巡っては、利益を動機として動く企業と国家との関係も一筋縄ではいかなくなってきている。情報戦争においてはハイテク企業が軍事産業化しつつある、とも。 

 今年2010年に、サイバー攻撃を受けていたとして、"権威主義国家"中国からの撤退をめぐって大きな話題となったグーグルは、中国がそうみなしているように、米国政府との関係を密接化する方向に動いていることに注目しておきたい。

 今月号に掲載されている「インターネットと相互接続権力の台頭」という論文の執筆者が、グーグルCEOのエリック・シュミットと今年2010年に設立されたばかりのシンクタンク部門グーグル・アイディアズ(Google Ideas)ディレクターのジャレッド・コーヘンの共同執筆であることがその事実の一端を物語っている。

 ここで、グーグルのシンクタンク部門 「グーグル・アイディアズ」(Google Ideas)について触れておこう。

 グーグル、シンクタンク「Google Ideas」設立を計画--統括者は米国務省OB(CNET JAPAN 文:Tom Krazit(CNET News) 翻訳校正:編集部2010年9月8日 09時44分)という記事によれば、設立の経緯とミッションは以下のとおりである。

 最近まで米国務省に務めていたJared Cohen氏は、雑誌「Foreign Policy」のインタビューで、2010年10月中旬から Google の同新部門を統括する予定であると述べた。Google の最高経営責任者(CEO)であるEric Schmidt氏は、同記事をTwitterで紹介している。Cohen氏は、米国務省のデジタル専門家として知られ、YouTube や Twitter といった新しいソーシャルメディア技術に対する政府内の理解促進を支援していた。
 Cohen氏によると、Google Ideas は、広範囲にわたる問題を調査する予定だという。「同組織が取り上げる課題の範囲には、テロ対策、急進派対策、核拡散防止といったハードな課題のたぐいから、開発や市民への権限付与といった人々が取り組んでほしいと望むような課題まで、あらゆるものが含まれる」(Cohen氏)。
 Cohen氏はこれを、「Think/do Tank」と呼んでいる。つまり、Google Ideas は、政府や第三者期間と協力することにより、同組織が作り上げた概念の一部を行動に移すことを目的とする予定であることを意味している。
 Google と米国務省は2010年に入って、検索結果の検閲を巡る Google と中国との論争に関連して、結びつきを強くしており・・(後略)・・

 グーグルCEOのエリック・シュミットは、大統領科学テクノロジー諮問委員会委員を務めるほか、New America Foundation (新アメリカ財団)の理事長を務めている。
 グーグルが米国の政策決定に与える影響や知的貢献の面でも、注目すべき論文であるといえよう。

 この論文で、日本語で「相互接続権力」(interconected estate)と訳された権力は、「第4の権力」(the fourth estate)といわれるマスコミに取って変わらんとする勢いのあるものである。

 インターネットに接続さえできれば、誰でも個人で発言し変化を起こすことのできるパワーを手に入れることができる。そうしてパワーを得た非政府組織と活動家が、世界全体で「パワー拡散」をさらに促進している。

 グーグル関係者による論文の英文タイトルが The Digital Disruption - Connectivity and the Diffusion of Power であることの意味はそこにある。論文の日本語訳タイトルだけを見ていると気がつきにくいが、「パワー拡散」を文言として打ち出すべきであったと思われる。

 上記2つの論文は、秘密の外交文書を入手してウェブ上で公開する「ウィキリークス」(Wikileaks)が、とくに米国政府をゆるがす存在として「事件」となる以前に発表されたものである。
 だが、この2つの論文を読んでおくことは、インターネット接続の自由をめぐる米国政府の抱えるジレンマを含め、この問題を理解するための参考となるだろう。

 ウィキリークスもまた「相互接続権力」としての非政府組織の活動家の一つである。

 すでに、ウィキリークスへの言及抜きに国際政治を論じることは不可能となった。今後の「フォーリン・アフェアーズ・リポート」で、取り上げて大いに議論してもらいたいテーマとして期待している。







<参考サイト>

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12
・・「フォーリン・アフェアーズ・リポート」の公式サイト

<論文執筆者の著書紹介>

Joseph S. Nye Jr., The Future of Power, Public Affairs, 2011
・・2011年2月発売予定

Ian Bremmer, The End of the Free Market: Who Wins the War Between States and Corporations ?, Portfolio Hardcover, 2010
・・amazon.com(米国)では、再び勃興しつつある「国家資本主義」(state capitalism)について、リーマンショックを予測して一躍脚光を浴びた経済学者・ヌリエル・ルービニ教授と one-on-one で論じあっているので、ぜひ目を通すことを奨めたい。

ユーラシア・グループ(Eurasia Group)(日本語版)
・・イアン・ブレマーが社長を務めるグローバル政治リスク分析会社



PS 「インターネットと相互接続権力の台頭」(エリック・シュミット Google CEO、ジャレド・コーエン Google Ideas Director)という論文をベースに単行本が出版されている。『第五の権力-Google には見えている未来-』(エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社、2014)。原著タイトルは、The New Digital Age: Reshaping the Future of People, Nations and Business, by Eric Schmidt and Jared Cohen, 2013 (2014年2月26日 記す)。








<ブログ内関連記事>

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.5 を読む-特集テーマは「大学問題」と「地球工学」-

「フォーリン・アフェアーズ・アンソロジー vol.32 フォーリン・アフェアーズで日本を考える-制度改革か、それとも日本システムからの退出か 1986-2010」(2010年9月)を読んで、この25年間の日米関係について考えてみる

書評 『アラブ諸国の情報統制-インターネット・コントロールの政治学-』(山本達也、慶應義塾大学出版会、2008)


米国が衰退?

書評 『100年予測-世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図-』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、早川書房、2009)
・・米国はまだまだ世界の中心であり、今後もそうであろうと考えるべきこと

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態

TIME誌 March 22, 2010号(日本版) [ANNUAL SPECIAL ISSUES] 10 IDEAS FOR THE NEXT 10 YEARS と New America Foundation について
・・グーグルCEOのエリック・シュミトが理事長を務める New America Foundation (新アメリカ財団)がまとめた未来予測レポート

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ/ジョゼフ・ナイ/春原 剛、文春新書、2010)


■数学主導の時代へ

書評 『グーグル秘録-完全なる破壊-』(ケン・オーレッタ、土方奈美訳、文藝春秋、2010)

月刊誌 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号の 「特集 そして、「理系」が世界を支配する。」は必読!-数学を中心とした「文理融合」の時代なのだ


米英アングロサクソン中心のメディア

書評 『国際メディア情報戦』(高木 徹、講談社現代新書、2014)-「現代の総力戦」は「情報発信力」で自らの倫理的優位性を世界に納得させることにある


SNSという「相互接続権力」

書評 『フェイスブック 若き天才の野望-5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた-』(デビッド・カークパトリック、滑川海彦 / 高橋信夫訳、日経BP社、2011)

バカとハサミは使いよう-ツイッターの「軍事利用」について

書評 『ウィキリークスの衝撃-世界を揺るがす機密漏洩の正体-』(菅原 出、日経BP社、2011)-「無極性時代のパワー」であるウィキリークスと創始者アサンジは「時代の申し子」だ

書評 『スノーデンファイル-地球上で最も追われている男の真実-』(ルーク・ハーディング、三木俊哉訳、日経BP社、2014)-国家による「監視社会」化をめぐる米英アングロサクソンの共通点と相違点に注目 ・・SIGINT(シギント:通信、電磁波、信号等を媒介とした諜報活動)を暴露したアサンジよりも、スノーデンのほうるかに破壊力はすさまじく大きい

法哲学者・大屋雄裕氏の 『自由とは何か』(2007年) と 『自由か、さもなくば幸福か?』(2014年)を読んで 「監視社会」 における「自由と幸福」 について考えてみる

(2014年2月26日、2016年6月13日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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