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2010年11月8日月曜日

書評 『ユダヤ人が語った親バカ教育のレシピ』(アンドリュー&ユキコ・サター、インデックス・コミュニケーションズ、2006 改題して 講談社+α文庫 2010)




「好きこそものの上手なれ」、これが「ユダヤ式教育法」のエッセンスだ!

 ユダヤ系米国人の国際弁護士と日本人女性の夫婦が書いた、「日本式教育法」といっけんよく似ているが、結果が大きく異なる「ユダヤ式教育法」の本。

 英語にはジューイッシュ・マザーという表現があるように、ユダヤ人の母親は日本の教育ママにも勝るとも劣らない「親バカ」で有名だ。だが、ユダヤ人の家庭教育が日本の家庭教育とは根本的に異なるのは、教育の中身が、強いて勉めるという性格の強い「勉強」ではなく、子ども自身の好奇心と自発性に最大限の重きを置いた「学習」あるいは「学び」(ラーニング)を重視していることにある。

 本書でも指摘されているように、教育(Education)のもともとの意味は、「与えて」教え込む事ではなく、子供から好奇心と、自発的に学ぶ気持ちを「引き出す」ことにある。これを伝統的に行ってきたのが一般的なユダヤ人の家庭教育なのである。ユダヤ人が優秀なのは、必ずしも「遺伝」だけで説明できるのものではなく、子どもが自発的に「学ぶ」ための「環境」を作り出すことを親の務めとしてきた伝統にあるといってよいのだろう。

 一言でいってしまえば、ユダヤ人家庭では、日本語で言う「好きこそものの上手なれ」を一貫して実践してきたことにあるといっていい。もちろん、子どもはいろんなことに好奇心をもつものだし、興味の対象はころころ変わっていくのであるから、親の務めとは子どもをよく「観察」し、興味をもっている分野を伸ばすように支援すること、そして特定の方向に向かうように強制しないことだ。そのためには、親には当然のことながら忍耐力が要請される。

 そしてもっとも重要なことは子どもを「信頼」すること。親子間に信頼があれば、子どもも安心して自分が好きなことに専念し、自分の道を探すことができる自信がつくわけだ。そして子どもはまた親となり、自分の子どもに自分が受けたものと同じ教育を行っていく。こうした連鎖が伝統として連綿として続いていることがユダヤ人教育法に秘密があるとすれば、そのものなのだろう。

 「天才教育のレシピ」とは、「親バカ教育のレシピ」のことであり、エッセンスとしては本書に述べられている7項目(*このブログ記事の末尾を参照)に尽きる。コトバにしてしまえば実に簡単なものだし、日本人にも無縁な教育方法ではない。

 あとは、何ごともコトバで表現する習慣「なぜ?」と質問する習慣を身につけさせ、時期がきたら親離れさせることだろう。だが、実はこの点が日本人にとっては不得意なものなのではないだろうか。
 だからこそ、この点さえクリアできれば、子どもを「天才」に育てることも夢じゃないといってもいいのかもしれない。

 現在は、『ユダヤ式「天才」教育のレシピ-「与える」より「引き出す」!-』(講談社+α文庫、2010)とタイトルを改題してして再刊されている。いかにも売らんかなといった感じの文庫版タイトルより、私は単行本出版の際のタイトルのほうが正直でいいと思うのだが・・・

 子どもをのびのびと育てたい人、ユダヤ人に天才が生まれやすい秘密の一端を知りたい人にとっては必読書である。


<初出情報>

■bk1書評「「好きこそものの上手なれ」、これが「ユダヤ式教育法」のエッセンスだ!」投稿掲載(2010年10月27日)
■amazon書評「「好きこそものの上手なれ」、これが「ユダヤ式教育法」のエッセンスだ!」投稿掲載(2010年10月27日)

*再録にあたって加筆した。




目 次(文庫版のもの)

はじめに ユダヤ人が我が家にやってきた!
プロローグ 「ユダヤ人の生徒は、なんでいつもトップクラスなの?」
第1章 子供の「天才」を引き出そう!
第2章 ユダヤ人が語った「天才」教育のレシピ
第3章 子供が発する危険信号と「六つの特性」
第4章 「天才」教育が伝えるもの(5人の著名なユダヤ系米国人へのインタビュー)
エピローグ 子供に、世界にひとつだけのハッピーを与えよう
おわりに ご縁と感謝をこめて


著者プロフィール

アンドリュー・サター(Andrew J. Sutter)

国際弁護士。1955年、米国ニューヨーク市近郊のユダヤ人家庭に生まれる。ハーバード大学で物理学を専攻。カリフォルニア大学ヘースティングス校ロースクール卒業。弁護士として証券業法、エンターテインメント・ファイナンスなどの分野で活動後、世界最大の半導体製造機器メーカー、アプライド・マテリアルズ社で知的所有権取引、技術移転を含むM&Aを担当。2000年よりソニー・グループの戦略ベンチャー投資部バイスプレジデント。2003年より国際戦略的提携に特化した弁護士活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

ユキコ・サター(Yukiko Sutter)

中村起子。1965年、岩手県に生まれる。一橋大学商学部を卒業後、小売業およびベンチャー・キャピタルに勤務。アンドリューとの結婚を機に米国へ移住。米銀勤務を経て、2002年より日米間の企業提携に関するコンサルティングに従事。翻訳者としても活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 基本的に、モンテッソーリ教育と同じ考えである。

 この著者がこのような内容の本を書いたのは、本人が米国出身でもしするとモンテッソーリ教育の学校に通っていたという可能性もある。
 また、モンテッソーリ教育の内容が、伝統的なユダヤ人の教育方法と限りなく似ていたという可能性もある。
 ユダヤ人の家庭教育が、かつての日本の家庭教育に似ているというのも、子どもに過干渉しなかった時代のよき教育の名残がユダヤ人の家庭教育にあるということかもしれない。

 モンテッソーリ教育と非常によく似ているが、違いと言えば本書でいっている内容が、基本的に家庭教育であることだろう。
 文庫版の表紙にもあるように、本棚に本があふれるほどあるという家庭環境、これはモンテッソーリ教育の現場に教育教材が用意されていることと同じロジックである。
 
 モンテッソーリ教育を受けた著名人には、米国でもユダヤ系の人間が多い。もともと教育熱心なユダヤ人が、モンテッソーリ教育に着目したのか、そのへんの事情はよくわからないので推測するしかないのだが、どくにグーグルの共同創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジについては、このブログでも 「人間の本質は学びにある」-『子供の潜在能力を 101% 引き出すモンテッソーリ教育』(佐々木信一郎、講談社+α新書、2006)で、モンテッソーリ教育について考えてみる で紹介しておいた。

 いずれにせよ、この本で展開しているのは、米国社会のような開かれた社会では可能であるとうことだ。ユダヤ人も、近代に入って「解放」されるまでは職業選択の自由もほとんどなく、本書で説かれている教育方法が存在しても、子どもの能力が社会でどこまで展開できたかは確かなことはわかからない。たとえ好きなことに集中しえたとしても、自由な選択肢がなかった状況においては・・・

 家庭内で議論する習慣、本がある・・などは伝統的にそうであろう。
 ただし、全てのユダヤ人が学者の家系であるわけではないので、こう断言してしまっていいものかどうか。

 最後に、7項目のレシピを紹介しておこう。

レシピ1 本をあげよう! 本でいっぱいの本棚を見せよう
レシピ2 とにかく観察
レシピ3 見せる、体験させる、感動させる!
レシピ4 子どもをのびのび優秀にする3つの言葉-「よく思いついたね!」「どう思う?」「いっしょに答えをさがそう」
レシピ5 言葉と態度で「信じてるよ」を示そう
レシピ6 「あなたがボス」を忘れずに!
レシピ7 時期が来たら、親離れをさせよう!


 さて、感想はいかがだろうか? 

 このブログに書いた 「人間の本質は学びにある」-モンテッソーリ教育について考えてみる を読んで、内容を確認してもらうといいだろう。



<ブログ内関連記事>

「人間の本質は学びにある」-モンテッソーリ教育について考えてみる

本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987)

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・「好きこそものの上手なれ」を貫いた学者の最後の放談

書評 『ドラッカー流最強の勉強法』(中野 明、祥伝社新書、2010)
書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)
・・「好きこそものの上手なれ」を貫いた学者の学習法



 
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