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2012年12月23日日曜日

『自助論』(Self Help)の著者サミュエル・スマイルズ生誕200年!(2012年12月23日)-いまから140年前の明治4年(1872年)に『西国立志編』として出版された自己啓発書の大ベストセラー


本日(2012年12月23日)は、『自助論』(Self Help)の著者サミュエル・スマイルズ生誕200年にあたる日だ。この本は、いまから140年前の明治4年(1872年)、日本では 『西国立志編』として出版された

現在の日本ではおびただしく出版される自己啓発書の原点が、まさにこの『西国立志編』である。明治年間に100万部を売った大ベストセラーの自己啓発書だ。

福澤諭吉の『学問のすゝめ』と並んで、「成功の時代」といわれた明治の青少年をどれだけ鼓舞してきたことか。

『自助論』によって、明治の日本人は他人頼みではなく自分で自分の運命を切り拓いていったのである。いまでは想像もしにくいことだが、サミュエル・スマイルズ生誕200年を機会にいろいろ考えてみたい。


著者のサミュエル・スマイルズはスコットランド人

日本版の wikipedia の記述によれば、サミュエル・スマイルズ(1812年12月23日~1904年4月16日)は、「英国の作家、医者。スコットランド・ハディントン生まれ。はじめエディンバラで医者を開業したが、のち著述に専念するようになった。1858年にジョン・マレー社から出版された「自助論」を出版」、とある。

(Samuel Smiles のポートレート wikipedia英語版より転載)

日本版の wikipedia の記述があまりにも短いので、英語版を参照してみよう。「Samuel Smiles (23 December 1812 – 16 April 1904), was a Scottish author and reformer.」 とある。スマイルズがスコットランド人であったことはきわめて重要だ。

財政破綻の結果、18世紀のはじめイングランド王国と合併したスコットランド王国は、多大な血を流しながらも「連合王国」(UK:United Kingdom)のなかで地歩を築くことに成功してきたが、 現在でも
独立運動が存在することからわかるように、もともとイングランドとは別個の王国である。スコットランド人は、先住民であるケルト系の人たちである。

日本の近代化にあたって英国の影響は大きかったが、スコットランド出身者のエンジニアたちが大きな影響を与えたことはアタマのなかに入れておきたい。たとえば、作家スティーブンソンのおじさんは、日本に灯台の技術移転を行った人である。

『自助論』のサミュエルズはエンジニアではないが、翻訳書をつうじて、日本の近代化をマインド面から間接的に改革したといえるだろう。


■Heaven Helps Those Who Help Themselves.(天は自ら助くる者を助く)

『自助論』(Self-Help)は、1859年にロンドンで出版された。内容は文字どおり「自助の精神」の重要性を、300人以上の人物について、具体的で豊富な実例でもって示したエピソード集のような本である。

日本語訳は『西国立志編』となったが、翻訳をおこなったのは、儒者として身を立て、英国留学の機会を得たのちにキリスト教徒となった中村正直(1832~1891)である。またの名を中村敬宇という。

儒教でいう「修身斉家治国平天下」(しゅうしん せいか ちこく へいてんか)は、何よりも「自分」のセルフマネジメント(=自己管理)を軸において、マネジメントの範囲を同心円状に広げていくという発想だ。この儒教の精神に「自助の精神」が重なるものがあると中村正直は感じたのかもしれない。

目次を英語原文と日本語訳で対照させてみよう。日本語訳文はまさにきびきびとした剛毅な文体である。しかも、なかなか味のある訳語をあてていることがわかる。


Self-Help Contents to the second edition

Preface
Introduction to the First Edition
Descriptive Contents
I. Self-Help — National and Individual
II. Leaders of Industry — Inventors and Producers
III. Three Great Potters — Palissy, Böttgher, Wedgwood
IV. Application and Perseverance
V. Helps and Opportunities — Scientific Pursuits
VI. Workers in Art
VII. Industry and the Peerage
VIII. Energy and Courage
IX. Men of Business
X. Money — Its Use and Abuse
XI. Self-Culture — Facilities and Difficulties
XII. Example — Models
XIII. Character — the True Gentleman


自助論第一版序(スマイルズ)

序論原序
第1編 邦国および人民のみずから助くることを論ず
第2編 新械器を発明創造する人を論ず
第3編 陶工三大家、すなわちパリッシー、ベットガー、ウェッジウッド
第4編 勤勉して心を用うること、および恒久に耐えて業をなすことを論ず
第5編 幇助、すなわち機会を論ず、ならびに芸業を勉修することを論ず
第6編 芸業を勉修する人を論ず
第7編 貴爵の家を創めたる人を論ず
第8編 剛毅を論ず
第9編 職事を務むる人を論ず
第10編 金銭の当然の用、およびその妄用を論ず
第11編 みずから修むることを論ず、ならびに難易を論ず
第12編 儀範(また典型という)を論ず
第13編 品行を論ず、すなわち真正の君子を論ず


中村正直訳で「みずから助くるの精神」を引用しておこう。文体は古いが読んでみてほしい。明治の青少年はこの文章に鼓舞されて、自らの道を切り開いていったのである。

この本の冒頭に、かの有名な 「Heaven Helps Those Who Help Themselves.」(天は自ら助くる者を助く)というフレーズがこの本に登場するのである。

一 みずから助くるの精神

「天はみずから助くるものを助く」(Heaven helps those who help themselves.)といえることわざは、確然(かくぜん)経験したる格言なり。わずかに一句の中に、あまねく人事成敗の実験を包蔵せり。みずから助くということは、よく自主自立して、他人の力によらざることなり。みずから助くるの精神は、およそ人たるものの才智の由(よ)りて生ずるところの根元なり。推(お)してこれを言えば、みずから助くる人民多ければ、その邦国必ず元気充実し、精神強盛なることなり。他人より助けを受けて成就せるものは、その後、必ず衰うることあり。
しかるに、内(うち)みずから助けてなすところのことは、必ず生長してふせぐべからざるの勢いあり。けだしわれもし他人のために助けを多くなさんには、必ずその人をして自己励み勉むるの心を減ぜしむることなり。このゆえに師傅(しふ(かしずく人)の過厳なるものは、その子弟の自立の志を妨ぐることにして、政法の群下を圧抑(あつよく)するものは、人民をして扶助を失い、勢力に乏しからしむることなり。


米国では当たり前の「自助」(self-help)の思想

明治の青少年に与えた影響については触れたが、英国や英語圏ではどのような受けいれ方をされているか。

ここでは、英国首相をつとめた「鉄の女」の 異名をとったマーガレット・サッチャーについて見ておこう。このブログに書いた記事 映画 『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙-』(The Iron Lady Never Compromise)を見てきた から引用しておこう。

サッチャー夫人の父親は職人の家に生まれた人で、主流の英国国教会ではなく、熱心なメソジスト派であり、まさに刻苦勉励によって自分自身を鍛え上げた人であったようだ。サッッチャー夫人の首相になるまでの回顧録『サッチャー 私の半生』(The Path to Power、1995)には、「両親ともに熱心なメソジストで、父親は牧師のようだった」とある。この記述から考えると、一般的にイメージされる英国人よりも、かなり米国人に近いメンタリティーの持ち主であったのかもしれない。こういう特性が、そっくりそのまま娘に受け継がれたようだ。サッチャー夫人は、自分自身のことを、プラクティカルでまじめで、宗教的だと書いている。

サッチャー女史は、英国的というよりもきわめて米国的だ。プラクティカルでまじめで、宗教的」というのは、標準的な米国人そのものである。

「自助の精神」(self-help)は、英国よりもむしろ米国ではむしろ多数派の思想である。

現在のような社会ではもちろんセーフティ・ネットは絶対に必要だが、「自助の精神」を忘れてはいけない経済的援助もまた自助の精神、自立を支援するものでなければならない

人間というものは、経済的に自立してこそ自律的な人生を送ることができるからだ。それは、『自助論』に説かれているとおりである。

その意味では、『自助論』の思想はけっして古びてはいない。つねに顧みるべき古典なのである。






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「修身斉家治国平天下」(礼記) と 「知彼知己者百戦不殆」(孫子)-「自分」を軸に据えて思考し行動するということ

映画 『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙-』(The Iron Lady Never Compromise)を見てきた
・・サッチャー女史の基本的思想は『自助論』である

書評 『大英帝国という経験 (興亡の世界史 ⑯)』(井野瀬久美惠、講談社、2007)-知的刺激に満ちた、読ませる「大英帝国史」である・・スコットランドについて考えるガイドにある


「自分」を中心に置くということ

書評 『ヒクソン・グレイシー 無敗の法則』(ヒクソン・グレイシー、ダイヤモンド社、2010)-「地頭」(ぢあたま)の良さは「自分」を強く意識することから生まれてくる

「地頭」(ぢあたま)を鍛えるには、まず「自分」を発見すること。そのためには「履歴書」の更新が役に立つ

自分のなかに歴史を読む」(阿部謹也)-「自分発見」のために「自分史」に取り組む意味とは

(2014年7月21日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)





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