「とんぼの本」シリーズの一冊のこの本は、写真がたっぷりのビジュアル本で、エンデと日本との深いかかわりも示してくれる好著です。
いったん手に取ると、収録された興味深い写真の数々を見ながら、ついつい読みふけってしまう。全部で126ページしかありませんが、そんな本です。
わたし自身、エンデの熱心な読者ではありませんが、副題にある「時間・お金・ファンタジー」という三題噺にはひじょうに興味があるからです。書店の店頭でパラパラしているうちに、この本は絶対に買って持ち帰って家で見るべきだという気持ちにさせられてしまいました。
「未来は、エンデの中にあった」というコピーが帯にありますが、ドイツ語を少しでも知っているとなんだか不思議な感じになります。
なぜなら、エンデ(Ende)というドイツ語は、名字という固有名詞でありながら、終わりを意味する普通名詞でもあるからです。ドイツ語では普通名詞でも大文字で始まります。
だから、「未来は、エンデの中にあった」というコピーは、ミヒャエル・エンデの作品や言行に「未来」が表現されたと思想であるとともに、なにかの「終わり」のなかにも「未来」があると暗示しているように聞こえるからです。
資本主義の「終わり」(エンデ)と、すでにオルタナティブ経済として始まっている資本主義以降の経済について考えるための一つの手がかりとして、読まれるべきなのがエンデの作品であるといっても、けっしておかしな言い方ではないのではないか。そんな気にもなるすぐれた入門書です。
ぜひ一度手にとって眺めてください。かならずそのなかに引き込まれてしまいますよ。
目 次
INTRODUCTION はじめに 今、輝きを増すミヒャエル・エンデの残したもの
BIOGRAPHY エンデのあゆみ 1929~1995 ファンタジー作家の65年
LITERATURE エンデの作品 邦訳文芸作品31冊解説
WORDS エンデの言葉 インタビュー・対談・講演より
ILLUSTRATION エンデの絵 『はてしない物語』『モモ』原書未収録の自筆画
ESSAY エンデと時間
『モモ』と2つの時間(青山拓央)
エンデとお金-エンデが夢見た経済の姿-(廣田裕之)
エンデとシュタイナー―ホメオパティーとしての物語-(子安美知子)
エンデと日本-エンデが気づかせてくれた「日本らしさ」-(堀内美江)
TRAVEL エンデの旅 ドイツ、ゆかりの地をめぐって
COLUMN
私とエンデ1 時間の国へ(小林エリカ)
私とエンデ2 エンデ氏物語(池内紀)
MUSEUM 信濃町黒姫童話館
ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)
1929年11月12日 - 1995年8月28日)は、ドイツの児童文学作家。父はシュールレアリスム画家のエドガー・エンデ。日本と関わりが深く、1989年に『はてしない物語』の翻訳者佐藤真理子と結婚している。また、日本の黒姫童話館にはエンデに関わる多くの資料が収集されている。 wikipedia日本語版より
<関連サイト>
黒姫童話館・童話の森ギャラリー
・・エンデに関わる多くの資料が収集展示されている
Michael Ende (wikipedia英語版)
・・英語版にはエンデと日本とのかかわりが詳しく記述されている。戦後ドイツと戦後日本の抱えていた問題に共通するものがあったため、エンデは日本でベストセラーとして受容されたという記述がある
http://www.michaelende.de/
・・公式ウェブサイト(ドイツ語)
<ブログ内関連記事>
「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる
・・ミヒャエル・エンデはシュタイナー思想の影響を多大に受けている
「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)にいってきた(2014年4月10日)-「黒板絵」と「建築」に表現された「思考するアート」
『エンデの遺言-「根源」からお金を問うこと-』(河邑厚徳+グループ現代、NHK出版、2000)で、忘れられた経済思想家ゲゼルの思想と実践を知る-資本主義のオルタナティブ(4)
ミヒャエル・エンデの『モモ』-現代人はキリスト教的な時間から逃れることができない!?
資本主義のオルタナティブ (3) -『完全なる証明-100万ドルを拒否した天才数学者-』(マーシャ・ガッセン、青木 薫訳、文藝春秋、2009) の主人公であるユダヤ系ロシア人数学者ペレリマン
「資本主義」の機能不全と「資本主義後」の時代への芽生え-『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』、『物欲なき世界』、『資本主義の「終わりの始まり」』の三冊をつづけて読む-資本主義のオルタナティブ(4)
書評 『フリー-<無料>からお金を生み出す新戦略-』(クリス・アンダーソン、小林弘人=監修・解説、高橋則明訳、日本放送出版協会、2009)
(2014年5月11日、2017年6月20日 情報追加)
(2012年7月3日発売の拙著です)
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