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2018年9月16日日曜日

山崎豊子の最後の小説であり遺著となった『約束の海』(2014年刊行)-未完の作品だが読む価値あり


山崎豊子の最後の小説であり遺著となった『約束の海』を読んだ(注*)。ちょうどいまから30年前の1988年、海上自衛隊の潜水艦と遊漁船が衝突して多くの犠牲者が出た「なだしお事件」をモデルにした小説だ。

主人公は28歳の潜水艦勤務の海上自衛隊士官等身大の主人公であるがゆえに読ませるものがある(しかも自分とは1歳違いだ)。構想段階では第三部まであったようだが、第一部が完成した段階で著者が亡くなった。そのために遺著となってしまったが、読み応えのある小説だった。

読んでいて思い出したが、30年前の「なだしお事件」での自衛隊バッシングは、それはもうひどいものだった時代背景は冷戦末期で、主人公たちは日本海でソ連の原子力潜水艦を追尾する任務を遂行している。小説の第一部はベルリンの壁が崩壊した時点で終わる。
   
著者は「あとがき」で、とりわけ取材に苦労したと書いているが、苦労しただけあって海上自衛隊の潜水艦と勤務にかんする記述のディテールが詳しい。それだけでも読む価値のある作品となっている。

ずいぶん昔のことだが、元大本営参謀でシベリア抑留から帰国後に伊藤忠会長にまでなった瀬島龍三をモデルにした大作『不毛地帯』がビジネスパーソン必読書(!)として推奨されていたので読んだことがあるが、もしかすると、この作品がそれにつぐものとなったかもしれないと思うと、残念な気がしないでもしないではない。

とはいえ、未完に終わった『約束の海』は、読んでいろんなことを考えさせる作品だ。一気に読んでしまった。


*2018年5月31日にFBに投稿したもの。加筆修正を加えた上で、ここに再録することにした。




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書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」


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