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2010年12月12日日曜日

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み




 『沈黙の艦隊』 文庫版で全16巻を読み終えた。 なんせ単行本32巻を文庫本16冊に合冊しただけに、ものすごいボリュームだった。

 先週末の二日を使って一気読みしようと思ったが、これだけボリュームがあって、中身が濃いマンガを一気読みすることはさすがに不可能だと悟った。
 先週と今週の2回の週末を使って前半10冊(①~⑩)、後半6冊(⑪~⑯)をそれぞれの週末に一気読みすることにした次第。


 「週刊モーニング」(講談社)連載は、1988年から1996年にかけての7年間。連載の途中から読み出したので、イマイチ内容が分からないところがあった。連載開始の頃は「スピリッツ」しか読んでいなかったので「モーニング」は読んでいなかったし、90年から92年まで米国にいたのでその間も読んでいない。

 ところが、文庫版で一気読みしていると、テーマの大きさとディテールの描き込みにあらためて感嘆するする次第。まさに地球儀を描いたマンガである。

 ラストシーンまで来て、ようやく「ああ、このシーンを読んだなあ」と思い出した。14年ぶりだから、内容をほとんど忘れていても仕方あるまい。連載ものは1週間に一度で、しかもたくさん掲載されている作品のなかの一つなので、どうしても記憶に残りにくい。マンガ週刊誌の宿命である。

 この文庫版を全部そろえてから12年、今回ようやく封を切って全巻読破した。
 やはりなんといっても、マンガは一気読みするに限ると改めて思う。


「沈黙の艦隊」とは潜水艦のこと。扱うテーマはきわめて壮大

 このマンガは、端的にいってしまえば、潜水艦ものの戦記である。
 しかし、これだけでは終わらずに、核戦争と抑止、国家と国家を超えるもの、戦争と平和などきわめて大きなテーマを扱った大河小説のような長編マンガだ。

 設定は第二次大戦後の冷戦構造が崩壊をはじめた1980年代末の海上自衛隊であるがゆえに、でてくるのは実際の戦記ではなく、シミュレーションである。
 しかも、日本が米国とのあいだで極秘裏に製造した原子力潜水艦(=原潜)という、ある意味ではまったく荒唐無稽な設定なのだが、大きなテーマを扱ったものだけに、これくらいの現実離れしたものであったほうが面白い。
 日本初の原子力潜水艦「シーバット」の艦長に任命された海上自衛隊一の切れ者・海江田四郎が、試験航海中に反乱逃亡して、独立国「やまと」を宣言、その後の約2ヶ月間の軌跡が文庫本16巻にわたって語られる。

 設定は違うが、トム・クランシー原作で、ショーン・コネリー主演の映画 『レッド・オクトーバーを追え』に似ていなくもない。この映画では、ソ連の潜水艦長が米国亡命を企てるという設定であったが、一隻の潜水艦を追いつめて米国東海岸にいたるという筋書きは共通している。

 このマンガは、劇画の手法によって描かれているので、登場人物の表情も豊かで、小説や映像作品以上に臨場感をもって作品世界のなかに没入することができる。


日本のマンガ家が構想した核抑止のための「世界最終戦論」

 かわぐちかいじ の『沈黙の艦隊』は、石原完爾以降の「世界最終戦争論」の、もっとも実り豊かな思考実験といっていいだろう。

 「戦争をなくすための最終戦争」によって、その最終戦争の後に「永久平和」が訪れることになると主張したのが「世界最終戦争論」であるが、この構想そのものは 1945年に米国が人類史上はじめて最終兵器を日本に対して使用したことによって決着がついた。

 しかし、その後長く米ソ冷戦時代が続いたのであった。
 では、冷戦崩壊後の核抑止力はいかになされるべきか。これがこのマンガにおける思考実験の中身である。

 このマンガでは、「沈黙の艦隊」である原子力潜水艦が、「世界政府」のもと核抑止力として機能するという構想である。政軍分離という発想もまた荒唐無稽な気もするが、思考実験としては大いに検討してしかるべきである。

 このマンガで示された構想実現のカギは国連軍、あるいは世界政府が管理する軍の創設にあるが、実際問題としては世界全体に対する脅威、いいかえれば地球外からの地球全体に対する脅威がなければ実現性はきわめて低い。ハリウッド映画『インデペンデンス・デイ』のような形しかありえないだろう。

 地球外の侵略者による地球への脅威に対抗して地球防衛を行うというテーマは、われわれの世代以降であれば(・・すくなくとも男の子であれば)、テレビアニメをつうじて、洗脳に近いレベルまでたたき込まれている。
 
 実際にニューヨークを震撼させたのは、2001年の「9-11テロ」であった。原潜「やまと」が向かった20年前のニューヨークは、いまだ本土を襲撃された経験のなかったる。

 ある意味では、現実の事件を先取りしてしまったのかもしれない。意味合いはまったく異なるのだが。


潜水艦とは「無敵、万能の軍艦」

 海上自衛隊の元潜水艦艦長を勤めた中村秀樹という人が『これが潜水艦だ-海上自衛隊の最強兵器の本質と現実-』(中村秀樹、光人社NF文庫、2008)という本で、潜水艦については以下のように書いている。

現代の戦艦の中で、単独で作戦可能なのは潜水艦のみである。それも、海軍が実施すべき作戦のほとんどを実行可能である。無敵、万能の軍艦といえる。ジェーン海軍年鑑が、かつての戦艦のかわりに潜水艦を筆頭に掲載していることからも、潜水艦が現代海軍の主力艦と見なされていることがわかる。(P.5)

 その理由は、水中という視界が効かない、しかも三次元の立体空間のなかを、しかも電波の届かない深海にまで潜航して行動するステルス性能があるからである。水中では、潜水艦の出す音のみが頼りになる。ソナーで音波を解析し、二次元のレーダー上に視覚化し、戦術を即座に決定する。

 闇夜のなかを手探りで進む潜水艦は、地上の世界でいえば、善光寺のお戒壇めぐりにも似ている。視覚情報が使えないので、視覚以外の聴覚と触覚をフルに使って手探りで進むしかない闇の中。しかし、潜水艦の場合は、音声情報のみである。接触は衝突につながるので使用できない。

 停泊中の軍艦なら乗船したことはあるが、潜水艦に乗って潜航したことはないので、水中の感覚はよくわからない。子どもの頃、ジュール・ヴェルヌの『海底二万海里』を愛読していたが、大人になったいまも深海体験をもてないのは残念だ。

 スキューバダイビングで潜水した経験はあるのだが。宇宙にいきたいとは特に思わないが、潜水艦には乗ってみたい。しかし、無理な話だろう。

 潜水艦は実際にはかなり巨大である。まさにクジラそのものだ。

 映画や映像でみる限り、水中の潜水艦はあまり大きいとは感じないが、陸上でみるとその巨大さには目をみはるものがある。

(海上自衛隊の潜水艦「あきしお」 筆者撮影)

この写真は、広島県呉市の「海上自衛隊呉資料館」(=てつのくじら館)前に展示されている海上自衛隊の潜水艦「あきしお」である。「大和ミュージアム」のすぐ近くに隣接している。2年前に訪れた際に歩道橋から撮影した。

 「あきしお」は全長 76.2m、陸上で見るとこれだけの大きさがある。ところが中にはいったら、えらく狭く感じた。居住性はあまりよくなさそうだ。

 米国のオハイオ級ミサイル搭載原潜(SSBN)は全長170mだから、「あきしお」はその半分にも満たない。それでも意外な大きさには驚かされるのだ。

 
「海洋国家」日本にとって潜水艦のもつ意味

  『沈黙の艦隊』は、あらためて日本が「海洋国家」であることを再認識させてくれる。
 
 日本の国土面積が世界61位であるにかかわらず、領海・排他的経済水域(EEZ)の面積は世界第6位、そして海岸線の長さも世界第6位である。

 潜水艦が活躍する海中体積は、日本近海にはマリアナ海溝などの超深海をもつので、なんと世界第4位なのである。

 日本には、恵みも問題もすべて海からやってくるといっても言い過ぎではない。周囲を海によって取り囲まれた日本は、極端な話、地球上のすべてと海をつうじてつながっている。
 とくに海上貿易とエネルギーの輸入のシーレーンは日本の存立にとっての生命線である。
 
 日本近海は、冷戦時代においては米ソ原潜のつばぜり合いの中心地であった。
 冷戦崩壊後、2010年の現在では、中国の潜水艦が日本近海を潜航している。

 『沈黙の艦隊』連載後の20年間の変化がいかに大きなものであったことか。
 1990年の冷戦崩壊後の淡い期待はいまや霧散し、いまそこにある脅威を目の前にして、日米同盟は軍事同盟としてむしろ強化される傾向にある。

 先日、NHKスペシャル「日米安保50年」という特集番組の第三回では、a joint air-sea battle という新しい戦争コンセプトが紹介されていた。 周囲を海に囲まれた「海洋国家」日本にとっては海上自衛隊の潜水艦と哨戒機の能力が、きわめてウェイトが大きなものであることはいうまでもない。これにくわえて航空自衛隊の制空能力を組み合わせたものだ。
 もちろん、このコンセプトは日米同盟の枠組みのなかで、中国の軍事力を牽制するために、米国が日本に採用を提案してきているものである。

 潜水艦と漁船との衝突事故、米国の原潜と日本の漁業練習船との衝突事故、それにロシアの潜水艦沈没事故くらいしか、日本では潜水艦が話題になることはないが、日本国民としては、潜水艦という「沈黙の艦隊」について、一定以上の知識と理解をもっておきたいものである。

 マンガはマンガとして楽しむべきだが、そこから出発して、日本の安全保障における潜水艦の意味についても考えておきたい。

 帝国海軍で潜水艦の運用が始まって以来、敗戦による中断期間はあったものの、すでに 100年近い潜水艦運用の歴史をもつ日本である。この間に蓄積されてきた経験と知識は、一般の日本国民が思っている以上に、平時にも有事にもモノを言う。

 近年急速に海軍力を増強している中国であるが、中国のような大陸国家は、基本的に陸軍中心の体制であり、海軍はあくまでも傍流に過ぎない。当然のことながら潜水艦の能力についても、世界最強の米国に及ばないのは言うまでもなく、しかもまだまだ日本の比ですらない。

 こういった基本的事実は、国際情勢を考える際には、アタマの片隅においておきたいものである。








<関連サイト>

映画 『レッドオクトーバーを追え』(1990年米国)トレーラー
The Hunt for Red October Trailer

「海上自衛隊呉資料館」(てつのくじら館)
・・戦艦大和ミュージアムのすぐそば。鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読むを参照されたい 

モーニング漫画技術論 第1回 かわぐりかいじ
・・マンガ表現の技術論をマンガ家自身が語る企画


「元艦長に聞く、潜水艦の世界」講演要旨 (BLOGOS、2014年8月9日)
・・過去の話であるとはいえ当事者の話だけに大いに参考になる


<関連情報>

『海自レシピ お艦(かん)の味-元気が出る 安くて美味しい力めし-』(海上自衛隊編、小学館、2010)
・・ 『沈黙の艦隊』では、メシを食うシーンが一回しかでてこないのだが、潜水艦のなかでは、ふだんはどういう食事をしているのか? 私は陸上自衛隊の缶詰レーションは食べたことがあるが、海上自衛隊の食事はない。江田島の海上自衛隊第一術科学校の食堂で海軍カレーを食べただけだ。
 海上自衛隊のメシはうまいという評判だが、そのなかでも潜水艦のメシがもっとも旨いという。
 そりゃあそうだろう、艦からそとに出れないだけでなく、ずっと水中のなかで過ごさなければならないという閉鎖空間、楽しみといったら三度のメシしかないのも当然だ。しかも、海上自衛隊は帝国海軍以来の伝統がそのまま警鐘されているらしい。直接、潜水艦のメシを食べる機会はなくても、このレシピ本を見ているだけでも満足だ。

中国を追い、周辺国が潜水艦を相次ぎ増強 日本の技術を安全保障協力の柱に (長尾 賢、日経ビジネスオンライン、2016年1月14日)

(2016年1月14日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

マンガ 『テロルの系譜-日本暗殺史-』(かわぐち かいじ、青弓社、1992)-日本近現代史をテロルという一点に絞って描き切った1970年台前半の傑作劇画

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂 聰、新潮社、2009)・・日本周辺の海について

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)
・・「日本文明」成立の根拠は、地政学的に見た日本の特性にあること

海上自衛隊・下総航空基地開設51周年記念行事にいってきた(2010年10月3日)・・もはや航空母艦をもたない日本にとっての、陸上にある海上自衛隊航空基地と哨戒機の存在の意味、そして共同訓練を日々行っている陸上自衛隊第1空挺団について

原爆記念日とローレンス・ヴァン・デル・ポストの『新月の夜』
・・核戦争にからめて、石原完爾の「世界最終戦論」について言及している

善光寺御開帳 2009 体験記
・・闇の中を手探りで進む「お戒壇巡り」について

(2014年4月26日 情報追加)



P.S. 新しい「防衛大綱」における潜水艦増強という朗報について

 本日(2010年12月17日)、政権交代後、民主党政権になってはじめての「防衛大綱」において、北の守りであった陸上自衛隊の戦車が 600台から400台に削減されると同時に、南西方面の離島防衛へのシフトが明確になった。

 また、海の国境線を守る「機動力」の一環として、海上自衛隊の潜水艦が 16隻から 22隻に増強されることが決定された。なんだ現時点では 16隻しかないのかという思いを抱くのと同時に、とにもかくにも増強は増強だと心強い気持ちも一方では感じる。

 政権が何党のものであれ、国防方針だけは確固とした盤石なものが必要不可欠である。これを機会に、あらあらためて日本を囲む海と潜水艦のもつ意味について考えてもらいたいものだと思う次第。








(2012年7月3日発売の拙著です)








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