昨日(2026年8月20日)のことだが、「弘法大師生誕1250年記念 特別展 空海と真言の名宝」に行ってきた。会場は、東京国立博物館平成館。
平日の午前中の10時に着いたのだが、すでに「入場制限で40分待ち」で並ばされた。炎天下ではあるが、行列者用にテントが並んで設営されていたので、その点は助かる。超人気イベントである。
(会場の平成館 筆者撮影)
夏休みだから混んでいるのかと思ったが、そうではないようだ。
並んでいる人たちを見ると、ほとんどが中高年というかシニア層ばかり。先日行った「大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱 海を越えた江戸絵画」(東京都美術館)とは大きな違いだ。やはり仏像や仏画は趣味としては渋すぎるのかな?
真夏にこういう特別展を開催するのはいかがなものかとも思うが、真言宗は密教なので、護摩を焚く暑さを体感させようという意図でもあるのかなと、勘ぐってみたりもする。
■「秘仏」も含めて国宝と重文が特別展に集結
東京国立博物館での密教関連の特別展は、2011年以来15年ぶりだと思うが、それにしても出品されている仏像や仏具、仏画の数々はすごいものがある。
空海を開祖とする真言宗と、真言宗系列の各派からのものだが、「秘仏」も含めて、国宝や重文(=重要文化財)がザラで、これでもかこれでもかと並べられている。「出品目録」では、「国宝が◉」、「重文が◎」で表記されているが、ほとんどが「重文◎」以上である。
江戸時代なら「出開帳」とでもいうべきイベントだが、仏像や仏画に感嘆することはあっても、仏像に向かって手を合わせている人は皆無であった。寺院という「場」を離れると、そうなるのも仕方あるまい。仏像も仏画も、あくまでも「美術品」として展示されており、鑑賞者もそう受け取っているようだ。
(撮影可能な「五智如来座像」は国宝 筆者撮影)
「仏教美術」、さらに特定して「密教美術」として鑑賞すれば、密教の全盛期であった平安時代と、その後の鎌倉時代のものを中心とした仏像や仏画は、それはも素晴らしいとしか言いようがない。
国宝の「五智如来座像」(上掲)と重文の「愛染明王座像」(下掲)は写真撮影OKである。 後者の愛染明王は弓を射る姿で、たいへんめずらしいものだという。
(弓を射る姿の愛染明王 筆者撮影)
仏像や仏画以外で、個人的にこれは良かったのは、朝護孫子寺が所蔵する国宝の「信貴山縁起絵巻」の実物を見ることができたことだ。
会期の後期だったので「延喜加持巻」が展示されていたが、ダイナミックな描写はマンガやアニメの原型ともいうべき作品である。
(国宝の「信貴山縁起絵巻」より Wikipediaより)
■精彩を欠く「常設展示」と意外な穴場である「日本庭園」
「特別展」の会場をあとにして、今回も本館も訪れてみたが、どうも精彩に欠けるものがある。
「特別展」にかける情熱と予算の一部でも、本館の「常設展」に投入して、展示を作り直すべきではないだろうか。
日本美術の歴史的展開を展示しているのだが、あまりにも教科書的すぎてつまらない。ミュージアムにとっては教育機能が重要ではあることはわかるのだが、見せ方の工夫が必要だ。展示品保護のためだろうが、照明が暗すぎるのも好ましくない。複製を展示したらどうか?
あくあでもシロウト考えであるが、展示の方法としては、時系列をいったん解除したうえで、現在の「日本美術」を要素分解して、要素ごとに展示を構成するというのはどうだろうか?
「博物館」としてのテーマ別展示はあるのだが、インパクトに欠けるものがあることは否定できない。思わず見入るというような展示の仕方ではないのだ。
先史時代から古代を経て中世、近世という流れは、それはそれとしていいのだが、日本美術が中国の影響を受けながらも、独自の発展を示したことを浮かび上がらせるような展示がほしい。
あるいは、「特別展示」という形でいったん公開して、その展示を膨らませて常設展示にするということも考えていいのではないだろうか?
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さて、今回はじめて庭園を歩いてみた。博物館の本館裏にある日本庭園は規模としては小さいが、訪れる人もまばらで意外と穴場かもしれない。
(博物館本館裏の日本庭園)
日本の「博物館(ミュージアム)の父」ともいうべき町田久成を顕彰する石碑を見るために訪れたのだが、碑文が漢文なので現代語訳もつけたらどうだろうか。大英博物館にも劣らない博物館をつくりたいという大志を讃えたい。
(町田久成の巨大な顕彰碑 筆者撮影)
このあと上野から東京メトロを乗り継いで半蔵門に移動、「半蔵門ミュージアム」をはじめて訪問した。
■「ガンダーラの仏像と仏伝―釈尊のすがた―」を見るため「半蔵門ミュージアム」へ
「半蔵門ミュージアム」は、つい最近その存在を知ったばかりで、今回がはじめての訪問となる。「ガンダーラの仏像と仏伝―釈尊のすがた―」という特集展示を見るためだ。この展示会の情報は、instagram で知った。入場無料。
「半蔵門ミュージアム」は、真言宗醍醐寺の流れをくむ在家仏教教団である「真如苑」(しんにょえん)が所蔵する仏像や仏教美術品を展示するスペース。都心の一等地にビル一棟を所有し、無料で所蔵品を観覧させている。
特集展示「ガンダーラの仏像と仏伝―釈尊のすがた―」だが、東京国立博物館所蔵のガンダーラを補完する意味合いもあって訪問した次第。片岩に刻まれた仏殿浮彫を中心に展示されていた。いずれも2世紀から3世紀にかけて製作されたものだ。
このほか、「特別展示」のミャンマーの巨大な「仏足石」には、おもわず見入ってしまう。なかなか見応えのあるものだった。
(パンフレットの裏 中央右側に仏足石)
『万葉集』に収録されている「仏足石歌体」の「仏足石」である。「仏足石歌体」は「五・七・五・七・七・七」の六句で構成される形式の和歌で、万葉集には21首が収録されている。
「仏足石」(Buddha footprint)は、仏陀釈尊の足跡を石で象ったものであり、信仰の対象であるが、当然のことながら実際のものではない。展示されているのは、横幅が50cm以上、長さが1m以上あるのだろうか。「太陽や月、動植物、法具などの図様が描かれ、2匹の蛇が守護する」と説明書きにある。17世紀頃のものだそうだ。
「常設展示」の曼荼羅と仏像もすばらしい。現代になってあらたに製作されたものだ。このほか、運慶作とされる重文の「大日如来坐像」もある。あわや海外流出かと危惧される前に、2008年にオークションで落札されたものだという。
「半蔵門ミュージアム」は、わざわざ訪れるミュージアムではないかもしれないが、ふとした機会に立ち寄れば、都会のオアシス的な場所として一息つける空間かもしれない。
というわけで、ミュージアムのはしご2軒で、ひざびさに「仏教美術」を堪能した次第。
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