同世代の友人から強く見ることを推奨されていた、TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』(2026年)の「全12話」を amazon prime で一気に視聴した。
「モンゴルの世紀」であった13世紀のユーラシアを舞台に、「被征服民」の女性を主人公に描いた歴史ものアニメである。原作はトマトスープ氏による同名のマンガ。
史実にもとづいたアニメだから、ぜひ見た方がいいと友人から強く薦められたものは先月のことだった。
とはいえ、なんだか絵柄が子どもっぽいなあと思って後回しにしていたところ、先週はこれまた同年代の別の友人からも強く薦められた。これはもう見るしかないな、と。
ところが、見始めたら面白いので一気に引き込まれてしまった。
遊牧民のモンゴル人によって制服され、平和な生活を破壊されてしまったペルシアの地方都市。略奪と虐殺から生き残ることはできたものの、モンゴル高原まで連れ去られ、数奇な運命をたどることになる少女が主人公。
モンゴル帝国の基礎を築いたチンギス・ハーンの死後、その跡目相続をめぐって繰り広げられる兄弟たちの暗闘。それは「武」をつかさどる男たちだけの世界ではなく、「文」をつかさどる女たちがイニシアティブを握る世界でもあった。
タイトルの「ジャードゥーガル」とは、ペルシア語で魔女を意味するのだそうだ。
「天幕」とは、言うまでもなくモンゴルを中心とした遊牧民たちの移動式住居ゲルのこと。最高権力者もまた天幕で暮らすのが、誇り高き遊牧民であるモンゴル人の流儀であった。
「魔女」が誰だったのかは、アニメの終わり近くで明らかになる。
「被征服民」としての悔しさと復讐心を胸の奥底に秘め、ギリシア・ローマ文明を継承した高度文明圏のイスラーム世界で培われた「知」を武器に、征服者モンゴル人の下で生きぬく主人公。
預言者ムハンマドの娘を意味するファーティマに名前を変える前の「シターラ」は、ラテン語の「ステラ」とおなじ語源で、夜空に輝く「星」を意味する。
そんな彼女に同調したのが、これまた「被征服民」の出身で第6王妃となった女性であった。この二人の絆は紆余曲折を経ながら最終話に向かう。
権謀術数渦巻くモンゴルの宮廷。裏切りにつぐ裏切りの連鎖。そこで繰り広げられる陰謀と暗闘のドラマは、手に汗握るスリリングなものがある。
そんなドラマ的なストーリーの面白さだけでなく、歴史考証が綿密に行われていることは、ディテール描写の素晴らしさに明らかだ。
モンゴル帝国は、「被征服民」となった多民族が混在する世界であり、また多宗教が混在する世界でもあった。 13世紀のモンゴル帝国が、ユーラシア大陸の東西を陸路で結びつけたのである。
遊牧民モンゴルの本来の宗教であるシャマニズム、主人公の信仰するイスラーム、そして王妃のひとりが信仰するキリスト教などだ。(・・このアニメの段階では、まだモンゴル人はチベット仏教は受容していない)。
登場人物のセリフや表情だけを見ていたのではわからないだろうが、背景画や描き込まれたモノを注意して見ていると、原作者とアニメ制作陣の並々ならぬ熱意と思い入れを感じるのである。
なんといっても、モンゴル帝国を「被征服民」の視点で描いたスタンスは特筆に値するといっていいいだろう。
ということで、わたくしもまた、大人による鑑賞に十分に応えることのできる、手堅い歴史物エンターテインメントであるこのアニメを強く推奨する次第であります。
(画像をクリック!)
(画像をクリック!)
(画像をクリック!)
<ブログ内関連記事>
■イランとイスラーム文明
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end
.png)














