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2015年12月3日木曜日

「ワイン展-ぶどうから生まれた奇跡-」(国立科学博物館にいってきた(2015年12月2日)-ワインの全体像を知る「博物誌」



国立科学博物館で開催中の「ワイン展-ぶどうから生まれた奇跡-」にいってきた(2015年12月2日)。日本でもワインが日常化したいま、ワインの全体像を知るためには格好の企画展といえるだろう。

この企画展は、国立科学博物館での開催ということに意味がある。ワインの文化や歴史だけでなく、ブドウの栽培やワイン醸造といった面まで含めたものだからだ。いわば「ワインの博物誌」的な展示時内容となっている。

会場構成は三部構成である。「Zone 01 ワイナリーに行ってみよう」、「Zone 02 ワインをもっと楽しむ」、「Zone 03 ワインの歴史」である。

まずは、原料としてのブドウとその栽培から始まる。博物館の内部でワイナリーを体験してみるコーナーでは、ワインづくりの各プロセスを知る。ブドウを破砕するブドウ踏みの体験コーナー(・・ただしゴム製のブドウ)、ブドウ果汁を発酵させるための酵母についてなど、ワイン醸造にかかわる自然科学的なアプローチが興味深い。

(ブドウ踏みの体験コーナーにて 足は筆者)

ワインの歴史コーナーでは、コーカサス地方で誕生したワインが、西は地中海世界を中心に拡がり、東へはシルクロードをつうじて拡がったことが示される。

古代ギリシアの壷絵やオリエントの酒盃、シルクロードを経由しての東洋への普及などに関する展示は興味深いが、ワインを飲んでいるシーンが描かれている絵画作品の展示などがあってもよかったのではないかな、と思う。美術館とのコラボである。

ワインを楽しむコーナーでは、ワインの香りを構成するさまざまな香りを成分ごとに嗅ぐことのできるコーナーなど五感をつうじた体験ができるようになっている。

(ポスター裏面の会場案内図)

ただ、じっさいにワイナリーを訪問し、醸造プロセスを見学した経験のある人にとっては物足りないのではないかな、と思う。五感をつうじた体験を目指しているのだが、子どもも入場可能な博物館である以上、アルコール臭があってはまずいだろうし、ワイナリー内にあわせた室内気温設定も難しいだろうから。

さらにいえば、「パンとぶどう酒」を重視するキリスト教についてのくわしい解説がほしかったところだ。キリスト教とワイン、とくに赤ワインは、切っても切り離せない関係にあるからだ。

企画展としてなかなか工夫されていると思うが、こういう展示は企業博物館の常設展示のほうがふさわしいのではないかな、という気もする。

とはいえ、会場で販売している「ワイン展公式ガイドブック」は、展示内容を縦長のおしゃれな装丁のガイドブックにまとめたものでよくできている。このガイドブック(1500円)は、「ワインの博物誌」として購入しておくとよいと思う。


■わたしとワイン(つけたし)

生まれていちばん最初に飲んだのは、「ワイン展」にポスターが展示されていたが、かつての日本人の多くがそうであったように、子どもの頃クリスマスの日に家族で飲んだ「赤玉ポートワイン」である。

それからしばらくは飲んでいなかったが、社会人になってから、1980年代後半から本格的に飲むようになった。

社会人になってから入った会社で販売実習があったとき、百貨店の地下食品売り場(・・いまっではデパ地下という)のワイン売り場に配属となったわたしは、1週間の研修が終わる際にベテラン販売員さんにワイン入門として1ダース分のワインをセレクトしてもらった。それからわたしのワイン人生が始まる。

その後は、世界各地で生活のなかに溶け込んでいるワインを味わってきたし、ワイナリーもいくつか見学し、試飲も楽しんできた。日本の甲府や小諸だけでなく、カリフォルニアのナパバレー、オーストラリアはシドニー郊外など。とくに、欧州のスロヴェニアでは日本の輸入業者の方と一緒にワイナリーめぐりをしている。

ワインといえば赤と決めている。もともと赤ワインばかり飲んできたのだが、あるとき健康診断結果の説明をする医者から、「善玉コレステロール不足なので、赤ワインを飲んだらよい」と薦められた。ワインは飲み物であり、クスリでもあるわけだ。まさに、「酒は百薬の長」でありますね。

プリン体を気にしなくてはならないビールよりも、ポリフェノールが豊富な赤ワインのほうがよいのだ。「ワイン展」でも「フレンチ・パラドックス」の説明がボードで掲載されていたが、濃厚な食事を好むフランス人に健康な人が多いのは赤ワインのおかげだというのは、実証されていないとはいえ説得力がある。

最近では、コストパフォーマンスを考えれば、ビールよりも南米のチリ産を中心とした、いわゆる「新世界ワイン」のほうがよい。円安であるのにもかかわらず、つまり安くてうまいワインが日本でもおおいに普及している。家飲みワインは格好つける必要はないので、「ハウスワイン」とすればよい。

もちろん、ワイン以外の酒も飲みますよ。かつてに比べたら、飲む量は減っているとはいえ。





<関連サイト>

ワイン展-ぶどうから生まれた奇跡-」(国立科学博物館)開催概要


<ブログ内関連記事>

in vino veritas (酒に真理あり)-酒にまつわるブログ記事 <総集編>
・・ラテン語の vino は酒のこと。もちろんワインをさしている


■ワインと、その蒸留酒であるブランデー

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・・オーパスワン(Opus One)などロスチャイルド家とワインの深い関係

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書評 『ボルドー・バブル崩壊-高騰する「液体資産」の行方-』 (山本明彦、講談社+α新書、2009)-ボルドー・ワインにみる世界経済のいま

映画 『大統領の料理人』(フランス、2012)をみてきた-ミッテラン大統領のプライベート・シェフになったのは女性料理人

『イスラエルのハイテクベンチャーから学ぶ会』」に参加-まずはビジネスと食事から関心をもつのがイスラエルを知る近道であろう
・・イスラエル料理とイスラエルワイン

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作家・陳舜臣はペルシアの詩人オマル・ハイヤームの『ルバイヤート』の翻訳者でもあった-追悼 陳舜臣さん
・・酒を歌ったペルシアの詩人ハイヤームが飲んでいたのはワインである


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2014年4月5日土曜日

in vino veritas (酒に真理あり)― 酒にまつわるブログ記事 <総集編>

(ブルゴーニュはシャトー・ド・ポマールの日時計 wikipedia英語版より)


in vino veritas (イン・ヴィーノ・ヴェーリタース)という格言がラテン語にある。直訳すれば「酒に真理あり」。意味はあえて解説するまでもないだろう。酔えばホンネが出る、ということだ。

ただし酒といってもワイン(vino)である。だから正確には「ワインのなかに真理あり」、だ。ラテン語世界においては古代ローマ世界も中世カトリック世界も、ワインが酒であったわけだ。だからワインをもって酒を代表させる。

ヴェーリタース(Veritas)はハーバード大学のモットーにもあるので知っている人も少なくないだろう。ラテン語には長母音があるので、ヴェーリタースとなんだか間延びした発音になってしまうのだが。

in vino というフレーズは文字でも音でも in vivo という表現を連想させる。n と v という一字の違いだが。

医学実験用語で「生体」を意味する表現だ。試験管(=実験用ビーカー)を意味する in vitro と対語(ついご)になっている。 in vitro は文字通りの意味は「ガラスのなか」。酒にひきつければ「グラスのなか」でもある。

こじつけというわけではないが、 vino と vivo は深い関係がある。ワイン(=酒)は命、である。

「酒は命」だと叫ぶのは酔っ払いだろうが、じっさいに「命の水」という表現がある。ロシアのウォッカはよせい正確に表記すればヴォートカ(vodka)だが、vod には命の意味がある。北欧のアクアヴィット(aquavit)は文字通り命(vit)の水(aqua)、フランス語の eau de vie(命の水)はブランデーなどの蒸留酒を指している。

木下杢太郎の「五月の詩(うた)」という詩にも「オードヴィー」として登場する。


(カラヴァッジオによるローマ神話の酒の神バッカス wikipedia より)



■「酒に真理あり」はもともと古代ギリシアからローマ世界へ

ラテン語の in vino veritas(酒に真理あり)の出典はエラスムスらしい。15世紀から16世紀にかけてのオランダの人文学者当時の大知識人である。『Adagia』(Erasmus Adagiorum Chiliades, Libertas)という本は、1500年にパリで出版された『ギリシア・ラテン格言集』である。その本にギリシア語の格言としてでてくるのだそうだ。  

もともとは古代ギリシアにさかのぼるものであるようだ。エラスムスの『痴愚神礼讃』には、沓掛良彦氏のラテン語原典からの新訳(中公文庫版)にはつぎのような一節がある。

それに真実以上に称賛されているものがほかにありましょか? プラトンに登場するアルキビアデスが引いている諺では、真実が語られるのは酒と子供の口によってである、とされておりますが、この称賛は、なんといってもこの私がそっくり頂戴すべきものです。(P.92) *太字ゴチックは引用者=さとう

語っているのは「痴愚女神」という設定である。沓掛氏の注釈によれば、「アルキビアデスが引いているのは、「酒は子供抜きでも、子供を入れても真実の事を語るもの」、だそうだ(P.263)。ギリシア語の原文は書いてないのでわからないが、アルキビアデスはソクラテスの年若い友人でプラトンの対話編にも登場するイケメン政治家で軍人ある。

『食べるギリシア人-古典文学グルメ紀行-』(丹下和彦、岩波新書、2012)という西洋古典学の研究者が一般向けに執筆した教養書があるが、「Ⅱ 酒のなかに「真」あり-抒情詩人に浮かぶ人の世」には、第4章は「酒の歌、恋の歌-酒仙詩人列伝」と「第5章 二日酔いにはキャベツ-英雄たちも飲んだ水割りワイン」という章が設けられている。酒食はセットでなければならないからね。

同書によれば、「酒に真理あり」は「エン・オイノー・アレーテイア」(Ἐν οἴνῳ  ἀλήθεια) である。ゼノビオス(紀元後二世紀)のことわざ集にあるという。ギリシア語の「アレーテイア」はラテン語の「ヴェリタース」に該当する。ワインはギリシア語で「オイノス」。

このフレーズを『ギリシア・ラテン引用句辞典 新増補版』(岩波書店、1963 初版 1937)でみておこう。


(『ギリシア・ラテン引用句辞典』 P.41より)


『ギリシア・ラテン引用句辞典 新増補版』には、別の出典がある。ギリシア語の部に「愛しき子よ、酒と真理 と言はる; 酒に真理あり」(Theokr. Idyllia, ⅩⅩⅠⅩ, 1)とある。テオクリトスの『牧歌』のこと。また、アルカイオスの『断片』にもまったく同じ句がある。


(『ギリシア・ラテン引用句辞典』 P.83より)


「酒が体内に入るとき、言葉は流れ出づ」というフレーズはヘロドトスのもののようだ。歴史学の父ヘロドトスである。

『ギリシア・ラテン引用句辞典 新増補版』のP.83 には古典ギリシア語の「酒」(οἶνος オイノス)にまつわる格言が約1ページまるまる収録されているので面白い。

『ギリシア・ラテン引用句辞典 新増補版』は、旧字旧仮名なので古色蒼然としているが、1937年(昭和12年)の出版物なので味のある辞典である。長期品切れなのが残念だ。西洋社会でも古典語教育が行われなくなったので需要自体が減少しているのだろうか。




わたしは大学時代にの1963年の「増補」を購入したが、増ページによる増補なので、使いにくいのが問題だ。徹底的に改定してデジタル版にしたらよいのではないかと思う。

「酒に真理あり」は、古代ギリシアや古代ローマに限らず、ユダヤ教の『タルムード』、古代ペルシアにも見られるということだ。漢文では「酒後吐真言」というそうだ。なるほど、漢字が読めるとこういうときは助かるな。「真言」というフレーズが興味深い。



■「酒に真理あり 水に健康あり」

in vino veritas にはじつは続きがある。 in aqua sanitas.である。「水に健康あり」だ。

英語では In wine there is truth, in water there is health. ドイツ語では Im Wein liegt die Wahrheit, im Wasser liegt die Gesundheit. と英語とまったく同じ意味。というより、もとのラテン語が同じだからだが。

だがフランス語では la vérité est dans le vin と上の句だけだという。ウソかホントか知らないが、なんだかフランスらしい。イタリア語は nel vino è la verità、スペイン語は en el vino está la verdad と、もとのラテン語から俗語への変化を楽しめる。

アルコール度数のきつい蒸留酒にはチェイサー(chaser)が必要。口直しの水のことだ。蒸留酒をチィス(追う)からチェイサー。だから、「酒に真理あり 水に健康あり」。

そうじゃなくても、朝起きたらまずは水を飲む。「水に健康あり」ですからね。



<参考文献>

●『食べるギリシア人-古典文学グルメ紀行-』(丹下和彦、岩波新書、2012)
●『パンとワインを巡り神話が巡る-古代地中海文化の血と肉-』(臼井隆一郎、中公新書、1995)
●『ワイン物語(上)-芳醇な香りと世界史』(ヒュー・ジョンソン、小林章夫訳、平凡社ライブラリー、2008) ・・ワインは少なくとも5000年前にグルジアで生まれ黒海ルートでギリシアに伝わた(P.34~37) 




(ブルゴーニュはシャトー・ド・ポマールの日時計 wikipediaイタリア語版より)


<ブログ内関連記事>

ブログに書いた酒にまつわる記事を一覧できるようにしておこう。

それにしても、書きも書いたりという感じだ。これからも、まだまだ書くことだろう。最近はあまり酒は飲まないのだが、うまいもの食ってうまい酒を飲む楽しみは健康である限り、つづけていくことは間違いないからだ。

もちろん、なにも食べない、なにも飲まない断食という究極のぜいたくもまた。


■総論

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる
・・英語に You're what you eat. という格言があるが(・・もとはドイツ語)、You're what you drink. と付け加えるべきであろう。飲食は切り離せない。

Παθηματα, Μαθηματα (パテマータ・マテマータ)-人は手痛い失敗経験をつうじて初めて学ぶ


■ヨーロッパのワイン・ビール・蒸留酒

「ワイン展-ぶどうから生まれた奇跡-」(国立科学博物館にいってきた(2015年12月2日)-ワインの全体像を知る「博物誌」

書評 『富の王国 ロスチャイルド』(池内 紀、東洋経済新報社、2008)-エッセイストでドイツ文学者による『物語 ロスチャイルド家の歴史』
・・オーパスワン(Opus One)などロスチャイルド家とワインの深い関係

西川恵の「饗宴外交」三部作を読む-国際政治と飲食の密接な関係。「ワインと料理で世界はまわる」!

書評 『ボルドー・バブル崩壊-高騰する「液体資産」の行方-』 (山本明彦、講談社+α新書、2009)-ボルドー・ワインにみる世界経済のいま

映画 『大統領の料理人』(フランス、2012)をみてきた-ミッテラン大統領のプライベート・シェフになったのは女性料理人

「リスボン大地震」(1755年11月1日)後のポルトガルのゆるやかな 「衰退」 から何を教訓として学ぶべきか?

「スペイン料理」 の料理本を 3冊紹介

『ベルギービール大全』(三輪一記 / 石黒謙吾、アートン、2006) を眺めて知る、ベルギービールの多様で豊穣な世界

IKEA (イケア) で北欧ライフスタイル気分を楽しむ-デフレ時代の日本に定着したビジネスモデルか?
・・スウェーデンビールとスウェーデン産のじゃが芋焼酎であるアクアヴィット(aquavit:命の水、スピリッツ 40%)

ドイツの「ビール純粋令」(1516年4月23日発布)から本日で500年

書評 『ニシンが築いた国オランダ-海の技術史を読む-』(田口一夫、成山堂書店、2002)-風土と技術の観点から「海洋国家オランダ」成立のメカニズムを探求

ウニクム(unicum)は、ハンガリーの "養命酒" で "国民酒"


■日本の酒

味噌を肴に酒を飲む

「泥酔文化圏」日本!-ルイス・フロイスの『ヨーロッパ文化と日本文化』で知る、昔から変わらぬ日本人

秋空の下、BBQを楽しむ joie de vivre(生きる喜び)

ひさびさに隅田川で屋形船を楽しむ-屋形船は東京の夏の楽しみ!

『izakaya: The Japanese Pub Cookbook』(=『英文版 居酒屋料理帖』)は、英語で見て・読んで・楽しむ「居酒屋写真集」+「居酒屋レシピ集」

書評 『ホッピーで HAPPY ! -ヤンチャ娘が跡取り社長になるまで-』(石渡美奈、文春文庫、2010 単行本初版 2007)

"昭和ノスタルジー"な一夜・・・船橋漁港直送 「いわし料理 ふなっ子」にて

幻の芋焼酎・青酎(あおちゅう)を飲んで青ヶ島の苦難の歴史に思いをはせ、福島の苦難について考える

ユダヤ教の「コーシャー」について-イスラームの「ハラール」最大の問題はアルコールが禁止であることだ
・・日本酒の「獺祭」(だっさい)の国際展開とコーシャー認証取得

「馬」年には「馬」肉をナマで食べる-ナマ肉バッシングの風潮のなか、せめて「馬刺し」くらい食わせてくれ!

ルカ・パチョーリ、ゲーテ、与謝野鉄幹に共通するものとは?-共通するコンセプトを「見えざるつながり」として抽出する
・・芋焼酎の銘柄「鉄幹」に名をとどめる与謝野鉄幹は与謝野晶子の配偶者としてだけではなく、、恋と情熱と革命(志向)の詩人として記憶にとどめたい


■東南アジア

タイのあれこれ (13) タイのワイン

タイのあれこれ(5)-ドイツ風ビアガーデン

「タイガー・ビア」で乾杯!!

ミャンマー再遊記 (4) ミャンマー・ビアとトロピカルフルーツなどなど


■中近東とコーカサス、ロシア

ブランデーで有名なアルメニアはコーカサスのキリスト教国-「2014年ソチ冬季オリンピック」を機会に知っておこう!

『イスラエルのハイテクベンチャーから学ぶ会』」に参加-まずはビジネスと食事から関心をもつのがイスラエルを知る近道であろう
・・イスラエル料理とイスラエルワイン

飛んでウラジオストク!-成田とウラジオストクの直行便が2014年7月31日に開設
・・ロシアのウオッカ(=ヴォートカ)


■飲み過ぎという「習慣の奴隷」が招くもの

マンガ 『アル中病棟(失踪日記2)』(吾妻ひでお、イーストプレス、2013)は、図らずもアル中病棟で参与観察型のフィールドワークを行うことになったマンガ家によるノンフィクション

(2014年6月10日、11月1日、2015年10月6日、12月4日、2016年5月23日 情報追加)


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2012年12月9日日曜日

『イスラエルのハイテクベンチャーから学ぶ会』に参加 ― まずはビジネスと食事から関心をもつのがイスラエルを知る近道であろう



『Israel night! しゃべって食べて、イスラエルのハイテクベンチャーから学ぶ会』 というイベントがフェイスブックで募集されていたので参加してみることにした。昨日(2012年12月8日)のことである。

イスラエルにはちょうど20年前にいったきりで、最近の動向については断片的にしか知らなかったためだ。イスラエルのハイテク事情にくわしい専門家とイスラエル料理研究家に会って話ができるというのも魅力的だからだ。

<案内文(原文)>

イスラエルってどんな国か、ご存知ですか。
日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ハイテク技術に特化したベンチャーが日々生まれており、スタートアップは年間400社以上、「中東のシリコンバレー」と呼ばれています。
日本ではなかなか考え付かないような「斜め上をいく」(とよく表現される)イスラエルの、ひねりのきいたアイディアの数々をご紹介、そこから一緒に学んでいきましょう。
サムライ・インキュベートその他でも話題の講師による、イスラエルのスタートアップ事情、ハイテク技術についてのセミナーです。
その後イスラエル料理を食べながら、それらが生まれたバックグラウンド・文化についても体験しつつ、ざっくばらんに講師・参加者と交流・意見交換する会です。
セミナーはあっても、参加者同士、講師と話す機会ってなかなかないですよね?ましてやイスラエル料理を食べる機会は!?
海外での起業を目指す方、IT業界で活躍されている方、ベンチャーキャピタリスト、イスラエルのハイテク技術とのコラボレーションをお考えの方、イスラエル料理が食べてみたい方、ちょっとでもひっかかるものがありましたら、ご参加ください!!

■日時: 12/8(土)18:00~21:00 講演+イスラエル料理ご飯会形式
■内容: 18:00-19:00 講演
19:00-21:00 イスラエル料理を囲んで交流会
■料理内容:
フムス(ひよこ豆ペースト)、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)、ケバブ、ピタパン、サラダ等前菜各種 +ワンドリンク(イスラエルワイン、ジュース、お茶)、それ以上飲みたい方は持参歓迎(冷蔵庫あります)!!
■場所: x-garden桜台 セミナールーム(東京都練馬区豊玉北3-15-17)


セミナー会場が、いま東京の若い人たちのあいだで流行のシェアハウスといううのも興味深いものがあった。

シェアハウスとは、バスルームやキッチンなどを共有(シェア)するだけでなく、リビングルームやセミナールームなども備えた集合住宅で寮のような印象である。大学時代に寮生活を送っていたわたしにはなつかしい感じがした。

だが、寮とは異なるのは、勤務先の異なる人たちが共同で住むという点。共有費でインターネット接続費用などもすべてカバーされる仕組みになっているそうだ。

会場であった「x-garden桜台」は、IT系などの起業家たちも住んでおり、事業立ち上げの孵化器であるインキューベーション機能ももっているようだ。

なにかあたらしいアイデアがうかんだとき、すぐ近くにディスカッションできる相手がいる環境というのはありがたい。ネット上でもアイデアの交換はできなくないが、なんといってもリアルでしゃべるのに勝るものはないからだ。

フェイスブックの開発者で創業者のマーク・ザッカーバーグを主人公にした映画 『ソーシャル・ネットワーク』 にも、ハーバード大学の寮でのそんなシーンがでてくる。

そんな環境が国全体で実現しているのがイスラエルというである。狭い国土に800万人にも及ばない人口。砂漠がかなりの面積を占め、しかも周囲を敵国に囲まれているという厳しい環境にあるのがイスラエルである。

イスラエルでなぜハイテク産業がさかんなのか。それを考えるためのセミナーである。

当日の講師は以下のとおりであった(敬称略)。

●加藤清司(かとう・せいじ): ISRATECH (http://www.isratech.jp/) 代表編集長
●谷口直嗣(たにぐち・なおつぐ):エンジニア/プロデューサー/プランナー
●越出水月(こしで・みずき): フードコーディネーター

2006年に26歳ではじめてイスラエルに行って以来、イスラエルのハイテク産業を日本に紹介する仕事をしている加藤氏や、イスラエル料理の普及活動をしている越出さんのような若い世代の日本人がいることは心強いことだ。

偶然の機会がキッカケとはいえ、「この国を出よ!」を実践した人たちとしゃべるのは、じつに楽しいものだった。加藤氏が、いちばん最初にいった外国がイスラエルだったというのは面白い。

イスラエルにあって日本に欠けているのは研究開発に専念するための環境、日本にあってイスラエルに欠けているのは国内市場の大きさとものづくり能力。イスラエルと日本が手を結べば、足りない部分を補い合ってさまざまなことが可能になることは、言うまでもないだろう。

イスラエルのハイテク産業については、書評 『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール & シャウル・シンゲル、宮本喜一訳、ダイヤモンド社、2012)-イノベーションが生み出される風土とは? で触れておいたので、参考にしていただきたい。また、晩年の糸川英夫博士がイスラエルに注目していたことも忘れるべきではない。

最新の動向については、先にも紹介した ISRATECH (http://www.isratech.jp/) が日本語で情報提供をしているので参照していただきたい。


さて、なによりも楽しみは食事である。今回はイスラエル料理ということになる。イスラエル料理を食べるのはひさびさである。最後に食べたのはすでに10年くらい前だと思う。料理はすべてイスラエルに2年間滞在していた越出水月さんによるものだ。


(なすのペースト)


(ひよこ豆のペースト)

冒頭にかかげた写真のように、焼き上げたパンにペーストや野菜サラダなどをはさんで食べる。冒頭の写真に写っているボール状のものはファラフェル。イスラエル版のひよこ豆でつくったコロッケである。

基本的にイスラエル料理は中近東系だと考えて問題ないといえよう。ただ、根本的に異なるのは食事の際にアルコールを飲むことは問題ないという点にある。

数年前タイのバンコクに住んでいた頃、レバノン料理店に入ったことがある。ところが、「ムスリム(=イスラーム教徒)ではなくてもアルコールは出せない」と言われてガッカリした。レバノン料理とビールは合うと思うのに・・・。その点、ユダヤ教はアルコールはOKなので、イスラエル料理はノープロブレム。

(イスラエルの白ワイン)

写真の白ワイン Yarden は甘みのある飲みやすいワインであった。

20年前にイスラエルにいった際、集団農場のキブツにも一泊したが、そこで生まれてはじめてイスラエルにもワインがあることを知った。地中海性気候であるからワインづくりがあっても不思議ではない。イスラエルとワインの関係にはロスチャイルドも関係しているようだ。

ところで、奇しくもことし2012年は、12月8日からユダヤ教徒にとっての祝祭ハヌカーがはじまる。日没から8日間、楽しい祝祭だという。12月の行事としては、アメリカでもグリーティングカードが各種販売されているので知っている人も少なくないだろう。

今回のセミナーはイスラエルに話題を特化しているので、ユダヤ関係一般には触れられていなかったが、ややこしい文化や旧約聖書の話は脇において、まずはイスラエルという国じたいに関心をもつことから始めたらいいのではないかと思った次第。

そのためには、ビジネスパーソンはまずはビジネスそのものから、そしてビジネスには直接関係はないが誰もがかかわることになる飲食から入門するのが、イスラエル理解のための近道であろう。

ぜひ一人でも多くの日本人に、さまざまな入り口からイスラエルに関心をもってほしいと願う。


 
(画像をクリック!)



<関連サイト>

サムライベンチャーサミット in イスラエル-日本への関心の高さを実感した初訪問 (ダイヤモンドオンライン 2012年11月22日)

「スペース」ではなく「体験」を提供するコンセプト型シェアハウス  彩ファクトリー代表 内野匡裕氏(前編) (日経BiZアカデミー、2014年6月20日)
・・会場となったシェアハウス代表者へのインタビュー記事

(2014年6月26日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

書評 『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール & シャウル・シンゲル、宮本喜一訳、ダイヤモンド社、2012)-イノベーションが生み出される風土とは?

きょうは何の日?-ユダヤ暦5227年の新年のはじまり(西暦2011年9月28日の日没)

『イスラエル』(臼杵 陽、岩波新書、2009)を中心に、現代イスラエルを解読するための三部作を紹介

書評 『大使が書いた 日本人とユダヤ人』(エリ・コーヘン、青木偉作訳、中経出版、2006)

イスラエル産スウィーティーの季節

映画 『戦場でワルツを』(2008年、イスラエル)をみた

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)


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2009年12月17日木曜日

書評 『富の王国 ロスチャイルド』(池内 紀、東洋経済新報社、2008)-エッセイストでドイツ文学者による『物語 ロスチャイルド家の歴史』




■エッセイストでドイツ文学者、池内 紀(いけうち・おさむ)による『物語 ロスチャイルド家の歴史』■

 ロスチャイルド家をテーマにした本は、日本ではトンデモ本も含めて多数出版されているが、本書 『富の王国 ロスチャイルド』はその中では比較的まともな内容のものといえるだろう。

 文体も、池内紀らしく平易でしかも含蓄に富むものだし、なんといっても、カフカなどユダヤ系のドイツ語作家の作品を中心に日本語訳してきた実績と知識の蓄積が背景にある。

さすが、『池内紀の仕事場 2 <ユダヤ人>という存在』(みすず書房、2005)にまとめられたような文章を書いてきた人である。十数年あたためてきたテーマというのも頷ける話だ。

 小国分立していた統一以前の18世紀後半のドイツで、ヘッセン王国の首都フランクフルトの両替商から出発したファミリーが、7代目の現在に至るまで絶えることなく富を形成、蓄積し、繁栄し続けていう事実。

 「創業は易し、守成は難し」とはよくいわれるが、同時代の宮廷ユダヤ人"ユダヤ人ジュース" ことヨーゼフ・ズュース・オッペンハイマーが、ヴュルテンべルク大公の死後後ろ盾を失い、財産没収され処刑もされた事実を考えると、創業時の基礎作りがきわめて巧みであったことがわかる。創業者が5人の息子たちをヨーロッパ各地の主要都市に配置して、ビジネスチャンス拡大とともにリスク分散を図ったのはきわめて賢明であったといえよう。

 もちろんこの背景には、激動する19世紀ヨーロッパの市民社会でユダヤ人がゲットーから"解放"され、ビジネスが「情報」を中心に動くようになったという状況も大いに働いている。

 このような時代背景のなか、創業者のきめた基本原則に忠実に従って「守成」を行い、しかしながら時代の荒波を乗り越える際には大胆な「攻め」もいとわない姿勢には、「変わらないためには、変わらなければならない」という、ヴィスコンティ監督の名作『山猫』のセリフも思い出される。
 
 これだけだと、ありきたりのロスチャイルドもので終わってしまうが、この本が類書と違うのは、「富の形成」と「富の蓄積」だけでなく、「富の使い方」に多くのページを割いていることだ。

 ユダヤ人の伝統に従い、フィランソロピー(=慈善行為)にカネを惜しまない姿勢が、結果として、民族としては少数派であるユダヤ人である一族の繁栄を守ってきたことにもつながったことは重要だろう。もちろん事業経営上のパブリシティ目的もあるが、陰徳に徹した慈善行為も非常に多い。20世紀の激動を乗り切って、なお目立たず繁栄を続ける一族の秘密の一端がここにありそうだ。

 本当はすごいけど目立たないように生きる、という生き方。なんだか著者が、『二列目の人生-隠れた異才たち-』(集英社文庫、2008)で取り上げた日本人たちにも似ていなくもない。

 もちろんロスチャイルドの場合は、資産規模はケタ違いではあるが・・・・

 "愛と革命の詩人"ハイネとパリ・ロスチャイルド家とのかかわり、イスラエル(パレスチナ)へユダヤ人農民の入植支援とワイン作りへの貢献、ボルドーワインの「シャトー・ムートン・ロチルド」や「シャトー・ラフィット・ロチルド」から、カリフォリニア・ワインのロバート・モンダヴィとの合弁の成果である「オーパス・ワン」の話まで、ビジネス書では登場しにくいエピソードもふんだんにちりばめられている。
  
 池内 紀による「物語 ロスチャイルド家の歴史」と読むのも良し、あるいはビジネスパーソンのための教養本として読むも良し。

 マンガ家・しりあがり寿による表紙イラストが、かわいらしい。


■bk1書評「エッセイストでドイツ文学者、池内 紀(いけうち・おさむ)による『物語 ロスチャイルド家の歴史』』投稿掲載(2009年12月16日) 
■amazon書評「エッセイストでドイツ文学者、池内 紀(いけうち・おさむ)による『物語 ロスチャイルド家の歴史』』投稿掲載(2009年12月16日) 


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<書評への付記 (1)-ロスチャイルド家誕生の背景>

 『エッセイストでドイツ文学者、池内 紀(いけうち・おさむ)による『物語 ロスチャイルド家の歴史』というタイトルにしたのは、池内紀のエッセイを読んだことがある人なら、中身もおおよそ予想できるだろうという含みである。

 書評でも一言触れているが、日本ではあまりにもロスチャイルド関連の"トンデモ本"が多すぎる。一言でいえば、陰謀史観に基づいた、世界を支配する金融帝国、といった類の本である。

 世界を支配するのはロスチャイルドかロックフェラーか、このようなモチーフによる陰謀史観は、もちろん日本だけでなく、ナチス・ドイツの反ユダヤ宣伝以来のものであるが、日本語で流布している話は大半が英語圏で流通している話の焼き直しに過ぎない。

 広瀬隆の『赤い楯 上下-ロスチャイルドの謎-』(集英社、1991 現在は文庫版で4冊 1996)は系図をもとにしたロスチャイルド一族の金融支配をテーマにした大冊で、出版当時はベストセラーになったと記憶している。もちろん私も全ページ読破している。

 しかし、ロスチャイルドのドイツ語読みロート・シルト(Rot Schild)は、広瀬隆がいうような「赤い楯」ではなく、池内紀が正しく訳しているように、「赤い看板」あるいは「赤い標識」という意味である。

 ドイツ語の Schild には楯(英語だと Shield)という意味もあるが、当時の金貸し業者が掲げることを命じられていた「赤い看板」をさしていると考えるのが歴史的にみても穏当だろう。

 広瀬隆のライフワークである系図をもとにした陰謀史観は読めば面白いのだが、それをもってロスチャイルド一族が一糸乱れず歩調をあわせて支配力を行使していると考えるのは、少し妄想が過ぎるのではないかと思うのは私だけではないはずだ。

 株式の所有構造(Owenership Structure)ですべてを説明するのは、やや無理があるといわざるをえないし、何か究極的な最終的意志決定者である支配者を想定するのも無理があるのではないか。


■ロスチャイルド家誕生の歴史的背景

 書評を補足する意味で、ロスチャイルド家誕生の背景について少し書いておく。

 ロスチャイルド(ドイツ語ではロートシルト、フランス語読みではロチルド)家の実質上の出発点は、フランクフルトの両替商で金貸しのマイヤー・アムシェル・ロートシルト(Mayer Amschel Rothschild)である。1744年に生まれ、1812年に68歳で没したから、当時としてもかなり長命だったといえよう。

 フランクフルトでユダヤ人がゲットー(・・正確にいうとユダヤ人居住区)から解放され、居住地選択の自由が認められたのは1796年、フランス革命後のフランス国民軍によってフランクフルトが武力占領され、ゲットーが破壊された結果である。

 フランス革命精神である「自由・平等・兄弟愛」に基づくものというよりも、ユダヤ人に課税するのが目的だったようだ。金融業でためこんだカネを目当てにしたわけである。

 フランス革命当時のドイツは、ゲーテの時代であり、ベートーヴェンの時代であり、ヘーゲルの時代でもあったわけだが、ドイツは1872年にプロイセン王国によってドイツ帝国として統一されるまで、神聖ローマ帝国が分裂してできた小国が分立していたのである。フランクフルト出身のゲーテはワイマール公国の宰相であり、そのフランクフルトはヘッセン王国の首都であった。

 小国が分立していた当時のドイツには統一通貨がなく、両替商が儲かっていたわけだ。両替商が金貸しになり、さらには財務アドバイザー、そして近代的なマーチャント・バンクへと進化を遂げていくことになる。

 ほぼ同じ時代にヴュルテンベルク公国(・・南ドイツのバイエルン王国の隣国)で辣腕をふるったのが、いわゆる"ユダヤ人ジュス"(Jud Süß)である。本名は、ヨーゼフ・ジュース・オッペンハイマー(1698–1738)で、正確にはマイヤー・アムシェル・ロートシルトが生まれる前の人物だが、ヴュルテンべルク大公の絶大な信頼を得た、現代風にいえば政商で、大公の死後後ろ盾を失い、財産没収され処刑もされている。ユダヤ人に対する反感がまだまだ強かったわけである。こういう時代層があったことを知っておく必要がある。マイヤー・アムシェルは間違いなく他山の石としたはずである。

 "ユダヤ人ジュス"については、池内紀の『池内紀の仕事場 2 <ユダヤ人>という存在』(みすず書房、2005)に収録された「大公の私設顧問」で触れられている。なお、この人物を主人公にした、ナチスの「反ユダヤ主義」宣伝映画『ユダヤ人ジュス』(1940年ドイツ) は、10分割にて YouTube にアップされている(・・音声はドイツ語字幕なし)。ナチスの宣伝映画の1つとして参考になろう。

 ロスチャイルド家が、ナポレオン戦争を契機に一気に一族の事業を軌道に乗せたことはよく知られているので省略する。本書を読んでもらうのが急がば回れである。

 池内紀が本書の冒頭でふれている、フランクフルトの「ユダヤ博物館」は、もともと五代目で断絶したフランクフルト・ロスチャイルド家の邸宅を改造してミュージアムにしたものらしい。

 私も一度訪れたことがあるが、とくにヨーロッパのユダヤ人の歴史をしるためには実にすぐれたミュージアムであることを記しておく。フランクフルト駅前のいかがわしい喧噪を離れ、また大陸欧州の金融中心都市フランクフルトのビルディング街を離れたマイン川沿いにある美しい建築物である。

●映画 『ユダヤ人ジュス』(全編93分は YouTubeにて視聴可能 ドイツ語に英語字幕)
⇒ https://www.youtube.com/watch?v=cjmfMAPtj2c


<書評への付記 (2)-ロスチャイルドとワインの話->

 さて、ロスチャイルドといえばいまでは何といってもボルドー・ワインで著名である。ボルドー・ワインについては、このブログで『ボルドー・バブル崩壊-高騰する「液体資産」の行方-』 (山本明彦、講談社+α新書、2009)の書評を掲載しているので、ご興味があれば参照していただきたい。

 もっとも、私自身はムートンやラフィットなんか飲める身分ではないが、カリフォルニアのロバート・モンダヴィ(Robert Mondavi)とロスチャイルドの合弁である「オーパス・ワン」(Opus One)なら、ごくたまにだが飲めないこともない。カリフォリニア・ワインとは思えぬコクの深さ。値段は2万円台だが、間違いなく価格以上の価値のある、素晴らしい赤ワインである。

 ロスチャイルド家の実態は、外部の人間には正直いってよくわからないが、名前のもつブランド力に関しては実体以上の価値があるといっても間違いではないだろう。

 趣味で始めたワイナリー経営が、地道に腰を据えて取り組んだ結果、マーケティング戦略の巧みさとあいまって高級ワインとしての位置を揺るぐことなく維持し続けている、という事実。

 名前のもつチカラが、実体の裏付けをあわせもつからこそ、ワインの世界でも君臨しているわけだ。

 いずれにせよ7世代にわたって一族の繁栄が続いているという事実は、特筆に値するといわざるをえない。




<ブログ内関連記事>

書評 『ことばの哲学 関口存男のこと』(池内紀、青土社、2010)-言語哲学の迷路に踏み込んでしまったドイツ語文法学者

本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987)

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高橋是清の盟友となったユダヤ系米国人の投資銀行家ジェイコブ・シフはなぜ日露戦争で日本を助けたのか?-「坂の上の雲」についての所感 (3)

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?

世の中には「雑学」なんて存在しない!-「雑学」の重要性について逆説的に考えてみる

              
       
PS 改行を増やし読みやすくした。ただし文章にはいっさい手をいれていない。<ブログ内関連記事>をつけくわえた(2013年9月18日 記す)


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