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2021年9月23日木曜日

書評『岸惠子自伝 卵を割らなければオムレツは食べられない』(岸惠子、岩波書店、2021)-読みたかった本を読んで大きな満足を得る

 
 

現在88歳の女優の著者が語る自伝エッセイ集。フランス人と結婚し、パリに移り住んだ日本人女性の走りともいうべき存在か。 帯には、社会学者・上野千鶴子氏による評が掲載されている。 

「自伝でありながら、上質なエッセイを読んだような読後感に満たされる」

まさにその通りであり、それ以外のコメントはしようがないというのが、正直なところだ。このコメント力もまたすごい。 

岸惠子氏のように、ここまで明晰に自分を表現できる知性には、めったにいないだろう。心の底から驚嘆し、賞賛を惜しまない。 

単身ヨーロッパに渡って生き抜いてきた日本女性は、ほんとうに精神が強靱に鍛え上げられている。戦前に生まれ、戦争をくぐりぬけ、戦後の日本を駆け抜けて、さっさとフランスにいってしまった直情径行ともいうべき人。現在は、拠点を日本に移している。 

もちろん、88歳まで明晰な頭脳を維持するためには、旺盛な好奇心だけでなく、体力も気力も不可欠であるが、岸惠子氏のように華奢な女性に、そんな強靱な生命力があるとは! 

アフリカへの思いということで想起するのは、ドイツ人女優で映画監督だったレーニ・リーフェンシュタールである。この人は100歳まで現役を貫いた。岸惠子氏も、まだまだやりたいことがあるのだという。 それが生きる原動力になっているのであろう。

自分のように50歳台後半の男は、「まだまだやることあるでしょ、できるでしょ」と叱咤されているような気になってくる。まだまだ、ですね。 

「卵を割らなければ、オムレツは食べられない」とは、フランスの格言だそうだ。フランス人の元夫からくどかれたときに初めて耳にしたらしい。 

まさにそのとおりの人生だな、と。いくつになっても、必要な人生の心構えではないか! 



   


目 次 
第Ⅰ部 横浜育ち
第Ⅱ部 映画女優として
第Ⅲ部 イヴ・シァンピとともに
第Ⅳ部 離婚、そして国際ジャーナリストとして
第Ⅴ部 孤独を生きる
エピローグ
おわりに
岸惠子略年譜

著者プロフィール
岸惠子(きし・けいこ)
1932年横浜生まれ。1951年女優デビュー。1957年医師・映画監督であるイヴ・シァンピとの結婚のため渡仏。1963年デルフィーヌ誕生。1976年離婚。1987年NHK衛星放送『ウィークエンド・パリ』のキャスターに就任。女優として映画・TV作品に出演し、主演女優賞のほか数多くの賞を受賞。作家、国際ジャーナリストとしても活躍を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

 


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2016年1月15日金曜日

フランスの女優イサベル・アジャーニが歌う「ボウイのように美しい」(Beau oui comme Bowie)-追悼デビッド・ボウイ(1947~2016)


デビッド・ボウイ(David Bowie)が亡くなったというニュースには驚かされた。2016年1月10日に、69歳の誕生日に亡くなった。18ヶ月にわたるガンとの闘病の末だったという。

驚いたのは、ボウイが69歳(!)だったというそのことに対してである。いつまでも老けない美貌の持ち主だと思い込んでいたのは、自分の勝手なイメージだったのだ。たしかに、自分自身も年をとったなあという実感も、このニュースを知って感じたのであった。

特別に熱心なファンだったわけではないので、ボウイについてなにか発言するのはちょっと気が引けるが、ちょっと変わった切り口から書いておきたいと思ったので書いておこう。

フランスの女優イサベル・アジャーニが歌う「ボウイのように美しい」(Beau oui comme Bowie)という曲がある。ここでいうボウイとは、もちろんデビッド・ボウイのことだ。

イサベル・アジャーニといえば現代フランスを代表する女優(・・じつは、わたしの一番の好みの女優)で、いまではカトリーヌ・ドヌーヴなどと並んでフランス映画界における大御所的な存在だが、かつてフランスの女優たちに歌わせる企画のシリーズものCDがあって、カトリーヌにもイサベルにも一枚づつアルバムが割り当てられている。イサベルのアルバム名は Isabelle Adjani, Pull marine, (Philips) である。

かつて1980年代後半によく聴いていたアルバムだが、そのなかに Beau oui comme Bowie という曲があることを思い出したので、ひさびさに引っ張り出してきた。CDには、1983年の発売と書いてある。そう、この1983年とは、ボウイの「レッツ・ダンス」が大ヒットした年でもあった。また、『戦場のメリークリスマス』で英国人将校役として主演した年でもある。

Beau oui comme Bowie は日本語に直訳すれば「美しい、そう、ボウイのように」となるが、フランス語をそのまま音声にしたがって素直に読めば「ボ・ウイ・コム・ボウイ」となる。つまり、「ボウイ」にひっかけたダジャレというわけだ(笑) フランス語でもダジャレがある、ということ。

フレンチ・ポップスの曲なので、もちろんデビッド・ボウイのカバー曲ではない。作詞作曲が才人のセルジュ・ゲンズブールによるものといえば、なんとなくわかるのではないかな? すでに亡くなっているが、いま風にいえば「ちょい悪オヤジ」を絵に描いたような存在であった。

歌詞のなかにオスカー・ワイルドとかドリアン・グレイとかでてくるので、わかる人にはわかるはずだ。Isabelle ADJANI - Beau oui comme Bowie (Serge Gainsbourg) をクリックして聴いてみるといいだろう。

イサベル・アジャーニのCDは、いまからすでに33年前のアルバムである。それにしても、ずいぶん昔のことになっていまっているのだなあと感じるばかりだ。自分のなかで時間は止まってしまっているのか・・・・。しかし、人間は確実に年を取る。

デビッド・ボウイ氏のご冥福を祈ります。合掌。





<関連サイト>

・・イサベル・アジャーニが歌う(フランス語)

[FT]独創貫いたデビッド・ボウイを悼む(社説) 2016/1/12

David Bowie's love affair with Japanese style 12 January 2016 (BBC)
・・山本寛斎との関係について



<ブログ内関連記事>

『戦場のメリークリスマス』(1983年)の原作は 『影の獄にて』(ローレンス・ヴァン・デル・ポスト)という小説-追悼 大島渚監督
・・デビッド・ボウイが主演した映画

映画 『ノーコメント by ゲンスブール』(2011年、フランス)をみてきた-ゲンズブールの一生と全体像をみずからが語った記録映画
・・「ボウイのように美しい」(Beau oui comme Bowie)の作詞作曲した才人ゲンズブール

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2011年1月号 特集 「低成長でも「これほど豊か」-フランス人はなぜ幸せなのか」を読む

『恋する理由-私が好きなパリジェンヌの生き方-』(滝川クリステル、講談社、2011)で読むフランス型ライフスタイル

滝川クリステルがフランス語でプレゼンした理由



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