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2010年8月9日月曜日

書評 『原爆と検閲-アメリカ人記者たちが見た広島・長崎-』(繁沢敦子、中公新書、2010)-「軍とメディア」の関係についてのケーススタディ




メディア・リテラシー向上に役立つ「軍とメディア」の関係についてのケーススタディ

 本書は、広島と長崎に投下された原爆の取材を行った米国人ジャーナリストたちが何を見て、何を書いたか、いや正確にいうと何を書かなかったかについて、「軍とメディア」の関係から65年後のいま、事実検証を行ったものである。


 本書に登場する基本的なプレイヤーは、空軍としての独立を悲願していた「米陸軍航空軍」と、彼らが組織したプレスツアーに参加した米国人ジャーナリストたちである。

 「米陸軍航空軍」は、空軍としての独立という悲願にむけて、米国陸海軍、とくに陸軍内部で激しい情報戦を行っていた。

 そういった背景をどこまで認識していたのかは別として、あくまでも従軍記者として占領地日本への入国を許可された米国人ジャーナリストたちが、いかなる役割を期待され、その期待にどう応えたのかについては、本書を読めばよく理解できる。


 米国人ジャーナリストたちの立ち位置はどのようなものであったか、それは「プレスツアー」とは何かを考えてみればその意味がわかる。各種の便宜を図ってもらう見返りに、スポンサーにとって都合の悪いことは自主的に書かないという不文律があるのがプレスツアーの本質だ。

 ビジネスマンである私も、何回かプレスツアーで記者たちと同行したことがあるのでわかるが、たとえオモテだった検閲がないとしても、組織に属する以上、記者たちがどこまで真相に迫り、事実を報道できるかについては、あえてここに書くまでもないことだろう。

 米陸軍航空軍のプレスツアーに参加した米国人ジャーナリストは、なによりも愛国的な米国人であった。そして、米国内の一般読者もまた愛国的な米国人であったことは、著者の指摘するとおりである。


 「原爆を投下しなくても日本は降伏した可能性がある」ことを十分に認識していた米陸軍航空軍の上層部にとって、人道に反する大量虐殺である原爆投下の真相が米国内で知られることは、空軍独立という悲願達成にとって好ましい話ではなかったのだ。

 このため彼らは、原爆被害報道を打ち消すために、戦時中の日本軍による捕虜虐待をことさらに取り上げた報道をさせるべくメディアを誘導する。

 原爆投下を最終決定したのはトルーマン大統領であるが、軍人は命令にしたがって遂行するのがその職務である。善悪の是非を棚に上げれば、軍の広報戦略としてはアタマで理解できなくはない。戦時中から行われていた検閲もその重要な一環であったのである。

 本書のテーマは、タイトルにあるように「原爆と検閲」であるが、物理学者オッペンハイマーが中心になった原爆開発の「マンハッタン計画」、独立後の米空軍によるランド・コーポレーションというシンクタンク設立など、独立前後の米空軍の組織論理という文脈において捉えると、よりいっそう見えてくるものがある。

 軍とメディアについての関係については、その後の米ソ冷戦時代、ベトナム戦争を経て、米国が関与した各種の地域紛争、そして湾岸戦争においてはいかなるものであったかを比較してみるのも興味深い。

 インターネット時代になった現在においても、基本的に軍の広報戦略は軍事戦略の一環であることをあらためて認識させてくれる本である。

 修士論文をもとにしたものだけに、この本は最初から最後まで、あくまでもファクトベースで淡々とした書き方をしているが、メディア・リテラシー向上のためのケーススタディとして読むことを奨めたい。


<初出情報>

■bk1書評「メディア・リテラシー向上に役立つ「軍とメディア」の関係についてのケーススタディ」投稿掲載(2010年8月9日)
■amazon書評「メディア・リテラシー向上に役立つ「軍とメディア」の関係についてのケーススタディ」投稿掲載(2010年8月9日)

*再録にあたって、字句の一部を加筆修正した。




著者プロフィール

繁沢敦子(しげさわ・あつこ)
1967(昭和42)年生まれ。92年神戸市外国語大学卒。読売新聞記者を経て、98年広島市立大学広島平和研究所に情報資料室編集員。2000年からフリージャーナリストに。05年、米PRIのラジオ番組The Worldによる特集“Hiroshima’s Survivors:The Last Generation”(06年ダート賞受賞)でプロデューサー。07年、映画『ヒロシマナガサキ』(08年エミー賞受賞作)共同プロデューサー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



<書評への付記>

 今年(2010年)は、1945年の敗戦から65年、広島・長崎への原爆投下からまた65年にあたる。

 本日8月9日は、長崎の原爆記念日。先月出版された本書もまた、時宜を得た出版である。

 書評のなかで言及した、「米空軍の組織論理」については、私が過去に執筆した各種の書評を参照されたい。

 ベトナム戦争におけるメディアとジャーナリズムの勝利を原点にものをみている世代の人たちにとっては、湾岸戦争以降の「軍とメディア」の関係は後退以外の何者でもないだろうが、引き締めとゆるみが交互に現れていると考えれば、現在の状況を考えるうえで、第二次太平洋戦争当時の状況も理解しやすいはずだ。

 私は、ドイツのドレスデン大爆撃と同様、いやそれ以上に、原爆投下は人道に対する犯罪行為以外の何者でもないと考えている。

 原爆投下の最終決定を下したトルーマン大統領の座右の銘が「The Buck Stops Here」(最終責任は自分ががとる)であったことはよく知られているが、その意志決定が米ソ冷戦前夜において、ソ連という見えない恐怖に脅かされた米国政府が先手を打って原爆を使用したことは、民間の現代史家・鳥居民(とりい・たみ)の『原爆を投下するまで日本を降伏させるな―トルーマンとバーンズの陰謀-』(草思社、2005)に詳しい。

 しかしながらトルーマンが下した決断が道義的には是とされなかったことは、本人が一番よくわかっていたようだ。死ぬまで良心の呵責に苦しめられていたという話もある。

 本書のスタンスのような、冷静でファクトベースの論考もまた、読む必要のあるものだ。

 イスラエルによって逮捕され処刑されたユダヤ人虐殺の責任者アイヒマンではないが、「命令されただけだ」というのはナチスドイツだけでなく、組織の論理そのものであるといえる。

 その意味においては、米空軍(・・1947年に空軍は陸軍から独立。第二次大戦当時は米陸軍航空軍)もまた例外ではなかった、いや軍に限らず、組織のもつ本質的なネガティブな側面である。

 この冷静な論考から透けて見えてくるのは、著者の意図は別として、米国という国家の本質でもある。本というものは、いろんな読み方が可能であるということだ。

 反米になる必要も、親米になる必要もない。米国とは冷静に距離を測りながら付き合うのがビジネスパーソンとしては、正しいあり方である。



<ブログ内関連情報>

書評 『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』(高瀬毅、文春文庫、2013 単行本初版 2009)-"最初の被爆地" 広島と "最後の被爆地" 長崎の背後にあった違いとは?

書評 『原爆を投下するまで日本を降伏させるな-トルーマンとバーンズの陰謀-』(鳥居民、草思社、2005 文庫版 2011)

原爆記念日とローレンス・ヴァン・デル・ポストの『新月の夜』

「原爆の日」-立場によって歴史観は異なって当然だ

書評 『ランド-世界を支配した研究所-』(アレックス・アペラ、牧野洋訳、文藝春秋社、2008)

書評 『アメリカに問う大東亜戦争の責任』(長谷川 煕、朝日新書、2007)

書評 『731-石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く-』(青木冨貴子、新潮文庫、2008 単行本初版 2005)

(2014年8月6日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)










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