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2010年12月13日月曜日

書評 『語学力ゼロで8カ国語翻訳できるナゾ-どんなビジネスもこの考え方ならうまくいく-』(水野麻子、講談社+α新書、2010)




「仕事ができる人」の心得-「ロジカルシンキング応用編」

 この特許翻訳者の女性は、なんと地頭(ぢあたま)のいい人であろうか! と感歎する思いで読んでいた。
 
 夫も子どものいる主婦でありながら、いや、そうだからこそというべきか、きわめて効率的な仕事の方法を編み出して、実行している人である。
 一言でいってしまえば、この本は、論理的思考力に基づいた「仕事ができる人」の心得、を書いた本だといってもいいだろう。

 本書は、大きく分けて二部構成だと思って読むといい。

 前半は「第1章 語学力と論理的思考力」と「第2章 知識とは選択肢のこと」、後半は「第3章 生き残りのカギは発想の転換にあり」と「第4章「重ね刷り」方式の翻訳」そして「第5章 まだまだできる役割分担」。

 前半は、特許翻訳という具体的な材料を使って説明された、論理的なものの考え方について。
 後半は、特許翻訳に限らず、実務翻訳全般に応用可能な、パソコンをフルに使い回した効率的仕事の進め方の、スグに使える実践的ノウハウの公開。

 実務翻訳に従事する人、あるいは目指している人は最初から最後まで全編を読むべきである。急がば回れの話だけでなく、すぐに使えるノウハウが紹介されている。
 副題になっている 「どんなビジネスもこの考えならうまくいく」に惹かれて本書を取り上げた人は、前半だけでも読む価値は十分にある。

 正直いって思うのは、本書で紹介されていることは、実は出来る人はみな無意識にやっていることなのだ。
 だが、本書の特色は、特許翻訳という自分の得意フィールドのなかで、著者自身が実際に試して効果が実証済みのノウハウを、きわめて具体的に解説していることなのである。私のノウハウも全部バラされてしまったな、という感想をもつ。
 エッセンスは、私なりの表現を使えば、「分割して統治せよ!」、「論理的類推のフル活用」、「Google検索のフル活用」、「仮説を論理的に推論して検証せよ!」とでもなろうか。直接読んで確認してみてほしい。間違いなく使える「ものの考え方のノウハウ」である。読んだらぜひ実地に応用してみてほしい。

 しかしながら、本書で多用されている「母国語」という表現はやめてほしい。すべて「母語」といいかえてもらいたい。「母国語」などという意味不明でセンシティビティに欠けた表現は、聡明な本書の著者にはふさわしくないだろう。

 とはいえ、最初に書いたように本書の前半は、どんな世界でも通用する、論理的思考力に基づいた「仕事ができる人」の心得である。
 また、全編通して読んですぐに実践に移せば、実務翻訳の世界での「仕事ができる人」に、必ずや一歩近づくことになるだろう。

 「ロジカルシンキング応用編」といってもいい内容の本書は、ぜひ多くの人にすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「「仕事ができる人」の心得-「ロジカルシンキング応用編」」投稿掲載(2010年4月20日)





目 次

第1章 語学力と論理的思考力
第2章 知識とは選択肢のこと
第3章 生き残りのカギは発想の転換にあり
第4章 「重ね刷り」方式の翻訳
第5章 まだまだできる、役割分担


著者プロフィール

水野麻子(みずの・あさこ)

1968年、静岡県に生まれる。神奈川県立外語短期大学卒業(1989年)。八洲学園大学卒業(2007年)。有限会社サグラーシェ代表取締役社長。23歳のときに、語学力なし・専門知識なし・実務経験なしの状態から、翻訳者になると決めて2週間で独立。1歳半の娘を抱えながら、営業をまったくせずに口コミなどで数ヵ月先まで予約でいっぱいの状態となる。処理量は平均的な翻訳者の5~6倍。他に例を見ない視点・アイデア・工夫で、バブル崩壊直後や現在の不況下でも平均翻訳月収150万円を維持。このアプローチを翻訳関連企業にも指導。大手メーカーの開発コンサルタントとして翻訳ソフト開発にも従事する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。