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2012年6月9日土曜日

書評 『ブーメラン-欧州から恐慌が返ってくる-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文藝春秋社、2012)-欧州「メルトダウン・ツアー」で知る「欧州比較国民性論」とその教訓


欧州「メルトダウン・ツアー」で知る「比較国民性論」とその教訓

アメリカ人の金融ノンフィクション作家マイケル・ルイスが案内する「リーマン・ショック」でメルトダウンした欧州経済ツアー(The Meltdown Tour)である。

タイトルの「ブーメラン」とは、自分が投げたブーメランが自分のもとに戻ってくることを示唆している。
    
遠い対岸の欧州の出来事も、いずれ「リーマンショック」の震源地である米国に戻ってくるのだ、ということを言っているのだ。

原書のブッカカバーのデザインがまた巧みである(右下の写真)。BOOM-RANG と、経済が加熱する「ブーム」を赤で強調したものになっている。

事前に徹底的にリサーチしたうえで、徹底した現地取材を行うスタイルは、暴走するマネーに踊らされたひとびとの狂奔ぶりと、その後の「祭りの後」を微に入り細にわたり描きつくしている。

異常事態をつうじてあぶり出された欧州の「国民性」(民族性)比較論といってもいい、じつに興味深いノンフィクション作品になっているといえよう。


「メルトダウン・ツアー」はアイスランド、ギリシア、アイルランド・・・そして

「メルトダウン・ツアー」は、まずは、人口たった30万人の北海の孤島アイスランドから始まる。

著者にとってもはじめての訪問であり、日本人でもあまり訪れた人の多くないアイスランドだけに、ひじょうに面白い。のちほどアイルランドも出てくるが混同しないように。

アイスランドの漁師が投資家になったというのは理解できる話だ。「板子(いたご)一枚下は地獄」という表現が日本語にもあるように、漁師というのはつねに危険と隣り合わせで、しかもかなりの程度ギャンブル性の高い仕事である。また、日本の株式用語には「水揚げ」など漁業関連用語が多い。

バイキングの末裔で、デンマークから独立した北海の孤島アイスランド国民が金融バブルに踊ったのも理解できないことではないのだ。

つぎは「破綻国家」ギリシアである。

ギリシアの女子禁制のアトス山にあるヴァトペディ修道院。ここがまさかギリシアの腐敗の中心にあったとは(!?)と思いながらページをめくっていくと、ギリシア財政問題の構造が手にとるように理解できる仕組みになっている。これ自体が読み物としてバツグンに面白い。

そして、かつて「ケルトの虎」(Celtic Tiger)ともてはやされたアイルランド

ともに島国であるアイスランドとアイルランドについては、利益を先食いしてしまった点において、おなじく島国で、すでにバブル経済を経験した日本人には理解できなくないのに対し、ギリシアについては、それだけではなく、ユーロ導入に際して行った統計操作や、ギリシアは「相互不信社会」の最たるものであることが、経済に重点を置いた記述から読み取ることができるのだ。

果たしてギリシアは、日本にとっての未来像であるかどうか、これは読者自身がみずから考えてみるべき課題だろう。


その対極にあると思われているドイツもまた・・・

アイスランド、ギリシア、アイルランドのあとにでてくるドイツは、まさにその正反対の存在である。秩序と規律をこよなく愛すドイツ人は、ギリシアとはまさに正反対にあるこことは言うまでもない。

だが、そのドイツにも落とし穴があったことを指摘するルイスはじつに鋭い。「リーマンショック」の際、ドイツの金融機関が無傷であったわけではないのだ。

「ルールを偏愛するがゆえの脇の甘さ」という指摘はじつに示唆に富む。米国の金融機関が、まさかルールにはずれたことをしているとは想定もしなかかったという脇の甘さを指摘しているのだ。

ドイツ人の二面性にかんする考察が、なんと民俗学者アラン・ダンデスのドイツ論をベースにした洞察を読ませてもらうことになるとは予想だにしなかった。『鳥屋(とや)の梯子と人生はそも短くて糞まみれ-ドイツ民衆文化再考-』(新井皓士訳、平凡社、1988)として日本語訳されている本である。

米国のような回転ドアの存在しないドイツの金融界においては、金融マンのビヘイヴィアは日本に近いような気もする。

さらに、「ドイツははたしてヨーロッパ化されたのか」という根源的な疑問が欧州で復活していることも見逃せない。

ナチス以後の「ユダヤ人を欠いたドイツ金融界」は、考えてみれば日本と同じである。これは、英米の金融界との大きな違いであることは間違いない。このことが何を意味しているかは、いろいろ考えてみる価値はある。


そしてブーメランはアメリカに戻ってくる・・・

アメリカ人はヨーロッパ人ではないが、日本人が見る視点ともまた違う。現代の金融業の中心である米国の視点を知ることができるのも、元金融マンである著者の作品ならではである。

最終章のカリフォルニア州とカリフォルニアの地方都市の財政問題の記述は、財政破綻した地方自治体の実情をアメリカ国内の事例として読者の前に示したものだ。公共サービスの削減によってもたらされた事態のシミュレーション材料として受け取る必要があろう。

欧州「メルトダウン・ツアー」は、欧州からも米国からも遠い極東の日本は関係ないと言い切れるのかどうか。情報網によってグローバルがつながっている現在、とくに金融リスクはシステミック・リスクとして瞬時に拡散してしまう。

たとえ、欧州の金融危機は、日本の1998年ですでに体験したデジャビュー(既視感)があるとしても、けっして対岸の火事とは言い切れないだろう。

本書を読んで、「ぞっとする」感じをもつこと、これは日本人読者にとっても必要なのではないだろうか。







目 次

序章 欧州危機を見通していた男
第1章 漁師たちは投資銀行家になった(アイスランド)
第2章 公務員が民間企業の三倍の給料をとる国(ギリシア)
第3章 アイルランド人は耐え忍ぶ
第4章 ドイツ人の秘密の本性
第5章 あなたの中の内なるギリシャ
解説 それぞれの不幸(藤沢数希)



著者プロフィール

マイケル・ルイス(Michael Lewis)
1960年ニューオリンズ生まれ。プリンストン大学から、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に入学。1985年ソロモン・ブラザーズに職を得る。ちょうど、ソロモンが住宅ローンの小口債券化を開発した時期に立ち会い、その債券を売ることになった。その数年の体験を書いた『ライアーズ・ポーカー』(1990年 角川書店)で作家デビュー。金融ノンフィクションの古典となった。2008年のリーマン・ショックを引き金とする世界恐慌のさなか、この恐慌を予測して大相場をはった一握りの男たちのリストを入手し、『世紀の空売り』(2010年 文藝春秋)を著す。2011年著書『マネーボール』が、ブラッド・ピット主演で映画化されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

訳者:東江一紀(あがりえ・かずき)1951年生まれ。北海道大学卒。ドン・ウィンズロウ『犬の力』など訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



PS 2014年9月に文春文庫から文庫化された (2014年10月27日 記す)





<ブログ内関連記事>

書評 『世紀の空売り-世界経済の破綻に賭けた男たち-』(マイケル・ルイス、東江一紀訳、文芸春秋社)-アメリカ金融業界の周辺部からリーマンショックに迫る人間ドラマ

映画 『マネーボール』 をみてきた-これはビジネスパーソンにとって見所の多い作品だ!


国家債務危機

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!

書評 『警告-目覚めよ!日本 (大前研一通信特別保存版 Part Ⅴ)』(大前研一、ビジネスブレークスルー出版、2011)-"いま、そこにある危機" にどう対処していくべきか考えるために

書評 『ギリシャ危機の真実-ルポ「破綻」国家を行く-』(藤原章生、毎日新聞社、2010)-新聞記者が足で稼いで書いた 「ギリシアからみたギリシア危機」レポート

書評 『物語 近現代ギリシャの歴史-独立戦争からユーロ危機まで-』(村田奈々子、中公新書、2012)-日本人による日本人のための近現代ギリシア史という「物語」=「歴史」


リーマンショック以後のユーロ

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている 

書評 『ユーロが危ない』(日本経済新聞社=編、日経ビジネス人文庫、2010)

書評 『本当にヤバイ!欧州経済』(渡邉哲也、 三橋貴明=監修、彩図社、2009)

「円安バブル崩壊」


「勝ち組」ドイツについての考察-はたしてドイツはヨーロッパか?

書評 『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる-日本人への警告-』(エマニュエル・トッド、堀茂樹訳、文春新書、2015)-歴史人口学者が大胆な表現と切り口で欧州情勢を斬る

書評 『アラブ革命はなぜ起きたか-デモグラフィーとデモクラシー-』(エマニュエル・トッド、石崎晴己訳、藤原書店、2011)-宗教でも文化でもなく「デモグラフィー(人口動態)で考えよ!
・・「西洋民主主義とは、その最も狭い意味において、その出発点において、その創設的中核というものは、フランス、イングランド、アメリカ合衆国だからです。つまりはトックヴィルの世界なのです。今日、歴史的な西洋というのが、当初から政治面でドイツを含んでいたなどという考えは、妄想というべきなのです」(トッド)

書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか?
・・怒濤のように「反原発」になだれ込んだドイツ。なにか危ういものを感じるのはわたしだけだろうか

(2014年8月27日、2015年7月7日、8月1日 情報追加)








(2012年7月3日発売の拙著です)







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