「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

◆「アタマの引き出し」つくりは "掛け算" だ : 「引き出し」 = Σ 「仕事」 × 「遊び」
◆酒は飲んでも飲まれるな! 本は読んでも読まれるな!◆ 
◆一に体験、二に読書、その体験を書いてみる、しゃべってみる!◆
◆「好きこそものの上手なれ!」◆

<旅先や出張先で本を読む。人を読む、モノを読む、自然を読む>
トについてのブログ
●「内向きバンザイ!」-「この国」日本こそ、もっとよく知ろう!●

■■ 「むかし富士山八号目の山小屋で働いていた」全5回 ■■
 総目次はここをクリック!
■■ 「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回 ■■ 
 総目次はここをクリック!
■■ 「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に ■■
 総目次はここをクリック!


「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!

「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!
ビジネス寄りでマネジメント関連の記事はこちら。その他の活動報告も。最新投稿は画像をクリック!



ご意見・ご感想・ご質問 ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、コピー&ペーストでお願いします。

© 2009~2024 禁無断転載!



2013年1月12日土曜日

蛇は古代日本人にとって神であった!ー 独創的な民俗学者であった吉野裕子の名著 『蛇』 を読んでみよう


ことし2013年の年賀状に、以下のように書きました。
2012年は「昇龍」の年。2013年は「蛇」の年。
昨年の「ホップ」を「ステップ」へ、さらには
「ジャンプ」へと「脱皮」してまいります。

辰年は「昇龍の年」ということで話題になりますが、どうも巳年の蛇は積極的に話題にされることがないような気がするのはわたしだけでしょうか。

巳年は蛇の年ですから、しぶとく、ねちこく、といきたいのですが、どうも蛇は現代人からはあまり好かれていないような印象を受けます。

しかし、蛇は日本人にとって神であったのです。

このことは無意識のなかにはあるかもしれませんが、古代日本人は蛇の神秘性に感じ入って、蛇を自分たちの祖先神と考えていたのです。

その痕跡は、さまざまなものに見出すことができるということを、独創的な民俗学者であった吉野裕子氏が名著 『蛇 - 日本の蛇信仰』(吉野裕子、講談社学術文庫、1999)に事細かに書いています。



この本は、もともと法政大学出版局から 1979年に出版されたものですから、最初の出版からすでに35年近くたっていますが、現在まで読み継がれてきた名著であるといってよいでしょう。

日本人に限らず、古代人は蛇を観察して、さまざまな意味で蛇にあやかりたいと考えていたようです。

とぐろを巻いた蛇は何かの形に似ていませんか?

はい、古代日本人は山をとぐろを巻いた蛇になぞらえて信仰の対象としていたようなのです。じっさいに、日本最古の神社といわれる奈良の大神神社(おおみわじんじゃ)には本殿がなく、山そのものがご神体とされているだけでなく、蛇もまた信仰の対象になっています。

蛇は脱皮する生き物です。哲学者ニーチェに「脱皮できない蛇は滅びる」という名文句がありますが、まさに蛇は脱皮を繰り返して成長していく生き物です。これはカニやエビなどと同じですね。脱皮に失敗すると、蛇は死んでしまいます。

古代日本人は、この脱皮するということに、生命力が更新されることの象徴を見出したようなのです。そのため、脱皮する蛇のように、年のあらたまりごとに生命の更新を祝ったのがお正月だったのですね。イセエビがめでたいのも脱皮と関係があるはずです。

そして、いまでもお正月といえば「鏡餅」が定番ですが、この鏡餅も形がとぐろを巻いた蛇に似ているといわれたらそう思いませんか? 吉野説にしたがえば、それは当たり前だということになるのですね。

また蛇にはまぶたがないので、まばたきをしません。蛇の目と書いて「じゃのめ」と呼んでいますが、日本人はまた蛇の目(じゃのめ)をこのんで意匠として愛してきました。蛇の目傘の蛇の目です。

鏡餅を上から見ると、まんなかのみかんのしたに小さい丸もち、そのしたに大きな丸もちがあって、蛇の目のようになっています。言われたらなるほど!と思わざるをえません。

こんな話題が書かれている 『蛇 - 日本の蛇信仰』(吉野裕子、講談社学術文庫、1999)は、ぜひお読みすることをおすすめします。やや強引な感じがなくもないですが、大胆な謎解きを行う推理小説のような展開の読み物にもなっています。



また、山にとぐろを巻いた蛇の形を見たてた古代日本人の信仰は、縄文時代から稲をもたらした渡来人である弥生人の信仰とも習合して、大陸の高度な陰陽五行説と融合していくことが 『山の神 ー 易・五行と日本の原始蛇信仰』(吉野裕子、講談社学術文庫、2008 単行本初版 1989)です。

ぜひあわせてお読みいただければと思います。





そして最後に、『山の霊力 ー 日本人はそこに何を見たか』(町田宗鳳、講談社選書メチエ、2003)をいっしょに紹介しておきます。

吉野説をベースにして山に対する日本人の信仰を説き起こし、修験道にまで発展した日本の山岳信仰について宗教学者がわかりやすく説いた好著です。

なぜ日本人が山に対してさまざまなものを感じるのか、その秘密はすべて蛇信仰から始まっているわけです。蛇に対する畏敬の念と恐怖の念。これは裏表の関係にあるものです。

蛇というと現代では嫌われがちな生き物ですが、古代日本人が見出した蛇信仰は、日本人であればかならずDNAのなかに流れ続けているはずといっていいのです。

そもそも日本人に限らず、進化論の観点からいって、脳の旧皮質には爬虫類時代の痕跡が残っているわけですから、蛇は人間のなかにも住んでいるわけです。

ぜひ今回の巳年(2013年)を機会に、原始蛇信仰についても考えてみたいものです。




目 次 『蛇-日本の蛇信仰-』

講談社学術文庫収録にあたって

第1章 蛇の生態と古代日本人
第2章 蛇の古語「カカ」
第3章 神鏡考
第4章 鏡餅考
第5章 蛇を着る思想
第6章 蛇巫の存在
第7章 日本の古代哲学
あとがき


著者プロフィール

吉野裕子(よしの・ひろこ)
1916年東京生まれ。旧姓赤池。女子学習院、津田塾大各卒。学習院女子短期大学講師。1977年、東京教育大学より文学博士の学位を授与される。著者多数。2008年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連記事>

『龍と蛇<ナーガ>-権威の象徴と豊かな水の神-』(那谷敏郎、大村次郷=写真、集英社、2000)-龍も蛇もじつは同じナーガである

2013年、新年明けましておめでとうございます-蛇の年は脱皮の年
・・セミも幼虫が脱皮してセミになるが、これはメタモルフォーシスというべき

猛暑の夏の自然観察 (1) セミの生態 (2010年8月の記録)

大神神社(おおみわ・じんじゃ)の「巳(み)さん」信仰-蛇はいまでも信仰の対象である!

『水木しげるの古代出雲(怪BOOKS)』(水木しげる、角川書店、2012)は、待ちに待っていたマンガだ!
・・スサノヲと大蛇(おろち)

お神楽(かぐら)を見に行ってきた(船橋市 高根神明社)(2009年10月15日)
・・大蛇(おろち)の舞もある

ヘルメスの杖にからまる二匹の蛇-知恵の象徴としての蛇は西洋世界に生き続けている

『ブッダのことば(スッタニパータ)』は「蛇の章」から始まる-蛇は仏教にとっての守り神なのだ

『蛇儀礼』 (アビ・ヴァールブルク、三島憲一訳、岩波文庫、2008)-北米大陸の原住民が伝える蛇儀礼に歴史の古層をさぐるヒントをつかむ

(2014年8月26日、2016年6月21日 情報追加)


(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end