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2015年5月10日日曜日

書評 『チャイナ・セブン-<紅い皇帝>習近平-』(遠藤誉、朝日新聞出版社、2014)-"第2の毛沢東" 習近平の「最後の戦い」を内在的に理解する


「チャイナ・セブン」とは、中国共産党の最高意志決定機関である中共中央政治局常務委員のメンバー7人をさしている。本書の著者・遠藤誉氏による表現である。

もともとは「チャイナ・ナイン」だったが、習近平体制になってから2人減らし「チャイナ・セブン」となった。「反日」を前面に打ち出し、みずからのカリスマのなさを糊塗しようとした江沢民が増員して9人にしたものを、ふたたび7人に戻したのである。「チャイナ・セブン」は集団指導体制であり、かならず多数決で結論がでるよう奇数になっていることには変わりはない。

「チャイナ・セブン」による意志決定は集団指導体制によるものだが、実質的に現在の習近平体制において権力集中が進んでいるように見える。さまざまなバックグラウンドをもつメンバーによって構成されているとはいえ、それぞれが習近平に近い考えの持ち主であるためだ。個別の議案にかんしては意見が一致しないことがあっても、基本政策に異論はない

その習近平の基本政策とは、中国共産党による支配を守り抜くために、経済成長を維持しながらも腐敗を撲滅するというものである。経済成長は中国共産党が支持される唯一のレゾンデートル(=存在理由)であり、同時に腐敗が撲滅されない限り国民の不平等感は体制批判に発展しかねないからだ。

鄧小平の「改革開放」路線によって中国は、いまや米国についでGDPで世界第2位の「大国」に成長したが、「社会主義資本市場」という歪んだ体制は拝金主義を生みだし、民意をかならずしも反映しない一党独裁の体制への不満が日に日に増大している。社会のすみずみに跋扈(ばっこ)する汚職官僚に対する国民の怒りは暴動に発展することもありすさまじものがある。

鄧小平が打ち出した「先富論」は、経済成長によって先に豊かなった地域が、貧しい地域に移転してくことによって最終的にはみな豊かになるという理論であった。経済学でいう「トリクルダウン論」だが、現在明らかになったことは、先に豊かになった地域や人がさらに豊かになる一方、経済発展の遅れた地域は依然として貧しいだけでなく、国全体の経済発展の犠牲になっているという事実である。

「先富論」が前面に打ち出された結果、鄧小平のもう一つ重要な政策方針がかき消されてしまったのである。それは「共富論」である。経済学でいう所得移転、富の再分配のことであるが、「共富論」のほうは胡錦濤時代にも実現できず、習近平時代にバトンタッチされているが、いまだ実現にはほど遠い。

だからこそ、習近平は「虎も蠅も同時に叩く!」というスローガンのもとに腐敗撲滅に邁進しているのである。腐敗官僚が搾取した富を回収して、国民に再分配を図ろうとしているのである。

虎は高級官僚をさしており、蠅は日本語でいえば雑魚(ざこ)となろう。「虎も蠅も同時に叩く!」という表現だが、方法論としては、無数に存在する蠅叩きからはじめて腐敗情報を集積しながら、本丸である高級官僚まで摘発するというものだ。腐敗の温床である国有企業がらみの鉄道利権や石油利権など、つぎつぎと解体に着手するという実績をすでにあげている。つぎのターゲットは江沢民の長男がかかわる通信利権のようだ。

なぜ習近平は、腐敗撲滅という過激な政策を実行できるのか? これは習近平という人物を丁寧にたどることによって明らかになる。本書の醍醐味はまさにそこにある。「<紅い皇帝>への道」という副題のついた「第1章 延安の誓い」「第2章 雌伏のとき」「第3章 中央へ昇る」を読むと、手に取るように納得するのである。

毛澤東ともに革命戦争を戦った世代の二代目である「紅二代」(・・日本では誤解されているが「太子党」は蔑称である)であるにもかかわらず、習近平は農村に「下放」(かほう)されることになる。革命の功労者であるのにかかわらず、父親が逮捕され16年間も牢獄生活を強いられたためである。習近平の苦労は並大抵のものではない。

注目すべきことは、習近平が「下放」先として、あえて延安をみずから選んだという点だ。延安と聞いてピンとくれば、もうその時点で習近平という存在が瞬間に理解されるハズである。延安とは、中国国民党に追われた中国共産党が、「長征」とう美名のもとに行った逃避行の末にたどり着いた中国内陸部の土地のことである。中国共産党を率いた毛澤東と密接な連想を想起させる象徴的な地なのである。

習近平体制の初期の最大の事件は、 『チャイナ・ジャッジ-毛沢東になれなかった男-』(遠藤 誉、朝日新聞出版社、2012) で全面的に取り上げられている「薄熙来事件」である。「チャイナ・ナイン」入りを狙っていた薄熙来は、毛澤東のイメージを最大限につかって「大衆路線」を演出しようとしたのだが、最終的には逮捕され、その野望は挫折した。

この薄熙来もまた「紅二代」であるが、習近平と比べたら、毛澤東イメージにかんしては比較しようもない。習近平はポーズとして毛澤東イメージをつかっているのではなく、毛澤東精神の体現者といっても言い過ぎではないのである。「紅い皇帝」としては毛澤東以上かもしれないという著者の指摘には耳を傾ける必要があろう。

だが、「毛澤沢東以上の毛澤東」である習近平は、同時に「最後の毛澤東」でもある。革命第二世代としての「紅二代」が最高権力者となるのは世代的に習近平が最後であり、習近平時代に腐敗撲滅が実現できなければ、その後の体制に期待することは難しい。

腐敗撲滅に成功するかが、中国共産党が生き延びることができるかどうかのカギなのである。中国共産党=中華人民共和国である以上、中国共産党が崩壊するとき、中国もまた国家として崩壊することになる。

そういう瀬戸際にあるのが習近平体制なのである。日本からみると「反日」をはじめとする対外的な強硬路線ばかりが目につくが、国内情勢をみれば想像を絶する戦いを強いられている状態であることがわかる。まさに「内憂外患」ともいうべき状態が、いまの中国である。

「内在的理解」による習近平とその体制解読の本書は、中国情勢のみならず国際情勢理解のためにぜひ一読しておきたい。





目 次

序章 中国の苦悩-チャイナ・セブンの顔ぶれ
第1章 延安の誓い-<紅い皇帝>への道
 1. 父・習仲クンの逮捕
 2. 「私は延安の人」-「大衆路線」の原点
 3. 「皇帝」への道-その分岐点
第2章 雌伏のとき-<紅い皇帝>への道
 1. 河北省正定県での活躍
 2. 17年間もいた福建省
第3章 中央へ昇る-<紅い皇帝>への道
 1. 浙江省書記 
 2. 上海市書記
   江沢民はなぜ上海市書記にまでなれたのか
第4章 李克強と五人の男たち
 1. 李克強-「国字顔」の男
 2. 残り5人の男たち(=党内序列ナンバー3~7)
第5章 次期・次次期チャイナ・セブン候補
第6章 <紅い皇帝>は13億人をどこへ導くのか?
 1. 胡錦濤ができなかったこと-「先富」から「共富」へ
 2. 国有企業改革
 3. 国家新型城鎮化計画
 4. 外交戦略
終章 香港デモの真相-金か、人間の尊厳か


著者プロフィール

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1941 年中国吉林省長春市生まれ。1953 年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国-言論をめぐる攻防-』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP 社)など多数。



<関連サイト>

中国問題研究家 遠藤誉が斬る (連載 2013年10月2日から現在) 



<ブログ内関連記事>

遠藤誉氏の著作

書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?

書評 『チャイナ・ジャッジ-毛沢東になれなかった男-』(遠藤 誉、朝日新聞出版社、2012)-集団指導体制の中国共産党指導部の判断基準は何であるか?



現代中国

書評 『習近平-共産中国最弱の帝王-』(矢板明夫、文藝春秋社、2012)-「共産中国最弱の帝王」とは何を意味しているのか?

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ
書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・「中国崩壊」をシミュレーションする

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論 ・・国内の社会問題を解決できない中国に未来はあるか?

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?

(2015年5月15日、17日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)











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