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2016年6月6日月曜日

書評 『続・100年予測』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、ハヤカワ文庫、2014 単行本初版 2011)-2011年時点の「10年予測」を折り返し点の2016年に読む


『続・100年予測』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、ハヤカワ文庫、2014)という本の凄さに感嘆している。

オバマ政権の外交政策である「オバマ・ドクトリン」が明らかになってきたいま、2011年に出版された「10年予測」(The Next Decade:次の10年)を目的にした本書の内容の正しさが、つぎつぎと実証されつつあることに戦慄さえを覚えるのだ。

2011年の原書出版後、『激動予測-「影のCIA」が明かす近未来パワーバランス-』というタイトルイで早川書房から出版されたものを、タイトルを『続・100年予測』と変更して2014年に文庫化されたものだ。販売戦略として、ベストセラーとなった『100年予測』を意識したものだ。

ただし、100年という超長期の予測と、10年という長期の予測では本質が異なる地政学的要因でほぼすべてが説明可能な「100年単位」の話と、そのときの政治指導者の個性や行動がおおいに影響を与える「10年単位」の話では性質が大きく異なるのだ。

この本を読むと、オバマ政権末期の外交軍事戦略がよく見えてくる。多くの読者もそう思うことだろう。

オバマ政権2期目の末期近くになって実現したのが、宿敵イランとの「核問題の包括的解決」、キューバとの国交正常化など、つぎからつぎへと事態が進展しているが、本書で説かれている内容を後追いしているかのような印象さえ受けるのだ。このほか、復活したロシア、蜜月であったはずのイスラエルとのあいだで拡がる距離感などなど。

オバマ政権は就任当初から核廃絶など理想主義的な姿勢で出発したが、結局は現実主義の観点に至ったというべきだろうか。いや理想は掲げつつ、現実的に実行するという姿勢に落ち着いたというべきか。

その現実的な対応の背景にあるのが、米国が「意図せざる帝国」になっているという著者のスタンスと、世界のいたるところにコミットせざるをえない米国のとるべきスタンスが勢力均衡策(=バランス・オブ・パワー)である。いわゆる価値観外交ではなく、古典的な外交軍事戦略である。

本書は、「意図せざる帝国」となった米国がとるべき戦略について、なぜそのような戦略をとるべきかというロジックを説得力ある議論として展開している。それが本書の読みどころである。


「意図せざる帝国」(Unintented Empire)とは、じつにうまい表現だ。もはやそう簡単には孤立主義をとれないほどの巨大な存在となっている米国は、世界の隅々にまでコミットせざるをえない帝国という「現実」と、共和国という「理念」のコンフリクトに揺れる存在である。

「共和制」であり、「連邦制」である、というのが独立以来の米国の建国理念であり、この基本を守り抜くために南北戦争という内乱や、海外の戦闘で多くの血を流してきたのである。つまり米国は理念国家としての性格がつよい。

理念を守り抜くためには現実的にならざるを得ない。現実的な策を実行するためにはパワーの裏付けが不可欠だ。ただしパワーには限界があり、効果的な資源配分を行う必要がある。

そのためには戦略的に重要なポイントと、かならずしもそうではないポイントを区分し、同盟関係をつうじた合従連衡も行う。そして、この合従連衡は、環境の変化に応じて柔軟に組み直すことが必要となる。

そしてまた、戦略的に重要な地域で強力なパワーが発生して米国の国益を脅かさないように、競合関係にある勢力を互いに牽制させるという勢力均衡策という古典的な手法をとることも必要となる。

ブッシュ・ジュニア政権でテロに直面した米国は、国民の不安感情を抑えるためにテロ対策にのめり込み、戦略の常道から逸脱してしまう。思わずクチにしてしまった「十字軍」という表現が、価値観の戦争であることを無意識に示してしまった。

イラクへの介入がイラクじたいの弱体化を招き、中近東におけるイラクとイランによる勢力均衡を破綻させてしまったのである。アフガニスタンへの介入もまた、インドとパキスタンとの勢力均衡にはマイナス要因として働く。

そのツケをオバマ政権が負うことになったわけだが、オバマ政権もまた理想肌ゆえに対話を重視したものの、結局は勢力均衡策という現実的な対応をとらざるを得なくなったわけだ。

本書で特筆すべきなのは以下の諸章である。じつに読み応えがある。

第6章 方針の見直し-イスラエルの場合
第7章 戦略転換-アメリカ、イラン、そして中東 
第8章 ロシアの復活
第9章 ヨーロッパ-歴史への帰還
 EUの危機とドイツの再浮上 ロシアとの相互補完
第10章 西太平洋地域に向き合う
 日中のパワーバランス
第13章 技術と人口の不均衡


東アジア情勢にかんしては、不安定化を避けながらも日中を競合させる勢力均衡策を米国がとっっている理由もよく理解できるが、韓国を過大評価している印象が残る。これは多くの日本人読者が抱く感想ではなかろうか。オバマ政権も末期になればなるほど、米国と韓国の距離は拡がる一方だ。この点で、フリードマン氏の予測は外れている。


オバマ政権の2期目の末期となった2016年後半のいま、レイムダック視される状態にもかかわらずオバマ政権がじつは戦略の常道を進んでいる。出版後すでに5年を経過した現在は「次の10年」の折り返し点にあるわけだが、予測の正しさがこの時点で実証されたといえるのである。

だが、トランプ大統領誕生となったら、米国はどうなるのか? 米国の圧倒的影響圏にある日本はどうなるのか?

『カミング・ウォー・ウィズ・ジャパン-「第二次太平洋戦争」は不可避だ-』(徳間書店、1991)などの著書をもち、日本に対してシビアな姿勢を崩さないジョージ・フリードマン氏であるが、その見解を欧州情勢だけでなく、日米中の三角関係を中心にみたアジア情勢としてまとめていただきたいものである。的確で厳しい視点こそ日本には必要だからだ。






目 次

日本版刊行によせて-地震型社会、日本(ジョージ・フリードマン)
まえがき
序章 アメリカの均衡をとり戻す
第1章 意図せざる帝国
 アメリカの皇帝
 帝国の現実に対処する
 アメリカの地域戦略
第2章 共和国、帝国、そしてマキャヴェリ流の大統領
第3章 金融危機とよみがえった国家
第4章 勢力均衡を探る
 イラクの賭け
 イランの複雑性
第5章 テロの罠
 テロはどれほど深刻な脅威か
 テロと大量破壊兵器
第6章 方針の見直し-イスラエルの場合
第7章 戦略転換-アメリカ、イラン、そして中東 地域の心臓部-イランとイラク
第8章 ロシアの復活
 ロシアの恐れ
 ロシアの再浮上 アメリカの戦略
 ロシアをどう扱うか
第9章 ヨーロッパ-歴史への帰還
 EUの危機
 ドイツの再浮上 アメリカの戦略
第10章 西太平洋地域に向き合う
 中国、日本、そして西太平洋
 中国と日本 日中のパワーバランス アメリカの戦略-時間稼ぎ
 インド、アジアのゲーム
第11章 安泰なアメリカ大陸
 対ブラジル、アルゼンチン戦略
 メキシコ
 アメリカの対メキシコ戦略
第12章 アフリカ-放っておくべき場所
第13章 技術と人口の不均衡
第14章 帝国、共和国、そしてこれからの10年
謝辞
訳者あとがき
解説 「帝王」への忠言にして、帝国の統治構造の暴露の書(池内恵)



<関連サイト>

The Obama Doctrine The U.S. president talks through his hardest decisions about America’s role in the world. (By JEFFREY GOLDBERG The Atlantic APRIL 2016 ISSUE)

Coming to Terms With the American Empire Geopolitical Weekly APRIL 14, 2015
・・帝国は意図してなるものではない。共和制ローマも、アメリカもまた?

A Net Assessment of Europe Geopolitical Weekly MAY 26, 2015

A Net Assessment of the World Geopolitical Weekly MAY 19, 2015

World War II and the Origins of American Unease Geopolitical Weekly MAY 12, 2015
・・大恐慌とパールハーバーに不意打ちされたアメリカ。核戦争への備えを用意したマインドセット・・・
China's New Investment Bank: A Premature Prophecy Global Affairs APRIL 22, 2015


<ブログ内関連記事>

書評 『100年予測-世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図-』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、早川書房、2009)-地政学で考える
・・「地理的・環境的制約条件という人間が変えることのできない絶対的制約条件からみたら、個々の政治指導者の行動など、長期的にみれば重視する必要はない、というのが地政学の立場に立った著者の基本姿勢である。経済学が個々のプレイヤーに注意を払わないのと同じだ、と。
 1492年のコロンブスの大航海に始まって1991年のソ連崩壊までの500年にわたって続いた、大西洋世界を中心とした西欧による「世界システム」が終わり、大西洋と太平洋の制海権をともに支配する地理的条件にめぐまれ、世界最大かつ最強の海軍力をもつにいたった米国に「世界システム」が始まったという認識
 安価で大量輸送が可能な海上交通を保護するには、海軍力による制海権がモノをいうからである。1980年代に、太平洋貿易が大西洋貿易を上回ったことが、覇権交代を象徴的に物語っている。著者の認識を一言でいえば、「アメリカは衰退寸前であるどころか、上げ潮に乗り始めたばかり」(P.374)ということで
 ユーラシア大陸とは異なり、南北戦争という内乱を例外として、建国以来200年以上にわたって本格的な侵略を受けたことがないという地政学的条件から考えると(・・「9-11」は攻撃だが、侵略ではない)、次の500年続くかどうかはわからないが、少なくとも今後100年は米国の覇権が続くと考えたほうがいいのかもしれない。」

書評 『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる-日本人への警告-』(エマニュエル・トッド、堀茂樹訳、文春新書、2015)-歴史人口学者が大胆な表現と切り口で欧州情勢を斬る
・・「リーマンショック」後のユーロ危機のなかから浮上したのは強国ドイツ

書評 『ドイツリスク-「夢見る政治」が引き起こす混乱-』(三好範英、光文社新書、2015)-ドイツの国民性であるロマン派的傾向がもたらす問題を日本人の視点で深堀りする
・・ドイツとロシアの相互補完関係

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則
・・「本書の特徴は、とかく日中関係という二国関係だけでものをみがちな日本人に、米中関係という人きわめて強い人的関係をベースにした二国関係の視点を提供してくれている点にある。中国問題は、すくなくとも日米中の三カ国関係でみなければ見えてこない。「大型大国間関係」という、G2=米中二国間関係にちらつくキッシンジャーと習近平の親密な関係、アメリカの世論にきわめて大きな影響力をもつ在米華人華僑の存在、アメリカの中国重視政策と日米同盟のズレなど、米国の中国政策を前提にしないと日中関係も見えてこない。」


■未来予測を事後に検証する

『2010年中流階級消失』(田中勝博、講談社、1998) - 「2010年予測本」を2010年に検証する(その1)

『次の10年に何が起こるか-夢の実現か、悪夢の到来か-』(Foresight編集部=編、新潮社、2000) - 「2010年予測本」を2010年に検証する(その2)




(2012年7月3日発売の拙著です)









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