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2016年6月5日日曜日

書評『仮面の日米同盟 ー 米外交機密文書が明らかにする真実』(春名幹男、文春新書、2015)ー 地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している


 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)という本は、かならず読んでおくべき本だ。

昨年11月に出版されてからすぐに購入したが、「積ん読」となっていた。しかし、「日米同盟」について辛辣なビジネスライクのトランプ大統領誕生が絵空事ではなくなりつつある状況のなか、「日米同盟」についてキチンと認識しておくことは不可欠だ。そう思って、このたび読んでみることとした。


この本のメッセージは一言で要約してしまえば以下のようになる。

「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」 

これは前々から指摘はされていたが、本書の著者である春名氏によって、はじめて米国側の機密文書の裏付けをもって示されたことになる。

ではなぜ、米軍は日本に、とくに沖縄に駐留しつづけているのか?

それは、もっぱら日本列島のもつ地政学的な優位性、ことにロジスティクス(・・軍事用語でいえば兵站)にあるのだ。これは、ペリー提督の「黒船来航」以来、一貫した米国の戦略的視点である。 いわゆる「開国」は、米国の捕鯨船の補給問題と日本市場開放が目的であった。

日本の敗戦後、「安保条約」にもとづいて日本に駐留する米軍にとって、日本列島は水や食料と燃料の補給基地であり、艦船の補修基地でもある。これは朝鮮戦争においても、ベトナム戦争においてもそうだっただけでなく、中近東における戦闘においても継続している。

そもそも第二次世界大戦において、米軍は戦略的優位性をもつ沖縄を獲得したかったからこそ、硫黄島を制圧したあとにそのまま北上せず、沖縄上陸作戦を敢行したのである。日本の敗戦後もそのまま米軍による軍政を敷いたのは、基地として沖縄を絶対に確保したかったからなのだ。

そして、基地を返還したくないからこそ、妥協策として「沖縄返還」に応じたのである。

米国は沖縄基地を死守するために、沖縄返還に応じたのだ、という事実をしれば、米国が沖縄から撤退したがらない理由が理解できる。

もちろん、沖縄本島に米軍将兵が多数駐留していることじたいが抑止力になるが、「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」 なのである。尖閣で問題が発生しても、はたして米軍は動けるのか、おおいに疑問だ。中国に対しては、キッシンジャー以来、いわゆる「瓶のフタ」論という詭弁で在日米軍の存在を自己正当化してきたことも忘れるべきではない。日本が暴発しないよう、米軍が駐留しているという論である。

「沖縄返還」交渉の当事者であった佐藤栄作首相とニクソン大統領の認識のズレと、平行して行われていた日米繊維交渉におけるニクソンの怒りは、読ませる内容になっている。これが本書の中核として第3章から第5章まで詳述される。

沖縄返還交渉と日米繊維交渉はほんらいは別個のものであったが、佐藤栄作が大見得をきったにもかかわらず繊維交渉が決着しなかったことが、日本の頭越しの「米中交渉」開始や貿易摩擦解消のための「ドル防衛」など、いわゆる「ニクソン・ショック」となって炸裂したのだ。この歴史的事実は、あらためて振り返っておく必要が強い。

先日も沖縄の軍属による殺人事件が発生して、沖縄のみならず日本全体で怒りの声があがっている。米軍にとっての、米国政府にとっての沖縄の基地、日米同盟の意味について、冷静な観点から押さえ置く必要があることを痛感させられる。


「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」

著者の取材によれば、自衛隊もまた在日米軍が防衛型ではなく攻撃型のものであると認識していることが指摘されている。兵站基地である日本列島から、攻撃のために米軍は出撃するのだ。

 「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」という事実を直視しなければ、日本は危うい。



目 次

はじめに-アメリカは頼れる同盟国か?-逃げるアメリカ、前のめりの日本
第1章 アメリカは日本を守ってくれるか
  「集団自衛権」を行使する理由
  安部の「美しい」誤解
 1. 新ガイドライン翻訳の仕掛け
 2. 作為的翻訳で米軍関与の印象強化
 3. 米防衛公約の後退
第2章 米機密文書は語る
 1. 「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」
 2. 沖縄返還が転機に
 3. 防衛力増強の要求
 4. どうなる日本の抑止力
第3章 アメリカ依存を誘導する戦略
 1. 日本を操る米国の地政学的策略
 2. 在日米軍撤退を阻む策略
第4章 裏切りの沖縄返還
   だれも知らない沖縄返還の理由
 1. 親米の佐藤だから
 2. 秘密主義、盗聴、そして罠
 3. 沖縄返還交渉の罠
 4. 世紀のドタバタ外交
 5. 日本への不満を残した米軍部
第5章 「繊維」の欺きと報復の「ニクソン・ショック」
 1. 沖縄返還を人質にした繊維交渉
 2. 煮と米関係が暗転した理由
 3. 報復としてのニクソン・ショック
 4. 対日政策の見直し
第6章 米中の狭間で翻弄される日本
 1. ニクソンの狙い
 2. カードは「瓶のふた論」
 3. 日本をないがしろにした外交
 4. 見えない米中コネクション
第7章 尖閣諸島問題におけるアメリカの本音
 1. 有事への懸念と異常事態
 2. 沖縄返還協定前のサプライズ
 3. 台湾への融和策
 4. 沖縄返還協定の秘密
 5. 米国内で強まる「巻き込まれ論」
 6. 日米中首脳の微妙な関係
結論に代えて-同盟の疲労
  日米両政府はどう説明するのか?
略称一覧
参考文献



<ブログ内関連記事>


日米関係

書評 『戦争・天皇・国家-近代化150年を問い直す-』(猪瀬直樹・田原総一郎、角川新書、2015)-「日米関係150年」の歴史で考えなければ日本という国を理解することはできない

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『マンガ 最終戦争論-石原莞爾と宮沢賢治-』 (江川達也、PHPコミックス、2012)-元数学教師のマンガ家が描く二人の日蓮主義者の東北人を主人公にした日本近代史

「神やぶれたまふ」-日米戦争の本質は「宗教戦争」でもあったとする敗戦後の折口信夫の深い反省を考えてみる

書評 『「普天間」交渉秘録』(守屋武昌、新潮文庫、2012 単行本初版 2010)-政治家たちのエゴに翻弄され、もてあそばれる国家的イシューの真相を当事者が語る

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則
・・「本書の特徴は、とかく日中関係という二国関係だけでものをみがちな日本人に、米中関係という人きわめて強い人的関係をベースにした二国関係の視点を提供してくれている点にある。中国問題は、すくなくとも日米中の三カ国関係でみなければ見えてこない。「大型大国間関係」という、G2=米中二国間関係にちらつくキッシンジャーと習近平の親密な関係、アメリカの世論にきわめて大きな影響力をもつ在米華人華僑の存在、アメリカの中国重視政策と日米同盟のズレなど、米国の中国政策を前提にしないと日中関係も見えてこない。」

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)-「エネルギー自主独立路線」を貫こうとして敗れた田中角栄の闘い

『愛と暴力の戦後とその後』 (赤坂真理、講談社現代新書、2014)を読んで、歴史の「断絶」と「連続」について考えてみる


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