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2022年5月18日水曜日

『Defending Japan』(日本防衛)というシリーズものドキュメンタリー3本をつづけて視聴(2022年5月15日)-米国視線で「日本防衛」を考える

 
『Defending Japan』(日本防衛)というシリーズものドキュメンタリー3本をつづけて視聴。米国の History Channel 製作。これまた amazon prime video が推奨してくるので視聴した次第。

1. 迫り来る脅威(Behind the Strategy) 
2. ミサイル防衛(Launch Codes) 
3. 静かなるブルー(Deep Blue) 


1は総論。2は北朝鮮のミサイル発射実験、3は海上進出を図る中国の脅威にかんするもの。内容的には3がいちばん面白い。各エピソードは約40分。音声は英語、日本語字幕つき。 

いずれも製作が2018年なので、やや情報が古くなっているのは仕方ない。たとえば、北朝鮮から発射されるミサイル防衛のイージス・アショアなどだ。このビデオの時点では、陸上設置型が検討されていたが、その後中止になったことは周知のとおり。

とはいえ、米国人が米国人視聴者向けに製作したドキュメンタリーを視聴すると、日本に駐留する米軍が、「日米軍事同盟」のもと、「日本防衛」をきわめて重視していることがよく理解できる。日本自身が日本を防衛するのは当然だが、米国にとっても日本を防衛する意味と価値があることを、いかに米国人に理解させるか、そういうテーマの内容だ。

当然のことながら、米国の軍人は命を張っているのである。安全保障の専門家や高級将校だけでなく、現場の兵士たちも自分たちの使命と責任について語る。

2022年時点でも見る価値ありといっておこう。


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書評 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)-地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している
・・日本防衛のための駐留が第一目的ではないとしても、米軍にとって日本列島がロジスティクス上の重要な位置づけである点は否定しようがない事実だ。大平洋からインド洋に欠けて展開する米軍にとって、日本に基地がなければ支障を来す

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)


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2021年6月20日日曜日

書評『復活! 日英同盟 インド太平洋時代の幕開け』(秋元千明、CCCメディアハウス、2021)-英国の動きを注視せよ! 世界情勢は確実に動いている

 

英国海軍史上で最大となる空母クイーン・エリザベスが、去る2021年5月22日に母港のポーツマス港を出港した。スエズ運河を越えてインド・太平洋海域に向かうことになる。 

インド・太平洋海域に「常駐」することになる航空母艦を中核にした空母打撃軍は、総員3000人規模の大所帯である。今年2021年の夏には、日本に寄港することになっている。多国籍による合同軍事演習も計画されているという。 

ついに英国が動き出したのだEUのくびきを離れて、英国は独自の動きを開始する。空母の派遣は、英国の国家意志の「見える化」である。 

だが、この動きはけっして「ブレクジット」(=EU離脱)によってもたらされたのではない。覇権国としての米国のパワーが弱まりつつある現状を踏まえて、それ以前から「グローバル・ブリテン構想」のもと、着々と準備を進めてきたのである。 

この一連の英国の動きを理解するためには、『復活! 日英同盟 インド太平洋時代の幕開け』(秋元千明、CCCメディアハウス、2021)を読むといい。英国のシンクタンク王立防衛安全保障研究所(RUSI)の日本特別代表の著者が、過不足なく簡潔に解き明かしてくれる。  

「日英同盟」復活に向けた動きが、いま進行しているのである。 

米国の横やりによって1923年に破棄させられた「日英同盟」は、最終的に1941年に日本を英米との戦争に導く結果となった。 

だが、現在においては、英国も日本もそれぞれ別個に米国とは強固な同盟関係を維持している。この背景があってこそ、日英は再び関係を強化しつつあるのだ。日英関係の強化は、日英それぞれの米国との同盟関係を補完することになる。 

英国の動きの背景と、日本の動きの背景はそれぞれ異なるが、地政学的にみたユーラシア大陸の両端に位置する「海洋国家」としての利害関係は一致している。これは、北極海を中心に地球儀を俯瞰してみれば、すぐにでもわかることだ。 

世界情勢は、1904年の日露戦争前夜と似てきたのである。だが、2020年現在は、ロシアに加えて中国がそこに登場してきた。いや、正確にいえば、ロシアの弱体化と入れ替わりに中国が台頭してきたというべきだろう。その中ロが事実上の軍事同盟関係として安全保障上の脅威ちなってきた。

「大陸国家」の海洋進出がもたらす脅威への対応がいまふたたび喫緊の課題となってきたのだ。 

そして、実質的に復活しつつある「新・日英同盟」の先にあるのは、「日米英三国同盟」である。 日米同盟、英米同盟、そしてインド太平洋海域を東西南北でつなぐ「日米印豪のクアッド」(Quad: Quadrilateral Security Dialogue、その他さまざな形のアライアンスは、自由意志によるコアリションとして機能していくことになる。

EUからはインド太平洋地域に大きな利害を有するフランスを先頭に、主に経済の観点からコミットしているドイツもまた、この動きに参加すべく動き出している。 

世界情勢は確実に動いているのである。米国だけを見ていてはダメなのだ。英国の動きに大いに注目しなくてはならないのである。



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目 次 
序章 
第1章 同盟の段階へ 
第2章 グローバル・ブリテン 
第3章 インド・太平洋へ 
第4章 なぜ、新・日英同盟なのか 
第5章 軍事同盟からの決別 
第6章 動き出す新・日英同盟 
第7章 英空母来航と日本 
おわりに 
参考文献・資料 

著者プロフィール
秋元千明(あきもと・ちあき)
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表。 早稲田大学卒業後、NHK 入局。30 年以上にわたり、軍事・安全保障専門の国際記者、解説委員を務める。東西軍備管理問題、湾岸戦争、ユーゴスラビア紛争、北朝鮮核問題、同時多発テロ、イラク戦争など、豊富な取材経験を持つ。一方、RUSI では1992 年に客員研究員として在籍した後、2009 年、日本人として初めてアソシエイト・フェローに指名された。2012 年、RUSI Japan の設立に伴い、NHKを退職、所長に就任。2019年、RUSI日本特別代表に就任。日英の安全保障コミュニティーに幅広い人脈があり、両国の専門家に交流の場を提供している。大阪大学大学院招聘教授、拓殖大学大学院非常勤講師を兼任する。著書に『戦略の地政学』(ウェッジ)等がある。


<関連サイト>

英国は日本を最も重視し、「新・日英同盟」構築へ-始動するグローバル・ブリテン(秋元千明 英国王立防衛安全保障研究所〔RUSI〕日本特別代表、Newsweek日本版、2021年3月16日)

「新・日英同盟」の始まりを告げる英空母「クイーン・エリザベス」来航が残した宿題(秋元千明 英国王立防衛安全保障研究所〔RUSI〕日本特別代表、Newsweek日本版、2021年9月21日)

(項目新設 2021年9月22日)


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2017年8月12日土曜日

書評『日米同盟のリアリズム』(小川和久、文春新書、2017)ー 軍事のリアリズムを中心に政治経済まで視野に入れて分析した「戦争力」


米国と北朝鮮のチキンレースが続いている毎日ですが、そんな状況だからこそ妙に浮き足だったり、あるいは逆に、どうせ関係ないよとばかりに不感症にならないようにつとめなけなりませんね。

そこでぜひ読むことを薦めたいのが、『日米同盟のリアリズム』(小川和久、文春新書、2017)。7月の新刊ですが、すでにベストセラーになっているようです。

 「日米同盟のリアリズム」とは、強固な日米軍事同盟があるがゆえに、近隣の中国も北朝鮮も手を出せないというのが現実の状況のこと。日本に手を出せば、ただちに米国から手痛いしっぺ返しをくらうから。ちょっかいを出してきても「寸止め」にとどめるしかないわけです。

その昔の冷戦時代、「日本列島は不沈空母だ」といった首相がいましたが、米国にとって日本の存在は、その世界戦略にとってなくてはならない不可欠の存在絶対に手放せるわけがないのです。たとえ日本が「離脱」しようとしても、そうはできない仕組みと仕掛けがすでに「埋め込まれているのが実態なのです。
   
現在のような状況を「属国」だという政治的な主張をする人たちもいますが、そういう主張と、自分とその家族や友人の「生命財産」とどっちが大事か考えるまでもありませんね。

「属国」とまでは言わなくても、「半独立」状態であることまでは、わたくしも否定しません。すくなくともこの事実だけはアタマのなかに入れておいて、あとはリアリズムに徹して行動するしかないのです。

この本でとくに面白いのは、北朝鮮にかんする分析です。北朝鮮の究極の狙いは、米国に対する「核抑止力」を確立することで、コストのかかる通常兵力を削減し、予算の多くを経済発展に回したいという「インドモデル」(・・これは「中国モデル」でもある)があるのではないか、という見解が紹介されています。

なるほど!な見解です。目が開かれるような思いがしますね。となると、北朝鮮による ICBM発射実験は交渉戦術の一環と考えた方が理にかなっているわけです。

とはいえ、北朝鮮にとっての「核抑止力」の確立とは、北朝鮮の核が今後も消えることがないことを意味することになるわけですが、日米同盟が存在する限り、日本の安全は保障されるというのが著者のロジックとなるのでしょうか? 

この見解が正しいかどうかはさておき、読者にとっての「考える材料」として提供してくれるのは、軍事のリアリズムと同時に、政治経済も分析できる軍事アナリストしかいないでしょう。
  
もちろん、世の中には絶対に安全ということはありえません。「備えあれば憂いなし」。そして「人事を尽くして天命を待つ」。日本と日本人の安全を守るのは自分たちだという覚悟は不可欠。

そういったことを十分に承知したうえで、浮き足立つことなく、逆に不感症になることなく、冷静に考えることが必要。そための参考資料として、読む価値の高い一冊です。





目 次

はじめに 日本を守る最善の選択はなにか?
 日知米同盟が北朝鮮と中国を抑止する
第1部 世界最強の日米同盟
 米国は日米同盟を手放せない
 自主防衛は幻想である
第2部 北朝鮮vs.日米同盟
 1994年北朝鮮核危機の真相
 北朝鮮の軍事力の実像
 日・米・韓の「戦争力」と金正恩斬首作戦
 米朝チキンゲーム
 北朝鮮はインド、中国型経済成長を目指す
第3部 中国vs.日米同盟
 東シナ海で中国を抑え込む日米同盟
 南シナ海での米中衝突はあるか?
 中国の戦略は「三戦」と「A2/AD」



著者プロフィール

小川和久(おがわ・かずひさ)

軍事アナリスト。1945年、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕恵三内閣では野中広務官房長官とドクター・ヘリを実現させた。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)

<関連本の紹介>

本書で言及されている『在日米軍-軍事占領40年目の戦慄-』(小川和久、講談社、1985)は、発売当時に読んで、それ以後の思考に大きな影響を受けた本だ。米軍の許可を受けて行った実態調査をまとめたリポートである。いま手元にはないが、重要な事項はアタマのなかに刻み込まれている。

また、本書の中国にかんする分析は、くわしくは中国の軍事力-台頭する新たな海洋覇権の実態-』(小川 和久・西 恭之、中央公論新社、2014)を参照。日米中の戦力を冷静に比較検討したリポートで、中国の「三戦」(=輿論戦・心理戦・法律戦)おなじく中国の「A2/AD」(=接近阻止・領域拒否 Anti-Access/Area Denial)について、より詳しい説明がある。





<関連サイト>

映画『ザ・デイ・アフター』(The Day After  1983年)( YouTube)
・・核ミサイルの落下と核爆発、わきあがるキノコ雲と爆風。パニックに陥る群衆。この映画が製作公開されたのは、いまだ米ソ冷戦時代のまっただなかであった。ことさら終末(ドゥームズデイ)意識の強いキリスト教保守派の多い米国人のイマジネーションの中にある核戦争はこういうものか? 

・・韓国が東京に向けて核ミサイルを発射するという、とんでもない映画。南北統一によって北朝鮮の核を手に入れたいという韓国人の密かな(?)欲望の現れか? 途中でまったく迎撃されないという設定が理解不能だが


<ブログ内関連記事>

書評 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)-地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している
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書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)

書評 『2020年日本から米軍はいなくなる』(飯柴智亮、聞き手・小峰隆生、講談社+α新書、2014)-在日米軍縮小という外部環境変化を前提に考えなくてはならない
・・シナリオとしてありえないわけではない

書評 『ビジネスパーソンのための世界情勢を読み解く10の視点-ベルリンの壁からメキシコの壁へ-』(森千春、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)-「冷戦後」の世界情勢を「現場」で読み抜いてきた国際報道記者の視点
・・朝鮮半島問題もテーマとしてかかわってきた国際報道記者による解説書

書評 『それでも戦争できない中国-中国共産党が恐れているもの-』(鳥居民、草思社、2013)-中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」。戦争をすれば・・・
・・「戦争になったら、間違いなく中国共産党は滅びる。中国共産党=中華人民共和国である以上、「亡党亡国」となるのは必定なのである。」

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・この記事に掲載した各種資料を参照

書評 『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)-首尾一貫した論旨を理路整然と明快に説く
・・「中華秩序」を破壊したのが近代日本であったという事実。これはしっかりとアタマのなかに入れておかねばならない。琉球処分と日清戦争における日本の勝利によって、「中華秩序」は破壊された。だからこそ、中国の指導者は絶対に日本を許せないのである。」

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ

書評 『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)-軍事戦略の観点から尖閣問題を考える

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂聰、新潮社、2009)-「平成の林子平」による警世の書
・・海上保安庁巡視艇と北朝鮮不審船との激しい銃撃戦についても言及。海上保安官は命を張って国を守っている!

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・海は日本の生命線!


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2016年12月28日水曜日

安倍首相とオバマ大統領がともにハワイの真珠湾(パールハーバー)で戦没者を慰霊(2016年12月27日)

(NHKニュース報道よりキャプチャ)

2016年12月27日、安倍首相とオバマ大統領がともにハワイの真珠湾(パールハーバー)で慰霊した。

現役の首相として発の真珠湾訪問というのは、どうやら誤報だったようだが、それでも現職の日本の首相が、しかも現職の米国の大統領と一緒に慰霊を行ったということには大きな意義があると言うべきだろう。

オバマ大統領が生まれ故郷のハワイで冬期休暇を過ごす機会を捉えたということのようだ。もちろん、入念に準備は行われていたのだろう。記念日である12月7日でないことにも意味はあるかもしれない。オバマ大統領の広島訪問も2016年5月27日と記念日ではなかった

ちなみに複数の首相がじつは訪問しているようだが、吉田茂首相はサンフランシスコ講和条約(1950年)調印の帰国途上でハワイで訪問した際に真珠湾に立ち寄ったようだ。

当時は日本と米本土を結ぶ直行便は燃料キャパの関係から不可能だったので、中間地点のハワイに立ち寄ってで給油するのが当たり前だった。わたしがはじめてサンフランシスコに行った1991年には、残念ながら直行便は当たり前の存在だったので、じつは、いまだにハワイにいっていない。したがって真珠湾も訪問したことがない。

本題に戻るが、日本政府は、オバマ大統領の被爆地広島訪問とは、公式には関係ないとしているというものの、受け取る側としては、返礼に近いものだと考えるのが常識的な見方というべきだろう。つまり解釈は、日米双方の個々人にゆだねるということだ。

わたし個人としては、真珠湾攻撃に対する「謝罪」がなかったのは当然だと考える。日本は米国に追い込まれていたという事情があったことは否定できない。ローズヴェルト大統領としても、日本が攻撃を仕掛けてきたほうが、参戦に踏み切る大義名分を立てやすかったことも確かなことだ。

広島と長崎への非人道的兵器である原爆投下と、結果として宣戦布告通知の1時間前になってしまった真珠湾への奇襲攻撃は、本質において異なる。とても同等(equivalent)なものとは言い難い。

なぜなら、攻撃を仕掛けた側と攻撃を受けた側は非対称的な関係であり、これは真珠湾攻撃も原爆投下も(・・ほんとうは東京や神戸などの都市空爆による一般市民の無差別殺戮についても言及するべきだ)同様である。

とはいえ、日米同盟を継続する限り(・・個人的には、まだまだその必要性は強いと考える)、日米戦争の真相については、公式にはタブーとしなければならない事項は多々ある。

だが真相究明は継続されるべきだろう。時間がたてば、何事も変化する。日米同盟が100年後に存続していると考えるのは、あまりにもナイーブというべきだろう。残念ながら、たとえ「不戦」を誓っても、情勢次第ではわからない

30年前のことだって、もう正確には思い出せないのだから、30年後もまた当然である。すでに戦後70年を過ぎており、日米両首脳ともに戦後世代である。直接に戦争体験はないのだ。

いろいろ思うところもあるが、日米は死闘を繰り広げたからこそ、お互いを知ることができたのは確かなことだ。あとは、戦争体験のない世代がいかに関係継続を維持していくかに注力するかが、「いまそこにある危機」に対応するために必要なことである。





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2016年6月5日日曜日

書評『仮面の日米同盟 ー 米外交機密文書が明らかにする真実』(春名幹男、文春新書、2015)ー 地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している


 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)という本は、かならず読んでおくべき本だ。

昨年11月に出版されてからすぐに購入したが、「積ん読」となっていた。しかし、「日米同盟」について辛辣なビジネスライクのトランプ大統領誕生が絵空事ではなくなりつつある状況のなか、「日米同盟」についてキチンと認識しておくことは不可欠だ。そう思って、このたび読んでみることとした。


この本のメッセージは一言で要約してしまえば以下のようになる。

「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」 

これは前々から指摘はされていたが、本書の著者である春名氏によって、はじめて米国側の機密文書の裏付けをもって示されたことになる。

ではなぜ、米軍は日本に、とくに沖縄に駐留しつづけているのか?

それは、もっぱら日本列島のもつ地政学的な優位性、ことにロジスティクス(・・軍事用語でいえば兵站)にあるのだ。これは、ペリー提督の「黒船来航」以来、一貫した米国の戦略的視点である。 いわゆる「開国」は、米国の捕鯨船の補給問題と日本市場開放が目的であった。

日本の敗戦後、「安保条約」にもとづいて日本に駐留する米軍にとって、日本列島は水や食料と燃料の補給基地であり、艦船の補修基地でもある。これは朝鮮戦争においても、ベトナム戦争においてもそうだっただけでなく、中近東における戦闘においても継続している。

そもそも第二次世界大戦において、米軍は戦略的優位性をもつ沖縄を獲得したかったからこそ、硫黄島を制圧したあとにそのまま北上せず、沖縄上陸作戦を敢行したのである。日本の敗戦後もそのまま米軍による軍政を敷いたのは、基地として沖縄を絶対に確保したかったからなのだ。

そして、基地を返還したくないからこそ、妥協策として「沖縄返還」に応じたのである。

米国は沖縄基地を死守するために、沖縄返還に応じたのだ、という事実をしれば、米国が沖縄から撤退したがらない理由が理解できる。

もちろん、沖縄本島に米軍将兵が多数駐留していることじたいが抑止力になるが、「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」 なのである。尖閣で問題が発生しても、はたして米軍は動けるのか、おおいに疑問だ。中国に対しては、キッシンジャー以来、いわゆる「瓶のフタ」論という詭弁で在日米軍の存在を自己正当化してきたことも忘れるべきではない。日本が暴発しないよう、米軍が駐留しているという論である。

「沖縄返還」交渉の当事者であった佐藤栄作首相とニクソン大統領の認識のズレと、平行して行われていた日米繊維交渉におけるニクソンの怒りは、読ませる内容になっている。これが本書の中核として第3章から第5章まで詳述される。

沖縄返還交渉と日米繊維交渉はほんらいは別個のものであったが、佐藤栄作が大見得をきったにもかかわらず繊維交渉が決着しなかったことが、日本の頭越しの「米中交渉」開始や貿易摩擦解消のための「ドル防衛」など、いわゆる「ニクソン・ショック」となって炸裂したのだ。この歴史的事実は、あらためて振り返っておく必要が強い。

先日も沖縄の軍属による殺人事件が発生して、沖縄のみならず日本全体で怒りの声があがっている。米軍にとっての、米国政府にとっての沖縄の基地、日米同盟の意味について、冷静な観点から押さえ置く必要があることを痛感させられる。


「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」

著者の取材によれば、自衛隊もまた在日米軍が防衛型ではなく攻撃型のものであると認識していることが指摘されている。兵站基地である日本列島から、攻撃のために米軍は出撃するのだ。

 「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」という事実を直視しなければ、日本は危うい。



目 次

はじめに-アメリカは頼れる同盟国か?-逃げるアメリカ、前のめりの日本
第1章 アメリカは日本を守ってくれるか
  「集団自衛権」を行使する理由
  安部の「美しい」誤解
 1. 新ガイドライン翻訳の仕掛け
 2. 作為的翻訳で米軍関与の印象強化
 3. 米防衛公約の後退
第2章 米機密文書は語る
 1. 「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」
 2. 沖縄返還が転機に
 3. 防衛力増強の要求
 4. どうなる日本の抑止力
第3章 アメリカ依存を誘導する戦略
 1. 日本を操る米国の地政学的策略
 2. 在日米軍撤退を阻む策略
第4章 裏切りの沖縄返還
   だれも知らない沖縄返還の理由
 1. 親米の佐藤だから
 2. 秘密主義、盗聴、そして罠
 3. 沖縄返還交渉の罠
 4. 世紀のドタバタ外交
 5. 日本への不満を残した米軍部
第5章 「繊維」の欺きと報復の「ニクソン・ショック」
 1. 沖縄返還を人質にした繊維交渉
 2. 煮と米関係が暗転した理由
 3. 報復としてのニクソン・ショック
 4. 対日政策の見直し
第6章 米中の狭間で翻弄される日本
 1. ニクソンの狙い
 2. カードは「瓶のふた論」
 3. 日本をないがしろにした外交
 4. 見えない米中コネクション
第7章 尖閣諸島問題におけるアメリカの本音
 1. 有事への懸念と異常事態
 2. 沖縄返還協定前のサプライズ
 3. 台湾への融和策
 4. 沖縄返還協定の秘密
 5. 米国内で強まる「巻き込まれ論」
 6. 日米中首脳の微妙な関係
結論に代えて-同盟の疲労
  日米両政府はどう説明するのか?
略称一覧
参考文献



<ブログ内関連記事>


日米関係

書評 『戦争・天皇・国家-近代化150年を問い直す-』(猪瀬直樹・田原総一郎、角川新書、2015)-「日米関係150年」の歴史で考えなければ日本という国を理解することはできない

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『マンガ 最終戦争論-石原莞爾と宮沢賢治-』 (江川達也、PHPコミックス、2012)-元数学教師のマンガ家が描く二人の日蓮主義者の東北人を主人公にした日本近代史

「神やぶれたまふ」-日米戦争の本質は「宗教戦争」でもあったとする敗戦後の折口信夫の深い反省を考えてみる

書評 『「普天間」交渉秘録』(守屋武昌、新潮文庫、2012 単行本初版 2010)-政治家たちのエゴに翻弄され、もてあそばれる国家的イシューの真相を当事者が語る

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則
・・「本書の特徴は、とかく日中関係という二国関係だけでものをみがちな日本人に、米中関係という人きわめて強い人的関係をベースにした二国関係の視点を提供してくれている点にある。中国問題は、すくなくとも日米中の三カ国関係でみなければ見えてこない。「大型大国間関係」という、G2=米中二国間関係にちらつくキッシンジャーと習近平の親密な関係、アメリカの世論にきわめて大きな影響力をもつ在米華人華僑の存在、アメリカの中国重視政策と日米同盟のズレなど、米国の中国政策を前提にしないと日中関係も見えてこない。」

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)-「エネルギー自主独立路線」を貫こうとして敗れた田中角栄の闘い

『愛と暴力の戦後とその後』 (赤坂真理、講談社現代新書、2014)を読んで、歴史の「断絶」と「連続」について考えてみる


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2015年5月8日金曜日

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則


外交も時事問題である以上、時々刻々と変化する国際情勢によってつねにマイナーチェンジが行われる。日本もすでに体験しているように、民主主義国家においては選挙をつうじた政権交代がありうるので、外交にかんしてもマイナーチェンジ以上の変化がもたらされることもありうる。

だが、中華人民共和国は、1949年の建国以来、中国共産党にによる事実上の一党独裁を守ってきたことをアタマのなかに入れておかねばならない。最高意志決定機関である「チャイナ・セブン」(・・本書の著者である遠藤誉氏による表現)という集団指導体制のメンバーが交代すると、外交方針にも変化は見られるが、原理原則となる方針が首尾一貫したものであることに変化はない

中華人民共和国イコール中国共産党であり、すべては中国共産党のためにある。軍事戦略も外交戦略もすべてそうである。だからこそ、中国がいかなる原理原則と長期戦略にもとづいて行動してきたかを知ることは、日本人にとっては絶対にアタマに入れておかねばならないことだ。

「百年河清(かせい)を待つ」という故事成語があるように、中国人の時間感覚は日本人とは違ってひじょうにスパンが長い。チカラを蓄えるべき時には長期にわたって隠忍自重(いんにんじちょう)し、実力が備わって自分以外が相対的に弱体化したとみれば攻撃に打って出る。そのための隠忍自重の期間は、ニコニコと笑顔を振りまきながら耐えに耐えるのである。

これは中国という国家についても同じである。個人レベルの「隠忍自重」のことを、国家戦略レベルでは養光韜晦」(ようこうとうかい)という。日本人はこのコトバも実体も知らなかったがゆえに、尖閣問題などの痛い目にあっているのだ。

本書の特徴は、とかく日中関係という二国関係だけでものをみがちな日本人に、米中関係という人きわめて強い人的関係をベースにした二国関係の視点を提供してくれている点にある。中国問題は、すくなくとも日米中の三カ国関係でみなければ見えてこない。

「大型大国間関係」という、G2=米中二国間関係にちらつくキッシンジャーと習近平の親密な関係、アメリカの世論にきわめて大きな影響力をもつ在米華人華僑の存在、アメリカの中国重視政策と日米同盟のズレなど、米国の中国政策を前提にしないと日中関係も見えてこない。

日本側が軽視した米議会調査局(CRS : Congress Research Service)による「日米関係-議会のための問題点」(Japan-U.S. Relations: Issues for Congress)というリポートを、中国は最大限に活用しているのである。安倍首相批判も、慰安婦問題批判も、このリポートによるものだ。

本書の最大のポイントは、文書化されていない「カイロ密談」を、その当事者であった中国国民党の蒋介石の「蒋介石日記」を筆写して読み込んだ「第6章 カイロ密談」と、「アメリカ公文書機密資料」を読み込んで解明した「第7章 沖縄返還密談」である。

「カイロ密談」の分析から明らかになるのは、尖閣諸島は不要だとルーズヴェルトの提案を断った蒋介石の決断とその意味である。もし中国国民党の蒋介石が中国共産党毛澤東との対決に力を奪われなかったなら、尖閣諸島はどうなっていたか、沖縄はどうなっていたか? 考えるだけでも恐ろしいことだが、もしそうであったなら、中華民国の継承者である中華人民共和国は沖縄を領有化し、日本の一部である沖縄を「属国化」していた可能性すら否定できないのだ。

中国共産党が政権をとった初期の統治について肌感覚で中国を知っている著者は、別の言い方をすれば中国を内在的に理解できる人である。「改革開放」によって「社会主義市場経済」という歪んだ拝金主義を生み出して変質する前の中国共産党支配の実態を熟知している人である。

忍者外交を行ったキッシンジャーの評価や、中国要人のテレビ向け演出における表情と化粧についての指摘など、著者ならではの独特の見方はおおいに参考になる。養光韜晦」(ようこうとうかい)を、じっと水中に潜んでじっくりとうかがうワニにたとえているのは秀逸だ。

内容的には、書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは? に重なる部分も多々あるが、日米中という三国関係のもとにある日本について考えるうえで、ぜひ読んで起きたい本である。





目 次

はじめに
第1章  世界を揺り動かす中国の野望
 Ⅰ G2構想-習近平・オバマ会談の真相
 Ⅱ 日米のミャンマー接近に危機感を募らせる中国
 Ⅲ 「龍と象の争い」-危険な中印関係の実態
第2章 中国の外交戦略は誰が決めているのか
 Ⅰ 中国、意志決定のメカニズムを解き明かす
 Ⅱ 中国外交政策決定の内部構造-「領導小組」とは
 Ⅲ 世界が驚いた習近平体制の布陣
 Ⅳ 中国数千年の戦略「韜光養晦」(とうこうようかい)第3章 中国、尖閣領有権主張の「本気度」と狙い
 Ⅰ 「人民日報」から読む「琉球領有権再考論」
 Ⅱ 民族の屈辱とリンクさせている領土問題第4章 なぜいま、アメリカが日本の歴史認識を非難するのか?-その背景にある在米華人華僑世界を追う
 Ⅰ アメリカ「CRSリポート」の影響力
 Ⅱ 世界に広がる華人華僑の実態
 Ⅲ 在米外国人留学生は何を語るのか
第5章 対北朝鮮政策 "三国志" 的戦略の飴(アメ)と鞭(ムチ)
 Ⅰ 計算された中国の対北朝鮮戦略
 Ⅱ 六ヵ国協議再開を目指す中国の本音
第6章 カイロ密談-新資料から読み解く中国最大の弱点 Ⅰ 蒋介石とルーズベルトの完全なる密室会談
 Ⅱ 米公文書館で「カイロ密談」議事録を発見
 Ⅲ 蒋介石の日記を求めてスタンフォード大学と台湾に
第7章 沖縄返還密談-「蒋介石日記」と「アメリカ公文書機密資料」 Ⅰ 尖閣諸島領土主権に関する蒋介石の日記
 Ⅱ 沖縄返還密談-アメリカ公文書館とニクソン図書館から
おわりに 尖閣の領有権-中国はCRSリポートを最大限に利用している


著者プロフィール

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1941 年中国吉林省長春市生まれ。1953 年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国-言論をめぐる攻防-』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP 社)など多数。



<関連サイト>

中国共産党も知っていた、蒋介石が「尖閣領有を断った」事実 (遠藤 誉、日経ビジネスオンライン、2013年2月14日)
「人民日報」が断言していた「尖閣諸島は日本のもの」 (遠藤 誉、日経ビジネスオンライン、2013年2月22日)
・・てっとり早く事実を知りたい人は、この2つの記事を読むといい


中国問題研究家 遠藤誉が斬る (連載 2013年10月2日から現在) 



<ブログ内関連記事>

遠藤誉氏の著作

書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?
・・本書と重なる面はあるが、ぜひ読んで起きたい本

書評 『チャイナ・ジャッジ-毛沢東になれなかった男-』(遠藤 誉、朝日新聞出版社、2012)-集団指導体制の中国共産党指導部の判断基準は何であるか?



米中日関係

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?
・・米中関係の太さについての重要な指摘が行われている本である。あまり読まれていないのが残念だ。「2章 日米の宿命の関係 1. 同盟国から仮想敵国へ 2. 幻想のアジア 3. 米中同盟=日本の破滅 4. アメリカの日本観 5. 再び日米戦争論」は必読

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目!
・・経済と安全保障のズレが存在するアジア太平洋地域



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2010年12月23日木曜日

書評『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)ー「知日派」両巨頭が語る知的刺激に満ちた一冊




「アーミテージ・ナイ報告書」番外編-「知日派」両巨頭が語る知的刺激に満ちた一冊

 まさに時宜を得た企画であり出版である。「日米安保体制50年」の節目の年に、米国の安全保障分野の「知日派」両巨頭が、日本人ジャーナリストの挑発的とも思える質問に思う存分に語った、知的刺激に満ちた一冊である。

 今年2010年は日米安保条約が締結されてから50年、この間かなりの紆余曲折を経ながらも、日米安保体制が東アジアにおける安全保障体制の要石となってきたことは疑いのない事実だ。

 政権交代によって政権党となった民主党による沖縄の基地問題をめぐる迷走は、日米安保体制を漂流させている感も抱かせていたが、2010年9月に発生した「尖閣紛争」によって、多くの日本国民があらためて軍事同盟としての日米同盟の重要性について再発見するに至っている。

 「いまそこにある危機」が、日本人の目を現実に開かせたのである。目を開いた日本人の前には日米同盟があった。

 小泉政権時代、”Show the Flag” や “Boots on the Ground” などの数々のキャッチフレーズで、軍事面における日本の国際貢献を促しつづけたリチャード・アーミテージは共和党を代表する「知日派」。現在でも毎日100kg以上あるベンチプレスを上げるという、海軍士官としてベトナム戦争従軍体験もある、国防問題と安全保障問題の専門家である。
 一方、ハーバード・ケネディ・スクール(公共政策大学院)教授のジョゼフ・ナイは、オバマ政権のもとでの初代駐日大使就任のウワサが出ていたことにもわかるように、民主党(米国)の外交と安全保障政策への影響力もきわめて大きい、「知日派」の米国の知的エリートである。

 民主党(米国)のナイと共和党(米国)のアーミテージは日米同盟にかんしては超党派で盟友の立場にあるが、この二人が地球全体を視野に入れた、米国の世界戦略の観点から一貫して日米同盟の重要性を認識し、米国の外交政策と安全保障政策に反映させるべく努力を続けてきたことが、日本人ジャーナリストの鋭いツッコミにより明らかにされている。

 米ソ冷戦終結を実現した共和党のレーガン政権時代に、キッシンジャー派の「親中政策」から「日米同盟重視」に舵を切らせたアーミテージたちの働き、湾岸戦争後の民主党のクリントン政権時代に日米同盟の重要性を認識し、政権の考えを最終的に改めさせたナイたちの働きは、ともに本人たちが語ることを聞くことで、あらためて確認できる重要な事実である。

 アーミテージ、ナイともに、日本開国以後の日米関係の歴史的推移を踏まえたうえで、「日米同盟」が東アジアにおける「拡大抑止力」として機能してきたことを重視している。これはナイ教授が最近提唱している「スマートパワー」の議論に基づくものだ。軍事力などの行使するチカラである「ハードパワー」と文化などの説得のチカラである「ソフトパワー」が合体したものが「スマートパワー」であり、本書を読むと二人の共通認識になっていることがわかる。

 いずれにせよ日米同盟が機能していくためには、軍事力だけでなく相互信頼が不可欠であり、自由主義経済体制と民主主義という共通の価値観をもつ日米両国が率直な意見交換をつうじて信頼醸成を行うことの重要性を再認識させられる。その意味では、日本の核武装論争をめぐる微妙な問題も含めて、米国サイドのかなり率直なホンネを引き出すことができた本書の価値はきわめて大きい。

 日本の安全保障における日米同盟の意味について考えるために、ぜひ目を通しておきたい一冊である。


<初出情報>

■bk1書評「「アーミテージ・ナイ報告書」番外編-「知日派」両巨頭が語る知的刺激に満ちた一冊」投稿掲載(2010年12月23日)


目 次

第1章 岐路に立つ日米同盟
第2章 中国の膨張を封じ込めよ!
第3章 北朝鮮「金王朝」崩壊のシナリオ
第4章 天皇・原爆・沖縄返還
第5章 日本が核武装する日
第6章 日米同盟の現在・過去・未来

著者プロフィール

リチャード・アーミテージ(Richard L. Armitage)

元国務副長官。1945年マサチューセッツ州ボストン出身。米海軍兵学校卒業。海軍士官としてベトナム戦争に従軍。ブッシュ政権で国務副長官を務めた共和党知日派のご意見番。国防戦略の専門家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに増補)。

ジョゼフ・ナイ(Joseph S. Nye Jr.)

ハーバード大教授。1937年ニュージャージー州出身。プリンストン大学を優等で卒業、ローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学、ハーバード大学大学院で政治学博士を取得。アメリカを代表するリベラル派の国際政治学者。民主党知日派の重鎮で、カーター政権で国務次官補、クリントン政権で国防次官補を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに増補)。

春原 剛(すのはら・つよし)

1961年東京生まれ。上智大学経済学部卒業後、日本経済新聞社入社。米州編集総局ワシントン支局などを経て、編集局国際部編集委員。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 日本の独立と米国との軍事同盟はけっして矛楯しないと私は考えている。

 問題は、日本が真の独立国たらんという気概に欠けることだ。主体的に自分の国を防衛しようとする気概のない国を、だれが血を流してまで防衛するというのか。もしその気概がないとわかったとき、米国を見捨てるような行動を日本が取ったとき、間違いなく同盟は破綻するであろう。

 問題は、日米同盟ではなく、日本そのものにある。まずは、自衛隊をきちんと軍隊であると認めることだ。
 独立自主防衛構想は心情的には理解できなくはないが、独立が孤立に陥ってしまえば、日英同盟が破棄された後の状況になりかねない。さらに国際連盟を脱退した後の日本がいったいどこへ向かって暴走したのかを思い出すべきだろう。現状の日米同盟にクサビを入れようとしている勢力にこそ、注意の目を向けなくてはならないのではないか?

 究極の理想型は、スイスやスウェーデンのような武装中立であろう。しかし、現実的に考えれば、日米同盟の有効性は日米双方にとってきわめて大きい。日本が安保ただ乗りというのは間違いであることが本書を読むとわかることだ。日本にとってのみならず、米国にとっても地政学的に見た日米同盟の意味は大きいのである。

 また日本の防衛とは、日本列島の防衛だけに限定されるのではない。エネルギーの大部分を海外からの輸入に頼り、また国際貿易体制を国是として生きている日本が防衛しなければならないのはシーレーン全体である。その意味においては、日米同盟を中核として、東アジアと南アジア、そして中近東にかけて、価値観を同じくする諸国と同盟関係を広げていくべきである。これが日本にとっての集団安全保障体制というものだ。

 何よりも実利を重視するビジネスマンとして、私はプラクティカルな観点から、日米同盟を支持するのである。(2010年12月25日)
 


<ブログ内関連記事>

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 を読む-特集テーマは「The World Ahead」 と 「インド、パキスタン、アフガンを考える」
・・ナイ教授の「スマートパワー」論については、あわせてご覧いただきたい

「フォーリン・アフェアーズ・アンソロジー vol.32 フォーリン・アフェアーズで日本を考える-制度改革か、それとも日本システムからの退出か 1986-2010」(2010年9月)を読んで、この25年間の日米関係について考えてみる

日米関係がいまでは考えられないほど熱い愛憎関係にあった頃・・・(続編)・・レーガン政権時代の「日米経済戦争」

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)・・「海洋国家」日本にとっての日米安保体制の意味

書評 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)-地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『暗闘 尖閣国有化』(春原剛、新潮文庫、2015 単行本初版 2013)-「準戦時下」状態への分岐点となった「事件」の真相を分厚い取材で描き切ったノンフィクション作品

ノラネコに学ぶ「テリトリー感覚」-自分のシマは自分で守れ!

(2016年9月14日 情報追加)


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