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2020年8月5日水曜日

書評 『習近平と永楽帝-中華帝国皇帝の野望』(山本秀也、新潮新書、2017)-歴史をさかのぼると現在が見えてくる 


習近平とは何者か? 何をしようとしているのか? 

この問いにかんしては、中国共産党の最高指導者に選任された2012年前夜から膨大なアプローチがなされてきたが、そのいずれも習近平その人と中国共産党という枠組みのなかでの考察がほとんどだった。 

そんな一般的なアプローチとは異なる1冊がある。『習近平と永楽帝-中華帝国皇帝の野望』(山本秀也、新潮新書、2017)という本だ。この本は面白い。  

この本がユニークなのは、歴史上の人物である明朝の永楽帝(1360~1424、在位:1402~1424)と習近平(1953~)を、時空を超えて比較した「対比列伝」形式で描いていることだ。 

「600年」を隔てた永楽帝と習近平の共通点と相違点を明らかにすることで、習近平が何を考えているのか、中国をどこにもっていこうとしているのかが見えてくるのだ。

ジャーナリストの著者は、これを「シノロジー(支那学)にもとづく報道」と命名している。歴史を踏まえて現在と近未来を観るという方法論である。 歴史をさかのぼると現在が見えてくるのだ。

明朝は、モンゴル人による元朝が滅亡したのちに天下を取った漢民族の王朝である。中国共産党もまた漢民族による体制だ。この点がまず共通している。中国共産党は清朝時代の最大版図を念頭においているが、当然のことながら女真族(=満洲族)の清朝が継承したのは明朝であり、漢民族王朝としての明朝も視野のなかにある。 


●権門出身という血統のよさ 
●権力掌握前の苦節 
●正統性を証明するため、政権創設者に範を取りつつ、前任者を超える政治実績を示すことを迫られた立ち位置
●「法治」を掲げた苛烈な政敵排除や国内統制 
●政権の威光を高めるための対外拡張とアジア秩序構築への意欲・・


書籍紹介の文章をそのまま引用したが、これらが永楽帝と習近平の共通点だ。 

それにしても、永楽帝という皇帝がやったことは、じつにすさまじい帝位を甥から簒奪した武人であり、正統性(レジティマシー)を示すために行った大量虐殺しかり、朝貢国を求めて派遣した鄭和の大艦隊などなど枚挙にいとまがない。

もちろん永楽帝は、「小者」である習近平とは比較しよういもないほどの「大物」である。だが、この永楽帝を比較対象の「鏡」とすると、習近平がアタマの中身が見えてくるのだ。

それが、いまコロナ後に積極攻勢に出ている軍事侵攻として顕在化していることは言うまでもない。 習近平のアタマのなかには、中国式の上下関係による華夷秩序しかないのだ。

この1冊で、600年前の14世紀の明朝の永楽帝と、21世紀の中国共産党の習近平の2人が理解できてしまうお得な内容でもある。いわゆる「Two in One」である。読みでのある本だ。関心のある人にはお勧めしたい。

中国をはじめ中華文明圏に属する国々での駐在だけでなく、歴史に精通した著者ならではの叙述は大いに読ませるものがある。 






目 次
序章 帝国の残照と現代中国 
第1章 永楽帝誕生 
第2章 習近平の半生 
第3章 王朝創始者の権威利用 
第4章 粛清の時代 
第5章 「盛世」の夢 
第6章 「天下」の拡大と「大一統」 
終章 習近平は永楽帝たり得るのか 
コラム 明という時代/中国の歴史と儒教 
【永楽帝】解説・年譜/【習近平】解説・年譜 
参考文献


著者プロフィール 
山本秀也(やまもと・ひでや) 
1961年生まれ。産経新聞編集委員兼論説委員。北京大学哲学系卒。シンガポール、台北、香港、北京、ワシントン支局長を歴任。著書に『本当の中国を知っていますか?』『南シナ海でなにが起きているのか』、共訳書に『李登輝実録』など(本データは書籍カバーより転載したもの)。



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