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2020年8月9日日曜日

書評 『日本人はなぜ自虐的になったのか-占領とWGIP』(有馬哲夫、新潮新書、2020)-敗戦後75年にも及ぶ日本の病理を考える


暑い日が続いている。夏だから当然だとはいえ、暑い夏にはほんとうに消耗させられる。そんな夏の暑い日に広島と長崎に原爆が投下され、日本は「敗戦」したのだ。今年2020年で75年前のことになる。

この時期にふさわしいテーマが戦争ものだ。『日本人はなぜ自虐的になったのか-占領とWGIP』(有馬哲夫、新潮新書、2020)を読了。占領時代のものもまた、広い意味で戦争ものといっていいだろう。 

日本人の主観的意識においては「終戦」であるが、「敗戦」によって「終戦」したことは否定しようのない歴史的事実である。だが、その「敗戦」の仕方がまずかったのだろう、なぜか現在に至るまで日本人から自虐意識が抜けない。これは病理現象というべきだろう。

なぜそんな状態が続いているのか? その根源は「敗戦」後の米国による7年間に及ぶ占領時代にある。1945年から1952年までの7年間だ。

本来は「条件付き降伏」であったにもかかわらず、「無条件降伏」だと思い込まされてきた日本国民戦争に罪悪感をもち、侵略戦争と防衛戦争の区別もなく戦争を悪とみなす思い込みをもつ日本国民。こういったマインドセット(=精神のあり方)が形成されたことの背景にあるのはなにか。

著者は、それを米軍による「心理戦」に求めている。二度と米国に刃向かわないように、日本人のマインドを改変すること。そこまでやらなければ、戦争目的が遂行されたとは見なさない。そういう姿勢である。米国による「日本改造」が、そのミッションであった。それはほぼ成功したといってよいだろう。

「終戦の詔勅」によるポツダム宣言の受諾は8月15日だったが、正式に降伏文書に署名したのは9月2日である。この事実までは、比較的知られていることだろう。だが、それですべてが終わったわけではないのだ。戦闘は終わったが、戦争は継続していたのだ。

日本の占領統治にあたったのは、連合国軍のなかでも米軍が中心であったが、その米軍の「心理戦」の中核にあったのが WGIP である。War Guilt Information Program の略だ。「戦争を罪悪(ウォー・ギルト)と思い込ませる情報プログラム」とでもなるのだろうか。「プロパガンダ」である。「洗脳プログラム」である。米国の都合のいいような日本を作り上げるプログラムである。

WGIP については以前から取り上げられ、糾弾的な姿勢で論じられてきたてきたが、賛否両論にわたって論争がかまびすしい。存在そのものを否定する論もあるが、著者の有馬氏は米国の公文書館に保存されている第1次資料に基づいた調査研究を行った。その成果が本書である。

マスメディア(当時は、新聞・ラジオが中心、しかもラジオはNHKしかなかった!)と映画の活用、その後に導入されたTVもまた「反共」を目的に米国が積極的に普及させたものだ。繰り返し視聴することで、知らず知らずのうちに価値観が刷り込まれていく。

日本政府が正式に命名した「大東亜戦争」を使用させず、「太平洋戦争」だと思い込ませるようマスメディアをつかった刷り込んだのはその一例だ。太平洋戦争はあくまでも米国の観点にしか過ぎないのに、このネーミングのせいで日本人は「先の大戦」における中国大陸と東南アジア(当時は南洋)について忘却しがちである。

そして極めつけが学校教育であった。教育ほど「洗脳」が効果的に行われる場所はないからだ。マスコミュニケーション理論の「回路形成理論」(チャネリング)が活用されたのである。

「回路形成」とは、著者の表現をつかえば、「やわらかい土の上に水を流すと、溝が形成され、そのあと何度水を流してもおなじ溝を流れることになる」ことである。事実の解釈の枠組みが脳内に回路として形成され、しかも固定してしまうのだ。

アタマがまだ柔らかいうちに回路が形成されてしまうと、ほぼ一生にわたって、おなじ回路を情報が流れることになる。その最大の「被害者」ともいうべきなのが、団塊世代(1947~1949年生まれ)である。

だが、無意識レベルで刷り込まれているので、その世代の人びとは自分たちが「被害者」であることはもちろん、「加害者」であるという意識すらない。繰り返し蒸し返される慰安婦問題などの負の遺産は、そもそも問題そのものを作り出したのは日本人であって、韓国人はそれを利用しているに過ぎないのだ。

慰安婦問題もそうだが、原爆報道もそうだし、尖閣問題という「いま、そこにある危機」が迫っているにもかかわらず、相も変わらず戦争反対を唱える平和ボケの敗北主義者を生み出している根源には、占領時代の米軍による心理戦とWGIPがあったことは、歴史的事実としてしかと認識すべきであるのだ。

著者の立ち位置は、あくまでもファクトベースのものであって、特定のイデオロギーに立脚するものではない。

「WGIPコミンテルン陰謀説」を主張する「歴史戦」論者たちとは一線を画していることは特記しておくべきだろう。朝日新聞だけでなく産経新聞もまた批判しているのは、フェアな態度だというべきである。






目 次 
まえがき 
第Ⅰ部 今ここにあるWGIPマインドセット 
第1章 日本のマスメディアと教育は歴史的事実を教えない 
第2章 なぜいまWGIPなのか 
第3章 WGIPマインドセットの理論的、歴史的証明 
第Ⅱ部 占領軍の政治戦・心理戦はどのように行われたのか 
第4章 ボナー・フェラーズの天皇免責工作と認罪心理戦 
第5章 ケネス・ダイクと神道指令 
第6章 ドナルド・ニュージェントと国体思想の破壊 
第7章 心理戦は終わらない 
第Ⅲ部 WGIPの後遺症 
第8章 原爆報道に見る自虐性 
第9章 慰安婦問題に見るWGIPの効き目 
第10章 WGIPマインドセットの副産物「平和ボケ」 
あとがき 


著者プロフィール
有馬哲夫(ありま・てつお)
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書多数。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)







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