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2022年4月10日日曜日

書評『ポストプーチン論序説 「チェチェン化」するロシア』(真野森作、東洋書店新社、2021)ー「チェチェン」はプーチン体制のロシアを解くカギである

 
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の行く末は現時点では確実なことは言えないが、来る5月9日の「独ソ戦戦勝記念日」にロシアが「勝利宣言」するであろうことは十分に想定される。 

その日までに、プーチンは、なんらかの形で戦果を「見える化」しなくてはならないのである。 なぜなら、プーチン体制のロシアにとってきわめて重要な記念日だからだ。



■「愛国主義」×「チェチェン化」のプーチン体制

そんなプーチン体制のロシアにとって、「愛国主義」とならんで大きな意味をもつのが「チェチェン」だ。 

『ポストプーチン論序説 「チェチェン化」するロシア』(真野森作、東洋書店新社、2021)は、「チェチェン化」という切り口で「プーチン後」について考えるためのヒントを与えてくれる。  

「第2次チェチェン紛争」(2000年)を武力で鎮圧し、連邦からの離脱を阻止してチェチェンをロシア連邦にとどめることに成功したのがプーチン体制の原点であり、それ以後チェチェンはプーチンにとっては要(かなめ)ともいうべき存在になっている。 

チェチェン共和国は、プーチンに絶対的な忠誠を誓うカディロフによって統治されている。プーチンとカディロフの関係は、父子関係にも似た、きわめて属人的なものである。イスラームのチェチェンは、いわばロシア連邦内で「藩王国」のような形で、治外法権的な存在となっているのである。 


■「チェチェン共和国のいま」と「ロシア連邦におけるチェチェン」の意味

この本を読むと、チェチェン紛争から20年後の「チェチェンのいま」を知ることができると同時に、チェチェンがロシアにおいていかなる意味をもつようになったかが、じつによく理解できるのである。 

ロシア連邦内にとどまりながらも、治外法権的な存在となっているチェチェンは、プーチンに個人的に絶対的忠誠を誓うカディロフによる強権支配が行われており、カディロフはミニ・プーチンとも呼ぶべき存在となっている。 チェチェンにおいては、強権体制は増幅している。

そして、正規軍に属していながらもカディロフの私兵的存在の「カディロフツィ」は、プーチンの別働隊としてロシア国内外で暴れまくっている。「シリア紛争」はもちろん、「ウクライナ戦争」にも投入されていることは報道されているとおりだ。 

メディアをつうじて、暴力的な強権体制が当たり前となっているチェチェンの実態を知ることで、ロシア国民は、ロシアの強権体制はチェチェンよりかはまだましだと思い、強権支配が強まるロシアでは物言わぬ状態となっている。

ロシア国民の多くは、なによりもソ連崩壊後のような混乱状態は避けたいのだ。安定こそ意味をもつのであり、だからこそ、たとえ強権体制であろうとプーチンが支持されているのが実態だ。


■プーチン体制のゆくえとプーチン後はどうなるのか?

 「ウクライナ戦争」が長期化するなかでも、プーチンの支持率が落ちないどころか上昇しているのは、「愛国主義」によって培われた「戦時体制」という認識がそのためであろう。

もちろん、「ウクライナ戦争」に対する欧米が主導する経済制裁の影響は、いったん上昇した支持率を、じわじわと低下する方向に影響を与えていくことが予想される。すでに1万人を越える戦死者(!)の影響もまちがいなくでてくるはずだ。

とはいえ、人口爆発で若年人口の多い中東世界と違って、少子高齢化の進むロシアでは「アラブの春」は期待しがたい。著者のこの指摘は重要だ。 

ソ連時代の KGB の後継機関である FSB(=ロシア連邦保安庁) SVR(=ロシア対外情報庁)、ソ連時代以来の軍の情報機関である GRU(=ロシア連邦軍参謀本部情報総局)と複数の組織にまたがるシロヴィキ(=情報機関者)、そしてオリガルヒ(=スーパーリッチ)がプーチン体制を支える支配層だが、かれらのあいだは激しい利害対立がある。

そうでありながらも、なんとか崩壊せずにもっているのは、束ねる力として、求心力としてのプーチンが存在するからだ。
 
もちろん、プーチン自身が。自分が権力の座にとどまり続けないと、自分自身に身の危険が迫ることを懸念しているということもあろうし、利害が対立する支配層もまたプーチンを必要としているという構図が存在する。ある意味では、プーチンとカディロフの関係にも似た「共依存関係」にあるというべきであろう。

だが、プーチンも生身の肉体をもった人間だ。いかなる形であれ、彼が政権中枢から消えることになれば、ロシアは混乱状態に陥ることは避けられない。 

2020年7月には「ロシア憲法改正」によって、プーチン大統領が2024年の任期切れ後にも改めて大統領選に出馬して(・・そのときプーチンは71歳)、最長で2036年までその座に留まることが可能とった(・・そのときプーチンは84歳!)。

とはいえ、たとえ事実上の「終身大統領」だとしても、安定を重視する国内の現状維持政策は、中長期の問題を先送りするに過ぎないのである。問題はマグマのようにたまりつづけている。

問題は、爆発する時期がいつになるのかだけだろう。 今回の「ウクライナへ戦争」がその時期を早めた可能性は高い。

はたしてプーチンは持ちこたえるのか、利害対立がプーチンを権力の座から引きずり下ろすことになるのか、国内外にきわめて大きな問題を抱えていることを前提にして、ロシア情勢を注視していく必要がある。 


ロシアにとっての中東、中東からみるロシア

著者は毎日新聞の記者。現在はカイロに特派員として駐在して、中東・北アフリカ情勢をフォローしながら、中東からの視点でロシア情勢を見ている

コーカサスのチェチェンもまた、広い意味では中東イスラーム圏につらなる存在だ。 中東イスラーム圏の動向に大国ロシアが与える影響は大きい

中東視点で世界をみる著者の次作には大いに期待している。 



目 次
序章 プーチンとチェチェン
第一部 カディロフのチェチェン
 第1章 カディロフの「藩王国」 
 第2章 異境化するチェチェン 
 第3章 紛争からの復興 
第二部 「越境」するチェチェン 
 第4章 やまぬ暗殺とテロ
 第5章 チェチェンの新たな紛争
 第6章 「チェチェン化」するロシ 
終章 ポスト・プーチンと「火薬庫」チェチェン 
あとがき 
主要参考・引用文献

著者プロフィール
真野森作(まの・しんさく)
1979年、東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。2001年、毎日新聞入社。北海道報道部、東京社会部、外信部、ロシア留学を経て、2013~17年にモスクワ特派員。大阪経済部記者などを経て、2020年4月からカイロ特派員として中東・北アフリカを担当。著書に『ルポ プーチンの戦争-「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか』(筑摩選書、2018)-足で稼いだ現地取材で描いた「ウクライナ危機」のルポルタージュは貴重な現代史の証言(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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