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2024年2月24日土曜日

書評『命知と天理 ー 青年実業家・松下幸之助は何を見たのか?』(住原則也、道友社、2020)ー「青年実業家」は急成長する宗教組織から貪欲に学んでいた

 

『命知と天理 ー 青年実業家・松下幸之助は何を見たのか?』(住原則也、道友社、2020)という本を読んだ。期待どおり、松下幸之助にかんする長年の疑問に答えてくれる本であった。


■創業から14年後に「真の使命」を知った松下幸之助

松下幸之助は、1932年(昭和7年)5月5日をもって「命知元年」としている。会社創業の14年後のことである。

「命知」とは、「使命を知る」という意味でつかわれている。漢字熟語なら本来は「知命」とすべきであろう。とはいえ、松下幸之助は「命知」という表現で松下電器製作所(現在のパナソニック)がその「使命」を知り、その真の誕生であるとした。

そして、いわゆる「水道哲学」を前面に打ち出したのである。「水道哲学」とは、蛇口をひねれば水がでるように、適正価格で製品を大量に供給することで、世の中から貧困をなくしていこうという経営哲学のことである。現在でいえば限りなくNPO的な経営理念といえる。

そのきっかけが、取引先の知人に熱心に誘われて奈良県の天理教本部を見学したこと、そして大いに思うことがあり、目が開かれたことであった。ここまでは、比較的知られている話であろう。


■「青年実業家」は天理教本部で何を見たのか?

32歳の松下幸之助は1932年3月某日(・・正確な日付は不明)、なんと10時間(!)にわたって天理教の本部を知人の説明を聞きながらくまなく見学したのだという。大阪から片道1時間とはいえ、約半日を天理教本部の見学に費やしたのである。

そのとき松下幸之助は、天理教信者たちの熱心なはたらきに何を見たのか? 何を感じたのか? 何を学んだのか?  

本書は、その詳細について、天理教の「内側」から考察を行ったものだ。出版元の道友社は天理教の出版社である。

著者の住原氏は、天理大学教授で経営人類学を専門とし、経営理念などの研究を行っている研究者である。天理教の信者であるかどうかは分からない。

戦前の松下電器と天理教組織の類似点と相違点を詳細に分析している。この内容が、わたしの長年の疑問に答えてくれるものであった。とはいえ、なにぶんにも当時の関係者はすべて物故しており、資料の制約があり、推論に頼ることが多いとしている。 あくまでも、そういう前提のもとに読むべきであろう。

当時の松下電器は、数々の危機を乗り越えて発展途上にあったとはいえ、従業員規模は1,200人あまり。これに対して、急成長のさなかにあった天理教は信者が300万人(!)という大組織であった。 

信者たちは、どうしてみな嬉々として無料奉仕ではたらいているのか? どうやったらそんな巨大な組織を動かすことができるのか? それはもう、青年実業家にとっては驚きの連続であったことだろう。 


■天理教本部の見学後、松下幸之助は独立採算の「事業部制」を構築した

とはいえ、そこから先が、当時36歳の松下幸之助が並の経営者とは違うところであったのだ。

貪欲にも異分野である宗教組織のあり方から学び、それを大胆にも企業経営に取り入れて応用したのである。

天理教が独立採算の組織形態をとっていることをヒントに(・・ただし、これはあくまで推測)、独立採算の「事業部制」を構築したのである。そして、組織としてのベクトル統一を図るための求心力となりうる「使命」の明確化を行っている。

90年前の当時は、現在のように「経営学」は理論化も体系化もされておらず(・・ドラッカーがマネジメントを体系化したのは第2次大戦後のことだ)、経営にかんする有用な知識もメディアをつうじて流通していなかったのである。

松下幸之助は、みずからの体験をもとに実践的な経営知を確立したのである。「経営の神様」の原点がそこにある。 

もともと身体が弱く、宗教的な感受性の強い人だったようだが、松下幸之助は、まさに希有な資質の持ち主であったというべきだろう。

以上、ざっと簡単に本書の内容について見てきたが、じつに面白い本であった。長年の疑問が大いに氷解する内容であった。


■できる経営者は異分野からも貪欲に学ぶ

わたしもそうだが、松下電器(=パナソニック)にとっても、天理教にとっても「外側の人」である人は、読むと得るものが少なくないはずだ。

企業経営におけるミッション(=使命)とパーパス(=志)、組織論について考えるうえでも、参考になる点が少なくない。 

本書は天理教の出版社からでた本だが、天理教について詳しくない人にも理解できるよう、一般書としてくどいほど丁寧に解説している。 

松下幸之助と天理教に関心のある人は、食わず嫌いすることなく読むことを薦めたい。 


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目 次
はじめに 
第1章 天理教と松下電器の「類似」 
第2章 起業から昭和7年までの松下電器 ―「通念」に基づく経営の時代 
第3章 初めて親里(おやさと)を歩く(午前) 
第4章 教祖中山みきの足跡と初期教団の歩み 
第5章 初めて親里を歩く(午後) 
第6章 戦後の展開に見る「類似性」 
第7章 松下電器の経営理念の独自性を考える 
おわりに

著者プロフィール
住原則也(すみはら・のりや)
1957年生まれ。神戸大学文学部卒業。ニューヨーク大学大学院博士課程修了(文化人類学博士、Ph.D)。天理大学国際学部教授。国立民族学博物館共同研究員、Anthropology of Japan in Japan学会長(2012~2018)、公益財団法人松下社会科学振興財団理事(2010~2019)など歴任。著書に、『グローバル化のなかの宗教』(編著、世界思想社)、『経営理念』(共編著、PHP)、『経営と宗教』(編著、東方出版)など。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




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