東京都江東区の釜屋掘公園にある「尊農」の石碑。戦前の石碑なので、横書きの文字は右から左に読む。
「尊皇攘夷」の「尊皇」ではなく、農業を尊ぶという意味の「尊農」だ。以前のことだが、たまたまこの公園で休憩していたとき、この石碑の存在を知った。
この石碑は、もともとこの場所に日本初の化学肥料の工場が建設されたことを顕彰するため、大東亜戦争の最中の昭和18年(1943年)に設置されたものだ。
(日本資本主義の父である)渋沢栄一と(三井物産初代社長の)益田孝の意をうけ、(米国移住後にタカジアスターゼの発明者となる)化学者の高峰譲吉が中心となって「東京人造肥料株式会社」が明治20年(1887年)に設立された。
食糧問題の解決のため、「過リン酸肥料」による人造肥料製造を目的にしていたが、その後に導入された(ドイツ発の技術ハーバー・ボッシュ法による)「空中窒素固定法」による化学肥料の増産が、農業生産の飛躍的拡大をもたらしたのだ、と。
関東大震災で工場が被災し、その後廃墟となって人びとの記憶かがからも忘却されていたたため、関係者一同が有志となって、この地が日本の人造肥料発祥の地であることを顕彰し、農業振興を期して石碑を建てることにした、と。
「尊農」である。 農業は国の基本である。コメつくりをないがしろにしてきたツケが回ってきているいま、あらためて「尊農」を意識しなくてはならない。
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