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2025年2月5日水曜日

書評『埼玉クルド人問題 ー メディアが報道しない多文化共生、移民推進の真実』(石井孝明、ハート出版、2024)ー 明日はわが身か!? 「多文化共生」という美辞麗句のもとで深刻化する事態から目をそらすな!

 

    
埼玉県川口市を中心に、その周辺地域で問題化している「クルド人問題」の実態に迫った経済ジャーナリストによる渾身の一冊だ。
 
「多文化共生」という美辞麗句のもとで問題が放置されたきたこの問題。川口市立医療センターを舞台に、クルド人どうしの暴力的な対立で緊急医療が麻痺する事態が、2023年7月4日の深夜から5日未明かけて発生した事件で知られることになった。
 
住民が不安に脅えているにもかかわらず、誰もが見て見ぬ振りをしてきた「埼玉県南部のクルド人問題」に、たった一人で取り組んで取材を始めたのが著者の石井孝明氏。著者自身は、ボランティアの取材活動をつうじて、それまでの認識を180度転換する必要を痛感することになる。
  
文字通りの命がけの取材内容(・・著者は殺害予告の脅迫までされている!)は、著者の石井氏の X をフォローしてきたのでリアルタイムで知っていたが、再編集されて書籍の形にされた本書を読むと、問題の実態とその構造が手に取るように見えてくる
   
川口市で問題になってきたクルド人が「擬装難民」であることは、著者の取材や産経新聞の取材で明らかになってきている。トルコで迫害されている「かわいそうなクルド人」という固定観念が、イスラームの旗の下に民主化が進展している、2020年代の現在のエルドアン政権下のトルコの実態とは異なることもまた。
   
もちろん、すべてのクルド人がそうではないが、「偽装難民」として日本に滞在し、解体業などでカネ稼ぎをしているクルド人に問題があることはいうまでもない。
   
だが、ほんとうの問題は、住民の声に耳を貸さず、見て見ぬ振りをしてきた警察や行政、そして十分な議論抜きで「移民政策」を推進する日本政府とその背後にある経済団体、そして左派リベラル派に偏した(オールド)メディアであることが見えてくる。
 
タイトルだけを見ると、キワモノめいた印象を受けるかもしれない。だが、ジャーナリストとしての著者の筆致はいたって冷静で、報道姿勢は公平である。反対意見も同時に掲載して、読者自身による判断にまかせていることは評価するべきだ。
  
「埼玉クルド人問題」は、悪目立ちしているクルド人に焦点をあてたものだが、近視眼的になしくずしで野放図に推進されている「移民政策」のネガティブな側面から目をそらしてはいけないことを教えてくれる。
  
埼玉県南部の住民でなくても、「明日はわが身か!?」と覚悟しておいたほうがいいのかもしれない。

移民政策と難民受け入れのため社会が劣化し、「自死」しつつある西洋社会の轍を踏んではいけないのである。問題提起の本として、ぜひ読むべきだ。
 

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目 次
はじめに 日本の「自死」の始まりか
第1章 埼玉県民の声 ― 広がるクルド人の違法行為
第2章 自分が外国人犯罪の被害者になる
第3章 政府の失敗が埼玉県民を苦しめる
第4章 在日クルド人の奇妙な生活
第5章 問題をこじらせる日本人たち
第6章 日本の崩壊を今ここで止める
おわりに 外国人の力を適切な形で日本に取り入れる

著者プロフィール
石井孝明(いしい・たかあき) 
1971年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌副編集長、編集プロダクション経営などを経て、フリーランスのジャーナリストとして経済、環境、金融問題を取材、執筆活動をしている。情報サイト「with ENERGY」「Journal of Protect Japan」を運営。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



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2017年9月28日木曜日

クルド人の独立国家樹立は心情的には共感するのだが・・・。増殖が止められない主権国家の弊害が指摘される現在、「民族自決」原則の積み残し課題はどうなるのか?



イラクのクルド人自治区で独立の是非をめぐって住民投票が実施されると報じられている。(2017年9月25日付け情報)。

イラクとイラン、そしてトルコの三か国にまたがった「クルディスタン」という山岳地帯に居住するクルド人は、いまだに自分たち自身の国をもったことがない民族だ。クルド人にかんしては、「民族自決」が否定されたままなのだ。

第一次世界大戦後、オスマン帝国の崩壊によって、クルド人居住区が三か国に分割されてしまったが、トルコ共和国のケマル・パシャはクルド国家樹立に激しく反対した結果、クルド人は時ぶんんたちの国家をもつことができなかったまま現在に至っている。

(CIAの発表したクルド人居住地域の地図 wikipediaより)


投票が行われても開票に時間がかかり、結果が判明するまでには時間がかかるが、独立支持が過半数を超えると予想されている。住民投票を主催した側は、住民投票の結果、賛成多数となればイラク政府と2年間の期限付きで交渉に入るとしている。


心情的には共感するのだが・・・

個人的には、クルド人の独立国家樹立は心情的には共感するの だが、中東の秩序を大幅に揺るがすことは容易に予想できることだ。大英帝国が設計した「人工国家イラク」は妥協の産物であり、いわゆる「民族国家」ではない。大英帝国の負の遺産というべき存在なのだ。

クルド人国家独立という課題は、イラク内でもハードルが高いだけでなく、なによりもトルコが過敏に反応する問題である。トルコ国内では、たびたびクルド人によるテロが発生している。クルド人は、トルコ国民の13%を占めている。間違いなくトルコは猛反発するだろう。

ISIS(=イスラーム国)掃討戦におけるクルド兵部隊の活躍をみてわかるとおり、かれらは勇猛果敢な戦士でもある。しかも女性部隊すら大いに活躍している。


『クルドの星』(1986~1987年)というマンガ

そんなクルド人テーマにした本は、最近でこそ増えてきたが、かつてはきわめて少なかった。安彦良和氏によるマンガ『クルドの星 全三巻』は、そのなかでも先駆的な作品だ。

日本人の父親とクルド人の母親のもとに生まれた少年を主人公とした冒険活劇プラスアルファ。まあ内容的にはさておき、エンターテイメントとして楽しむべき作品だ。さすが、歴史大作マンガ『虹色のトロツキー』の作者ならではのものだ。いや、ガンダムの作画監督ならではというべきか。

国際情勢は『ゴルゴ13』を筆頭にすべてマンガで学んだというのは自民党の麻生太郎氏だが(笑)、クルド人が置かれた厳しい状況はこのマンガを読めばわかる(はず)。発表は1986年なのでソ連崩壊前、すでに30年前ではあるが、ソ連が崩壊してクルディスタンが旧ソ連のアルメニア国境と接することになった以外は、基本的に大きな情勢変化はない。


「民族自決」原則の積み残し課題はどうなるのか

「民族自決」原則は、帝国主義による植民地主義を否定する米国のウィルソン大統領が、第一次世界大戦後の国際秩序構想として主唱したものだが、いまだ民族独立が実現できない民族は多数ある。

しかしながら、主権国家が細分化され無限増殖しているというソ連崩壊後の弊害が指摘されるようになり、「民族独立運動」そのものにも否定的な見解さえ少なくない。

今週日曜日(2017年10月1日)には、欧州スペインのカタロニア自治区で独立の是非を問う住民投票が行われることになっている。「カタロニアはスペインではない!」。かつて米国留学中に、カタロニア出身の留学生から激しい剣幕で叱られたことを思い出す。「クルドはイラク(あるいはトルコ、イラン)ではない!」

2017年9月のいま、そんな状況にようやく変化が生まれようとしている。その動きについては当事者ではないわたくしも、見守っていきたい。間違いなく「苦難の道」は続くことであろうが。

もちろん、このアジアにおいては、チベットとウイグル、そしてモンゴルもまた同様だ。外モンゴルはソ連の衛星国家としてかろうじて独立を保ったが、中国統治下に残された内モンゴルでは過酷なジェノサイドが行われている。

「民族の牢獄」と批判されていたソ連が崩壊して「諸民族」が解放されたが、いまだ「民族の牢獄」でありつづける中国からの「解放」は達成されていない

クルド人問題は、けっして遠い中東の地の問題ではないのだ。




<関連サイト>

クルド人悲願「独立国家樹立」を阻む難題の山 住民投票は賛成多数になるとみられるが… (池滝 和秀 : 中東ジャーナリスト、東洋経済オンライン、2017年9月26日)

住民投票で独立が遠のいたクルドの根深過ぎる問題(Newsweek日本版、2017年11月11日)


なお、クルド人問題については、拙著『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』の第4章(P.268~269)を参照

(2017年11月23日 情報追加)




<ブログ内関連記事>

書評 『イラク建国-「不可能な国家」の原点-』(阿部重夫、中公新書、2004)-「人工国家」イラクもまた大英帝国の「負の遺産」
・・英国が創ったイラクという「人工国家」の不可能性

書評 『イスラム国-テロリストが国家をつくる時-』(ロレッタ・ナポリオーニ、村井章子訳、文藝春秋、2015)-キーワードは「近代国家」志向と組織の「近代性」にある
・・「自称イスラーム国」の首都ラッカが陥落したいま(2017年10月18日)、オスマン帝国崩壊後の越境による国境線引き問題の焦点はクルド人問題に移行する

ブランデーで有名なアルメニアはコーカサスのキリスト教国-「2014年ソチ冬季オリンピック」を機会に知っておこう!
・・マンガ『クルドの星』で重要な意味をもつアララット山は、ブランディーの名前にもなっているようにアルメニア人にとってはきわめて大きな意味をもつ存在だが、現在はトルコ国内にある

『ソビエト帝国の崩壊』の登場から30年、1991年のソ連崩壊から20年目の本日、この場を借りて今年逝去された小室直樹氏の死をあらためて悼む

書評 『「シベリアに独立を!」-諸民族の祖国(パトリ)をとりもどす-』(田中克彦、岩波現代全書、2013)-ナショナリズムとパトリオティズムの違いに敏感になることが重要だ

書評 『ノモンハン戦争-モンゴルと満洲国-』(田中克彦、岩波新書、2009)-もうひとつの「ノモンハン」-ソ連崩壊後明らかになってきたモンゴル現代史の真相

「チベット蜂起」 から 52年目にあたる本日(2011年3月10日)、ダライラマは政治代表から引退を表明。この意味について考えてみる

(2017年10月20日 情報追加)


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