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2021年3月31日水曜日

書評『西洋の自死-移民・アイデンティティ・イスラム』(ダグラス・マレー、東洋経済新報社、2018)-かつて世界を支配したこともある「文明」は滅亡へと向かう不可逆のプロセスにある

 
人類の歴史において数多くの「文明」が勃興し、また滅亡していった。19世紀以来、世界を支配してきた「西欧文明」もまた、滅亡に向けて不可逆のプロセスにある。 

『西洋の自死-移民・アイデンティティ・イスラム』(ダグラス・マレー、東洋経済新報社、2018)は、「西欧文明」の死に至るプロセスを英国人ジャーナリストが現地取材と深い考察をもとに描いたベストセラーの日本語版だ。500ページを超える大冊だが、意外と読みやすかった。  

日本では、内藤正典氏がトルコ人移民を中心としたヨーロッパ社会各国(とくにドイツなど大陸国家)についてフィールドワークを行ってきた結果を書籍として読むことができるが、本書『西洋の自死』は英国人ジャーナリストの手になるものだけに、あまりよく知られていない英国の事例も多い

ジャーナリストによる現場取材だけでなく思想面も踏まえた考察が、本書をして読ませる診断書にしている。問題の根は、きわめて深いのだ。


■「移民」「アイデンティティ」「イスラム」

「移民」「アイデンティティ」「イスラム」は、英語原文では「immigration, identity, islam」とすべて「i」で始まる単語である。



第2次世界大戦後の「労働力不足」を補うために導入した「移民」だが、その多くを占めたのが、かつて植民地支配を行った中東アフリカのイスラム圏の人びとであった。

移民が少数派であれば、「多文化共生」などの美辞麗句も、問題をもたらすこともなかったであろう。 

だが、いったん受け入れが始まったら最後、その増大に歯止めが効かなくなる。「ガストアルバイター」(*Gastarbeiterはドイツ語、英語なら guest worker)として、ドイツを含め西欧各国にやってきたトルコ人を中心とした人びとは、家族を呼び寄せて「移民」となり、そして本国に帰還することなく定住していく。

移民増大に歯止めがかからなくなったのは、シリア問題をきっかけに、中東アフリカからの「難民」を無制限に受け入れることになったからだ。政治指導者たちが有権者の意向を無視して決めてしまったからだ。その最大の責任者はドイツのメルケル首相である。 



ナチスからユダヤ人を救わなかった「自責」(の念)、「良心」(の呵責)といった罪悪感、それぞれ反省としては重要だ。「人道主義」は、素晴らしいことばである。反論することは難しい。だが、こういったことばは軽くなり、ほとんど意味をもたないことばになってしまっている。 

2015年にピークを迎えたテロの嵐は、現在は過ぎ去って小康状態にあるが、日常生活のなかで発生する犯罪(とくに女性に対する性犯罪)が隠蔽され続けている。

とくに女性が犯罪のターゲットになっているのは、イスラム世界では、女性が1人で行動することなどないからだ。イスラム教徒の若い男性による集団レイプが後を絶たない理由がそこにある。だが、警察が動けないのは、上位機関がストップをかけるからだ。見て見ぬ振りがまかり通っている。

現実問題から目をそらそうとした政治指導者とメディアは共犯者である。エリートたちの罪はきわめて大きい。マクロレベルではキレイ事を言い続けながら、日常生活というミクロな領域で発生するコンフリクトを黙殺し、隠蔽させようとしてこた政治家とメディアは共犯者である。かれらの罪は、きわめて重い。


■「イスラム化」はもはや不可逆の流れ

出生率の違いから、イスラム教徒の人口は増大する一方であり、2050年には西欧諸国の人口の2割近くがイスラム教徒になると推定されている。 たとえこれ以上の移民の流入を止めたとしても、もうすでに遅いのである。

この比率は、さらに進んでいくことだろう。そして、西欧全体がイスラム世界となっていくのであろうか? 

自分たちの「アイデンティティ」が変容し、もはや後戻りのきかない状態になってしまったことに気づいたのが、あまりにも遅すぎたのである。

「極右」とレッテルを貼られたポピュリズムの動きは、有権者を欺きつづけた上層階級への異議申し立てなのである。これは、大衆のエリートに対する反乱と捉えるべきであろう(第14章)。フランスの人口学者エマニュエル・トッド氏が警鐘を鳴らし続けていることでもある。

EUに加盟しながらも、「壁」を建設して、かたくなに「難民」流入を拒否しているのが中欧諸国だ。ハンガリーやチェコといった国々である。旧社会主義圏の50年の歴史が、西欧とは異なる道を選択させる要因となっているのであろう。 西欧社会に見られる「精神的・哲学的な疲れ」(第13章)は、それほど大きくないように見受けられる。 

「西欧文明」は、ドイツを除いた中欧社会に生き続けることになるのかもしれない。 著者はそうとは言っていないが、私はそのように感じた。


■日本国民は「他山の石」と捉えよ

日本語版に「解説」を寄稿している評論家の中野剛志氏は、反グローバリゼーションの立場にいる論客だが、日本もまた「自死」を迎えつつあると警告している。その通りであろう。 

もはや外国人労働者抜きに日本社会が成り立っていないことは、「常識」といっていい。はたして日本も、西欧のようになってしまうのか、それとも回避できるのか? 

西欧社会の現状は、「他山の石」としなくてはならないのである。 






目 次
[解説] 日本の「自死」を予言する書(中野剛志) 
イントロダクション 
第1章 移民受け入れ論議の始まり 
第2章 いかにして我々は移民にとりつかれたのか 
第3章 移民大量受入れ正統化の「言い訳」 
第4章 欧州に居残る方法 
第5章 水葬の墓場と化した地中海 
第6章 「多文化主義」の失敗 
第7章 「多信仰主義」の時代へ 
第8章 栄誉なき予言者たち 
第9章 「早期警戒警報」を鳴らした者たちへの攻撃 
第10章 西洋の道徳的麻薬と化した罪悪感 
第11章 見せかけの送還と国民のガス抜き 
第12章 過激化するコミュニティと欧州の「狂気」 
第13章 精神的・哲学的な疲れ 
第14章 エリートと大衆の乖離 
第15章 バックラッシュとしての「第二の問題」攻撃 
第16章 「世俗後の時代」の実存的ニヒリズム 
第17章 西洋の終わり 
第18章 ありえたかもしれない欧州 
第19章 人口学的予想が示す欧州の未来像 
あとがき(ペーパーバック版) 



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