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2013年6月14日金曜日

「旧江戸川乱歩邸」にいってみた(2013年6月12日)-「幻影城」という名の「土蔵=書庫」という小宇宙




旧江戸川乱歩邸(立教大学キャンパス内)にいってみた。あの探偵小説作家の江戸川乱歩の旧宅が立教大学に譲渡されて保存されていることを、つい最近のことだが知ったからだ。

検索してウェブサイトを調べてみると、月・水・金と開いているらしいが、一般公開は水曜日と金曜日のみで、しかも10時半から16時(午後4時)までだという。

今週水曜日、ちょうど新宿方面で用事があったので、その前にちょっと池袋に立ち寄ってみることとした。

再開発計画の一環として渋谷駅がさらに複雑怪奇になったばかりだが、新宿駅も池袋駅も、いつになってもわたしにとってはラビリントス(迷宮)である。あたかも江戸川乱歩の世界のように(笑)

池袋駅はふだんは東口に用事が多いのだが、立教大学のキャンパスは西口にある。立教大学にいくのはひさびさだが、アメリカ風のレンガつくりにツタのからまった大学建築物はステキだ。しかも、歩いている女子学生が垢ぬけてオシャレな印象もつよい。江戸川乱歩とはなかなか結びつかないのだが、乱歩と立教のつながりはなかなか深いものがあるようだ。

(立教大学キャンパス内)

そのキャンパスの一角に旧江戸川乱歩邸があるはずなのだが、事前にきちんと地図を見ていなかったためか、なかなか探すのに骨が折れた。

キャンパスの配置図をみてもなかなか乱歩邸に行き着けず、まさに乱歩的ラビリントス(迷宮)かとあきらめかけていたが、ようやくたどりついたら16時、職員の女性が門を閉める直前のことであった。

「ちょっとだけ見てもよろしですか?」とダメもとで頼み込んでみたら、OKしていただいただけでなく、なんと親切なことに案内までしていただいた。さすが日本人! 官僚的なしゃくし定規な対応ではない対応に感謝。時間に厳密なヨーロッパだと絶対にあり得ないことだ。

引っ越し魔の乱歩は、なんと46回の引っ越しの末に(・・よくカウントしていたものだ。几帳面な性格がうかがわれる)、昭和9年(1934年)にこの地に引っ越してきたのだという。当時はまだ静かな環境であったようだ。

戦前は借家全盛時代であったので、乱歩もそうしたようだ。戦後になってから買い上げて自分の所有としている。立教大学は2002年に「創立130年事業」の一環として、不動産を買い上げたようだ。

(母屋の奥に土蔵)

乱歩がこの家を借りることにした決め手は土蔵があること。「いわゆる幻影城とよばれる土蔵」は、邸宅のウラにある。土蔵が書庫になっているのだ!

(幻影城=土蔵=書庫)

一般公開はされているが、なかに入ることはできない。あくまでもガラス越しにチラ見することができるだけだ。それでも、公開日以外は敷地内に入れないのだからありがたいものだ。玄関、洋間の応接、そして待望の土蔵=書庫を見ることができた。

(土蔵の書庫のなか-几帳面に整理されている)

幻影城=土蔵=書庫のなかは、書籍がじつに几帳面に整理されているが、江戸川乱歩自身が無類の整理魔であったためらしい。ある意味ではきわめて機能的な書庫になっていたわけである。実物データベースというべきだろうか。

江戸川乱歩というと『少年探偵団シリーズ』が有名なので、子どもむけの物語作家というイメージを持っておられる方も少なくないだろう。じっさいに、旧乱歩邸の玄関にもシリーズ本が並べられている。

(母屋にある洋間の応接室・・レイアウトは乱歩自身だそうだ)

その一方では、とくに前期にはきわめて猟奇的な作品や探偵小説(・・現在の推理小説)も少なくない。探偵小説といえば、夢野久作が大好きなわたしだが、同時代に活躍した江戸川乱歩も「昭和モダン」というレトロ感覚がじつにいい。関東大震災後の東京という場所がなければ成立しなかった作品群である。

なかに入ることができないのは残念だが、旧乱歩邸ではガイドブック(500円)が販売されているので参考になる。内部の写真はネット上でも見ることができるので、関心のある方は検索してみるといいだろう。

とはいえ、やはり「現地」である。「現場」である。乱歩の小説の主人公である明智小五郎もまた犯罪がおこった「現場」で思考する。

だから、旧江戸川乱歩邸という「現地」は、いちどは踏んでおきたいスポットだ。


(乱歩邸の正面)

<関連サイト>

旧江戸川乱歩邸 (立教学院創立130年記念事業
・・立教大学キャンパス内。月・水・金曜(公開は水・金曜のみ)(10時30分~16時)
*公開日の見学は予約不要

(地図の右下に乱歩邸)



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2011年8月18日木曜日

『うずまき』(伊藤潤二、小学館、1998-1999)ー 猛暑で寝苦しい夜にはホラー漫画でもいかが?


 このホラー漫画の主題と主人公は「うずまき」そのものである。

 「うずまき」とは漢字で書けば「渦(うず)巻き」である。

 自然界に存在する「うずまき」が。これでもか、これでもかと登場して、人間の主人公・五島桐江(ごしま・きりえ)とその周辺の登場人物が、つぎからつぎへと「うずまき」に巻き込まれていくというホラー物語だ。

 よこぞこれだけ「うずまき」だけで、20話も描いたと思うのだが、読んでいるうちに、こちらもだんだんと目が回って気分が悪くなってくる。

 マンガに登場する「うずまき」は、自然に存在する物でいえば、植物のぜんまい、かたつむりなどの巻き貝、蛇のとぐろ、人間の耳の内耳(ないじ)。自然現象としては竜巻に台風、鳴門の渦潮(うずしお)など。

 人工物なら、カールした長い髪の毛、ばね(=スプリング)やぜんまい(金属製)、灯台のらせん階段もまた自然界を模倣したものだ。

 赤塚不二夫の『天才バカボン』の主人公バカボンのほっぺたにも「うずまき」が! だが、残念ながら(・・いや当然ながら?)、このマンガにはでてこない。また、「アース渦巻」という商品もあったが、なぜか、蚊取り線香はこのマンガにはでてこない。


「うずまき」に巻き込まれていく感覚、吸い込まれていく感覚

 自然界に存在する「うずまき」でもっとも危険なものといえば、鳴門の渦潮や竜巻や台風だろうが、周辺から中心にむかってらせん状に巻き込まれていくのが、ホラー(恐怖)が発生する源泉なのだ。中心に吸い込まれていくという感覚

 そうそう、「うずまき」を描いた作品といえば、米国の詩人で小説家 エドガー・アラン・ポー(Edgar Alan Poe)に「メールストローム」(Maelstrom)というホラー短編小説がある。ノルウェーの沖に発生する渦潮の恐怖を扱った作品だ。ちなみに、エドガー・アラン・ポーから江戸川乱歩というペンネームがつくられた。

 逆にいえば、うずまきは、中心かららせん状に回転しながら拡大していく構造をもっているのだが、その中心はじつは固定しているわけではなく、中心そのものが連続的に発生してくる。泉の水がわき出てくるように。

 そう、うずまきはカオスである。混沌という訳語がつけられがちなギリシア語のカオス(Χάος : chaos)は、反秩序を意味するアンチ・コスモスではなく、そこからすべてのもの生成してくる原点である。

 物理学のカオス理論でいえば、ベナール対流というやつだ。このマンガの主人公の男友達の父親のように、試みにコップのななの水をおはしをつかってかき混ぜてみたらいい。すぐに渦が生成されるのを目撃することになるだろう。

 うずまき(渦巻き)を意味する英語は vortex(ヴォルテックス)という。渦巻きや旋風を意味するコトバだが、転じて社会運動などの渦巻きも意味するようになっている。He was drawn into the vortex of politics [revolution, war]. 彼は政争[革命, 戦乱]の渦中に巻き込まれた. という例文が『研究社 新英和中辞典』 にあがっている。


マンガの解説は初出情報などの書誌以外は不要ではないか?

 わたしが読んだ『うずまき』は、2010年に刊行された合冊版だが、巻末の佐藤優による解説は不要だろう。

 ムリヤリ資本論と格差社会に結びつけようとする牽強付会(けんきょうふかい)な文章で、こういう文章は黙殺していっこうにかまわない。こういう解釈でマンガを読むのはひとつの読み方ではあるが、邪道というものではないか?解釈の幅があまりにも狭すぎるからだ。版元の小学館もどうかしているのではないか?

 そもそもマンガであれ小説であれ、意図的にプロットを設定して執筆に取りかかったところで、作者自身のうちなる無意識が作用して、かってにキャラクターが動いてゆくものだ。いったん作者の手を離れたら、作品をどう読もうが読者の勝手である。

 だから、資本主義うんぬんよりも、集合無意識の世界観を描いた作品とうけとるのが素直な態度だろう。

 うずまきは自然界にフツーに存在するものあるのにかかわらず、気になりだすと、すべてのうずまきに追いかけられるようになっていく。催眠術のように。


巻き込むとは? 巻き込まれるとは? 

 むしろ現在では、意識的に「巻き込む」ことの意味さえ考えたくなるのが、ソーシャルネットワーク時代に生きるわれわれである。一方的に巻き込まれているというわけではないだろう。あるいは「マキコミ」とカタカナ書きで表記することもある「巻き込み」

 有名なものでは、デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」(TED Youtube 映像)がある。これは、鳩山前首相が首相を辞任した直後のツイートで、「裸踊り」として有名になった映像。ある一人のイノベーターからフォロワーが生まれていくプロセスを映像にしたものだ。


 『うずまき』はホラーといえども、なんだか不思議な笑いを含んだ作品である。読者は純粋に恐怖と覚えると同時に、こんなのあり得ないことだと、笑いつつ突き放して読めばよい

 そういうわたしも、ちょっと余計なことを書きすぎたようだ。まずは、先入観なしで読んで恐怖を感じることだろう。きょうみたいな、猛暑日で寝苦しい夜には。






<関連サイト>

デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」(TED Youtube 映像)
・・鳩山前首相が「裸踊り」としてツイートして有名になった映像。人の「巻き込み方」とは?-これをある一人のイノベーターからフォロワーが生まれていくプロセスを映像にしたもの

天才バカボン 入り口 - 赤塚不二夫公認サイト これでいいのだ!!
・・バカボンとはじめちゃんのほっぺたに「うずまき」が!(笑)


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(2014年8月29日 情報追加)


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