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2023年3月11日土曜日

江戸時代後期に生きた史上最強の力士・雷電為右衛門を訪ねて臼井へ(2023年3月11日)-生まれてはじめて京成電鉄の臼井駅で下車し旧佐倉藩領を歩く



先週末、生まれてはじめて京成電鉄の臼井駅で下車。白井(しらい)ではない、臼井(うすい)である。

成田空港や成田山にいくために利用してきた京成電鉄だが、おそらく最低でも数十回は往復しているはずだが、いまのいままで臼井駅で下車したことはなかった。 

(勝川春亭による雷電の画 Wikipediaより)

臼井で下車したのは、江戸時代後期に生きた力士・雷電為右衛門(らいでん・ためえもん 1767~1825)の墓を詣で、顕彰碑を見るためである。

生涯の黒星が通算10個だけで、「勝率 0.962!」の大相撲史上未曾有の最強力士とされている。身長197cmの巨漢であった。  

(雷電の顕彰碑 筆者撮影)

雷電が晩年を現在の千葉県佐倉市の臼井で過ごしたことは、今年(2023年)になってからはじめて知った。 


臼井の甘酒茶屋の看板娘を見初めて結婚し、一人娘をもうけたらしい。妻と娘といっしょの墓が臼井にあり、顕彰碑も建立されていることも知ったというわけだ。臼井は雷電で町おこしをしようというわけだろう。 

(雷電為右衛門夫妻と一女の墓 筆者撮影)

それなら臼井に行かなくてはなるまい、と思った次第。「佐倉雷電祭」(妙覚寺)というのが2月11日あるようだが、そういう日は避けるに限る。人混みは嫌いだからね。 

はじめて臼井駅で下車して歩いたわけだが、臼井もまた坂の多い、高低差の大きな町だ。こういうことは、実際に歩いてみないとわからない。あらてめて現地・現物・現実の「三現主義」でいかねばならないと実感。 

雷電の墓を詣で、顕彰碑を見たあとは臼井城趾へ。この知られざる城は1604年に廃城となったままで、現在は公園になっている。

(臼井城趾より印旛沼を見下ろす 筆者撮影)

印旛沼や市街を見下ろす高台に建っていた、天然の要害ともいうべき臼井城難攻不落で、籠城戦の末、上杉謙信の軍勢を退けたこともあったという。 1566年のことだ。

(上杉謙信の臼井城攻め 千葉市立郷土博物館の展示より)

高校時代に入手してパラパラ読んでいた赤松宗旦の『利根川図誌』(柳田國男校訂、岩波文庫、1938)には、臼井城趾が掲載されていて気になっていた。40数年たって、ようやく懸案事項の解決となったわけだ。 

そのあとは下って印旛沼の西岸を歩き、成田街道に入って佐倉へ。途中の江原刑場跡(・・佐倉藩の処刑場で、ここで蘭医による解剖が行われた)を訪れ、旧佐倉藩領を佐倉城趾(・・現在は国立歴史民俗博物館)まで歩く。

そのあとは旧佐倉藩校の県立佐倉高校の「鹿山文庫」を10年ぶりに再訪し、さらに武家屋敷をこれまた10年ぶりに再訪。3万2千歩のウォーキングツアーであった。





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2013年9月1日日曜日

本日(2013年9月1日)は関東大震災から90年 ー 知られざる震災記録ルポルタージュの文庫本2冊を紹介



つい先日のことだが、ことし2013年の8月に宮武外骨の著作が一冊、文庫本として復刊された。

『震災画報』(宮武外骨、ちくま学芸文庫、2013 発行:1923~24年=大正12~13年)である。

不敬罪での禁錮3年をはじめ、生涯に入獄4回、罰金・発禁などの筆禍29回という戦歴を誇る在野の反骨のジャーナリストであった宮武外骨(みやたけ・がいこつ 1867~1955)が、関東大震災の直後から自分が経営する出版社の半狂堂(!)から発行した「画報」を一冊にまとめたものだ。

みずからの目で見て聞いた話を、文体は口語体で、しかも絵入りの和紙和装本として予約出版された合計6冊である。

内容の一部はその後あきらかになった事実とは異なる伝聞情報が含まれているということだが、これはリアルタイムの情報伝達である以上、避けられないことだろう。

宮武外骨といえば、この文庫版の解説を執筆している吉野孝雄は親類縁者にあたる人だが、宮武外骨の伝記のタイトルが『過激にして愛嬌あり-宮武外骨と「滑稽新聞」-』(ちくまブックス)というものだった。

1983年の初版を愛読して以来、わたしは宮武外骨のファンであるが、この話はまた別の機会にしたいと思う。

それにしても「過激にして愛嬌あり」とはなんとステキなキャッチフレーズであることか。「過激」なことを言うだけでは嫌われて遠ざけらだけ。愛嬌がないと共感を得ることはできないということなわけだ。座右の銘にしたいものだ(笑)

だが、この『震災画報』では、事実の収集とそのコメントに専念しており、過激でも愛嬌でもないことを記しておく。過激だとしたら、震災による被災という事実そのものが過酷で過激なのだ。





「総目次」の一部(全6冊の内容を項目別に整理した目次になっている)

論説
地震学の知識概略
上野公園に集った避難者
尋ね人の貼紙
上野山王台の西郷隆盛銅像
吉原の遊女
貧富平等の無差別生活
東京を去った百万の避難者
見聞雑記
写真銅版の実景または図画
その他







さて、文庫で読める知られざる震災記録ルポルタージュということで、もう一冊紹介しておきたいと思う。

『東京震災記』(田山花袋、河出文庫、2011 初版 1924年)である。

田山花袋(1871~1930)といえば近代日本文学史の名前のでてくる文学者である。いわゆる自然主義文学の作家として『田舎教師』や『蒲団』などの作品で有名だ。高校時代、授業で聞いたが現在に至るまで読んだことがないのだが(笑)

だが、ここのところ岩波文庫から田山花袋の随筆が復刻されており、それを読むと意外なことに軽妙洒脱な文体でなかなか面白い文章を書いていることがわかった。

『温泉めぐり』(岩波文庫、2007)である。これは紀行文である。また、『東京の三十年』(岩波文庫、1981)も貴重な回想録といえるだろう。

そんなジャーナリストで筆も立つ田山花袋が書いた記録ルポルタージュが『東京震災記』である。東日本大震災後に河出文庫から復刻された。

宮武外骨の『震災画報』が、どちらかといえば現在のニュース報道やブログ記事のようなものだとすれば、田山花袋のものはさすがに文学者だけあって、じっさいに交わした会話なども織り込んで臨場感のある読み物に仕上がっている。

内容については目次をご覧いただきたい。




目次の一部

この世の終りかと思った
一寸先きはわからない
金棒の音
混乱したシインがシインに重って表現派の絵
Sの話
I君の話
その時のさま
『オッ地震』
瓦の落ちる音
白い不愉快の雲
その雲に当たった夕日
『下町はえらい火事だ』
以下、項目多数


関東大震災については、吉村昭によるノンフィクション作品の傑作である『関東大震災』(初版1973年、現在は文春文庫)があって読んだ人も多いと思う。わたしもずいぶん昔になるが吉村氏の本で関東大震災の全貌を知ることができた。

それでもあえてこの文庫本2冊を紹介するのは、震災の当事者が書いたものだからである。日本の企業社会で強調される三現主義(=現場・現物・現実)をそのまま実践した記録でもあるからだ。

震災の被害とその後の人災もさることながら、震災後の復興について知ることができるのである。

だが、思えばわずか22年後の1945年(昭和20年)3月11日、東京は米軍による大空襲でふたたび焼け野原となった。今度は天災ではなく、無能な政治指導者たちが招いた人災であったが・・・

その大空襲からさらに68年、いまのところなにもなく過ごしてきたが、東日本大震災以後さまざまな研究成果が「NHKスペシャル」の特集などをつうじて一般化してきており、すでにつぎの大地震の可能性も想定せざるをえない状況になってきている。

しかし、そのときいったいどうなるのか。
いや、どう行動できるのだろうか・・・




<関連サイト>

MEGAQUAKEⅢ 巨大地震 よみがえる関東大震災 ~首都壊滅・90年目の警告~(NHKスペシャル 2013年8月31日)


<ブログ内関連記事>

「今和次郎 採集講義展」(パナソニック電工 汐留ミュージアム)にいってきた-「路上観察」の原型としての「考現学」誕生プロセスを知る
・・関東大震災からの復興、再生から始まった「考現学」

We're in the same boat. 「わたしたちは同じ船に乗っている」

「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦が書いた随筆 「天災と国防」(1934年)を読んでみる

永井荷風の 『断腸亭日乗』 で関東大震災についての記述を読む

「リスボン大地震」(1755年11月1日)後のポルトガルのゆるやかな 「衰退」 から何を教訓として学ぶべきか?

書評 『震災復興の先に待ちうけているもの-平成・大正の大震災と政治家の暴走-』(山岡 淳一郎、2012)-東日本大震災後の日本が「いつか来た道」をたどることのないことを願う

両国回向院(東京)で戦後はじめて開催された「善光寺出開帳」にいってきた(2013年5月4日)+「鳥居清長名品展」(特別開催)

鎮魂-「阪神大震災」から15年目に思い出したこと

大震災のあと余震がつづくいま 『方丈記』 を読むことの意味


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2012年7月7日土曜日

『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(佐藤けんいち、こう書房、2012)を求めて-東京都内のリアル書店をフィールドワークする


新刊の拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』、今週水曜日(2012年7月3日)から全国の書店の店頭に並んでいます。

残念ながら、全国津々浦々の書店というわけにはいきませんが、紀伊國屋書店、ジュンク堂や丸善などの、全国チェーンの大型書店であれば、しばらくは新刊書として店頭に並んでいると思います。

多くの書店では、ビジネス書の 「自己啓発書」、あるいは 「仕事術」 のコーナーの棚に並んでいると思います

発売後、わたしも都内の大型書店をいくつか回ってみました。いわゆるフィールドワークですね。

フィールドワークで感じたことですが、本を売るということにかんしては共通していながらも。書店によってかなりポリシーが異なるということ。いいかえれば、書店ごとの個性といったものでしょう。これは同じチェーンに属する書店も異なる個性があることが感じられます。

話題になっている本は、どんな書店だろうが売れるでしょうが、そうでない場合は一に立地、二に立地・・でしょう。書店以外の小売店と変わるところはありません。

(三省堂書店有楽町店 出版社作成のPOPが立てられています)


乗り換えの多い都心の駅構内の書店のように、比較的面積が小さくても、人の流れがつねに激しい店はかなり効率よい販売をしているようですが、一方では従業員はものすごく忙しい。

大規模書店の場合は、扱い書籍が多すぎて、たとえ平積みになっていても埋もれてしまう可能性が大きいということ。まさに「コロンビア白熱授業」のシーナ・アイエンガー教授の「選択」の授業内容そのものですね。選択肢は少ない方が、選択する側の負担が小さいということ。

(紀伊國屋書店新宿南店 自己啓発書コーナー)

なにしろ、出版物は商品点数が多すぎるし、どんどん新製品がでてくるわけですから・・・・

全般的に、本屋で本を探して買う中心層の年齢が上がってきているので、若い年齢層の読者に訴求するには、よほど立地がいい書店か、クチコミなどで話題が流れてきて目的買いされることが重要なのではないかなということです。

若いビジネスパーソンも、年齢にかかわらず多忙なビジネスパーソンも、amazon などのネット書店に注文することが多いのが現状でしょう。

まずは、平台に平積みされて、しかも手前の陳列で、POPが立てられていることが重要ですね。もちろん、これは棚の担当者がつねに考えていることですから、書店によって個性の差が大きくでてくるわけなのです

(池袋リブロ 自己啓発書コーナー)


そんななか、わたしが持参した手製POPを立てていただいたのが池袋のリブロです(上掲の写真)。回遊性のいい動線上にある棚に平積みにされてますので、機会があればぜひ立ち寄ってみてください。

フィールドワークは、メーカーでよく強調されている「三現主義」の実践です。現場・現物・現実の頭文字をとった「三現主義」。フィールドワークについては、『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』の「第2章 引き出しの増やし方 ②-徹底的に観察する」を参照してください。

じっさい、書籍販売の「現場」で販売担当者の方々と「対話」していると、お互いにとって貴重な「気づき」の機会になると思います。なんといっても「現場」ですね!

ネット書店で本を買うことの多いわたしですが、あらためてリアル書店の意味についても考えている状況です。なんといっても、リアル書店の店頭においては、手で触って「商品」の中身を確かめることができるわけですから。

なお、アマゾンでは、まだ「なか見! 検索」ができないので、とりあえずは出版社の こう書房 のサイトをご覧ください。 
http://www.kou-shobo.co.jp/book/b102659.html 
「もくじ」 と 「はじめに」(全文) を読むことができます。

ぜひこの機会に一冊。よろしくお願いします!



(2012年7月3日発売の拙著です)


<ブログ内関連記事>

コロンビア大学ビジネススクールの心理学者シーナ・アイエンガー教授の「白熱教室」(NHK・Eテレ)が始まりました

書評 『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール、工藤妙子訳、阪急コミュニケーションズ2010)-活版印刷発明以来、駄本は無数に出版されてきたのだ




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2012年1月22日日曜日

『ドキュメント アジアの道-物流最前線のヒト・モノ群像-』(エヌ・エヌ・エー ASEAN編集部編、エヌ・エヌ・エー、2008)で知る、アジアの物流現場の熱い息吹


物流(ロジスティクス)で読むアジアのいま

物流(ロジスティクス)は面白い。

とくに経済成長著しい「新興国」のモノの動きを下支えするロジスティクス(物流)関係者は縁の下の力持ちといってよい。

物流は正面切ってスポットライトがあてられることがあまりないだけだけに、本書の試みはたいへん歓迎されるものだ。

しかも知られざるアジアの状況である。アジアで「物流革命」が起きている、まさにその現場からのリポートが面白くないはずがないえはないか。

モノを動かすのはヒトである。東南アジアの物流関係者の熱い息吹を感じることのできるドキュメントである。なにごとであれ、現場が面白い。ディテールが面白い。

本書の「あとがき」に、なぜ物流かについての説明がある。

物流を取り上げたのは、ASEANで長年、進出日系企業を観察していると適地生産、再編は域内だけでなく中国とも絡み、かなりのスピードで進行していることが分かり、日系企業の生存を賭けた戦いは、物流に深くかかわっているからである。

本書は、部品から完成品、生鮮食品から生花まで、分秒を競う21世紀のシルクロードを生産現場からコンテナ車のあとを追ってつぶさに検証した8ケ月の記録だ。

エヌエヌエーは、アジア全域で配信している日本語の日刊情報誌である。


インターネット時代だからこそ、さらに物流の重要性は高まっている

インターネット時代はモノは重要性が低くなるなどと日本では一時期考えられたこともあったが、それは大間違い。ネットショップの普及で、かえって小口配送は活発化している。

インターネットは「情報流」と「商流」と「カネ」についてはビジネスを促進するが、物理的な実体をもつモノは永久に消えてなくなることがない。だから、物流は永久に消えることはないだろう。テレポーテーションはまだまだSFの世界の話である。

現代の日本人の消費生活が、中国やASEAN諸国からのモノの輸入によって大きく成り立っていることは、多くの人が知るようになっている。

現在では「産地表示」が当たり前となったので、スーパーの店頭でインドネシア産のエビやタイ産のイカを目にするのも日常的になっている。チリ産の養殖サーモンすら、なんとタイの日系水産会社で加工されて日本に輸入されているのである!



衣類も家電製品もその多くが、中国やASEAN諸国の日系メーカーの工場から輸入されているのである。

その意味でも、アジアの物流事情がどうなっているのか、アジアビジネスにかかわりがなくても知っておきたいところである。

さらに将来を考えれば、アジアでも今後は小口配送が本格普及するだろう。そうなると、ASEANと日本と中国のあいだの物流は、さらに爆発的に拡大していくことになるはずだ。


アジアの道は陸海空

タイトルには「アジアの道」とあるが、道は「陸路」だけではない。「海路」も「空路」も道である。

最初から「陸路」と河川が中心だったヨーロッパとは発展の仕方が異なるのである。現在でも、各国の国内物流は「陸路」が中心だが、国を超える物流は「海路」が中心である。

アジアで「物流革命」とは、これまで「海路」が中心だった物流が「空路」へ、そしてまたASEAN諸国域内の「陸路」へと広がりつつあることである。

ベトナム戦争が終結し、「インドシナを戦場から市場へと」という提唱が1991年になされてから20年、「メコン圏」を東西南北で縦貫する「東西回廊」と「南北回廊」の整備が着々と進んでいる。

本書が出版されたのは2008年、取材が行われたのは2007年4月からの8ヶ月間であり、すでに4年前のことである。

この4年間のあいだには陸上交通網の整備がさらに進んだだけでなく、航空便でも全日空が沖縄に物流ハブ基地を開設するなど大きく進展している。

また、2009年のバンコク国際空港の封鎖や、2011年には「3-11」の原発事故による日本産品の輸入禁止など、物流がらみで、さまざまな事件も発生している。

ぜひまた、あらためて「物流最前線」の取材をまとめていただきたいものだと思う。

とりあえずは、この一冊で、ASEAN諸国と中国、日本のあいだのモノの動きについて実感していただきたいと思う次第だ。

日本の企業世界のなかでクチにされる「三現主義」とは、「現場・現物・現実」のこと。物流「現場」でモノという「現物」が動く「現実」を、アジアにかかわるビジネスパーソン以外にもディテールごと知ってほしいものである。

モノの動きにかかわるのはヒトなのである。




目 次      
はじめに

第1章 空の道 

   
ASEANから飛ぶマグロ【プーケット、バリ、ジャカルタ→日本】
部材空輸、中国向け加速【バンコク国際空港(タイ)】
域内最大ハブ、業界も絶賛【チャンギ空港(シンガポール)】
苦闘する第3のメガ空港【クアラルンプール国際空港(マレーシア)】
シンガポール経由で活路【スカルノ・ハッタ国際空港(インドネシア)】
韓国経由で欧米へ輸出【タンソンニャット国際空港(ベトナム)】
輸出の7割電子部品【ニノイ・アキノ国際空港(フィリピン)】

第2章 海の道        

海を走る自動車【タイ、シンガポール、インドネシア】
成長の新港、限界の老舗港【レムチャバン港(タイ)】
コンテナ・石油、世界的ハブ【シンガポール港湾】
5年で貨物量8割増へ躍進【マレーシア港湾】
海賊との終わりなき戦い
日系工場密着で成長続く【インドネシア港湾】
造船などサポート業も成長【ベトナム港湾】
船員養成へ日系船社が力【フィリピン港湾】

第3章 陸の道    
    
片肺の3カ国物流、自由走行へ政治の壁【シンガポール~バンコクを走る(1)】
家電と紙おむつ、相互に国際陸送【シンガポール~バンコクを走る(2)】
アジア回廊のハブ、タイ起点に広がる【シンガポール~バンコクを走る(3)】
南北回廊に押し寄せる中国の熱気【タイ~ラオス~中国を走る(1)】
東西回廊を補完、カジノもある国境【タイ~ラオス~中国を走る(2)】
動き出した東西回廊【バンコク~ラオス~ハノイを走る(1)】
巨大市場へ期待、日系企業【バンコク~ラオス~ハノイを走る(2)】
拠点補完のインドネシア陸路
まず犯罪対策のフィリピン陸路

第4章 21世紀のシルクロード          

見えてきた雲南の物流ハブ
広西、中越黄金ロードに
ASEANへターミナル広東
飛躍するインド空運
コンテナ貨物、急増するインド海運
拡大続く中印貿易

あとがき


<ブログ内関連記事>

『東南アジアを学ぼう「メコン圏」入門-』(柿崎一郎、ちくまプリマー新書、2011)で、メコン川流域5カ国のいまを陸路と水路を使って「虫の眼」でたどってみよう!

タイのあれこれ (21) バンコク以外からタイに入国する方法-危機対応時のロジスティクスについての体験と考察-

書評 『消費するアジア-新興国市場の可能性と不安-』(大泉啓一郎、中公新書、2011)-「新興国」を消費市場としてみる際には、国全体ではなく「メガ都市」と「メガリージョン」単位で見よ!

書評 『戦いに終わりなし-最新アジアビジネス熱風録-』(江上 剛、文春文庫、2010)

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)




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