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2013年5月26日日曜日

『はじめての宗教論 右巻・左巻』(佐藤優、NHK出版、2009・2011)を読む-「見えない世界」をキチンと認識することが絶対に必要




ふとしたキッカケから、買ったままほったらかしにしていた『はじめての宗教論』二部作を思い立って読んでみました。

『はじめての宗教論 右巻-見えない世界の逆襲』(佐藤優、NHK生活人新書、2009)。
『はじめての宗教論 左巻-ナショナリズムと神学』(佐藤優、NHK新書、2011)

結論から先にいえば、『右巻』はじつに面白い。ぜひ読むことを薦めたいと思います。『左巻』も面白いですが、おのずから読者を選ぶ本だといっていいでしょう。

「見えない世界」の認識の重要性を理解し、自己啓発やマルチ販売などの「宗教と名乗らない宗教」への免疫をつけることができるために、『右巻』だけでも読むべきだと思います。

著者は元外交官でインテリジェンスの専門家。いわゆる「国策捜査」というコトバを一般語にした人ですね。最高裁では結局のところ勝てませんでしたが。


プロテスタント神学の立場による「見えない世界」へのアプローチ

しかも著者は、同志社大学神学部卒という異色の経歴をもっています。プロテスタントのなかでも、もっとも厳格なカルヴァン派。いわゆる予定説。あらかじめ救済されることがわかっているので、投獄されても苦ではなかったようです。

そんな著者がプロテスタント神学の立場から書いたキリスト教神学入門宗教学者ではなく神学研究者の立場から書いた本ということに意味があり、差別化されているわけです。

わたしも含めて一般読者は「神学」の本などめったに読むものではありませんので、その意味でも著者の存在は貴重なものがあるといえましょう。

「神学」といえば、高校世界史の授業で耳にしたこともあるでしょう。「哲学は神学の婢(はしため)」トというフレーズに登場する神学です。カトリックが支配的であったヨーロッパ中世の神学者のコトバです。

ここでいう哲学とは狭い意味の哲学ではなく、いわゆるリベラルアーツとして総称される七自由学芸のことをさしています。具体的にいえば、文法学・修辞学・論理学の3学、それから算術・幾何・天文学・音楽の4科のことを指しています。

中世においてはリベラルアーツの基礎のうえに、神学あるいは医学、法学という「実学」が学ばれました。現在でも欧米の総合大学は神学部からはじまったものが少なくありません。

神学といえば「虚学」というイメージがつよいかもしれません。しかし神学は「実学」でもありました。そのわけはキリスト教の聖職者養成のための学問であるからです。

神学は「見えない世界」にアプローチするための学問であり、諸学の頂点に位置づけられていたということにキリスト教世界の構造を知ることができます。

近代化を西洋近代化という形で体験することになった日本は、当然のことながら西洋キリスト教文明の圧倒的な影響のもとにあります。

しかし、著者が述べるように、「コルプス・クリスティアヌム」(Corpus Christianum)、すなわち、「ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統 × ギリシア古典哲学 × ローマ法」が混在一体となった西洋のキリスト教共同体から、キリスト教だけを抜いて導入したのが日本近代でありました。

西欧におけてはキリスト教の神が位置するところに、国家神道をもってそれに代替させたのが近代日本です。敗戦後はその国家神道が否定された結果、空洞のまま放置されて現在に至っています。

明治以降の近代日本にはキリスト教的なものは充満していますが、もっぱら風俗として受容されたにとどまり、ましてや神学なる学問が学問の世界で正当な位置づけをもっているのは、神学部をもっているキリスト教系の大学の一部に限定されます。そのため、一般の日本人には神学とは神学論争というフレーズで揶揄する以外につかわれることはありません。

とはいえ、キリスト教の神学的思考法の枠組みくらいはアタマで理解しておいたほうがいいということでしょう。キリスト教神学の枠組みをとおして「見えない世界」を見るというアプローチは重要ですし、キリスト教がバックボーンにある西洋文明を理解しておかないと、ヨーロッパもアメリカも理解することができません。


『はじめての宗教論 左巻-ナショナリズムと神学』

 『はじめての宗教論 左巻-ナショナリズムと神学』(佐藤優、NHK新書、2011)は、「近代」とは何であったのか、その限界を考えるためには面白い本です。

近代になって前面にでてきたナショナリズムは、キリスト教が後退したことによって優勢となった「宗教」であること、そしてその端緒をつくったのが18世紀ドイツの神学者シュライエルマッハーの思想であることにあります。

著者はこう書いています。

初期の著作『宗教論』(1799年)で「宗教の本質は直観と感情である」と定義し、晩年の著作『キリスト教信仰』(1821~22年、第二版1830年)では「宗教の本質は絶対依存の感情である」と定義したのです。その結果、神は天上ではなく、各人の心の中にいることになりました。神を「見えない世界」にうまく隠すことに成功したと言っていいかもしれません。・・(中略)・・自らの心の中に絶対的存在を認めることで、人間の自己絶対化の危険性が生じたわけです。・・(中略)・・近代とはナショナリズムの時代です。ナショナリズムの台頭を背景に、心の中の絶対者の位置にはネイション(民族)が忍び込んでくる。ここに、国家・民族という大義の前に人が身を投げ出す構えができあがってしまいました。(P.13~14) *太字ゴチックは引用者=わたし

近代世界においてはキリスト教から外部絶対者としての神が背景に退き、その結果として強化されたナショナリズムが第一次世界大戦という惨事を招くことになったわけです。第一次大戦後に登場したのがカール・バルトの神学である、と書かれています。

哲学者ニーチェが「神の死亡宣告」をした以降、キリスト教が後退したという理解が一般的ですが、プロテスタント神学の立場からは、それとは異なる観点から説明がなされるのが興味深いですね。

このテーマであれば、『ナショナリズムの起源をシュライエルマッハー神学で解く』とでも題して別個の書籍にしたほうがよかったかもしれません。

ですからキリスト教徒ではない一般読者にとっては、かならずしも問題意識を共有するわけではないので、プロテスタント神学入門である『左巻』はあまり面白くないかもしれません。あくまでもそういうものの見方もあるといったた程度で問題ないでしょう。読むのは『右巻』だけで十分だと思います。

とはいえ、『右巻』と『左巻』は別々に読んでも意味がわかるようにしてあると著者は言っていますが、『右巻』に書いてあることを前提にしないと理解しにくいと思います。


外部性、すなわち「見えない世界」を認識することが必要だ

「見えない世界」を認識することの重要性、その方法について、プロテスタント神学の立場から考察したものです。

「見える世界」がすべてだと思い込むのは傲岸不遜(ごうがんふそん)であり、「見えない世界」の逆襲を受けてしまうためでありますね。これは「3-11」で日本人が、大津波や原発事故による放射能汚染で痛烈に体験したことであります。

「見える世界」だけで捉えていたのでは足をすくわれます。「見えない世界」を感じ取り、読み解くチカラは絶対に必要なのです。

そのためのアプローチとしてキリスト教神学が役に立つというのが著者の立場です。とはいえ、キリスト教徒ではない一般読者が神学まで勉強する必要はない。神学的思考法の枠組みがわかればそれで十分でしょう。また、その立場には立たない人は、それぞれ異なるアプローチを探求すべきことを示唆してくれている本だといってよいかと思います。

わたしもこの本を読んでアタマのなかがかなり整理できました。きわめて読みやすく、アタマに入りやすい本です。騙されたと思って、ぜひ読んでみるといいでしょう。



『はじめての宗教論 右巻-見えない世界の逆襲』(佐藤優、NHK生活人新書、2009)
目 次

序章 「見える世界」と「見えない世界」-なぜ、宗教について考えるのか?
第1章 宗教と政治-神話はいかに作られるのか?
第2章 聖書の正しい読み方-何のために神学を学ぶのか?
第3章 プネウマとプシュケー-キリスト教は霊魂をどう捉えたのか?
第4章 キリスト教と国家-啓示とは何か?
第5章 人間と原罪-現代人に要請される倫理とは?
第6章 宗教と類型-日本人にとって神学とは何か?
ブックガイド
あとがき


『はじめての宗教論 左巻-ナショナリズムと神学』(佐藤優、NHK新書、2011)
目 次

序章 キリスト教神学は役に立つ-危機の時代を見通す知
第1章 近代とともにキリスト教はどう変わったのか?
第2章 宗教はなぜナショナリズムと結びつくのか?
第3章 キリスト教神学入門(1)-知の全体像をつかむために
第4章 キリスト教神学入門(2)-近代の内在的論理を読みとく
第5章 宗教は「戦争の世紀」にどう対峙したのか?
第6章 神は悪に責任があるのか?- 危機の時代の倫理
ブックガイド
あとがき

著者プロフィール  
佐藤 優(さとう・まさる)1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了。著書に『国家の罠』(新潮社、毎日出版文化賞特別賞)、『自壊する帝国』(新潮社、新潮ドキュメント賞と大宅壮一ノンフィクション賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連記事>

書評 『聖書を語る-宗教は震災後の日本を救えるか-』(中村うさぎ/ 佐藤優、文藝春秋、2011)-キリスト教の立場からみたポスト「3-11」論
・・こちらを先に読んだほうがいいかもしれない。わたしは結果としてそうなったが、「3-11」は日本人にとてはまさにカイロス的時間の強烈な体験として刻みこまれることになった。以下、該当箇所を再録しておく。

「時間には二種類あるという論点だ。それは、クロノス と カイロス という二種類の時間についてである。ともにギリシア語で時間をあらわすコトバだが、クロノスは一般につかう時間の意味。時系列で連続している物理的な時間のことである。
 一方、カイロスはエピソードによって切断され時間のことである。エピソードとエピソードのなかにつなげられた時間のこと。
 日本人の歴史認識も、その意味ではカイロス的であるといえる。「戦前」と「戦後」といった時代区分は、大東亜戦争というカイロス的時間によって分断されたもの。
 その意味では、「3-11」によって、あらたな時代認識が発生したのは当然のことなわけだ」

本の紹介 『交渉術』(佐藤 優、文藝春秋、2009)


キリスト教とキリスト教神学

ハーバード・ディヴィニティ・スクールって?-Ari L. Goldman, The Search for God at Harvard, Ballantine Books, 1992
・・ハーバード大学神学大学院について

書評 『なんでもわかるキリスト教大事典』(八木谷涼子、朝日文庫、2012 初版 2001)一家に一冊というよりぜひ手元に置いておきたい文庫版サイズのお値打ちレファレンス本

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)-日本への宣教(=キリスト教布教)を「異文化マーケティグ」を考えるヒントに


神なき時代にキリスト教世界に生まれた全体主義

『「経済人」の終わり』(ドラッカー、原著 1939)は、「近代」の行き詰まりが生み出した「全体主義の起源」を「社会生態学」の立場から分析した社会科学の古典
・・「第4章の「キリスト教の失敗」については、全体のなかではちょっと異質な感じのする章である。背景となる文脈はいまひとつ読みにくいということがある。・・(中略)・・知的エリートたちが「経済人」モデルの問題点を解決するためにキリスト教倫理に戻ってきたのに対し、一般大衆は慣習以上の関心をキリスト教に対しては抱いていなかったということが指摘されているのだ。つまり、キリスト教はすでにヨーロッパにおいて熱情を失っていたことであり、そのために宗教的な熱情をともなう「全体主義」に引き寄せられたという分析だ」

書評 『オウム真理教の精神史-ロマン主義・全体主義・原理主義-』(大田俊寛、春秋社、2011)-「近代の闇」は20世紀末の日本でオウム真理教というカルト集団に流れ込んだ
・・日本人の若手宗教学者による必読書


プネウマ(息・気・霊)

書評 『折口信夫 霊性の思索者』(林浩平、平凡社新書、2009)
・・プネウマ(息、気、霊)について

書評 『「空気」と「世間」』(鴻上尚史、講談社現代新書、2009)-日本人を無意識のうちに支配する「見えざる2つのチカラ」。日本人は 「空気」 と 「世間」 にどう対応して生きるべきか?
・・キリスト教徒・山本七平の「空気」はプネウマの訳語である

(2014年8月14日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)





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